【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

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61 新たな商品開発に訪れた、ラッキースケベ。

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――その日、わたくしは考え事をしていましたわ。
カイルと恋人同士になったのはいいけれど、ブラックカイルが降臨するのはとても危険な事。
もしや、そのブラックカイルは――魔付きが故に起きているのではないか?
だとしたら、早急に解呪薬を作る必要がありますの。
ええ、早急に。
幸い、朝の聖水作りのお陰でスキルが上がり、解呪薬を作れるようになりましたわ。
この解呪薬があれば、ブラックカイルは二度と出てこないのではないだろうかと思い至ったわたくしは、急いで薬草園に向かい、必要な薬草等を鞄に入れ、更に必要なアイテムを備蓄倉庫にて手に入れた。
そして、満を期して――解呪薬を作ることが出来たんですの!
ブラックカイルを封印する為には、きっと大事なキーアイテムの筈ですわ!
そう思い、出来上がった解呪薬を鞄に入れると、やり切った感を満喫しながら、本日作らねばならないアイテムリストを開きましたわ。

ポーション類は、実は中級ポーションまでは内部処理班組の方々が作れるんですの!
皆さん必死に作っておられますわ。
わたくしが作るのは上級回復ポーションと、上級MP回復ポーションですわね。
心に余裕が出来ると、ホッとする反面やる気がもっと起きますわ!
お外は残暑が厳しそうですし、そろそろ秋から冬にかけての目玉商品を考えたいところ。
ロストテクノロジーで何か無いかしらと探していた所、『ほっかり肌着』なるものが出てきましたわ。
説明文を読むと、前世では当たり前の皆さんが着用し、秋から冬にかけて大活躍したあのヒートなんたらと似たような物であると判明。

コレ、絶対売れますわ。

更に『ほっかり肌着』の隣には『ひんやり肌着』と言うものがありましたの。
残暑が厳しい今の時期ですものね……期間限定販売と言う事で作ってみようかしら?
しかし、服の事は裁縫チームに聞いてからが宜しいですわね!
最近「あまり作れるものがありません」と嘆いていたし、此処で一つ協力してもらいましょう!
ブレスレットをいじって拡声器に変更すると、わたくしは意気揚々とした声を出しましたわ!


『業務連絡、業務連絡です。サーシャさんとノマージュさんは至急、アイテム倉庫までお越しください。新しい商品開発に裁縫師が必要となります。繰り返します、サーシャさんとノマージュさんは至急アイテム倉庫までお越しくださいませ。新しい商品開発に裁縫師が必要となります』


こうして拡声器を切ると、10分しない内にアイテム倉庫に二人が走ってきましたわ。
どうやら伐採エリアで布素材になるアイテム採取をしていた様子。
ちょっと申し訳ない事をしてしまいましたわね。


「お呼びと聞いて!」
「駆けて参りました! 服に関するアイテム作成ですか!?」
「ええ! ロストテクノロジーを眺めていたら、面白い商品を見つけましたの! 二人の意見を聞いてみたいですし、やはり裁縫のものと言ったらお二人ですもの!」
「「なんてありがたいお話でしょう!」」
「ささ、聞いてくださいませ!」


こうして二人に『ほっかり肌着』と『ひんやり肌着』の二つを話しましたわ。
まず、『ほっかり肌着』と言う物について。


「この『ほっかり肌着』というのは、着ているだけで身体が温かくなる優れものですの。この一枚があるなしでは体感温度が全く違うと言われているそうですわ」
「確かに寒い時期に肌着が温かいと……」
「屋外での作業や冷たい鎧を着る騎士団、冒険者の方々に、冷え性の方々にさえも神の救いを与える代物ですね……」
「ええ、一枚作ってみますので、一度着てみて下さる? 作り手が価値を分かっていないとダメだと思いますの」
「「分かりました」」


そう言うと、わたくしは数あるアイテムの中から裁縫系を選び、ロストテクノロジーを使い『ほっかり肌着』を三枚作成すると、それぞれその場で着替えて『ほっかり肌着』を着用。
ここの箱庭で男性はカイルとライトさんくらいなので、二人とも気にもせず着替えましたわ。
数分後――確かに前世のヒートなんたらに近い熱さを感じますわ。
二人の様子はと言うと……。


「薄手の生地なのにシッカリと温かい……それでいてホッとする温度ですね」
「この一枚があるのと無いとでは、上に着る服も枚数も変わってきます!」
「オシャレの幅が広がると言うことですわね。この生地を用いた洋服もあるようですわ」
「「素晴らしい!!」」
「多分、この『ほっかり肌着』を着用し、その『ほっかり生地』を用いた布を使えば、二枚着るだけで上はコートのみと言う楽なオシャレも可能ですわね」
「これからの時代、女性が着ぶくれする時代が終わるのですね!」
「着ぶくれは良くないわ……オシャレではないもの」
「その通りですわ。どうでしょう? わたくしが糸を用意するか、それとも布地まで用意して、後はお二人に『ほっかり肌着』を作って貰う事は可能でしょうか?」
「可能ですわ。出来れば『ほっかり肌着』は黒をメインに、『ひんやり肌着』は白をメインに作りたいです」
「白と黒ですわね」


確かに、黒は熱を溜めやすく、白は反対に涼しくなるとか聞いたことがあったような気がしますわ。
理にかなった色で、それでいて同じ肌着でも間違えないような配慮。流石ですわね!


「布地からお渡しいただければ、山のように作ります!」
「布地ですわね」
「けど、洋服を作るときは糸で欲しいです」
「色んな種類の色の糸があれば、オシャレな服をご提供します!」
「分かりましたわ」
「「それと」」
「はい?」
「『ひんやり生地』も、着るとヒンヤリするんでしょうか」
「しますわ」
「では、是非この残暑の間だけでも『ひんやり糸』を幾つかカラーを作って頂いて、服を作ってもいいでしょうか? 無論肌着を優先しますので!」
「勿論ですわ!」


こうして、その場で黒の布地の『ほっかり布』を大量生産し、更に白の布地の『ひんやり布』もドーンと大量生産すると、二人は気合を入れてそれらをアイテムボックスに仕舞いこみましたわ。
そうなると、その場で小屋から椅子を持ち出し肌着の作成に取り掛かったお二人を他所に、人気のある色から落ち着いた色まで36色の『ほっかり糸』には黒の紐をつけて、『ひんやり糸』には白の紐をつけて作ると、反応の早い御二人は目にもとまらぬ速さでシュバババババっと糸をこれまたアイテムボックスに仕舞いこみ、恐ろしい速さで『ひんやり肌着』の制作に打ち込んでおられます。


「宜しければ、洋服の小屋を作りましょうか?」
「「お願いします!!」」
「では早速作ってまいりますね」


そう言うと、まだ空いている5つの家の一つを、洋服専用の小屋に仕上げ始めると、椅子を片手に小屋に入ってきたお二人は、黙々と肌着を作っておりましたわ。
職人……まさに職人っ!


「出来れば、サイズも豊富にあると助かりますわ」
「「サイズですね!!」」
「ふくよかな方や筋肉質な方、細身の方等いらっしゃいますから、男女共にあると助かりますわね」
「「そうですね!」」
「後は子供用にどうかしら……。外で遊びたい盛りのお子様を持つ親御さんにとっても売れますかしら?」
「「確実に売れます!! 売って見せます!」」
「素晴らしい心意気ですわ……」
「「有難うございます!!」」


こうして、火のついた裁縫職人の二人に後は任せて、更に追加で作った肌着用の白黒を棚に並べると、わたくしはコッソリ部屋を出ましたわ。
そう言えば三人揃って肌着でしたわね。
着替えておきましょう。
そう思い、肌着を脱いだその時でしたわ。


「うわああああああ!!」
「へああ?」


仕事を終えたカイルが既に戻ってきていた様子。
カイルの悲鳴は何故かと言うと――お解りですわね?

わたくし、上半身裸。

あら――……あら? でも彼氏なら見ても問題ないのでは?


「あら、カイルお帰りなさい」
「リディア! 服を着ろ! せめて上に何か羽織ってからにしてくれ!」
「まあ! 恋人同士なら裸を見られても問題ないのでは?」
「順序って言うものがあるんだ! これは嬉しいラッキースケベかもしれないけど、とりあえず服を着ろ!」


ラッキースケベ。
カイル、人生で一度しか起きないようなそんな奇跡と遭遇しましたのね!
慌てふためくカイルを他所に、ニヤニヤしながら上着を羽織ると、顔面真っ赤のカイルが恨めしそうに此方を睨んでますわ。


「リディア……お前はっ」
「新しい商品開発をしてましたの。『ほっかり肌着』と『ひんやり肌着』でしてよ?」
「……そうか、商品開発だったのか……」
「お仕事お疲れさまですわ! 集中しすぎて時間がわかりませんでしたの。特にサーシャさんとノマージュさんは燃えてますわ!」
「燃えてるのか……凄い商品なんだろうな」
「ええ、楽しみにして下さいませね!」


はて、何か忘れているような??
思い出せませんわ……なんだったかしら?


「それよりリディア、秘蔵の紅茶を分けてくれないか?」
「良いですわよ。おいくつ程の缶が必要かしら?」
「一個でいい、一個で」
「では予備を含めて三個お渡ししますわね」


こうして、何時もの日常に戻った訳ですけれど――寝る時になって思い出しましたの。


「あ! 解呪薬!!」


ブラックカイルの対策を忘れるなんて致命的ミス……明日の朝にはお渡ししましょう。
おやすみなさいませ……。
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