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63 戦いのあとの、穏やかなひと時(中)
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――雪の園side――
本当に熾烈な戦いだった。
詳しく話せる部分はそう多くはないが聞いて欲しい。
サラマンダーの要る部屋の扉を開けると、護符が割れる程の強烈な熱波が襲ってきた。
あの時、予備に持っていた護符が無ければ、もっと辛い戦いになっていただろう。
無論、護符を一枚しか所持することが許されていない、元紅蓮の華の連中なんてみれたもんじゃなかった。
それは生まれて初めて見る――人体発火。
それで二人の紅蓮の華のメンバーが死んだ。
そしてサラマンダーは自分の大事な涙を盗んだ奴を覚えていたんだろう。
サラマンダーは一目散にセシルの許へ駆け寄り焼き殺した。
そして身体を引き裂き、己の涙が何処にあるのか必死になっている隙に、まず雪の園のメンバーは一気に台座へと走る。
そして距離を置いたところで朝の露のメンバ―が涙を持っている私に速度魔法を掛け早くし、セシルが涙を持っていない事を知ったサラマンダーは泣き叫ぶと、今度は台座へと向かう私の許へ走り出したところで、ジュノがサラマンダーに時魔法を重ね掛けして遅くしか動けないようには出来た。
だが、元々が足の速い精霊だ。
人間の足とサラマンダーの足では魔法を使っても速度が違う。
レイスを守るようにハスノとナナノが魔法で応戦。ダメージを与えられなくとも少しでも台座へとくる時間を稼げればそれでよかった。
弓士のハーレスと槍使いであるイルノも力の限り足止めをしようとした。
だが、思わぬことが起きたのだ。
「ここにいる奴ら全員死ねばいいのよ! 誰の記憶にだって残らない低俗なんだから!」
「ぼぼぼ……僕は死にたくはないよっ! こいつらが死んでもいいけど僕だけは生き残ってロキシーとやり直すんだ!」
熱波で焼けこげ始めたアニーダは喉が焼けるのも気にせず笑い、サーディスは溶けた眼鏡が顔に掛かって藻掻き苦しみながら泣き続けた。
だが、泣いたところで涙は熱波で蒸発する。
二人を囮に使う前に――さらに人体発火して二人は絶命した。
怒り狂うサラマンダーの範囲攻撃の一つである炎の息が何度も私たち雪の園全員にぶち当たり、その度に身代わりの華の花びらが散っては燃えていった……。
最後の一枚が落ちた時に台座まで到着すると、今度は炎の波動が雪の園のメンバーと朝の露のメンバーを襲い、『神々の護符』が割れて助かった。
護符の力は偉大で、波動二回までなら一つの護符で耐えることが出来たのは大きい。
それでも、喉は焼け付き声が出にくく、目はぢりぢりと焼けるように痛かった。
ナナノとハスノの綺麗な髪は焦げていき、イルノ達も声を上げたくても声が出せない。
だが、一瞬だけ私たちではなく、朝の露の方へと方向転換してサラマンダーが動いた瞬間、私は『サラマンダーの涙』を台座に戻した、次の瞬間だった。
目の端に見える血しぶきに息を止めた。
朝の露の皆の、腕や足が吹き飛び、倒れたからだ。
名前を呼びたくても声が出ない。
その時、『破損部位修復ポーション』の存在を思い出して一気に飲み干し、サラマンダーの名を呼ぶと、今度は台座にある涙を見て雄叫び上げ、私たち雪の園の面子はサラマンダーの体当たりで、運良くも朝の露のメンバーの近くに突き飛ばされた。
だが、ハスノの腹には大きな穴が開き、生きているがもう残された時間は少ないと悟った。
「ナナノ! あのアイテムを、『破損部位修復ポーション』を使え!」
喉が焼ける想いをしながら叫ぶと、ナナノは急ぎ瓶を取り出しハスノに飲ませ、俺は瓶を開けながらまだ息のある朝の露のメンバーに飲ませていった。
そして足りなくなったらナナノの鞄から瓶を受け取り朝の露のメンバーの腕も足も無事に綺麗になったのを確認し背後を見ると、白い煙を上げながらサラマンダーは涙を抱きかかえ、像へと姿を変えていった……。
――道具店サルビアの皆が私たちを生かすために作ったアイテムは、ほぼ全て使い切った。
それは正に奇跡のような状態で、朝の露のメンバーも立ち上がり、失ったはずの手足に震え、ハスノは大きく穴が開いた服を見て顔を顰めていたが、ナナノが上着を掛けると微笑み合っていた。
後は確認事項が残っている。
白い煙が落ち着いたのを見計らい、ゆっくりサラマンダーの像へと近づき、像に戻っているかの確認をとると、もう動くことは無かった。
「……私たちの勝ちだ」
「ああ……俺達の勝ちだ」
人体発火した紅蓮の華の亡骸は見当たらなかった。
骨すら消える程、燃えてしまったのだろう。
アレだけ暑かった部屋の温度も元に戻り、ホッと息を吐くと、俺達は手と手を鳴らし合ってから部屋を出た。
無論、俺達が生きて帰ってくるとは思っていなかったのだろう。
騎士団たちは座り込んで談笑していたが、俺達が五体満足無事に出てきたことに驚き、声を失ったように静まり返った。
「無事、サラマンダーの涙を返すことが出来た。部屋の温度が下がり、サラマンダーの像の許まで向かい状況を確認したが、しっかりと像に戻って動くことは無かった。それと、奴隷堕ちした紅蓮の華の奴らは人体発火して骨も残っていない。もう部屋の中の温度も普通に戻っているから騎士団は確認に行ってくれれば助かる」
まさか本当にサラマンダーが鎮静化するとは思っていなかったのだろう。
騎士団たちはドアを開け、恐る恐る中へと入っていくと確認をし終えたのか、今度は休憩所に戻った部屋に聖水を大量に撒き始めた。
すると――ダンジョンからズゥゥゥゥン……と言う音が鳴り響き、私とイルノ達は顔を見合わせホッと安堵の息を吐いた。
あの音は、ダンジョンが鎮静化した際に出る音だと私たちは知っていたからだ。
これでもう大丈夫……三つ全てのダンジョンは鎮静化された。
「流石に疲れたな」
「死んだと思ったよ、何度かね」
「でも私たちは生きている」
「私も一度死んだと思ったけれど生きてる」
「……感謝せねばなりませんね」
「ああ、陛下への報告が終わったら、会いに行こう」
――ただいまを言いに行く為に。
そして。
心からの【ありがとう】を伝えに行く為に……。
本当に熾烈な戦いだった。
詳しく話せる部分はそう多くはないが聞いて欲しい。
サラマンダーの要る部屋の扉を開けると、護符が割れる程の強烈な熱波が襲ってきた。
あの時、予備に持っていた護符が無ければ、もっと辛い戦いになっていただろう。
無論、護符を一枚しか所持することが許されていない、元紅蓮の華の連中なんてみれたもんじゃなかった。
それは生まれて初めて見る――人体発火。
それで二人の紅蓮の華のメンバーが死んだ。
そしてサラマンダーは自分の大事な涙を盗んだ奴を覚えていたんだろう。
サラマンダーは一目散にセシルの許へ駆け寄り焼き殺した。
そして身体を引き裂き、己の涙が何処にあるのか必死になっている隙に、まず雪の園のメンバーは一気に台座へと走る。
そして距離を置いたところで朝の露のメンバ―が涙を持っている私に速度魔法を掛け早くし、セシルが涙を持っていない事を知ったサラマンダーは泣き叫ぶと、今度は台座へと向かう私の許へ走り出したところで、ジュノがサラマンダーに時魔法を重ね掛けして遅くしか動けないようには出来た。
だが、元々が足の速い精霊だ。
人間の足とサラマンダーの足では魔法を使っても速度が違う。
レイスを守るようにハスノとナナノが魔法で応戦。ダメージを与えられなくとも少しでも台座へとくる時間を稼げればそれでよかった。
弓士のハーレスと槍使いであるイルノも力の限り足止めをしようとした。
だが、思わぬことが起きたのだ。
「ここにいる奴ら全員死ねばいいのよ! 誰の記憶にだって残らない低俗なんだから!」
「ぼぼぼ……僕は死にたくはないよっ! こいつらが死んでもいいけど僕だけは生き残ってロキシーとやり直すんだ!」
熱波で焼けこげ始めたアニーダは喉が焼けるのも気にせず笑い、サーディスは溶けた眼鏡が顔に掛かって藻掻き苦しみながら泣き続けた。
だが、泣いたところで涙は熱波で蒸発する。
二人を囮に使う前に――さらに人体発火して二人は絶命した。
怒り狂うサラマンダーの範囲攻撃の一つである炎の息が何度も私たち雪の園全員にぶち当たり、その度に身代わりの華の花びらが散っては燃えていった……。
最後の一枚が落ちた時に台座まで到着すると、今度は炎の波動が雪の園のメンバーと朝の露のメンバーを襲い、『神々の護符』が割れて助かった。
護符の力は偉大で、波動二回までなら一つの護符で耐えることが出来たのは大きい。
それでも、喉は焼け付き声が出にくく、目はぢりぢりと焼けるように痛かった。
ナナノとハスノの綺麗な髪は焦げていき、イルノ達も声を上げたくても声が出せない。
だが、一瞬だけ私たちではなく、朝の露の方へと方向転換してサラマンダーが動いた瞬間、私は『サラマンダーの涙』を台座に戻した、次の瞬間だった。
目の端に見える血しぶきに息を止めた。
朝の露の皆の、腕や足が吹き飛び、倒れたからだ。
名前を呼びたくても声が出ない。
その時、『破損部位修復ポーション』の存在を思い出して一気に飲み干し、サラマンダーの名を呼ぶと、今度は台座にある涙を見て雄叫び上げ、私たち雪の園の面子はサラマンダーの体当たりで、運良くも朝の露のメンバーの近くに突き飛ばされた。
だが、ハスノの腹には大きな穴が開き、生きているがもう残された時間は少ないと悟った。
「ナナノ! あのアイテムを、『破損部位修復ポーション』を使え!」
喉が焼ける想いをしながら叫ぶと、ナナノは急ぎ瓶を取り出しハスノに飲ませ、俺は瓶を開けながらまだ息のある朝の露のメンバーに飲ませていった。
そして足りなくなったらナナノの鞄から瓶を受け取り朝の露のメンバーの腕も足も無事に綺麗になったのを確認し背後を見ると、白い煙を上げながらサラマンダーは涙を抱きかかえ、像へと姿を変えていった……。
――道具店サルビアの皆が私たちを生かすために作ったアイテムは、ほぼ全て使い切った。
それは正に奇跡のような状態で、朝の露のメンバーも立ち上がり、失ったはずの手足に震え、ハスノは大きく穴が開いた服を見て顔を顰めていたが、ナナノが上着を掛けると微笑み合っていた。
後は確認事項が残っている。
白い煙が落ち着いたのを見計らい、ゆっくりサラマンダーの像へと近づき、像に戻っているかの確認をとると、もう動くことは無かった。
「……私たちの勝ちだ」
「ああ……俺達の勝ちだ」
人体発火した紅蓮の華の亡骸は見当たらなかった。
骨すら消える程、燃えてしまったのだろう。
アレだけ暑かった部屋の温度も元に戻り、ホッと息を吐くと、俺達は手と手を鳴らし合ってから部屋を出た。
無論、俺達が生きて帰ってくるとは思っていなかったのだろう。
騎士団たちは座り込んで談笑していたが、俺達が五体満足無事に出てきたことに驚き、声を失ったように静まり返った。
「無事、サラマンダーの涙を返すことが出来た。部屋の温度が下がり、サラマンダーの像の許まで向かい状況を確認したが、しっかりと像に戻って動くことは無かった。それと、奴隷堕ちした紅蓮の華の奴らは人体発火して骨も残っていない。もう部屋の中の温度も普通に戻っているから騎士団は確認に行ってくれれば助かる」
まさか本当にサラマンダーが鎮静化するとは思っていなかったのだろう。
騎士団たちはドアを開け、恐る恐る中へと入っていくと確認をし終えたのか、今度は休憩所に戻った部屋に聖水を大量に撒き始めた。
すると――ダンジョンからズゥゥゥゥン……と言う音が鳴り響き、私とイルノ達は顔を見合わせホッと安堵の息を吐いた。
あの音は、ダンジョンが鎮静化した際に出る音だと私たちは知っていたからだ。
これでもう大丈夫……三つ全てのダンジョンは鎮静化された。
「流石に疲れたな」
「死んだと思ったよ、何度かね」
「でも私たちは生きている」
「私も一度死んだと思ったけれど生きてる」
「……感謝せねばなりませんね」
「ああ、陛下への報告が終わったら、会いに行こう」
――ただいまを言いに行く為に。
そして。
心からの【ありがとう】を伝えに行く為に……。
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