【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

文字の大きさ
84 / 274

84 箱庭に住む為に必要な約束事と、箱庭師たちが守る事。

しおりを挟む
――残るは革細工師の方々。
人数は多くは無いのですが、彼らは防具を作りたくないのだそう。
防具を作るにしても体力がもう持たないらしく、出来ればゆっくりと革製品を作りたいと言う事でしたの。


「流石に作り過ぎて手が震えますんじゃ……」
「もう老骨には応えます」
「少しずつでいいのであれば……小さなものから作れればと思っておりますが」
「では、冒険者ギルドから皮系を買い取りますから、冒険者が使うような皮の鞄なんかは作れまして?」
「それくらいでしたら」
「では、ちょっとお洒落な女性用男性用の皮の鞄も作れまして?」
「貴族様相手にやっておりましたのである程度は」
「では、ゆっくりでいいので作ってくださると助かりますわ」


そう言うと革細工の方々はホッとした様子。
長屋も完成し、ホッと安心したその夜――今回保護したご老人と避難してきた女性や子供さんを集めると、カイルとわたくしとで彼らにお話をする事となりました。


「改めてご挨拶しますわね。箱庭師のリディアです。道具店サルビアの影のオーナーと思って頂いて結構ですわ。まずは今回保護した方々には、一週間シッカリとした休養を求めます。
また、箱庭の規則には従っていただきますのでそこだけはご注意くださいませ」


そう言うと皆さん真剣に頷いていましたわ。
気候が良く、子供の遊び場も豊富で、衣食住に不自由しないと言うのであれば、彼らは絶対に箱庭の規則を守られるでしょう。


「また、一週間お休みして頂くに従い、一つ条件があります。こちらの温泉は好きに使って構いませんが、温泉に入る際の礼儀と言うものを壁に貼ってありますので、必ず守ってくださいませ。そして、余り長湯しすぎて湯あたりせぬよう心がけてください」
「「「「「はい!」」」」
「男性は女性に迷惑を掛けぬよう、女性は男性にあまり迷惑を掛けぬようお願いします。体調が悪い場合は直ぐにご連絡下さいませ。薬を提供しますが、いざと言う時はお医者様を直ぐお呼びします」
「そこまでして頂けるのですか?」
「あなた方はナカース国民となったのです。病気になればお医者様に掛かる権利が御座いますわ」


思いもよらなかったのでしょう。
前の国では医者は貴族のみしか見ませんでしたが、ナカース王国の属国となった今では、平民もまた医者に掛かる事が出来るのです。
すると今度はカイルが言葉を口にしました。


「今後、俺はナカース王国で商売を始める事となります。その際、スキルを持っているあなた方の力が必要となるでしょう。どうか、お力とお知恵をお借りしたい」
「「「カイルさん……」」」
「そして、今回保護した方々はお年を召した方がとても多いですが、もし仮にお亡くなりになった場合ですが……。道具店サルビアの名の許、亡くなった場合、葬儀を上げさせていただきます。そして、墓も用意します」


自分たちの死後の事を話されるとは思っていなかったのでしょう。
基本、庶民は墓など持たせてもらえません。
良くて川に流されるか、野山に捨てられるかのどちらか……。
ですが、ナカース王国では共同墓地として墓を設けることが可能なのです。
そして、毎年一年に一度、鎮魂祭を行う事になっておりますわ。
その事も含め彼らに話しをすると、むせび泣く声が聞こえてきました。
自分たちの死後、どうなるか分からなかったのでしょう。


「ですので、最後の時まで幸せに、幸せに生活して欲しいと願っています。気分転換に外に出たい時もあるでしょうが、その時はお知らせください」
「何と言って良いか……本当に有難う御座います」
「死後はその辺の草むらか川に流されるのだとばかり……」
「嗚呼……何とありがたい」


そう言って涙を拭うお年寄りとは別に、今度は保護された女性達と子供に向き合います。


「今回、夫の暴力及び、女手一つで子供を育てている女性達5人を保護しました。貴女方は既に住む部屋は用意されています。心の傷が深い方は、リディアの許にお越しください。それは子供も含めてです」
「あの、それはどういう事でしょうか?」
「特別なポーションを差し上げますわ。少しだけ心の負担が減る様なポーションですので、体に害はありません。一度だけしか使いませんし、不安でしたら是非、雪の園や朝の露の方に聞いてみて下さいませ。彼らは既に使っておりますわ」


国の英雄、朝の露と雪の園が使ったアイテムと聞けば女性達は安心し、子供達は怯えながらも憧れの英雄が使った薬と言う事で興味を示したようです。


「話は以上です。まずは一週間、ゆっくりと心と身体を癒してください。温泉は好きな時間に好きに入って構いません。疲労回復効果がお高い温泉ですので、生き返りますよ」


こうして解散となったのですが、直ぐに女性達は子供を連れてわたくしの許に集まり、皆さんに一瓶ずつ『破損部位修復ポーション』を飲ませると、胸や頭から光が湧き出ては消え、悲しみに暮れていた表情が生き返るように変わりましたわ。
それは子供たちも一緒で、薬を飲んだ後は「ママ?」と不思議そうにご自分たちのお母さんの手を握っておられました。

暴力を受けたら身体も心も傷つきます。
言葉の暴力も同じこと。
それを見て育った子供は、もっと心に傷を負っていたのでしょう。

ホッとした皆さんは何故か笑いながら涙を流し、わたくしにお礼を言って先人の保護されたママさんたちに連れられ、アパートへと向かわれましたわ。


「お疲れリディア」
「カイルもお疲れさまです」
「まさか箱庭がまたレベルアップするとはな。畑なんて凄いぞ。最初に来た時の4倍だ」
「まぁ、そんなに広がりましたのね! これでここに住む全員、衣食住に困らず生活が出来ますわ」
「子供達のスキルも見たんだろう。どうだったんだ?」
「まずは子供達にはスキルを楽しみながら上げて貰い、一般教養の勉強も教えていこうと思いますの。実は『家庭教師』をしていたお婆様方が結構いらっしゃって、わたくしが年齢に合わせた教科書と筆記道具を用意すれば、勉強も捗るでしょうね。なので、子供用の青空教室を作ろうと思いますの」
「青空教室?」
「ええ、海辺に沢山の机と椅子を並べて、黒板とチョークを用意いして、いくつかの年齢別のクラスに分けて勉強させますの。せめて読み書きや計算が出来なければ、外に仕事に行ったときに苦労しますもの」
「リディア……」
「子供には遊ぶ時間、勉強の時間は大切ですわ! ついでに絵本や本も沢山用意しようと思ってますわよ?」
「ははは、リディアらしいな」
「心も体も大きく育つ今だからこそ、頭ごなしに勉強なさい! じゃなく、勉強はそこそこで、それよりも知恵や知識を蓄えた方がいいですわ。それに経験も」
「リディアは良い母親になれるよ」
「そうありたいと思いますわ」


こうして一週間、保護した皆が各々好きに過ごす中、早く働きたい方には午前中はのんびりと、午後は仕事で構わないと言うことにしましたわ。
お年寄りの中には孫が居た方も多く、沢山の子供達の世話をしてくれますわ。
此処で育つ子供たちは、大好きなママやお爺ちゃんお婆ちゃんたちに見守られ、スクスクと成長するでしょう。

そして、何時か箱庭を卒業する時の財産になってくれたらと思いますわ。

それから一週間後――。
独り身用のアパートが出来上がり、こうして残るは作業小屋だけになりまして。
各々建築師の方々にどんな小屋が良いかを説明し、図面を書き、一つずつ作られていく様は中々壮観でしたわ。
一先ずは安心。
そう思っていたのですが――。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ドラゴン王の妃~異世界に王妃として召喚されてしまいました~

夢呼
ファンタジー
異世界へ「王妃」として召喚されてしまった一般OLのさくら。 自分の過去はすべて奪われ、この異世界で王妃として生きることを余儀なくされてしまったが、肝心な国王陛下はまさかの長期不在?! 「私の旦那様って一体どんな人なの??いつ会えるの??」 いつまで経っても帰ってくることのない陛下を待ちながらも、何もすることがなく、一人宮殿内をフラフラして過ごす日々。 ある日、敷地内にひっそりと住んでいるドラゴンと出会う・・・。 怖がりで泣き虫なくせに妙に気の強いヒロインの物語です。 この作品は他サイトにも掲載したものをアルファポリス用に修正を加えたものです。 ご都合主義のゆるい世界観です。そこは何卒×2、大目に見てやってくださいませ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...