【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

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244 モランダルジュ伯爵と姉が現れる。

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――マリシアside――


翌朝、私は一カ月の休みの為と、これ以上お見合いが来ない様にとロキシー様と交代する事を皆さんにお話しし、私はさっさと箱庭に帰ろうとしていた。
既に20人のお客様が入っているし、後は大丈夫だろうと思っていると――何やら外から争う声が聞こえ、男子禁制の部屋に元お父様と元お姉様が入り込んできた。
途端に貴族女性からは悲鳴が上がり、元父は煩わしそうに顔を歪めたけれど、二人は「マリシア!」と叫ぶと私の方へと歩み寄ってくる。

そこで、ロキシー様が動いた。


「失礼、こちらは男子禁制です。直ぐに外に出てください」
「私は此処でしか娘に、」
「元、娘です。彼女は既にあなた方の貴族籍から外され、ダンノージュ侯爵家の養女になっている。彼女の方が立場は上ですよ」
「マリシアの方が立場が上だなんて可笑しなことがあってはならないわ、ねぇお父様!」


そう自分勝手に叫ぶ元姉に頭痛がしたが、姉はいつも訳の分からない事を言う人だった。
私が姉よりも秀でているのが癪に障るのよね……。


「また、男子禁制の場所に入り込んできたと言う事で憲兵を呼んでいます。もう直ぐあなた方は捕まるでしょう」
「な、なんだと!」
「当たり前じゃない、ここは男子禁制として貴族なら誰もが知っている場所に入ってきたんですもの。午前の部はタダでさえ上位貴族ばかりだというのに、命が惜しくないのね」
「我が家からもモランダルジュ伯爵家に抗議の書面を送り届けましょう」
「わたくしの家からもですわ」
「あらあら、賠償金幾ら取られるか……大変ですわね」


私の言葉に自分が不利だとやっと気が付いたのか、私の腕を掴んで「家に帰るぞ!」と叫ぶその手をロキシー様が叩き落とした。妙な音がしていたから骨でも折れてるんじゃないだろうかと思ったが、案の定元お父様は激痛にその辺をジタバタと動き回っている。


「悪いねぇ、アタシはダンノージュ侯爵家の護衛もしている元Sランク冒険者なんだよ。ダンノージュ侯爵家に入った娘を誘拐しようとした容疑も入れさせて貰うよ」
「そんな酷いわ! 私たちは妹を返してもらおうと思ってきただけなのに」
「では、貴族同士の約束、契約、それらもどうでもいいって考えなんですね? 貴族同士が交わした契約とはとても重い物だと聞いているけれど、アンタ達はそれさえも軽いモノだと。皆さん、モランダルジュ伯爵家はそう言う家だそうですよ」
「なんて非道な!」
「信じられませんわ!!」
「貴族の風上にも置けない!!」


そんな非難が姉と父に降り注ぎ、姉は涙を堪えながら助けてくれる人を探しているけれど、私は冷めた目で二人を見ているし、姉も「マリシア……」と呼ぶだけで私は助けようともしませんわ。


「お引き取り下さいませ。元家族とは言え、とても恥ずかしい家だったと言う事が分かりましたわ。本当に情けなくて恥さらしね」
「マリシア、それは違うわ」
「何が違うのです?」
「だって、恥さらしは貴女だもの。モランダルジュ伯爵家を捨てた貴女こそが恥さらしよ」
「では、私を引き取りたいと言って下さったダンノージュ侯爵家も恥さらしと言う事ですね」
「それは……そうかも知れないわね! だって恥を貰うなんて恥さらしのする事でしょう?」
「では即刻お帰りを、ここはダンノージュ侯爵家が経営する場所です」
「何故? 他の人だっているじゃない、恥さらしの家の商売に」


この言葉にロキシー様もブチリと切れたようだけど、それ以上に切れたのは他の高位の貴族女性達だった。


「あらあら、では公爵家のわたくしも恥さらしかしら?」
「そうですね」
「まぁ、皆さん聞きまして?」
「ええ、聞きましたわ」
「我が家はモランダルジュ伯爵家とは縁を切らせてもらいますわ」
「夫にも話をしなくてはなりませんわね。無論、他の貴族達にも」
「そんな事をしても無駄よ? だって私の作る薬はとっても凄いもの!」
「薬?」
「そうよ? 人の心を軽くして、でも依存性がとっても高いから、薬が切れると大変な事になっちゃうわ。そんな薬を作れる私はとっても優れているの! マリシア、貴女はとってもクズで何をやっても役に立たないお荷物だけど、私の気持ちが晴れる為にも、家に帰ってこないとダメなのよ?」
「では、ダンノージュ侯爵家に書面を送ってくださいませ。神殿契約を結んでいるんですから、それを解除する為にも必要な手続きと言う物があるでしょう」
「そんな面倒くさいことなんてしないわよ。貴女が返ってくればいいだけ、ね?」


人の話を聞かない人だとは思っていたけれど、此処まで狂っているなんて。
そう思っていると憲兵が入ってきて元父と元姉を羽交い絞めにすると、即刻連行されていたわ。
久々の姉の目は焦点が合わず、奇怪しくなったのだと思っていたけれど――本当に奇怪しくなっていたなんて。


「ダンノージュ侯爵家に喧嘩を売るなんて……命が惜しくないのかしら」
「全くですわ!!」
「でも、流石元Sランク冒険者なだけあって、男から女性を守る動きは素敵でしたわ!」
「そう言って頂けると嬉しいねぇ。取り敢えず、カイル様にお話ししてモランダルジュ伯爵家はダンノージュ侯爵家の関わる場所への入店を拒否して貰うよう頼みます。皆さんも是非、あちらの貴族、こちらの貴族と言った感じにモランダルジュ伯爵家が言っていた事をお友達にお話してくれると助かります」
「絶対話すわ!」
「許せないもの!!」
「マリシア」
「――はい!」
「疲れただろう、先に戻って休んでな」
「……有難うございますロキシー様」


こうして一足先に箱庭に帰宅すると、わたくしの様子を見つけたカイル様とリディア様に心配され、先程の出来事を話すと、とってもお怒りになり、直ぐに現当主であるアラーシュ様に話してくると言ってお二人は向かわれたけれど、私の心は晴れることは無かった。
ただ、姉の焦点の合わない目が怖かった……まるで変な薬でもしているような目で。

姉は幼い頃から自己愛が強い人で、私や他の人の話を全く聞かない人だったけれど、そこに拍車が掛ったかのように更に酷くなっている。
薬の所為……? まさかね……。
変な薬を作ったとしても、基本的にそれを治す為の薬を作ってから使うもの。
それが製薬師だって聞いているし、そうじゃないのならスキルを封印されてしまうようなスキルだから……教会で厳しく説明されていたのを私もみているもの。
教会からの契約を破るような真似だけはしない筈だわ。
――けど。


「私の元実家だからなぁ……」


人の話を聞かない。
自己責任も取れない。
ヘタな真似しては貴族と揉めてお金を毟り取られて行く元実家。
今回の事で家は火の車になるでしょう。

まぁ、知った事ではないけれど。



――その夜。
帰ってきたカイル様達から、モランダルジュ伯爵家に抗議文と共に賠償責任として金貨100枚の支払いを言い渡してきたことが分かり、元父はとても慌てていたと言う事だった。
何とか値切ろうとする元父だったけれど、ダンノージュ侯爵家は許さなかったようで、今後ダンノージュ侯爵家の経営する店に入る事もモランダルジュ伯爵家は出来なくなった。
つまり、出入り禁止となったと言う事。


「それでも無理に入ってくるのなら更に金貨200枚を追加し、国王陛下に話を通すと言う事で再度契約書を交わしている。また来るということは無いとは思いたいが、モランダルジュ伯爵家の話を聞いていると、後二回くらいは突撃してきそうだな」
「ええ、人の話を聞かずに首を絞めるのが大好きな一族ですから」
「マリシア……大変だったわね」
「はい……でも私はもう、ダンノージュ侯爵家の養女ですから」
「そうね、マリシアはもうダンノージュ侯爵家の養女だもの!」
「取り敢えず、マリシアはあの家が落ち着くまでは箱庭でゆっくり過ごすと良い。後の事は俺達が何とかしよう」
「有難うございます。ロキシー様も守ってくださってありがとうございます」
「良いんだよ。それがアタシの役目なんだからさ」


こうして安心したのは久しぶり。
味方がいるって全然違うわ。
昔はお婆様やお爺様が居てくださったから何とかなったけれど……お姉様のスキルが開花してから間もなく相次いで亡くなってしまった……。
最初こそ毒でも使ったんじゃないかと姉に怒鳴りつけたけれど、姉はニコニコするだけで返事をしなかったわ。

もうあんな思いはしたくない。
私はダンノージュ侯爵家の養女。
これから先も、ずっと――。
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