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第二章 次なる政策と、娯楽の甘味

36 燻製の試作の完成と、鞄タイプのアイテムボックスの封印と。

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 ――翌朝、食事が終わってからシュリウスとサファール宰相と共に燻製器の元へと向かった。
 既に30個も並んだ燻製器には驚いていたようだが、燻製が終わった中を見てみると、無事に燻製は出来ているようで安心する。


「これが、燻製ですか?」
「チーズも欲しいかったが、まずはソーセージとベーコンでやってみたんだ」
「チーズはヤギのチーズならありますが」
「ヤギも良いだろうがネバリ王国のチーズがいいだろうな」
「なるほど」
「俺でも作れなくはないが、パンに塗るタイプのチーズくらいしか作れないだろう」
「でも、一応作れるんですね」
「まぁ、そうだな。牛乳があればだが」
「やはりそこでも牛乳なのですね」
「使い勝手がいいからな」


 そう言って苦笑いしていると出来上がたった燻製肉をアイテムボックスに入れ、生活魔法が使えるロスターニャに燻製器を掃除して貰うと一旦執務室へと戻った。
 そこで持っていたナイフで燻製肉をカットして食べさせてみると、「何時ものお肉と違います!!」とシュリウスは驚き、ロスターニャも「大人の味だわ」と驚き、「これは……異国の酒が飲みたくなりますな」とサファール宰相も驚き、テリオットは無言で味を噛みしめていた。


「これがアツシ様から頼まれていた燻製だ。味は初回にしてはまぁまぁか」
「これでまぁまぁなんですか?」
「だが売り物にはなるくらいには味はいい。煙が落ち着けばもっと旨いだろうな」
「そうですね、アイテムボックス持ちを連れて行って売りに行きたいくらいです」
「そうだな……だが人数がなぁ」
「人員の問題がありますねぇ」
「野菜等も随分と取れるようになって他国にも売りに出せるようになってきましたし、備蓄倉庫にもある程度2年は持つ程度の麦などの備蓄も出来つつあります」
「だが、それらを売るにしてもアイテムボックス持ちが……いや、アイテムボックスを作る事が出来るな」
「「「えっ!?」」」
「時間を止めるモノと普通のモノと作れるようだ。少し箱庭に行ってくる」


 そう言うと俺は箱庭に入り、ステータスを呼び出すと【ロストテクノロジー】を開き作れるアイテムの中にアイテムボックスを探す。
 本当に作れるかどうか不安だったからだ。


「一応あるな。作ってみるか」


 そう言うと普通のアイムボックスと時間を止めるレアな方のアイテムボックスを作り、鑑定が出来ればなぁと思いながらも自分のスキルを調べる。
 すると、鑑定が生えてきていたのでラッキーだと思いつつアイテムボックスを鑑定すると、時間を止めないが大量に入るアイテムボックスと、時間を止めて大量に入るアイテムボックスが出来た事が分かった。
 更に詳しく調べると、両方中にはいるアイテム数は1000と出ていた。
 つまり、1000個のアイテムは入るという事だ。
 ならばと只管アイテムボックスを作り続け、レアが300個作れた所で止めると、普通のアイテムボックスが600個、レアが300個できていた。
 つまりだ。


「冷蔵庫問題は解決したな」


 冷蔵庫を作ろうとすると魔石の消費量と鉄の消費量が凄かった。
 鉱石類や木材類、布となる綿花等は普通のアイテムボックスで管理させるようにし、仕事が終われば持ちだし禁止としよう。
 野菜等はレアなアイテムボックスを使いアイテムの時間を止めれば備蓄は更に増えるだろう。
 ドンドン作っても問題はない。
 砂糖などの劣化しやすいものもレアなアイテムボックスに入れて行けば問題なくなる。
 麻袋に入れてアイテムボックスに入れて行けばいい。


「よしよし、何とかなりそうだ。これがあれば更に販路が広がる」


 チートアイテムだが、作る野菜が駄目になるよりはいい。
 それに、シュノベザール王国で運送業をしている運送業者に高値で売りつける事も場合によっては可能になるし、国内を回る運送業を立ち上げる事も可能になる。
 いい事尽くめにも見えた、が、しかし――。


「……アイテムボックスは駄目だ。チートすぎる。今出すと色々パワーバランスを崩すな」


 俺はやはり、色々考えた上でアイテムボックスは封印する事にした。
 パワーバランスを崩せば戦争にも発展する。
 過ぎたるはなんとやらだ。
 溜息を吐きつつそれらをアイテムボックスにすべてしまい込み箱庭から出ると、ワクワクしている皆には悪いが――アイテムボックスはパワーバランスを崩す恐れがあるとして封印したことを告げた。
 無論不満は出たが……。


「今出るには余りにも危険すぎる。アイテムボックスを求めた戦争も起きる可能性がある代物だ」
「「「そんなに!?」」」
「でも分かる気がするわ……そんな便利なモノがあったら欲しい人は狙ってでも欲しがるでしょうね」
「そういう事だ。殺してでも奪い取ると言う事になりかねん」
「殺してでも……」
「それに、今まで通りの不便さも捨てがたい。だからこそ知恵が出せて知識も増えると言うのも大事な事だ。チートなアイテムに頼る事も今後出て来るかもしれないが、今は鞄タイプのアイテムボックスだけは封印だな。普通にアイテムボックス持ちを雇えたらラッキーくらいにしよう」


 そう言うとロスターニャは「それが一番いいと思うわ」と口にし、シュリウスも「兄上がそう決めたのでしたら従います!」と口にしてくれたことでホッと安堵した。
 だが丁度その頃、シュノベザール王国の魔道具ギルドでやっと――やっと【冷蔵の魔石】と【冷凍の魔石】が出来上がり、【木製の冷蔵庫】の完成と馬車に取り付けてある一定の冷たさを保つ事が出来るようになったと言う知らせが届き、やはりこういう頑張りがあるからこそ、チートに頼り過ぎるのは駄目なのだとホッと安堵した。
 無論、自分で使う分には問題はないだろうが、必要に迫られる以外、誰かにホイホイとアイテムボックス等配るのは良くない。


「これで国内の冷蔵庫事情は何とかなりそうだな。冷凍庫が別々なのが残念だが」
「でもまず一歩でしょう」
「俺の【ロストテクノロジー】に頼らなくても済む様になるのは本当にいい事だ。【手押しかき氷器】の設計図は幾らで売りつけようか」
「もう、兄上ったら」
「貴族連中が煩いからな」


 そう言って苦笑いしながら口にし、その後頼んでいたものが出来た事への報奨金と同時に、【手押しかき氷器】の設計図を売りに出した所、報奨金全てで【手押しかき氷器】の設計図を購入してくれた。
 無論マージンは俺が貰うが、良い加減俺用の金が溢れかえりそうだ。
 ここらで何か別の事に金を使いたい。
 そう思始めつつ、その日のうちに遠隔連絡用魔道具でアツシ様に【燻製が出来ましたので夜、拠点でお待ちします】と手紙を書いたその日の夜――。


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