【☆完結☆】僕の妻は異世界人で、世紀末覇者のようなマッスルボディの可愛らしい妻です。

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
25 / 33

26 僕と妻とで圧倒的ザマァを仕掛ける③

しおりを挟む
救護室へ入り、叩かれた頬の為にポーションを飲むと痛みも赤みも消え、休憩室へと入るとマリリンは世紀末覇者の顔に似つかわしくなく、ポロポロと涙を零し始めた。


「マリリン!?」
「カズマ……私は悔しい!!」


――マリリンの悲痛な叫び声だった。
今まで涙を見せたことのないマリリンが、大粒の涙をポロポロと零し、兄のジャックさえも慌てたが、マリリンはカズマに向き合うと、骨が折れない様に抱きしめた。
それは……とても慈しみを持つ優しい抱擁。
カズマも驚き固まってしまった。


「私といるばかりに、カズマが傷ついていると思うと私は悔しい! 私がこんな見た目であるが故に、カズマが不幸になるのが悲しい!」
「何を言うんだマリリン!」
「私がもっと普通の女性らしい見た目ならば、こんな苦労は無かったかもしれんのだぞ!」
「馬鹿な事を言うんじゃない」
「しかし!」
「僕はマリリンがマリリンであるからこそ、君が君であり続けてくれるからこそ、心の底から大事にしようと、愛したいと思っているんだぞ!」


カズマの言葉に両目を見開くマリリンに、カズマは目を反らせる事無くマリリンの目を見つめた。
――確かに見た目は世紀末覇者。
どう足掻いても、普通の令嬢等とは言えない。
だが、普通の令嬢ではない代わりに、マリリンにしかできない事が山ほどある。
マリリンにしか感じることのできない悲しみがある。
強いからこそ、強く生まれたからこそ――守ろうと必死に手を伸ばすことが出来る。


「君は君だ。そして、僕の唯一無二の妻だ。何を恐れる、何を怖がる。僕が傷つくことより、マリリンが自分を嫌う方がずっとずっと嫌だ。マリリンが僕の言葉を信じてくれないのが嫌だ!」
「――っ」


カズマの必死の言葉に、マリリンは涙を数滴落すと震える両手でカズマから手を離そうとした。
だがカズマはその手を思いきり引っ張り、マリリンの唇を奪った。
それは直ぐに離れるものだったが、マリリンを驚かせるには充分すぎる衝撃であった。
顔を真っ赤に染めたカズマは、マリリンから目を離さず言葉を繋げる。


「僕は愛した女性にしかキスはしない」
「――……」
「まだ信じられない? 僕が傷つくのが嫌だというのなら、僕だってマリリンが傷つくのは嫌だ……一緒に、一緒に幸せになりたい。どうしたら僕の気持ちが伝わる……?」


カズマの苦痛に歪む表情に、マリリンは涙を乱暴に拭うとカズマを折れない程度に強く抱きしめた。
もう二人の間に言葉なんていらない。
――愛し合っているのだから。


「……ありがとうカズマ」
「うん……」
「私は私のままで……良いのだな?」
「ありのままのマリリンが一番大好きさ」


暖かい抱擁。
隣で涙を流すジャックとマイケルを他所に、カズマとマリリンは再度口付けた。
もうお互いに不安なんて無い。


「もう、化粧がグチャグチャじゃないか」
「ははは! 困ってしまったな!」
「全く、化粧も崩れたことだし、ギルドに先に帰っちゃおうか」
「そうだな、ファーストダンスが踊れなかったのは残念だが、これは致し方ない」
「いつでも何処ででもマリリンと踊るさ。お互いに年寄りになってもね」


そう約束するとマリリンは嬉しそうに笑い、僕たちは先にギルドに帰る事にした。
救護室の人間に先に帰る事を伝えると、快く了承してくれたし、後で陛下にも伝えておくと言ってくれた為、心置きなく馬車に乗り込みギルドに帰る。
繋いだ手は二人の愛情を強くしたようにも見え、ジャックとマイケルは更に泣いた。



◆◆◆◆



――翌日、城に赴いたカズマに陛下はイザベラ王女の王国との断交を発表。
夜会での出来事がきっかけとなり、今まで断交していなかった国々も次々に断交し、もう国として成り立つことは難しいだろうという結論に至った。
最も決め手になったのは【魅了アイテム】の出どころであった。
各国との繋がりが減ったかの国は、魅了アイテムを大量に作る事で他国の貴族に売り外資を得ていたのだ。
それが王配の口から話された事もあり、かの国とのあらゆる取引が無くなった。
王配はイザベラ王女から保護される形でムギーラ王国に留まることが許され、長らく帰っていなかった実家に身を寄せることになったらしい。

最後まで抵抗をつづけたイザベラ王女だったが、彼女はその後、民衆の暴動により捕らえられ、斬首刑となったのは――後に知る事になった。
こうして、一つの国が亡くなったのである。


さて、マリリンの実家とその後のマルシェリティたちの事だが。
マギラーニ宰相がレディー・マッスルに赴き、事の次第を教えてくれた。
マルシェリティはやはり男遊びが激しく浪費家であった上に、既に純潔ではなく、子供も一度産んでいた事が分かった。
それも、平民の男との間の子供だった故に、生まれた子供は国の教会で育てられているのだと言う。
こんな醜聞を外に出すことも出来ず、尚且つ第一夫人としては価値もない。
故に、マギラーニ宰相がマルシェリティをカズマの第二夫人にと言われた時に、是が非でも貰ってもらおうと思ったらしいが、カズマの強烈な拒否により断念。
マルシェリティは規律の厳しい修道院に入れられることが決まった。


例え見目麗しかろうとも、心根が腐っていれば、他人を見下し馬鹿にし続けていれば自分に帰ってくる。
――それが分かる二人の女性の人生であった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...