召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

寿明結未(ことぶき・あゆみ)

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第二章 女王陛下からの依頼で、獣人の避難所を好き勝手してやります!!

61 オスカール王国(水野side)

 ――オスカール王国(水野side)――


 あれから何度も魔物討伐隊と一緒に井上も参加して頑張ってきた。
 王太子は相変わらず優しいし、特別なお菓子もくれる。
 甘さは無いけど、嬉しい逸品だった。
 ああ、甘味が食べたい……。
 思う存分美味しい物が食べたい。
 贅沢がしたい。
 遊んで暮らしたい。
 でも、勇者だから我慢しないといけない。
 菊池みたいに死ねば元の世界に戻れるのかな……。
 そんな事を悶々と考えている日々の中、井上は酒を飲んでご満悦。
 悪い事を全て忘れられるらしい。
 未成年で飲むなんて最低。
 けど、そうも言ってられないのよね、この世界。
 溜息を吐いていると、急にドアが開き王太子が入ってきた。


「どうしました?」
「うん、父上から聞いたのだけど、今日晩餐会が開かれるらしくてね」
「晩餐会ですか?」
「ノスタルミア王国の女王陛下がお越しになる。その際勇者である二人を紹介したい」
「分かりました。ドレスはどうしましょう」
「前に贈ったオレンジ色の奴があるだろう? それを着るといい」
「分かりました、直ぐ来られるのでしょうか?」
「ああ、後一時間後だと聞いている。急ですまないね。父上も急に隣国の女王を呼び出すなんて……」
「井上はお酒が抜けてないのでは?」
「先ほど酒を抜く薬を飲ませたから大丈夫だろう。準備を進めてくれ」
「畏まりました」


 そう言うと王太子は出て行ったけれど、ノックを忘れる程急いでいたのかしら?
 侍女に手伝って貰いオレンジのドレスに身を包むと、更に侍女がやってきて会場へと案内される。
 正直この世界の料理は食べた気がしない。
 慣れて来たけど味が薄いし……ああ、調味料が恋しいよぉ。
 甘いお菓子が食べいたいよぉ。
 先生たちはどこかで野垂れ死んでるだろうし、頼れる人もいないし。
 そんな事を思いつつ晩餐会会場へと到着すると、指定された椅子に座り待つ事数分、美しい銀の髪を靡かせた、とんでもなく綺麗な女の人が入ってきた。
 アレが隣国ノスタルミア王国の女王陛下。


「ノスタルミア王国の女王陛下、よくぞお越しくださいました」
「ええ、急なお呼びに驚きましたわ」
「ささ、座ってまずは乾杯を」


 そう言って余り得意じゃないワインを手に取り乾杯したけれど、女王陛下は匂いだけ嗅いで口を付けなかった。
 確かに美味しい物ではないけど、そこまで普通露骨に嫌がる? 
 そう悪態をつきつつ、料理を一口食べては「もういらないわ」と断っている。
 これにはオスカール王国国王陛下も目をパチクリしている。


「お口に合いませんでしたかな?」
「ええ、我が国ではとても商売がうまい王家御用達の店がありまして、そこで調味料や甘味等は全て取り揃えておりますので」
「それは誠ですか? 是非オスカール王国もあやかりたいのですが」
「いえいえ、そのお店の方々はオスカール王国をとても恨んでいらっしゃいますので無理でしょうね」
「と言うと?」
「あなた方が『ハズレ』と言って追い出した、アツシさんとカナエさんですよ。ああ、今は新しい仲間も増えて、名前は何と言ったかしら……キクチ」
「「菊池!?」」


 女王陛下の言葉に私と井上が声を上げると、ニッコリ微笑まれて目を反らされた。


「その三人が店を切り盛りしていて、とても繁盛していますわ。それこそ理想郷のような場所も持っていますから、野菜に果物に、お菓子類に御酒類、美容系に高級楽器屋も出来ましたわね」
「何を、あの二人はハズレで」
「とんでもない。レアスキル持ちですよ、あの二人は」
「な!?」


 やっぱりレアスキル持ちだったんだ!!
 くそっ! 追い出す前に見せて貰えば良かった!!
 こっちは貧乏くじ引いたようなものじゃない!!
 しかも御菓子類!?
 行ったらタダで食べさせて貰えるの!?


「それにキクチもレアスキルを持っていますね。三人でお店を切り盛りしながら沢山の従業員と暮らし、大きな屋敷に住んでますよ」
「ってことは、先生はお金持ちってこと!?」
「こら、水野はしたないぞ」
「良いじゃない。先生が生きていたってだけでも十分ラッキーなんだから! それで女王陛下、先生は独身ですか!?」
「結婚相手はもう既にいるようですよ。カナエさんと仲睦まじくしていらっしゃいます」
「カナエ程度で? ハッ!」


 カナエ程度で満足するなら私が行けばイチコロじゃん? チョー余裕。
 ってことは、一度先生に会いたいって言えば女王陛下と一緒にノスタルミア王国いけんじゃね!?


「あの、私も先生にまたお会いして謝罪したいんですけど、一緒に連れて行ってくれませんか?」
「俺も先生に謝罪したいです!!」


 そう涙を潤ませて言えば大体OK貰えるのよね。
 そのまま居ついて贅沢三昧な日々よ。
 こんな所でくすぶってたら発狂するわ!
 先生たちを顎で使って好きなだけ贅沢してやるわ!!
 ついでに先生はお金持ちっていうし、結婚しちゃえばいいわね!
 一生安泰? カナエは奴隷にして言う事聞かせればいいし!?
 ちょー余裕! この勝負勝ったわ!
 大体王太子も結局先生のイケメン度と比べると平凡なのよね。
 なんかパッとしないっていうかー?
 そう思っていると井上は声を上げ始めた。


「そもそも、なんで菊池はノスタルミア王国に先生がいるって知ったんだよ! どうやって行ったんだよ!?」
「それもそうね、どうやって行ったの?」
「それは私も分かりかねます。ですが、彼はとても運が良かったのでしょうね」
「俺と水野を捨ててまで先生たちを追いかけた気持ちは分からなくもないけどさー? 俺だって先生にちゃんと謝って」
「謝った後は、お二人は無論、この国の勇者ですから帰るのですよね?」
「「え?」」
「君たち二人はこの国の勇者だ! 例え先生に会いたくともノスタルミア王国には行かせられない!」
「はぁ!?」
「何でだよ!! なら先生を返せよ! そしたら万事解決だろ!」
「何いってんのよ! ノスタルミア王国の先生にあってこそでしょ!?」
「そうだけど……あ~~も~~イライラする!!」


 そう言って酒を呷る井上を女王陛下は冷めた目で見つめ、オスカール王国の陛下は井上と私を晩餐会会場から出そうとしたその時――。


「お二人共、薬物中毒ですね」


 そう言われて、意味が分からず女王陛下を見つめた。
 薬物中毒? どういう事?


「自分たちの言う事を聞かせる、そう言う植物がこの国には多く生えているという話です。それは無味無臭でお酒やお菓子に入れると依存症になるとか」
「ノスタルミア女王! ありもしない話を、」
「私の千里眼を疑いますか?」
「ぐっ」
「あなた方が出した料理は全てそれが入ってましたよ。それに、【ストレリチア】……ああ、アツシさんとカナエさんたちの持っている数々の調味料にお菓子を食べた所為か、どれも味が薄くて物足りなくて」
「――分かります!! 料理を食べた気がしないんです!」
「俺もです!! もうなんか無理やり入れてるって感じで!」
「お可哀そうに……あなた方がお二人を【雑魚】と呼んで蔑まなければ、運命も変わっていたんでしょうが」
「だから謝るって言ってんじゃない! 聞こえてないの!?」
「こら水野!! 相手は女王陛下、」
「黙っててよ! フツメンよりイケメンの所に行きたいのは女として当たり前の事でしょ!?」
「フツメ……?」
「私達二人をノスタルミア王国に連れてって! そして先生に会わせて!」
「会って謝罪するだけで物足りないでしょう?」
「それは……」
「貴女はカナエさんとは随分と違いますね? とても貴女みたいな魔女のような人間、我が国には要りませんわ」
「なっ!」
「じゃあ俺は!?」
「井上!!」


 そう言うと女王陛下、もういいや、オバサンは井上をジッと見つめてから微笑むと、にこりと笑って首を振る。


「二人共、全く反省をしてませんね?」
「反省してるって」
「口では何とでも言えますものね? キクチは本当に心から反省していましたよ?」
「「……」」
「最初に裏切って、反省も一切せず、寄生するつもりですか? 何と都合のいい頭だこと」
「もういい!」
「クソ婆!!」
「こら二人共!!」
「これがオスカール王国の勇者ですか。笑いが出ますね?」


 こうして私と井上は晩餐会場を後にすると、私の部屋で話し合いをする事になった。
 菊池はどういう経緯でノスタルミア王国に入ったか知らないけど、入れる方法はあるということ。
 ただ、私たちは殆ど無給で働いているからそんなにお金がない。
 侍女を呼び、ノスタルミア王国への手っ取り早い入国はどうするのか聞いたら、ノスタルミア王国までの道を延々と進み、入国料に一人金貨20枚取られるという。
 20枚も!?
 そう声を上げそうになったけど何とか抑えた。
 ジュノリス大国なら、入国料は金貨1枚らしい。
 その上でノスタルミア王国に行けば、更に金貨1枚で済むのだという。
 問題は――移動中の危険と食べ物と飲み物。
 問題は山積みだった。


「あのオバサンが連れて行ってくれればいいのに」
「なんてことねーよ、簡単簡単!」
「っていうと?」
「ノスタルミア王国行きの馬車にコッソリ乗っちゃえば?」
「それ、罪に問われない?」
「黙って入ればOKだって」
「むう。その手もあるか」
「それに俺~。見つけちゃってるんだよねー」
「なにを?」
「一杯馬車が行ったり来たりしてる店。ボルドーナ商会っていうんだけどさー。そこでノスタルミア王国行きに乗れば」
「入国出来ちゃう!」
「流石ね! その方法で行きましょう!」
「でも、何時ノスタルミア王国行が来るかはしらないんだよねー。まー乗っちゃえばどっかつくっしょ」
「その間の食べ物と飲み物とかは確保しとかないとだけど。我慢したくないなぁ」
「我慢は体の毒だよねー」
「ま、ボチボチ動き出しましょ。楽をする為にね」
「楽は大事だよね。モンスター倒すの飽きたしー」
「新しい刺激は必要よ」
「美味い飯もな!」


 こうして私と井上はコッソリ準備を始めた。
 街の散策をするついでにボルドーナ商会を見てはノスタルミア王国行きかどうか聞き耳も立て続けた。
 必ず楽な生活のある場所に行ってやる……。
 こんな国真っ平よ。

 あれから王太子は会いに来なくなったし動きやすくてラッキーだった。
 井上と二人、毎回ボルドーナ商会に足を運んだある日――。


「さて、では私は先に戻りますからね」
「はい、ボルドさん」
「ノスタルミア王国に戻ったら、美味い酒でも買うか!」
「そろそろ雨が降り出しそうだし早めに帰ろうぜー」


 その言葉を聞き逃さなった私と井上はコッソリ馬車の荷台に乗り込み、息を潜め……馬車はゆっくりと走り出した。
 ノスタルミア王国のオバサンが来て三か月目の、念願の達成だった――。

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