妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
34 / 73
第二章 新天地、ムギーラ王国にて!!

第35話 カズマとマリリン、ナシュランと対峙する

しおりを挟む
 ――翌朝。通いなれた王城へ向かい王太子の執務室へ呼ばれたので向かう。
 陛下は「ナシュランが気に入らなければいつでも言って欲しい」との事だったので、マリリンが笑顔で頷きつつ、僕は王太子の部屋へと向かった。


「ダリュシアーン様。カズマです」
「入ってくれ」
「失礼致します」


 こうして中に入ると、王太子としての仕事をしながら書類の確認に追われるダリュシアーンの姿が目に入る。
 陛下はダリュシアーンに仕事の半分を任せている様だ。


「おはようカズマにマリリン。今日は新しい農業に関する草案を出す予定だったね。直ぐに陛下の元へと向かうが、まずは紹介させて欲しい。一応現段階では右腕として働いて貰っているナシュランだ」
「初めましてナシュラン様」
「ミスリルの匂いがするなぁ?」


 マリリンの鼻が何かを察知。
 ミスリルの匂いがするという事は、短剣か何かを忍ばせているという事だろう。
 王太子と二人で仕事をしてるのに、ミスリルの短刀を持って仕事をするのは確か御法度の筈だ。


「自衛の為にミスリルの短刀は持っていますが」
「ダリュシアーン様が許可を出しているのなら構いません」
「そうだね……。一応注意はしたんだけど自衛の為だと言ってきかなかったんだ」
「はぁ……。その為に見張りの兵士が増えたんですね」
「そうなるね」


 ダリュシアーンの部屋に見張りの兵士が二人増えていたのはそういう事か。
 どうやらナシュランは全面的にウエルカム……と言う事ではないらしい。


「現段階と言う事は、ヘマをやらかせば頸が飛ぶという訳だな」
「物理的に飛ぶかはナシュラン次第だけどね」
「物理的に頸から上が無くなるかどうかは、今後見極めたいところですね。下手に僕に攻撃を……とでも思っているのなら、妻の拳が顔面を破壊しますよ」
「な、なにを仰る! 歩く狂気……いや、凶器を持っているカズマ殿には負けますよ」


 そう醜い笑みを浮かべながら口にしたナシュランに、僕はスン顔でにこりともせず口を出す。


「我妻を褒めて戴けるとは思いもよりませんでした。マリリンの実力あれば、人ひとり、ミスリル程度の武器程度ならば紙切れ同然ですからね。実に素晴らしい力を持つ愛しの妻ですよ。しかも僕の護衛としてついてきてくれる……。四六時中見張っててくれるなんて、僕にとってはご褒美の様なものですよ」


 そこまで早口で伝えると、ナシュランは目を見開いて驚き、ダリュシアーンはクスクスと笑って声を掛けてきた。


「ははは! カズマ殿は妻に一途だからね」
「恐れ要ります」
「では挨拶も済んだことだし、陛下の元へ移動しよう。カズマ殿も持ってきた草案はマギラーニ宰相が絶賛していた。とても興味がある」
「はい、幾つかの草案を持ってまいりました。直ぐ陛下の元に向かいましょう」


 こうして俺とダリュシアーンは先に部屋から出て、その後ろにナシュランとマリリンが続く。ナシュランの殺気は感じていたが、マリリンの威圧の前では羽虫と同じだ。
 陛下の執務室の入り、いざプレゼンの為に用意した紙を陛下、宰相、ダリュシアーン用に手渡し、自分のも用意してプレゼンを始めると、『脱穀機』と、水車を使った籾殻外し、そして粉までの工程を水車の力を利用して……と言う方法を伝え、その図案も別途紙に書いて用意してある。


「なるほど、今は全て稲を取る時は手作業だが、この脱穀機を使えばまとめて稲穂が取れる上に無駄少なくなる」
「そうですね、地面に叩きつけて取るだけよりは、各段に上がるでしょう」
「そうか、そこまで国民の生活、いや、麦の国なのにその大事な麦の事を考えてまでと言うのは考えがいたならなかった。これは早速会議に回したい」
「畏まりました。またこの脱穀機に関しては、城の魔導具師に依頼して、風の魔石等で改良が出来なかどうかもお願いしたいです。もしそれが出来た場合、その脱穀機をムギーラ王国からの輸出品として考え、大きな利益が出るでしょう」
「素晴らしい!!」


 そこまで語ると、ムギーラ国王は目を輝かせて褒め称えてくれた。
 ナシュランは何がどう違ってくるのか理解していないようで、「脱穀機? 水車を使う?」と頭が混乱していたようだ。


「手作業に勝る仕事はないですが、粉にするまでは重労働ですからね」
「ああ、そう言う報告は来ている。水車を使った自動化があるとは思わなかった。
「また、籾殻も捨てるには惜しいんですよ。火をつけるのにも最適ですし、田畑の栄養になるという点でも中々に魅力的です」
「ほうほう」
「藁は安く民や冒険者に卸して火種にして売っても良いでしょう」
「ふむ、直ぐに手配しよう」


 こうして別途備考欄に書いていると、「使い道が沢山ありますね」とダリュシアーンは喜び、国の財政が更に潤うのだから当たり前だろう。
 すると――。


「ただのゴミが金に変わるのか……?」
「ゴミではなく資源と言います」
「そ、そうか」
「ははは、こうして国のゴミだと思っていたものが、国を潤すための『資源』として再確認させられる。だからこそカズマの力とは偉大なのだ」
「そうですね」
「……」


 タダの人が見ればゴミと見間違う物でも、俺からすれば資源にもなりうる。
 その視点の違いがきっとムギーラ王とダリュシアーンには堪らなく楽しいのだろう。
 マリリンは得意げにしているし、ナシュランは「ゴミが資源に? ゴミが金に?」と困惑している様だ。


「我が夫は着眼点が普通とは違う! そこがまた魅力的なのだがな!」
「そう言ってくれると嬉しいよマリリン」


 マリリンにそう言われると嬉しくなる。
 彼女の故郷で無ければ捨ておいたかもしれないが、ここまで手広く僕も手を出したなら、最後までは付き合うつもりだ。一応は。
 ダリュシアーンにはそれだけの価値を見出している。
 問題があるとしたら――。


「ゴミが金になるのなら、実に素晴らしいな!! やはり金に勝るものはない!!」
「ええ、その金で今度はしたいと思う事がありますので、ムダ金を使う気はありませんが。一々貴族を集めてパーティーを開くとかですね」
「っ!!」


 そう突っ込みを入れると、レディー・マッスルの諜報部が仕入れた情報で釘をさす。
 未だに貴族を集めて虎視眈々と王位を狙っているナシュラン。
 その意味も込めて、知っているぞ? と警告を鳴らす。
 無論この事はムギーラ王とダリュシアーンにはリーク済みだ。


「身の程をわきまえない馬鹿と言うのは、どこにでもいますからね」
「気をつけねばなりませんね」
「ああ、頸がいつ飛ぶか分かったものではないからな」
「――っ!!」


 こうして牽制もしながら話は進み、僕の進めた脱穀機は城お抱えの魔導具師にも改良をして貰う事も決まり、国は更に発展するだろうと少しだけ安心した。
 国が潤えば民が潤う、そう信じて僕は動いてきた。
 しかし――僕の出したこの草案は、後に想わぬ方向へと話が進むのである――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

処理中です...