石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
101 / 106

101 呪いが解けて絶望に叫ぶ男達と、伝説の箱庭師、リディア・ダンノージュの話。

しおりを挟む
「無事に作り終えたから早速持って行こうかね。運んでくれるかい?」
「ええ、良いですよ。外にはドマ達も待っていますし」
「じゃあ、一緒に行こうかねぇ」


 こうして私たちは再度鉄の国サカマル帝国の避難民が集まる難民キャンプへと向かったのであった。そして――檻に捕えられた男性の前に五行にクリスタルを置いた途端、まばゆい光が発せられて次々男性達は倒れて行った。
 光が収まると彼らの身体から黒い靄が吹き出し、クリスタルに目掛けて矢のように飛んだが、金色に輝く結界の前では無意味だったようで弾かれては塵になって行く。
 男性の人数分の矢を結界が弾き、クリスタルに傷一つ付いていない。


「ユリ」
「はい」
「あの結界は金色をしているんだね。何故だい?」
「何故でしょう?」
「まぁいい、お前さんが言うのが嫌なら聞きゃしないよ」
「ふふふ」


【聖女】と言うスキルは存外結界との相性がいいのも知れない。
 内緒にしなくては……。
 そう思っていると男性達は起き上がり、一瞬呆けてから「何故こんな場所に!?」と叫んでいる。
 そこにサヤお婆ちゃんが歩み寄ると――。


「アンタらは呪われていた時の記憶はあるのかい?」
「の、呪い!? アレは呪いだったのか!?」
「アレとは?」
「俺達は結婚する時に皆黒い靄に突き刺された夢を見たんだ……それが何だったのかは分からないが、もしかしてアレが呪いだとしたら……つ、妻は!?」


 そう叫ぶ男性達に、サヤお婆ちゃんは首を横に振った。


「もうアンタ達とはやっていけないと、つい最近アンタ達も離婚届けに判を押しただろう?」
「「「あ……」」」
「もう修復は不可能だよ。また、このエリアにいる事も出来ない。アンタ達は然るべき働き場所で隔離する事が決まっている」
「「「か、隔離……」」」
「もう妻だった者にも会えない、子にも会えない。鉄の国サカマル帝国がどうなるか次第だが、それ次第でアンタ達は鉄の国サカマル帝国に帰される。それまでは己のスキルにあった場所に運ばれて隔離されるって事だ」
「ぁ、ぁぁああ……」
「恨むなら呪いを恨みな。400年前の最後の女王を殺した家臣たちを恨む事だね」


 そうサヤお婆ちゃんが告げると男性たちは自分の元妻や子の名を泣きながら叫んでいたけれど、彼女たちや子供が出てくることは無かった。
 これにはロウさんもカヒさんも胸を痛めているが、どうしようもない事でもあった。
 小さく「すまない」「これからは大事にするから!」と謝罪するので精一杯で、彼ら兵士達が檻に付いた台車を動かしながら難民キャンプを去って行った。
 今後、暫くは貸出と言う形でクリスタルを貸す事になったのだが、その後もクリスタルはまずやってきた人たちを通らせて倒れた人たちは呪われていたと言う結果になったそうだ。
 お陰で離婚すると言う事は無くなったようだが、「もう少し早く呪いだと気づいていれば違ったねぇ」とサヤお婆ちゃんは言う。


「でも、元々の性格と呪いって区別付かないものね」
「それは言えているねぇ」
「それで、彫刻師や製薬師のスキルを持つ方は居たんですかねぇ……いえ、女性ですが」
「子供に彫刻師が生まれればスキルを封印するのが当たり前だからね。彫刻師は居ないと思うけど、製薬師なら製薬ギルドが雇うだろう?」
「なるほど」
「付与師と彫金師はそれなりに居たので、うちで雇うように今手続きをしています」
「そうなのね」
「彼女たちと子供たちが住む家も必要でしたので」
「なるほど」
「箱庭師は居なかったのかなぁ」


 そう口にしたのはスギだ。
 スギは箱庭師も持っている為、仲間は欲しいのだろう。
 すると――。


「箱庭師は国が管理するから来ないと思うねぇ。鉄の国サカマル帝国じゃ箱庭師は貴重だ。と言うか他の国でもだよ? この国くらいじゃないかねぇ。余り要らないように扱われるのは」
「そうなんですか?」
「箱庭師に畑を作って貰うのさ。食糧事情だね」
「ああ、なるほど……」
「僕みたいな箱庭は却って珍しいのかな」
「そうだねぇ……見た事がないねぇ」
「私たちは助かっているし、私も簪作って貰ったりして助かっているけど、スギは箱庭師の仲間が欲しいの?」


「スギの箱庭好きだけど」と微笑むとスギは照れていたが、実際木を選んで木製の簪も作って貰ったのだ。
 石は天然石を使って可愛いのを作って貰ったのだが、結構お気に入りで使っている。


「箱庭師の仲間が欲しくないって言えばウソになるけど、どんな感じなのかなーって」
「ナカース王国の伝説の箱庭師の話聞いたことないかい?」
「ある!! 凄いよね! 【リディア・ダンノージュ伯爵夫人】でしょう!?」
「そうそう! 【伝説の箱庭師!】それに近いんじゃないかい? 彼女の箱庭はとても広くて木々や色々な物があってとても広くて、その上温泉がある!」
「そんなに凄い箱庭師がいるんですか!?」
「ああ、ロストテクノロジーを使って国を発展させた一人でもある。今は夫であるカイル・ダンノージュと共にダンノージュ伯爵領を切り盛りしてるって話だけど、生粋の引き篭もりらしくって外には殆ど出ないらしい」
「引きこもり……」
「それにしても凄い箱庭を持ってるって噂さ」


 そう言ってミモザが語るとスギも目をキラキラとさせて「凄いよね~」と口にしている辺り、本当に凄い人なのだろう。伝説って言われているものね。
 それに【ロストテクノロジー】はテリサバース教会が保護しているって話だし、そこから漏れた人なのかも知れない。


「最初は小さい店から夫と初めて、店を大きくしていったって話だよ」
「へぇ~~……凄い方がいるんですね」
「アタシから見ればユリも相当だと思うけどね」
「エンジュ兄さんが言ってたわ。借金を背負ったガーネットを助けた上に此処まで発展させたのはユリお姉ちゃんのお陰だって」
「とはいえ、伝説には程遠いですが」
「ううん、医療用の眼鏡とかサングラスとか補聴器は今やダイヤ王国必須のアイテムだし、鉱石の国ノシュマン王国も雪の反射で目をやられる人が多いから、ガーネットは他国でも【医療に貢献する素晴らしい店】として有名なのよ?」
「そうだったんですか!?」
「それに【体感付与】の二種類は子供やお年寄りにも優しいって評判だし、【下がる付与】だと子供の汗もが減ったとか、ご老人の熱中症が減ったとか結構言われてるの」
「【上がる付与】の場合は霜焼けや凍傷で苦しむことが少なくなったって話だね。服や手袋にも今は付与されて売りに出されているって話だよ」
「ほああ……」
「ユリの思いついたものがそうやって人の助けになっている。【体感付与】二つは王家からも【医療用付与】にすべきって話も上がっているんだよ」


 思わぬ所で凄い事になっていた。
 また、【速乾付与】に関しては木材を乾燥させる為に重宝されているらしい。
 家を建てるにしても木を乾かさないといけない為、その為に使われているのだとか。
 通りで付与関係のお金がバンバン入って来るなと思っていたけど、まさかの事だった。
 そうか、医療用か……。


「実は、鉄の国サカマル帝国が落ち着いたら作りたい付与があるんですよね」
「へぇ……」
「それは気になるな。どんな付与なんだ?」


 そう声を掛けて来たのはロウさん。カヒさんも興味津々でこちらを見ている。
 鉄の国サカマル帝国は雨の国だ。
 常に湿気を纏っているその国は湿度や湿気に悩まされる事が多いと聞いている事を加えて離した上で――。


「それを楽にする付与ですね。まだ詳しくは言えないので企業秘密です」
「それは……是非とも欲しいね!!」
「鉄の国サカマル帝国は湿気と湿度も高ければ少しヒンヤリする日と暑い日が両方来るんです。【体感付与】は季節に応じて両方欲しいですね」
「そうだね」
「反対に元金の国シャース王国は乾燥がきついですからね。そこを何とかする付与も作りたいです」
「ユリは色々考えるなぁ。我々も負けていられないな、カヒ」
「そうですわね」


 そう語るロウさんとカヒさんに私も微笑みつつ仕事を行う。
 今はノシュマン王国に何かいいアイテムは作れないかと考案中なのだ。
 無論ダイヤ王国でもだが、大体は出し尽くした感じはしないでもない。
 それだけ生活に不自由していないと言う事もでもあるんだけどね。

 お守りを作りたかったけど、私のお守りは効果が強すぎると言う事で却下になった。
 そこで彫刻師であるミモザさんが作るお守りが今は主だ。
 売り上げもそれなりに店をしている家は購入してくれるし、縁起担ぎだろう。

 宝石の国ダイヤ王国でも、鉱石の国ノシュマン王国でも【医療専門店ならガーネット】と呼ばれるようになってきたこの頃、知名度も上がったと思われていたそんな時期――問題の半年まで後二か月を切ったその時……新たな問題が浮上するのである。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...