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④弱小魔術師、選択する
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朝。
目が覚めると、セドリックが晴れやかな笑顔で待ちかまえていた。
右手にはナイフ、左手にはメイド服。
シンキングタイムスタート。
ぴんぽん。
三十六計逃げるに如かず。
はい正解。
レッツダッシュ。
「おっと、逃がさないよ~」
「げふっ!くそ、離せ馬鹿!」
ベッドから飛び降りてドアに向かおうとした僕を足で引っ掛けて転ばせ、悠々とマウントを取ってきたセドリック。ナイフをタクトのように振りながら無邪気な笑顔を向けてくる。いや、怖い怖い怖い!
「実はさ~、俺、ここで正式に働けるようになるらしいんだよね。ゼフラと一緒の仕事場とか最高じゃね!そんで、リーベルはこの仕事から解放されるんだってさ」
「なんでいきなり……?まあ解放されるのは嬉しいけど、この状況は何?なんで俺殺されかけてんだよっ!?」
「あはは、友達を殺すわけないじゃーん。ちょっと脅すだけだって」
「友達なら脅すなよ!」
「いやさぁ、お偉いさんからちょっとした交換条件出されたわけ。俺がここで働いてリーベルが給仕を辞める代わりに、リーベルにメイド服着せろって」
「……なっ、何なんだその変態すぎる交換条件は!?どうして僕が女装なんかしなくちゃいけないんだよ!?それなら殿下が伴侶を決めるまで待った方が……!」
マシ、と続くはずだった言葉は、頬スレスレで床に突き刺さったナイフによって、短い悲鳴に変わった。
「いつ終わるか分かんないのを待つよりさ~、手っ取り早く終わらせたいんだよね。……いい加減、他の給仕の奴等にも辟易してきた頃だしさ。友達馬鹿にされんの、ストレス溜まるんだよね~」
口元の笑みが深くなるのと反比例して、闇を映したような瞳は全く笑っていなかった。快楽主義者なところがあるセドリックは、恋人であるゼフラを第一に考えている。ただ、友人である僕のことも結構大事にしてくれていて……、つまりはこのまま放っておくと何を仕出かすのか分からない。元々はこいつが元凶だし、忙しいのもこいつがサボるせいでもあるけど、この際置いておく。
冷たい汗が流れるのを感じる。肯定の選択肢を選ぶしか、バッドエンドを回避する道はなさそうだった。
簡素ながらも素材は上質なメイド服を泣く泣く着る僕とは裏腹に、セドリックは楽しそうにナイフを弄んでいた。ちくしょう、何で僕がこんな目に。顔も名前も知らないお偉いさんとやらを本気で恨む。
「……これでリーベルを馬鹿にしてた奴等に教育的指導が出来ると思うと……ふふ、ぞくぞくするなぁ」
「……セドリック?なんか言ったか?」
「んー?なんにも~」
物騒な言葉が聞こえたような気がしたけど……、全力で気のせいにしておこう。
着方に戸惑いながらもなんとかメイド服を着終わった僕を見て、セドリックは「似合ってる」「可愛い」と全く持って嬉しくない賛辞を連発してきた。スカート丈が長いのがせめてもの救いだけど、こんな女物の服が男である僕に似合うはずがないのに。
「今日一日そのカッコで過ごしたら明日には解放だってさ」
「最悪だ……、なんで僕だけこんなことを……」
セドリックを恨めしげに睨んだところで、この状況が良くなるわけでもない。
……仕方ない。腹を括ろう。どうせこれが最後になるんだから。
目が覚めると、セドリックが晴れやかな笑顔で待ちかまえていた。
右手にはナイフ、左手にはメイド服。
シンキングタイムスタート。
ぴんぽん。
三十六計逃げるに如かず。
はい正解。
レッツダッシュ。
「おっと、逃がさないよ~」
「げふっ!くそ、離せ馬鹿!」
ベッドから飛び降りてドアに向かおうとした僕を足で引っ掛けて転ばせ、悠々とマウントを取ってきたセドリック。ナイフをタクトのように振りながら無邪気な笑顔を向けてくる。いや、怖い怖い怖い!
「実はさ~、俺、ここで正式に働けるようになるらしいんだよね。ゼフラと一緒の仕事場とか最高じゃね!そんで、リーベルはこの仕事から解放されるんだってさ」
「なんでいきなり……?まあ解放されるのは嬉しいけど、この状況は何?なんで俺殺されかけてんだよっ!?」
「あはは、友達を殺すわけないじゃーん。ちょっと脅すだけだって」
「友達なら脅すなよ!」
「いやさぁ、お偉いさんからちょっとした交換条件出されたわけ。俺がここで働いてリーベルが給仕を辞める代わりに、リーベルにメイド服着せろって」
「……なっ、何なんだその変態すぎる交換条件は!?どうして僕が女装なんかしなくちゃいけないんだよ!?それなら殿下が伴侶を決めるまで待った方が……!」
マシ、と続くはずだった言葉は、頬スレスレで床に突き刺さったナイフによって、短い悲鳴に変わった。
「いつ終わるか分かんないのを待つよりさ~、手っ取り早く終わらせたいんだよね。……いい加減、他の給仕の奴等にも辟易してきた頃だしさ。友達馬鹿にされんの、ストレス溜まるんだよね~」
口元の笑みが深くなるのと反比例して、闇を映したような瞳は全く笑っていなかった。快楽主義者なところがあるセドリックは、恋人であるゼフラを第一に考えている。ただ、友人である僕のことも結構大事にしてくれていて……、つまりはこのまま放っておくと何を仕出かすのか分からない。元々はこいつが元凶だし、忙しいのもこいつがサボるせいでもあるけど、この際置いておく。
冷たい汗が流れるのを感じる。肯定の選択肢を選ぶしか、バッドエンドを回避する道はなさそうだった。
簡素ながらも素材は上質なメイド服を泣く泣く着る僕とは裏腹に、セドリックは楽しそうにナイフを弄んでいた。ちくしょう、何で僕がこんな目に。顔も名前も知らないお偉いさんとやらを本気で恨む。
「……これでリーベルを馬鹿にしてた奴等に教育的指導が出来ると思うと……ふふ、ぞくぞくするなぁ」
「……セドリック?なんか言ったか?」
「んー?なんにも~」
物騒な言葉が聞こえたような気がしたけど……、全力で気のせいにしておこう。
着方に戸惑いながらもなんとかメイド服を着終わった僕を見て、セドリックは「似合ってる」「可愛い」と全く持って嬉しくない賛辞を連発してきた。スカート丈が長いのがせめてもの救いだけど、こんな女物の服が男である僕に似合うはずがないのに。
「今日一日そのカッコで過ごしたら明日には解放だってさ」
「最悪だ……、なんで僕だけこんなことを……」
セドリックを恨めしげに睨んだところで、この状況が良くなるわけでもない。
……仕方ない。腹を括ろう。どうせこれが最後になるんだから。
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