雑巾うどんの謎

どこでも大佐

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後日談

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ミミは翔子しょうこのマンションに引き取られた。彼女もすっかり翔子しょうこに懐いている。

そして彼女は、なんで雑巾うどんの店に一人ぽつんと囚われていたのかを、私達二人にぽつりぽつりと話し始めた。

 彼女はかつて雑巾うどんで人を騙しては喜んでいた。つまりあれは彼女のイタズラがベースだったのだ。
ところがある日、彼女は運悪く修験者に出会った。そして懲らしめる為にあの空間へ彼女を閉じ込めた。
結局の所、あれは彼女の悪戯がひどすぎて閉じ込められてたというオチだった訳だ。

 彼女を閉じ込めた修験者曰く。1年ばかりこの中で反省したら出してやると。もしくは雑巾うどんを完食してくれる人が現れればそれを待たずに出れると言ったらしい。
けれど、修験者はそのまま戻ってこなかった。何故戻らなかったのかはわからない。そして彼女はあのまま30年あそこに囚われていた。


ぶっちゃけ、わかってしまえば至極単純な話だったのだ。


そしてあの事件から半年が過ぎた。
私は大晦日の夜、翔子しょうこの家でみかんを食べながらこたつの中でウツラウツラしていた。
ミミは初詣用の着物を着せて貰ってご満悦だ。他にも人間でないものが着物を着ているが……それは見なかったことにしよう。

「できたで~年越し蕎麦」翔子しょうこの声が聞こえる。
私はこたつから這い出し、モソモソと起きた。目の前に置かれたそれは……

「なにこれ……ソバじゃない。雑巾うどんじゃん」私は叫んだ。

「大丈夫やって。それ美味しいって。ミミちゃん全面協力やし。さぁ食べてみそ」
ミミがケラケラと笑いながら雑巾うどんを突いていた。
「あ~雑巾部分、お餅で作ったのね」と私
「まぁね。とにかく今年は色々あったからね」と翔子しょうこがいう「色々考えた結果、厄落としにはこれが一番だと思う」

私は恐る恐る雑巾うどんを口にする。
「本当だ美味しい」

遠くで除夜の鐘の音がする。来年こそは良い年になりそうな予感がした。

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