OVERKILL(オーバーキル) ~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

KAZUDONA

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第一章 転生と新世界

3   初期装備は?

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「アリア、どの装備もSランクなんだけど…。しかも補正値えげつないし。どんなもので出来てんの? とりあえずこのバトルドレス。ドレスって、俺男だよ」

 トンデモ素材が使われているのは間違いないだろう。でもそこはちゃんと把握しないといけない。まずはこの服の見た目だ。黒のロングコートにもワンピースのようにも見えるが腰から上は体にフィットした服になっている。大きな襟が左右に2枚ずつ胸の下あたりで止めてある。インナーに白いと黒のシャツのようなものがあり、首の半ばまでの長さだ。左右の肩にはショルダーガード、肩から下はまるでメイド服。肩回りが膨らんだデザインに、袖は長く肘の辺りからフレアーなデザインで袖先にはレースのフリルがご丁寧に付いている。それは腰から下の部分のコートのようなスカートのような部分も同じで裾にはこう、メイドさんのひらひらでギザギザなフリルだ。

 どう形容したらいいのか、ぶっちゃけ俺のファッションに関する語彙力では無理だなあ。腰から下の前方は開いており、身に着けているのはズボンだ、良かった。腰から下のコート部分にはこれまたショルダーガードの素材と同じようなプレートがこう、鱗のように重ねて装着してあり、防御力も高そうだ、イメージ的にステイナイトな剣使いぽい。そして膝下くらいの茶色のブーツ、かかと部分に羽がデザインしてある。これはぶっちゃけカッコイイ。

 全体的に黒を基調としているが、縁取りは赤、レース部分は白だ。胸の上部には硬い金色のプレートが付いている。そして手には指先だけ出ているグローブ。ナックルの部分に超硬い金属のようなものが付けられている、これで殴られたら痛いだろう。見たらわかる、絶対死ぬやつやん普通に。でもね、なんと言っても軽い。凄く伸縮して動き易そうなのだ。

『まあ結構中性的なデザインで作りましたしねー。レースやフリルは私の趣味です! もしMPが枯渇しかけたら女性側に肉体が引っ張られてしまいますから、そんなときでも違和感なく着られますよ!』

 言い切りやがったよ…、ものすげーいさぎよいな。

「やっぱ自分の趣味じゃないか。でもそこまで自信満々で言われちゃあ、いっそ清々しいよ。で、何で出来てるの? てかどうしても女にさせたいのかよ」

『ふふーん、地上で最も硬いと言われるような鉱石素材、オリハルコンやアダマンタイト、ガマニオンに星屑砂スターダストサンドを糸状に加工して縫い合わせたものですね。身に着けている装備はほぼそれが基本構造になっています。伸縮性もあり、布に見えても強度は折り紙付きです。ドラゴンのツメの攻撃くらいじゃあ傷一つ付けられませんよー。カーズさんの魔力と同調して、衣服がない場所にもヴェールのような防御壁を張ってくれます。しかも自動修復、自動洗浄効果付き、お手入れ要らず、体も清潔に保ってくれますよ。か・ら・の~、常に快適な温度や湿度に風通しを保ってくれるのですよ、エアコン着てるようなものです。無駄に寒さや暑さで消耗しませんからね』

 ほらね、予想通りだ。どれもRPGじゃあ伝説レジェンド級の素材、しかも鉱石を糸にする時点で意味がわからないもんな。そこらにある石を糸に出来るかい? 神様ってやっぱり規格外だ。でも便利機能だと思う、だって手入れしなくてもいいんだし、常に快適なんて最高だ。ドラゴンのツメなんて絶対食らいたくないけど。そんなこと言われるとフラグが立ちそうで怖いな。あとエアコン自体は意味ないぞ、エアコンから出る空気だろ、調整されてるのは。

「うん、何かもうすんごいってのだけはわかった。鉱石を糸にとか全くもって理解が及ばないけど。じゃあ残りの装備の説明もお願いします」

『はいはーい、ではお次はドラゴングローブ! 古代竜エンシェントドラゴンっていう最強種のドラゴンの表皮から作りました。ナックル部分には牙や爪を加工して取り付けています。装備者の腕力や総合的な力を底上げしてくれます。多分その辺の岩ならワンパンで砕けますよー、ワンパンで! 更に衝撃追加アディショナル・インパクトという付与エンチャントをしたので、追い打ちで竜の息吹ドラゴンブレスが発動して込めた魔力の属性に応じたブレスの衝撃が放たれます。ムフフー』

 いい笑顔で言ってるんだろうなー、すげえ楽しそうだし。でも紹介するときにいちいち青いネコ型ロボットの真似はいらないんだが。マジかよ、岩砕けるんだってさ、怖い。城壁とかまるで意味がなさそう。しかも追撃が竜の息吹ドラゴンブレスとか鬼畜過ぎる。絡まれても殴っちゃいけない、絶対ダメ。

『そして次にペガサスブーツ! これは文字通りペガサスの革をなめしてからバトルドレスと同じ素材で強度を上げています。かかと部分にはペガサスの羽を数百匹分圧縮して取り付けています。とにかく軽くなってて、魔力を送ると空も飛べますよー』

 へー、空飛べるんだ。もう何でもありだわこの女神様。マジで半端ない。

「ドラゴンはともかく、ペガサスって神聖な生き物じゃないの?革とか取っていいもんなのか?」
 
 俺の問いかけにアリアは大笑いする。

『人間の間ではそんな認識なんですねー、確かに神話とかにも出てきますし。でもあんなの天界だとそこら中に飛んでるんですよね。だから狩り放題、馬刺しにし放題です』

 おぉ…、なんてこったい。夢を壊さないで頂きたい。ペガサスに乗るとか憧れるものなのに、あんなの、馬刺しとかって。人間の常識なんて軽くひっくり返してくるぜ。神話の生き物を素材とはいえ履いてる自分が怖い。

『では最後にグリフォンプレートですねー』

「この胸元の金色のやつですね、オシャレな装飾だと思ってましたよ。でもまたトンデモ装備なんでしょ?」

 今更驚かないぜ。もう驚き疲れたし。グリフォンだって人間には神話の生物だしね。

『そんなに大したものではないですよー、ただグリフォンのツメやくちばしを数千匹分圧縮してドレス素材と組み合わせただけです。刻んだ魔法文字ルーンとデザインで魔力や幸運値を底上げする効果を付与しています。羽が幸運のシンボルって勘違いされやすいんですが、骨格の強度が高い部分を使う方がよっぽど効果がありますからー』
 
 マジかよ、大したもの過ぎるよ! 今度は数千匹ときたぜ。どんだけ狩ってるのアリアさん? しかもこんな小さく圧縮ってもはや意味がわからない。いや、理解しようとするだけ無駄だ。だって相手は神様だし。やっぱ驚くなってのが無理だ。考えるのはやめよう、脳がショートする。思考回路はーって、やめとこう。

「なるほど、やっぱり予想の斜め上過ぎて何がなんやらっす。すんごいってのは理解しました。でもそんなに高価な素材使ってたら他の人に盗まれたりしたら大変だよね?」

 そんなことかーと、アリアは笑う。何か変なこと言ったかなあ。価値観が余りにも違い過ぎて、もうイミフだよ。

『大丈夫ですよー。カーズさんの装備には私の魔力が付与されてます。要するに私の因子持ちのカーズさんと同じ魔力の波長なんですよ。だからカーズさんが許可しないと装備出来ませんし、悪意あるものが盗もうとすると何百万ボルトって威力の電流に相当するショックを与えます。それに戦闘中に紛失しても手元に戻ってきますからね』

 それは良かった。なら盗まれる心配はない。しかも悪い奴が触ると数百万ボルトの電流? なんかのチェーンかよ? ちょっと魔が差しただけであの世に直行じゃないか。軽く言えるレベルじゃないぞ。確かに全部<カーズ専用>って表記があるな。
 
 さて次は武器の説明をしてもらおうかなー。そう思って腰に帯同してあるアストラリアソードを鞘から抜く。俺は左利きなので体の右側に帯同してある。もう一本は刀。そして腰の後ろにはサブウェポンとしてナイフが鞘に備えられている。使い手のことまでしっかり考えてある、やっぱ女神様すげー。心にくいサービスだわ。

「やっぱこの剣もすごいんでしょ? もう散々驚いたけどさ。しかも思いっきりアリアの名前付きじゃないか。鑑定とかされるとマズくない? アリアってもしかしなくてもこの世界で崇められてる女神様だったりするんじゃないの?」

『確かにこの世界<ニルヴァーナ>の西大陸、宗教国メキアの聖教本山のクレモナに祭られてはいますねー。アストラリア教ってのもありますし。ちょっと過激派もいるので私的には大人しくして欲しいのですけど。でもそれらの武器を鑑定するのは不可能ですよ。偽装フェイク隠蔽いんぺいを厳重にかけてますから。他人には普通のその辺で売ってるような剣にしか見えません。もちろん刀やナイフもです。だからカーズさんが敵をやっつけてもその武器がすごいとは誰もわからないのですよー、ウフフー』

 それなら問題ない。そしてこの世界は<ニルヴァーナ>という世界らしい。西大陸とか言ってるし東や他にも大陸のようなものがあるのかもしれないし、地球並みに広いのかもしれない。アリアと関りがある俺はその宗教国に近づかない方が良さそうだ。余計なトラブルを招きたくないしな。

「で、アリア、この剣はどういう性能なんだ? 見ただけで切れ味がヤバそうなのはわかるけどさ。刀身からなんかうっすらとオーラ出てるし」

『そうですねー、ちょっと脱線しちゃいました。どの武器もそうですが、素材はバトルドレスと同じです。オリハルコンにアダマンタイト、ガマニオンと星屑砂スターダストサンド、それらを最高強度になるような精密な比率で錬成して、鍛冶スキルで何度も鍛えなおしている超一級品の武器です。すごいのは素材だけではなく、私の剣技その他の格闘技術は全て魔力を武器に流したり、纏わせることで威力が倍加するんですが、普通の武器ではその負荷に耐えられずに発動する際に砂みたいに崩れてしまうんですよ。我ながら自分の才能が恐ろしいー、キャー! というわけで、私特製の武器は魔力伝導率99.999%! Aランク武器でも50~70%が限界ってところですから、如何に絶妙なバランスで出来ているかわかったでしょう? 早くカーズさんがそれでアストラリア流の技を放ってくれるのを見たいものですねー』
 
 うん、恐ろしい武器ってのは理解できた。気を付けて使用しないといけないな。それよりもそんなに時間かけて作った武器を俺にくれてもいいのだろうか? たかが一人の人間が手にしていい代物の範疇を大きく超えているだろ。

「なあ、それってアリアが研鑽を重ねて作った努力の結晶じゃないのか? そんなすごいものを俺なんかに渡していいのか? すごい武器っていうのはありがたいと思うけどさ」

 俺の言葉にアリアは少々驚いているようだった。でもこれは本心だ、人の、いや神様だけど、他者の努力の結晶を簡単に自分のものにしていいとは思えない。努力とはその人の築き上げた結晶そのものなのだから。俺良いこと言ってるよね?

『そんなことを言う人間が存在するとは思いませんでしたよー。いやー、驚きました。でもね、逆にそんな風に思ってくれる方の手に渡ってくれたことが私は嬉しいんですよ。そ・れ・に・、一度作ってしまえばあとは複製コピースキルで魔力と引き換えに作れるのですよー、だから気にせず使い潰して下さいね。壊れたら新しいのと交換しますから。それに私が使うことはもうないかもしれませんし…。見つけ出したのがカーズさんの様な人柄で良かったですねー』

 買い被りだとは思う。俺も所詮人間だ。悪いことを考え付きもする。それに俺は自分が悪い意味でいい性格をしていると思ってるし。
 
 しかし、こんな神器の様な武器がいくらでも作れてしまうとか、悪人の手に渡るととんでもないことになるな。大事に使わせてもらおう。それにアリアがもう使わないとは? 一体どういう意味だろうか。気にはなるが、他者のそういった部分にはあんまり踏み込むべきじゃない。軽々しく聞いていいことではないだろうしな。

「ありがとう、一通り把握できたよ。あとは実践で体感しないとだな。頼りにしてるからな、アリア」

 いつの間にか普通に会話できるようになっている。まあ彼女の因子が自分の中にもあるわけだし、ある意味親戚のようなものなのかもしれないと思うと気楽になった。

『はーい、こちらこそです。ではではー、試しにそこいらのモンスターと戦ってみましょうか。習うより慣れろ、ですね!』



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  主人公は基本やんちゃ坊主ですが、筋の通った性格をしています。

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