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第一章 転生と新世界

4   First Battle

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    戦闘の描写って難しいですね、もっと上手く書きたい。

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  さて、流れ的にバトルする羽目になってしまった。でもね、ぶっちゃけ俺結構ビビりだよ、他人にはバレないように強がってきたけどね。前世でもなるべく諍いは避けてきたし。でも売られたら買ってしまうスタンスだったし、根本的には短気なんだよ。喧嘩くらいは学生時分まではよくしてた。相手がこっちよりビビってたら怖くないんだよね。もうそういうときってアドレナリン出まくってるし、スポーツでもゴール近辺だと気持ちが昂って仕方なかった。まあ冷静じゃないよね、本能のままにぶっぱするみたいなもんだし。でもどれも対人間。魔物とか、RPGの中でしか戦ったことないから。子どものときに近所の狂暴な犬と死闘を繰り広げたくらいなだけだ。

 冷静に考えて、平和な世界に生きてきた人間がそんなの相手に戦えるかい? 野生動物とか、家畜の牛やら馬、多分羊にも負けると思うよ、だって角生えてるやん。早速ビビりが発動しながらアリアに尋ねる、

「モンスター? 魔物? ってそんなのどこにいるのさ? 結構長話してたと思うんだけど、それらしきものは全く見なかったぞ。森の中だってのに」

『えーと、それはですねー私が結界を張ってたんですよー。目覚めた瞬間に襲われるとか嫌じゃないですかー。カーズさんぐっすり眠ってましたし。それに私と話す時間も必要でしたしねー』

 けらけらと笑いながら話すアリア。なるほど、結界ときたか、サラッとすごいこと言ったな。もうずっと張っておいて欲しい。

「ほほうー、ならそれを解除したら?」

『普通にこちらの存在が周囲に認識されますねー。魔物の方が人間よりも感覚器官が優れていますから。攻撃的アクティブな魔物だとすぐやって来るでしょうねー(笑)』

「何それ、怖い。ごめん、胃が痛い気がする。持病の仮病が発病したみたいだわ」

『気のせいです。しかも自分で仮病って言っちゃってますよー。小粋なトークで誤魔化さないでく下さーい。そんな小ネタ言える余裕があるなら大丈夫ですよー。この辺りの敵はぶっちゃけ弱いですから。スタート地点にここを選んだのも、しっかりと経験を積むためって理由がありますからね。さあさあ、起きて準備して、結界を解きますよー』

 止める間もなくアリアが結界を解く。パリーンと何か薄いものが割れるような感覚がした。結界解除の音だろう。うーむ、弱い敵ねー。古代竜エンシェント・ドラゴンやらグリフォンやらを恐らくサクッと狩れる女神様の基準なんて、大幅にズレてるはず、絶対あてにしちゃいけない。俺は立ち上がって周囲を警戒した。だが特に何もいないようだ。まあ流石にいきなり目の前に来るなんてないだろう。さっきまで結界があったんだし。少し安心した。でも何か話してないと不安になるんだよな。

「何も出てこないなー? ふっ、俺に恐れをなしたか、戦わずに勝つとは、さすが俺」

 でも地味に膝が笑う、いや俺も余裕こいて笑いたいよ? だって何が来るかわかったもんじゃないしさ。

『もー、それだけのスキルやら加護やら装備やら持ってるんですから、しっかりして下さい。この辺りにはいないようなのでこちらから近づきましょう。探知のスキルを発動させてみてください』

 あったな、スキル欄に。ならばと俺はもう無意識下に<知っている>という認識のスキルを発動させる。頭のアホ毛がピコピコと動く。これってアンテナかーい? するとレーダーのように周囲の大体200m辺りのことが脳裏に映し出される。アホ毛…こんな役割があったのかよ、優秀だなー。その脳内のレーダーにまばらに映っている赤いマーカーのようなものがあることに気が付く。というか、肉眼では目の前の景色を、脳内ではレーダーを見ている。不思議な感覚だ。これが並列同時思考ってやつか、便利だな。しかしどれもこちらに向かってくる気配はない。

『うーん、やっぱりこの辺りは敵も穏やかですねー。ということでこちらから仕掛けましょうか。逆探知のスキルを一番近い魔物に向けて発動させてみて下さい』

 集中して発動させる。すると俺が狙いを定めたやつがこっちに向かって来た。探知はこちらからバレないように周囲を警戒するなら、逆探知はこちらの存在を無理矢理相手に伝えるスキルのようだな。とりあえずアストラリアソードを抜いて、その方向の空間に構えておく。怖えー! 音が近づいてくる、さてさて鬼が出るか蛇が出るか、まずは初戦闘! いきなりデッドエンドはごめんだし、やってやろうじゃないか!

 脳内に声が響く、これは自動的にスキルが発動してくれているのだと認識できる。

<精神耐性SS、および明鏡止水めいきょうしすいが発動します>

 プレッシャーが軽くなる、そして周囲を先ほどまでよりも深く落ち着いて感じ取れる。

『あっ、もう目の前に来ます!』

 茂みから飛び出してきたのはでっかい黒い熊。マジ? 熊のワンパンで人間て軽く死ねるよ? だがもう後には引けない、熊との距離はまだ約20m、まずはステータスを視てみるべきだな、鑑定だ。

<ブラック・ベア C >
筋力  :25
敏捷  :18
魔力  :1
物理耐性:15
魔法耐性:10

 魔物に幸運値は意味ないのか、視えてないってことはそういうことなんだろう。HP、MPも視えない。そこまで万能じゃないってことか。だが何でもかんでも視えてしまうのは面白くない。しかし、これは普通のレベル1がソロで相手をしても勝てないだろう、熊だよ? アリアめ、あとで文句言ってやる。でもステータスを視て少し安心した、俺のよりあらゆる面で劣っている。

 などと考えている内にドスドスと巨体が走って来る。逆探知を仕掛けたせいなのかやけに攻撃的な威嚇いかく咆哮ほうこうをしてくる。とりあえず最初の突進はかわすことにしよう、痛そうだし。とりあえず右に軽くジャンプして回避する。

 そう、軽くジャンプしたつもりだった。が木々を見下ろせる高さまで跳躍してしまっている。マジかよ、体が異常に軽すぎる、これも魔力や装備の力ってことか? コントロールできるまで時間がかかりそうだ。ふう、何とかシュタッと着地。ぶっちゃけ25mプール分くらいの高さだったと思う。多分だけど、マジ意味わからん。

 クマさんから少し離れた位置で剣を構えなおす。クマさんが驚いたような顔をしてるように見える、うん分かるよ、俺も驚いてるからね。

『カーズさん、そろそろ攻撃しましょうよー。コントしてる場合じゃないですよー。』

 このやろー! 簡単に言いやがって。自分の常識以上の力って今知ったけど、厄介極まりないんだな。下手したら自分で自分にダメージを与えそうだよ。でもいいぜ、次はこっちが攻撃する番だ。

『剣に意識を集中させて、相手との距離を詰めて下さい! 一瞬で決めましょう!』

「OK、やってやるぜ」
 
 互いの距離が近づく、その瞬間に熊が右前足を振り上げる。咆哮とともに攻撃に移る巨大な熊、迫力がヤバい。だが明鏡止水のおかげで、俺は冷静にその動きを捉えることができる。

未来視プリディクト・アイズが発動します>

 熊の右前足が繰り出す攻撃の軌跡、俺の左肩から斜めに切り裂くイメージが視えた。この瞬間全てがスローモーションに感じられて、更に自信も湧く、精神耐性のおかげだろうか。そしてそのとき脳裏に浮かぶアリアのソードスキル、それが体をどう動かせばいいのかを伝達してくれる。あとはその動きをなぞるだけだ。

「アストラリア流ソードスキル」

 熊の右手を掻い潜るように右足を軸に回転、加速した勢いで体ごと薙ぐように左手を振り抜くと同時に、剣が風の魔力を纏いエメラルドグリーンに輝く!

「テンペスト・カウンター!」

 そのまま横薙ぎの斬撃が熊の胴体を真っ二つに切り裂いた。5m以上はあるブラック・ベアの図太い胴体を両断できたのは剣閃から放出された風の魔力が攻撃範囲を広げているからだ。当に嵐の如き返し技テンペストカウンター。ブラック・ベアは何が起きたのかもわからずに下半身はその場に立ちすくんだまま、上半身だけがズズズーっとズレて地面に崩れ落ちた。間違いなく即死だろう、OVERKILLオーバーキルにも限度がある。やり過ぎOVERKILLだ。

「ふ、はああああああああー……」

 緊張が一気に解けて、息を吐き出しながらその場にぺたんと尻から座り込んだ、というか腰が抜けた感じだ。

『お見事です、カーズさん! 素晴らしい一撃でしたねー、ブラボー! ヒューヒュー!』

 この古いノリに付き合うのは今はしんどいっすw

「あー、怖かったーー!」

 当然の反応だよ。初めての人間以外との武器を交えた命のやり取りの戦闘。しかも熊だよ、熊! 森のクマさん超狂暴! 童話みたいに優しく「お逃げなさい」なんて言ってくれない、地球のクマより絶対ヤバい、熊よけの鈴持ち歩いていたって余裕で襲ってくるだろ、あれ!

『どうですかー、落ち着きましたかー?』

「…うんまあ、少しはね。ていうか初戦闘が熊とか…、ないわー。マジ怖かったし、死ねると思った」

 まだ剣を持つ左手が震えている。でも、恐怖もあったが熊の懐に飛び込んで行ってスキルを出す刹那の瞬間、何か不思議な感覚を覚えた。興奮? いや、違うな、もっとこうアドレナリンが噴き出すような感じだ。多分前世でも感じたことがあるような気がする。でもはっきりとはわからない。それはこれからの戦闘経験でわかるはずだ。何となくそんな実感があった。

『えー、Cランクの上位くらいなので雑魚ですよ雑魚(笑) だって一撃だったじゃないですかー?』

<レベルアップしました、スキルの更新を行います>

 お、さっきの声だ。こういうとこ本当にゲームだな。あとで確認しておこう。それよりももっと俺自身が経験を積む必要がある。このままでは宝の持ち腐れだ。

「うん、まあそれは全部アリアのスキルの御陰だしさ、俺自身がもっと鍛錬して自力で繰り出せるようにしないといけない。じゃないとスキルに振り回されるだけだし、ソロじゃなかったら味方ごと斬ってしまうかもしれない」

『そうですねー。レベルも上がったみたいですし、まだまだカーズさん自身が成長する余地はたくさんありますしねー。もっと実践しないとですね!』

 なるほど、さっきの声はアリアにも聞こえているのか。ならどういう条件でスキルが発動するのかとか、使い方とかちゃんと習う必要がある。

「そういうこと。だから魔力のコントロールとか、武器の扱いとか戦い方とかスキル、魔法の使い方についても教えてくれ。無力なことの辛さは痛いほど知ってるしな。ということで、この辺の魔物は片っ端から狩る!」

『はーい! しっかり教えますよー。カーズさんのお望みならいくらでもー』

 俺はサンキュと答え、まずは探知に映っている魔物をアホ毛をピコピコさせながら片っ端からアリアの指南を受けながら狩って回ることにした。 


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   主人公が一皮むけましたね

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