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第二章 王国奪還・記憶の煌き

33  運命の謁見

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さて、漸く復活です!

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 一週間経った、漸く完全復活だ。じっと休んでるのも飽きてきたところだし、いい頃合いだ。

 あの黒歴史以降、女性陣が、特にユズリハだけど、どこからか持ってくる女物の服で着せ替え人形だった。もう、ある意味病人なんだし勘弁して欲しい。短いスカートとか、辛過ぎた。俺には生足魅惑のマーメイドは無理だっての!

 兎に角、今日は漸く王様との謁見だ。アリアは騎士団に稽古を、クレアたっての希望もあり、度々出かけてたけど大丈夫かね? 壊滅してそうだよ騎士団。エリユズコンビもまだ俺が一緒じゃないからギルドには行っておらず、騎士団の相手をしてるとか。でもあの2人、加減できるのか? まあ色々あったけど、やっと元の男性体の姿にも戻れたわけだ、うん、落ち着くなー。今はアリアが謁見前の準備をしている俺のところに来ている。壊れた武器も新調してもらったしね。そして身に着けたバトルドレス。久しぶりだ。しかし…

「何でこれ色が変わったままなんだ?」

 神気を解放したときに変化した、輝く様な真紅に変化したバトルドレス。縁取りやレース部分も白はいいとして金色にも変色してるし、ブーツは白銀のようになっている。インナーは黒っぽいけど、これじゃあ赤の剣使いと色合いが被るなあ。透けてたり露出している部分はないけどさ、肩もショルダーガードがなくなって身軽になっている。

「あのときの神気の影響でしょうねー。でも元の状態より神気が練り込まれて、大幅に性能が上昇してますし、そのままの方がいいですよー」

「でも派手過ぎだろ、もう少し控え目にして欲しいな」

「カーズの神気で変化したんだしー、それがあなた本来の心の色なんでしょうしー、別に気にしなくてもいいかとー。それに認識疎外をかけておけばそこまで目立ちませんよー?」

 あー新しく覚えてたなそんなの。気配遮断とは少々違う、ぼんやり見えてはいても印象に残りにくくなるっていうスキルだ。なるほど、それならそれを衣服にかけておけばいいか。

「わかった、なら仕方ないしそれでいいや。そろそろ謁見の時間だし、クレアが迎えに来てくれるってさ。アーヤのこともどうにかしないとだけど、何の話なんだろうかね」

「色々と望みの褒美にー、貴族の位は間違いなく与えられるでしょうねー。やっとロットカラーを名乗れますねー」

「まあそれは前に聞いたけどさ、貴族になったら何が変わるんだ? 別にこれと言って興味ないんだけどな。貴族っても色々あるだろ、爵位というか男爵とか子爵、公爵って身分差みたいなのが、そういうの嫌いなんだけど」

 そういうのあると権力争いとか面倒でしかない。巻き込まれるのもゴメンだ。

「ここでは階級はないですよ。貴族は貴族です。階級があると差別や権力争い、政略結婚のような個人の意思を無視することなど、諍いごとの発端になるだけですから。貴族というものでみんな同じラインです」

 おおー、来たよざっくり設定。

「そっか、でも争いやら起きないに越したことはない。で、姓を名乗れる以外に何かあるのか? 領地経営とか面倒でしかないぞ」

「貴族証明のカードがギルド証のように発行されますね。それがあると買い物が安く出来たり、自分で土地を開墾して荘園、領地を発展させて人を住まわせ、国まで作ったりもできます。中立都市もそんな感じですねー。でもそこまでするのは相当大変なので、ほとんど誰もやらないですねー。あとは一般市民より他国に行っても色々と融通が利きやすくなったりとか、そんな程度です。ですが何かしら功績を残さないとなれないので、尊敬の対象にはなるかと。だから貴族証明がないのに姓を名乗ると、所謂偽証罪ってやつですねー、捕まります。恩恵が多少ある訳ですから、勝手に名乗るのは禁止なんですよー」

 物が安く買えたりとか他国に旅する時には便利な程度かな、俺にとっては。

「ふーん、特に大層なものでもないんだな。差別感情とかが生まれるよりはマシか。そういうシステムってアリアが介入してるんだろ? ギルドのシステムもそうだけど、もう何となくわかって来たぞ」

「アハハ、まあそういうことですね。差別や独占とか諍いを起こしやすいものですからね。そこには人の悪意が介入しますし、そういうのが起こらないように調整してるということですよ。起こした国が発展すると王族にもなれますが、そこまで行く前に大抵一生を費やしてしまいますからね。国家が乱立した結果、勢力戦争が起こるっていうのも中々できないということです」

 ある意味理想的だな。欲しがると切りがないのが人間だし。これならそういったことも起こりにくいだろうし。

「うん、それはいいと思うよ。ちゃんと仕事してるじゃないか、偉いえらい」

 真紅の髪の頭をよしよししてやる。

「むー、子供扱いしてー。ところで他の褒美も聞かれるでしょうけど、どうするんですかー?」

「うーん、アーヤをくれってのと、みんなが集まれるようなでっかい家が欲しいかな。中立都市にだけど。さすがに王都で姫と住むのはなあ、それにリチェスターの街は結構気に入ってるんだよ。だからそこを拠点に冒険とかはしたいよな。転移でいつでも戻れるんだし」

「なるほどー、では私も姉設定ですしロットカラー名乗りますかねー。名目上ですけど、その方が怪しまれないでしょうから。アーヤちゃんは何か考えがあるみたいですしー、装備も全部用意して渡してますよ。今日は着てくるんじゃないですかー?」

「さすが早いなー。また一から作ったんだろ? 裁縫、そういうの手が込んでるよな。この装備もそうだけど」

「うーん、まあ趣味ですかねー。と、そろそろ時間ですねー、行きましょうか」

 ノックが響く、迎えに来てくれたクレアに連れられて、復興作業中の城内を歩き、玉座の間へと向かった。


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 どうやら俺達2人が最後に到着したらしい。天井がほぼ無くなっている玉座の間、ここ危なくないか? 俺が壊したようなもんだけど…。気にしないようにするか。玉座にはすっかり顔色の良くなったフィリップ王、右手に王族の兄弟姉妹、アーヤもいるがローブを纏っていて装備は見えないな。左手には国の重鎮達ってとこか。お、オロスもいるじゃないか。こちらに気付いて会釈をしてくれた。エリユズコンビはまだ立ったまま、俺達が来るのを待ってくれていたようだ。近づくと早速話しかけてきた。

「おう、カーズ! 漸く復活だな。色々大変だったらしいが、強く生きてくれ」

 あー、おもちゃにされてたしな。それのことか。

「おいおい、いきなり御挨拶だなあ。好きでやらされてないからな、ユズリハの悪ノリが全て悪い」

「えー、酷いなー、折角可愛い恰好させてあげたのにー」

「いやいや、望んでないからな。まだ調子悪かったのに無理やりだったろ、そりゃエリックが来なくなるって」

 あいつは絶対童貞だ。

「まあ、えっと、スマンな。でもアリアさんと騎士団の稽古に行ってたし、楽しかったぜ」

 こいつに稽古とかつけられるんだろうか?

「皆様、これから王がお話されますので。準備して頂けますか」

 クレアはそう言うと王様の前まで進み跪く。うむ、世間話してる場合じゃなかった。

「国王様、これで此度の魔人及び邪神討伐の功労者全員揃いました。では」

 立ち上がり左手側に移動するクレア、うーん、あのときのキャラは何だったんだと思う程に今日はキリッとしているな。って邪神のこと話しちゃったのか? まあアリアは気にしてないぽいからいいけど。俺達も、これから始まる謁見のため、その場に跪く。さて、また演技しないとね。

「コホン、此度はカーズそなたたちの活躍によって人的被害を出すこともなく、王国は救われた。病を治してもらったことも重ねて礼を言わせてもらいたい。ありがとう」

 とりあえずリーダーみたくされているので、俺が受け答えをする手筈だ。

「いえ、人として当然のことをしたに過ぎません。それに怪我が癒えるまで立派な部屋をお貸ししていただき、こちらこそ感謝致します」

 みんなが頭を下げる。

「して、まだ城もこの様に復旧中だが、救国の英雄達に何の礼もしないなど我が王国の恥。まずはそなた達4人に貴族の位を授けたいと思うのだが、良いかな?」

 やっぱくれるのね。

「はい、ではありがたく」

「では名乗りたい性を述べてくれ、それを証明のカードに登録するのでな」

「「ハハッ!!」」

 左手側の文官達がセットしてあったテーブルの上にカードを並べ始める。ほう、あれが所謂貴族証明か、それといつの間にテーブル出したんだ? ギルドカードみたいなものだな、また魔力通したりするのかな? そして我先にとエリックが話始める。

「じゃあ最初は俺からだ。姓はタッケン、伝説の剣豪の名をもらうとしよう。俺はエリック・タッケンを名乗らせて頂きます」

 エリック敬語使えるのかー、そのことにびっくりだわ。

「うむ、ではエリック・タッケンを貴族として認めよう。受け取ったカードに自分の魔力を通すようにな」

「はい、ありがとうございます」

 カードを持って来た文官がそれをエリックに渡す。カードが光ったので、魔力を通したのだろう。

「よっしゃ、ずっと名乗りたかった名だ」

 へえー、そういう願望があるんだな、この世界の人は。

「では私はユズリハ・ラクシュミを名乗ります。かつて世界に多くの恵みをもたらした大地と風、水の賢者と言われた伝説の人の名前よ」

「では、ユズリハ・ラクシュミを貴族として認める」

 伝説の人かー、2人にもそういう憧れとかあったんだな。同様にカードを受け取り、笑顔になるユズリハ。

「ふふふ、でももう私はどの属性でも使えるけどねー」

 おーおー、ドヤッてる、ドヤッてる。

「では最後にカーズにアリアよ、2人は姉弟であったな。であれば同じ姓となるが、良いか?」

「はーい、私はカーズに任せまーす」

 さすが適当女神、そして王様相手にもいつも通りだな。こっちを見ているアーヤがクスクスと笑っている。

「では俺達はカーズ・ロットカラー、アリア・ロットカラーを名乗ります。深紅ということで」

「なるほど、2人の髪の毛と同じく燃えるような色だな。ではカーズ・ロットカラー、アリア・ロットカラーを貴族と認めよう」

 2人してカードを受け取り、魔力を通す。ギルド証と同様、顔写真のようなものと、姓名が浮かび上がってくる。うーむ、やはりの謎技術だ。

「さて、今のはほんの礼。各々、望む褒美があれば何でも申してくれ。今やお前達は国賓も同じ、遠慮は要らぬからな」

 うん、まあ俺は最後にしよう。揉める可能性あるし。エリックは無難にお金と新しい防具を頼んでいた。ユズリハも冒険者だなー、大金に宝物庫に珍しい魔道具があれば好きなものを貰っていいとか、奮発するねー王様。

(アリアは何が欲しいんだ?)

(いやー、全然ないですねー。明日へ羽ばたく希望の翼ですかねー?)

(…それはみんな欲しいだろ。ボケてんじゃねー)

(じゃあ食費としてお金にしときます。後はカーズの願いを叶えろって言っときまーす)

「私も食費が嵩むのでー、お金でいいでーす。あとはー、カーズの願いを王様がちゃーんと叶えてくれればそれでー」

「う、うむ、わかった…」

 王様のが戸惑ってんじゃねーか。神が圧をかけてどうする。

「では最後にカーズよ、お主は魔人どころか正体不明の邪神までをも討伐したと聞いている。それに私の病を治してもらってもいる。謂わば此度の一番の功労者であり英雄、何でも申してみよ。私に出来ることなら叶えてみせよう」

 来たな、ここは漢らしく堂々と言う。それしかないし、ビシッと言ってやろう。ちらっとアーヤを見る。

「俺はアーヤ姫をもらい受けたい! 彼女は遠い年月を共に歩んだ運命の人。漸く再会できた今、彼女とこれからの永き生をずっと過ごしていきたい!」

 ザワザワとし始める周囲。そりゃそうだろうよ。いくら救国の英雄とはいえ、一介の冒険者に姫をやるってのはな、戸惑うに決まってるさ。でも俺はここで退くわけにはいかない。5000年の運命に今こそ蹴りをつけてやるぜ!

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さあ運命に蹴りをつけよう!
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