42 / 133
第三章 大奥義書グラン・グリモワール
39 アヤの闘い、鮮烈デビュー戦
しおりを挟む場内は何だ何でだ、と騒ぎ始める。そりゃそうだろ、登録試験なんていつもやってる程度のことだろうし。こんな中で受けさせるなよな。パンチパーマの筋肉達磨をジロりと睨んでやる。
「う、すまない、カーズ。Aランク試験が終わるとどうしても観客が散ってしまう、だから姫のデビューのお披露目は間に入れることになってしまってな…」
ハハーン、なるほどー。今度はジロりと王様を睨んでやる。
「ハハハ、そういうことだカーズ、許せ。それにそなたがトリを飾る方が盛り上がるだろう!」
やっぱこのオッサンか…、もう調子良すぎて尊敬するよ。
「武器の扱いと魔法のテストの2つだろ、どうすんだよ?」
「ど、同時進行だ」
申し訳なさそうに言うパウロ。どもってるじゃねえか。目も泳いでるぞ。
「またかよ、王様さー、そういうの職権乱用って言うんだぞ。国営だったとしてもそういうあからさまな根回しはまずいだろ?」
「王様ではない、お義父さんだぞ、我が息子よ」
「あー、うん。もういいよパパって呼んでやるよ…」
「うむ、その響きもなかなかの新鮮さがあるな…」
ダメだこりゃw
「まあまあ、俺らも折角だし大観衆の中で見たいしよ。な、我が弟カーズ!」
「そういうことです。アヤの晴れ舞台、それくらい派手でなければ、ね、我が弟カーズ?」
「はあ、アランにレイラ、あんた達もかよ…。それ流行ってんの? アヤ、大丈夫か?」
神格で能力が大幅に強化されているとはいえ、レベル的にはまだ30に満たない。心配にもなる。この大観衆だしな。ていうかここの観衆みんな仕事はどうしたんだよ? 暇なの?
「うん、このくらい国民の前で挨拶したりするのに比べたら全然平気。それに、これであとはあの犬コロだけになるしね」
殺る気満々だ…。もうこうなったら止めても無駄だな。装備の確認をするアヤを見る。
「そっか、まあ仕方ないけど。怪我だけはしないでくれよ」
「心配し過ぎだって。サッサと片付けてくるからね」
ノリノリだな。そう言って俺をギュッと抱きしめてくる。可愛いので俺も抱きしめ返してしまう。
「ハイハーイ! イチャイチャはあとー、アヤちゃん容赦しちゃダメだからね!」
おい煽るなユズリハ、エリックもうんうんと頷いているし。
「アヤ様、ご武運を!」
クレアはまるで戦国武将だな。
「アヤー、ギリ殺すなよー!」
エリック…、もういいわ。ノイズ・コレクトで残りの悪党2人の声を聴いてみたが、さすがに動揺してるな。青髭はオホホがやられて、さっき担架で運ばれていったけど、ショックみたいだな。これから戦う奴の顔じゃない。ザコシーはうん、イラついてるな。俺も犬っころ相手はお預けだし、仕方ない。舞台へ向かうアヤの背中を見送る。アレもあるし、負けることはないだろうけどね。
舞台の上で顔向けする2人。アヤは強い目でネタミラを睨みつけている、めっちゃガンつけてるなあ。そのネタミ野郎は、まだ軽くショック状態だな。巻かれてた長いものがなくなったんだし仕方ないが、生憎こいつらの事情なんてどうでもいい。アヤが無事なことを祈ろう。神格に加え、装備補正や武器性能の差はあるが、レベルは向こうが上だし。実戦経験の差とかも出るかもだしな。だが愛する人の初陣、俺が信じないでどうする!
「アヤって、アーヤ姫だよな?」
「改名したって号外で見たぞ!」
「もう姫様辞めちゃったのかー、俺ファンだったのにー!」
「アーヤ姫に変わりないでしょ! 応援しよ!!」
外野のひそひそ話が、やがてあの念話のときの様な大声のアヤコールに変わる。あのときもそうだったが、やっぱ大人気だな。もう完全にこちらのホームだ。
「我が弟カーズ、心配することはありませんよ。私も幼い頃から剣の鍛錬をつけてきたし、魔法はこの国の誰一人としてあの子に敵わない。アリア殿やユズリハは別次元だが…。この国での魔法の天才の二つ名は伊達ではないよ」
まあ負けることはないとは思うけどね。レイラも弟ってそんなに呼びたいの?
「うむ、そうですな。久方振りに見ることができると思うと、何とも胸が高まりますな」
あ、オロス。静かにしてたから忘れてた。アンタが一番まともそうなんだからな、ツッコミ代わってくれよ。
「ボコるとこ見てようぜー、我が弟カーズ! アヤはスゲーぞ!」
アラン、ノリノリだな。我が弟カーズって流行ってんの? まあこの2人は今や義兄に姉だ。それに最初から好感が持てたしな。悪い気はしない。
「そうだな、俺も応援するか。アヤ! 頑張れー!」
こっちを見てウインクしてくれた。落ち着いてるな。まあじっくりと見ることにしよう。そう言えばネタミ野郎のジョブは何だ? 鑑定、重戦士ね、背中に背負ってるのは盾か、武器は片手剣、長目だしロングソードってやつか。女みたいな鎧のデザインだな、うん、キモイ。もう見るの止めよう。
「では、始め!」
登録試験だし、最初は剣を合わせてからだったな。互いに武器を抜く。そしてその剣をアヤが合わせようとしたとき、ネタミラはそれを無視していきなり右側から斬りつけてきた!
「死ね死ねぇえええ!!!」
ガイィン!! パアーン!!!
だがもう待っていたかのように、アヤの左手の籠手と一体になっている黄金のマジックバックラーにあっさりと弾かれる。そしてその衝撃で後ろへ吹っ飛ばされた。観客からはネタミラへのブーイングとアヤへの歓声が飛ぶ。
「なんなの!? その盾はあ!!」
「今のが挨拶なんだ? やるかもとは思ってたけど、本当にやるとはね。ルールも守れないの?」
アヤは青髭の質問は無視して話し始める。
「質問に答えなさいよ!! お姉様の仇はとってやるわ!」
いや、死んでないだろ…。
「挨拶もできないような人、人なの? いやそれ以下の愚物に答える理由などない!」
おお、王族モードだ。あの喋り方は威圧感あって戦闘向きだな。
「で? 仇とは? 死んでないでしょう。私の大切な仲間を侮辱しておいて何を偉そうに。ユズリハも言ったように冒険者なら実力で語るのみ! 私は逃げも隠れもしない、いくらでもかかってきなさい!」
「黙れ黙れええ!!! そのお上品ぶった綺麗な顔、妬ましいいいいい!!! 傷だらけにしてあげるわああ!!」
さっきのショックとか怒りで全然冷静さがないな。バーサーカーかよ。あんな状態じゃあ誰でも攻撃が単調になる。御しやすいことこの上ないだろうな。それにやっぱ妬ましいんだ、名前の通りじゃん。
「醜いこと、できるのならどうぞ」
ギィン! ガィン! パァーン!!
アヤの滑らかで無駄のない盾捌きに加え、先程吹き飛ばされたように反射の付与がされているアリア特製のバックラー。ただの軽く円形で小さく、防御力の低いよくあるものではない。亀の甲羅の様な滑らかな曲線を描く形状になっているため、攻撃しているネタミラは、一撃をガードされたり受け流されたりする度にバランスを大きく崩す。盾捌き、すごいなー。俺は使わないけど勉強になる、どう崩したらいいのかとか考えるのも面白い。
「フッフッフ、我が弟カーズよ、アヤの盾捌きは凄いのだ。防御に徹したら私でも崩せないのですからね。しかもあのバックラー、実に合理的に創ってある、アリア殿の作と聞いて納得しましたよ」
「へえーレイラ姉、そうなの? 俺は盾使わんからわからないけど。でも全然無駄のない動きには見えるな」
もうなんだろ、この兄姉もお義父さん発言以降、身内感をグイグイ出してくるなあ。
「新騎士団長様の意見は?」
クレアの方をチラッと見る。…、あ、まだ自分の役職に慣れてないな。
「あ、は、はい! そうでした! あの美しい動きに自分の立場を忘れておりました」
おいおい、まあこの人もちょっと変なとこあるしね、俺は知ってるからな!
「ふーん、やっぱあの動きは凄いのか」
アリアがいれば色々と教えてくれそうだけどな。無造作に受けてる訳じゃないのか、確かに円を描く様な動きに見えなくもないな…。俺も小さめのバックラー作ってもらおうかな?
ギィイーーーン!! パーン!!!
渾身の一撃もあっさりと弾かれ、反射で後ろに大きく吹っ飛ばされるネタミー。強い衝撃ほど強く反射されるのか。これは相手からすると攻め手がない、魔法も反射されそうだし。さすがアリアだ、いやらしいことこの上ない盾だな。しかも強度もオリハルコン、砕きようがない。
「そろそろ気が済んだ? ではこちらからもいかせてもらう!!」
アストラリア・レイピアを構えてグッと前へと踏み出す姿勢になるアヤ。あれで人体を刺突や斬撃は一発で死ぬ、どうやって攻めるんだろう。
「ハッ!!」
ガキイイイーーンン!!!
やはりあのデカい盾、カイトシールドって言うんだったか、アーモンド型をした、上部は丸く下部は尖った形をしており、その形が凧のような形をしているからこの名前が付いたとされているんだった、あれで防ぐか。だがあの盾は、これまたオホホと似て派手な装飾だが、Bランク相当の性能だ。いくらデカかろうとなあ。
ピシィ!!! バキバキッ!!!
レイピアが盾の中心の一番分厚い部分にめり込むように貫通し突き刺さる。まあそうなるのは自明の理。オリハルコンに勝てるはずない。バターを切るようなもんだ。
「わたくしの盾がーー!! あんなお粗末なレイピアに?!」
あ、そうだった、アリアが偽装や隠蔽をかけてたんだった。あいつ程度じゃやっぱり粗末なレイピアに見えてたんだな。
「やはり相手のことが視えていない。エリックとユズリハのときもだけど、相手の力量を見誤るとこうなるということが!!」
ズガガガガガッ!!!!!!
踏み込んで高速の突きの連打! 幼少より鍛錬してきた積み重ねに加え、神格で能力が大幅に上昇していることもあるが、さっきのイヤミーナよりも遥かにハンドスピードが速い! それに全身の魔力強化もキッチリ出来ている。これは、この世界に戻って来た直後の俺だと歯が立たなかっただろうなあ、ド素人だったんだし。
「すげえ…」
思わず口にしていた、舞う様に鮮やかなレイピアの扱い。そしてあれだけの連撃を受けたネタミシールドは最早ボロボロだ。こいつは防御特化型の重戦士、所謂タンクだ。だがここまで崩されたら、攻撃に転じるしかない。このまま丸くなっていてもハチの巣にされるだけだ。間合いの外から魔法を撃たれたら接近するのも無理だ。もう終わったな。
「こ、こいつー!!」
ブンッ!!
壊れた盾を投げつけ、同時に右手のロングソードで斬りつけるが、盾はバックラーに弾かれ、斬撃はふわりと後ろに飛んだアヤに回避される。俺の能力やスキルを受け継いでるから、よく視ると明鏡止水や未来視も発動させている。うん、そりゃ当たらんだろ。多分アヤにはスローモーションに見えているはずだ。
「元姫様が随分と品のないことねー!! 絶対に殺してやるわああああ!!」
いや…、どう見てもお前の方が品がないだろ。妬ましいって言ってたじゃん。
ガアン!! ズドン!!!
左の肩鎧を砕く氷の一撃。お、やっぱ使うのか。今アヤが左腰元にあるホルスターから抜いたのは、俺が武具創造で創った一品。もう一丁も同様に右の腰にセットしてある。実際の弾丸を込めることなく魔力や魔法をMPがある限りは幾らでも発射できる魔導銃、あくまで俺のイメージを基に好き勝手に創造した回転式拳銃だ。チャンバー部分にわざわざ実弾を込めるというような面倒なことは必要ない。そしてシリンダー部分が魔力を込めれば込める程高速回転し、魔力ブースターの役目をして強力な一撃を撃つことができる。勿論幾らでも連射可能だ。
正式名、弾数無制限の魔導回転式拳銃。形状はアヤが扱い易い大きさに太さのグリップ、トリガーを引けば発射されるが、引きっぱなしにしておけば勝手に連射されるようになっている。指が疲れないんだよ。そして約25㎝ほどの長方形バレル。アヤのリクエスト通りに大まかな色は銀が一丁、赤が一丁と俺達の髪の色を表している。今は赤い方で銃撃している。
ぶっちゃけ銃火器の構造なんてそこまで詳しく知らないが、あくまで俺のイメージで創造してあるのでどうとでもなる。要はそういう形をした魔法の触媒ってだけだ。遠距離から回復魔法も撃てるという完全なる自己満足の創造武器。あんまり近接戦をして欲しくないってのもあるからね。だから多分オーバーテクノロジーにも引っ掛からないはずだ。普通の誰でも使えるような銃が登場してから戦争やらの歴史は酷くなっていくもんな。
ガウンッ!!! バキンッ!!!
次は右のショルダーが撃ち出されたストーン・ヴァレットで砕かれる。観衆は初めて見る魔法武器に驚くばかりだ。うん、満足。でもなー…
「ちょ、カーズ! 何、あの武器!? どうせアンタでしょ、あんなの創るとか!」
「俺もあんな武器は初めて見たぞ」
やっぱ食いついたかエリユズ。だが魔導具みたいなものだからユズリハの方が食いつきが激しい。
「あれは魔力や魔法を簡単に撃ち出せるように創ったんだよ。ロッドみたいな触媒に近い。ユズリハのグングニルも魔石ブースターついてるだろ? それと同じ機能があの武器の回転してるところと同じだよ」
「ふむふむ、確かにあの回転するところで魔力が増幅されてる。へえー、でも扱い易そうでいいなー、カーズ? 勿論私にも創ってくれるのよね?」
やっぱそう来るよね、来たよ圧力が…。好きだもんな魔導具、このグングニルも大層お気に入りで抱いて寝てるとか言ってたし。
「ま、俺は剣でいいや。もう一本魔剣みたいなやつ2本なら背中に備えておけるしな」
エリックは魔法で戦う訳じゃないしな。
「別にいいけどさ、お前指先からもっと速く撃てるだろ? グングニルも触媒と言うより寧ろ槍として使ってるし、逆に邪魔にならないか? 装備も前の魔導士って感じより軽戦士っぽく変えてるくらいなんだし」
「アヤちゃんとお揃いがいいの! こう、魔導士の癖に刺さるのよ! 男ならそういうのわかりなさいよー!」
エリックは、?? って顔をして肩を竦める。
「うーん、わからん! まあ後で昇格祝いに創ってやるから、今は試験!」
ガオンッ!!! ガガガガッ!!
二丁拳銃にして様々な属性の圧縮魔力や魔法をネタミラに撃ちまくるアヤ。レイピアはもう用済みなのだろう、鞘に戻してある。その剣の方が威力が異常だしな。うーん、二丁だとガン・カタとかできそうだな。撃つのは魔法だけどw
「ぎゃああー!! イヤーー!!!」
転げまわりながら無様に、這う這うの体で逃げまくる青髭。わざと加減してギリギリ避けられるように撃ってるな。精神的にへし折るには調度いいか。もう女物の様なキモイ鎧もかなり破壊されている。為す術なしだなあ。もう止めてもいいんじゃないのか?
「カーズ、あの不思議な武器は本当にそなたが創ったのか? 我が息子よ」
もうダメだこいつら、どうしても身内扱いしたいらしい。他のVIP連中もあの銃に興味津々だ。
「はいはい、そうだよパパさん。そういうスキルを持ってるんだよ」
「もはやそなたは何でもアリだな、カーズ! 我が息子よ!」
興奮してるのか、肩をバシバシ叩かれる。
「いや、うん、実の息子ではないからな。義理のな! ほら愛娘の試合見てろって!」
まあもう虫の息だけど、どうやって終わらせるんだろうか?
「ハァ、ハァ…、殺ス殺スぅううううう!!!!」
あー、もうダメだこりゃ。
「最期まで残念で哀れな人。じゃあこれで終わらせてあげましょう」
ホルスターに魔導銃を2本とも納め、ヤケクソで向かってくるネタミラに右手を伸ばし人差し指を向ける。
「今まで己が他者にしてきた行いを逆の立場で受け続けなさい! 精神破壊幻影!!!!」
ピシイィッ!!!
闇属性の黒い光線の様な一撃がアヤの指先から発射され、ネタミラの眉間を貫通する。外傷はないが、あれは苦しみの幻覚を脳内で延々と見せつけられる、文字通り精神を破壊する威力の闇魔法。絶対にやられたくないやつだ。ネタミラは呆然としたようにその場で動きを止め、フラフラとし始める。もう目の焦点も合っていない。
「ぎぃやあああああ!!!!!! やめてええええ!!!!! 助けてえ、お姉様ああああ!!!」
やっぱ発狂したか、早すぎるだろ。どんだけ悪さしてきたんだよ。舞台の床を転げまわる小悪党。でも精神的に折ったというより寧ろ破壊だわ。
「そのまま悔い改めるまで繰り返す悪夢を見続けるといい。改心するまで決して覚めることのない幻の中でね」
うん、アヤはやっぱ怒らせないようにしないとね。ま、ずっと大事にするけどさ。
「おーいパウロ、またかー! 終わってるだろー!」
このオッサンもすぐ立場を忘れるなあ。アンタが止める役だろ。
「あ、ああ、そこまで!! アヤ・ロットカラー、冒険者登録試験合格!!!」
大歓声とともに、再びアヤコールが巻き起こる。人気者だなあ、次に出にくいんだけど…。しかし俺のときもそうだったが、登録試験って毎回あんなになるのか? 絶対おかしい気がする。大観衆に笑顔で手を振りながら舞台を降りると、出迎えていた俺の腕の中に飛び込んで来る。
「ちゃんと見ててくれた?」
「ああ、すごかったよ。アレも使い易そうだったし。頑張ったね」
頭を撫でてやる、甘えんぼは変わらないな。さっきまでの凛とした雰囲気とは大違いだ。そしてユズリハと仲良くハグハグしてから、VIP連中みんなから「おめでとう」の祝福だ。無事に終わったし、親族も喜んでるし、これでいいか。うん、さすがに次は俺だろ。グッグッとストレッチをする。
「ではAランク昇格試験を再開する! 此度の魔人、邪神討伐の一番の功労者! 国王も称賛しておられる! Bランク冒険者、カーズ・ロットカラー! 舞台へ! Aランクザコジャイお前もだ!」
扱いの差が酷いな。これはまたオッサン達の仕業だな。うーん、でもハードルを上げないで欲しい。この世界ではマジで目立ちたくないんだよ、これ以上は変なことに巻き込まれたくないし。変な呼び方もされたくないしな。さてと、と立ち上がった俺をアヤが抱きしめてくる。
「気を付けてね、負ける訳ないだろうけど」
「うん、すぐ終わらせるから」
アヤの頭を撫でてから、舞台へ向かおうとする俺に王様が声を掛けてきた、何だよもう…。
「我が息子カーズよ、負けることなどないだろうが…、気を付けて行くのだぞ」
ふぅ、調子がいいのかどっちなんだか…。振り向きはしないが自然と言葉が口をついた。
「俺の本当の父さんは、悪党に殺された。もう俺に父はいない…。でも、もういいさ、じゃあ行ってくるよ、義父さん」
手をひらひらと振る。
「お、おお、お…」
VIP席から数人の泣く声が聞こえてきた。だが振り返らずに俺は舞台へと進んだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
