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第五章 冒険者の高みへ・蠢き始める凶星達

94  天界混乱?!ティミスの猛省?

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遂に動き出した悪神共。
先ずはルクスとサーシャを追え!
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「な、何だこれは……?!」
「そんな……! 天界エリシオンが……!」

 転移で到着した瞬間、俺とアリアは目を疑った。天界が炎に包まれている。しかも赤い炎ではなく地獄の業火の如き黒い炎が至る所に渦を巻いている。辺り一帯を飛び回っているのは……、邪悪な神気。覚えがある。こいつらは邪神だ。
 それに弓の神器を番え、満月の金に新月の黒の紋様が入った神衣カムイを纏った女神は裏切者のティミスだ。闘っているのか?

ルナティック・スターアロー狂月の星矢セヴンズショット!!!」

 ビシュッ!!! ズドドドドッ!!!

「「「ぐぎゃああああ!!!」」」

 一瞬で7発の魔力の矢を放つとは、やはり実力は凄まじいんだな。
 
「おのれえええ!!! 神にもかかわらず穢れた魂の月の独裁者があー!!!」
「何とでも言うがいいわ。でも私は神。天界を守るという使命は完遂する!」
「へっ、良く言ったぞティミス。表向きは歪んだ振りをしていようが締めるときはときは締めてくれんじゃねーか!」
 何本もの武器・天使を装備したファーヌスも一緒に闘っている様だ。

「いくぜ! ヘファイルカヌス流ウェポンスキル! アームズ・エクスターミネーション!」

 ドゴオオオオオオオ!!!

「「「ぐがはあああああああ!!!」」」

 手にした武器や周囲に浮いていた様々な神器を神気で投擲して操り、巻き起こした嵐で異形の邪神共を斬り刻んで一掃していく。すごい、これが武具を司る神の力なのか?! しかし、神衣カムイまで鍛冶の装束の様な姿とは……、筋金入りだな。

「ファーヌスはまだしも、其方はまだゼニウス殿から受けた刑罰の傷が癒えてはいまい。ここは儂らに任せて少しは休んでおくがいい。ゆくぞ、剣の神の力を見せてやろう……。神刀技しんとうぎ千手観音せんじゅかんのん

 二刀の抜刀術から放たれた神速の剣閃が邪神共を肉塊に変えていく。なんてスピードだ。あれは防ぎようがない。しかし、神刀技とは。親父に剣技を教えた神様なのか? 和風の鎧の神衣カムイに身を包んだ武士の様な太刀を持った渋い爺さんの様な巨体が振るう剣技に目を奪われる。

「ふっふっふ、その程度でこの経津刀剣御魂神フツトウケンノミタマシンの首を取ることなど不可能よ!」

 なるほど、やはりフツマという刀剣の神か。親父に、アリアの剣の師でもあったな。しかし二刀で抜刀術とは……。すげーな、今度教えて貰おう。

「まだ終わりではありませんよ。魔法を司る女神の一撃を受けるがいい! 全属性融合・合体魔法極技・オールエレメント・デヴァステーション全属性壊滅撃!!!」

 エリシオンの空を無数の流星が駆け巡る。どの星の輝きも邪神共を追尾して粉々に粉砕していく。なんて魔法だ。これが母さんとアリアに魔法を教えたレピオスと言う知恵と医術に魔法を司る神様、白衣の様な白銀のローブの様な神衣を纏っているアスクレイムピオス……。どいつもとんでもない力の持ち主だな。

 エリシオンの混乱の収拾が済むまで、俺達はその場に結界を張って見届けることしかできない程、それは異次元の闘いだった。



「ふむ、これで大方片付いたな。おい、カーズにアリア達! もういいぞ、こっちに来い!」

 ファーヌスから声が掛かる。俺達は彼らの下に駆け寄った。

「どうなってるんだ? なんでこんなところに邪神が……?!」

 尋ねた俺にファーヌスが答える。
 
「恐らくファーレの仕業だ。邪神の幽閉、封印場所は冥界深部に何か所もある。だが父上のゼニウスが地球に調査に向かっている今、第一子の俺がここを離れる訳にはいかねえ。そこで浄土にいたフツマとレピオスに助っ人を頼んだ。まだ刑罰の途中だったティミスも俺の頼みで戦力として一時解放した。且つてない程の人材不足なんでな。おい、ティミス。カーズ達に心から詫びを入れろ。それで反逆の刑罰はここまでで免除してやる。アリア、天秤を全力で発動させろ。ここまで来て嘘で誤魔化して逃げるなら、残念だが俺がこの場で斬り捨てる。裏切者には容赦しねえ。俺は父上程甘くねーからな!」

 ふらふらと力なく歩きながら。俺達の前に出たティミスが土下座をする。神衣を解いて肌が見えているからわかるが、これは電撃による火傷や傷だ。ゼニウスのオッサンも容赦ねーな。

「カーズにアリア、それに他の仲間達も……。今回は本当にごめんなさい。ゼニウス様にもファーヌスお姉様にも死ぬほどの罰を受けたわ。これからはあなた達に協力させて頂戴。そして……、アガーシヤ。今はもう改名したのね。アガシャ、あなたには厳しい仕打ちをしてきたわ。カーズにアヤ、あなた達の子孫達にも……。こんな言葉で許されるとは思ってないけど……。本当に心から謝罪するわ。ファーレに魔拳を受けて、今迄の自らの愚かさを思い知った。ごめんなさい……。申し訳なかったわ」

 深々と頭を下げるティミス。だが俺にはそれが本心なのかを判断する能力はない。

「アリア、天秤は?」
「ええ、ゼニウス様の天の雷は悪しき心を消し去り浄化する効果がある。ファーヌス姉様の神器、神聖向槌むこうづちも天使を創り出す程の力を持ち、それで神格を打たれて罰を受けたのなら、私の天秤に今映っている様に嘘偽りはありませんよ。悪戯好きな元々の性格までは治りませんでしょうけどねー」

 しゃがみ込んでティミスの潤んだ目線に自分の目線を合わせる。

「そうか……。ティミス、アンタが心から改心しているのなら俺にはもう言うことはないが、次に裏切ったときはアンタが神であろうと容赦なく斬る。アガシャへの贖罪に、『清魂計画せいこんけいかく』に使った施設は全て廃棄してもらう。これが最低限の条件だ。そして今後は知らないところでウロチョロされても困るから一緒に行動して貰う。それを飲んで貰うがいいか?」
「ええ……、カーズ。誓うわ。そしてアガシャ、今まで本当にごめんなさいね……くっ、うぅ……、うわあああああああ!!!」

 アガシャがティミスを支えて抱き締める。その彼女の胸に顔を埋めるティミス。

「ティミス様、私は大丈夫です。厳しかったけど、あなたは私の時を超えた両親に会わせてくれました。それだけで充分私は報われています」
「アガシャ……、ありがとう。ごめんなさいね、あなたには辛い思いばかりをさせて来たわ……。育ての親としてこれからは大切にしていくから……」

 これは演技でできる涙じゃないな。アリアと目配せして嘘でないことが確信できた。だったらもう下らない過去の遺恨は忘れよう。いつまでも後腐れを残すのは嫌いだ。

ヒーラガHP・体力完全回復!」

 カッ! パアアアアアアアッ!

 ティミスの傷が全て回復する。これでもう傷は苦しくないだろう。

「へぇー、さすがミワコの息子。魔法のセンスも素晴らしい。その内究極の魔法を教えてあげようかしらね」

 レピオスが何か言い出したが知らんぷりをしておこう。さっき見たあんな魔法、一発でMPが枯渇するに決まってる。

「バサトの息子にしては落ち着きがある。儂の神刀技の奥義・抜刀術千手観音せんじゅかんのんを会得できるかも知れんな。100年程修行すればだがのう」

 あ、これは無理だ。フツマの奥義は100年って、さすがにそんな時間はない。聞こえない振りだ。

「ありがとう、カーズ。これからはあなた達の為にこの弓を預けるわ」
「ああ、これからよろしく頼むよティミス」

 彼女の手を引っ張って起こす。感じる神気は穏やかで落ち着いている。魔神の封印や悪意を消すためにも、ゼニウスの天の雷やファーヌスの神聖向槌の力を使ったのだろうな。捕えた魔神なんて腐る程いたはず、それを全部こうやって封印などをしたとすれば途方もない年月がかかるのは当然だな。『神創造ゴッド・クリエイション』でそういう浄化の神を創れば良かったのになあ。いや、多分いるかも知れないな。

「なあ、ルクスとサーシャは何処にいるんだ? てっきり天界にいると思ってたんだが……」

 俺は二人について質問を投げかけた。
 
「ああ、ルクス師匠が伝言もなしでいなくなるとか変だ。何をやってんだ?」
「私も師であるサーシャさんが急に消えるなんておかしいと思ってるのよ。二人は何処にいるの?」

 エリユズが同様に疑問を口にした。俺もそれは聞きたい。ファーヌスが質問に答え始める。

「ルクスは他の異世界、バラバラになった世界にも邪神が放たれたのを討伐に向かった。戦闘に不向きな管轄神もいるからな。助っ人だ。サーシャは冥界に向かった。そこにも勿論管轄の神はいるが、冥界の仕事は常に山積みだ。闘える人材は少ない。多少無理を言って向かって貰ったのさ」

 冥界、普通なら地獄で悪神が管轄している様なものだろうが、サーシャが助っ人に向かうくらいならまともな神が統治しているのだろう。それに悪意ある魂を魔物に転生させる重要な役割がある。放ってはならないな。

「私も行くわ、カーズ。サーシャ、あの子にもこれまで迷惑を掛けて来た。罪滅ぼしの為にも、あの子を助けてあげたいのよ!」
「わかった。だが、アガシャの武器を神器にしてもらってからだ。既に神鉄製。ファーヌスにとっては一瞬で済む作業だろ? それが済み次第ティミスの転移で一緒に来てくれ。アリアの転移で俺達が最初に乗り込む」

 エリックの方を見ると悩んでいるのがバレバレだな。そりゃあ自分の師匠に着いて行きたいはずだよな。イヴァをつけて一緒に送って貰うか。

「ファーヌス、エリックと助っ人にイヴァを一緒にルクスのところに転移させてくれないか? それくらいできるだろ?」
「お、おい、カーズ。余計な気を回さなくても……」

 なぜか遠慮がちだなーエリックめ。
 
「お、じゃあぶちを預かって欲しいのさ。ほい、カーズ」
「お前、マジで連れて来てたのかよ。まあ危ないし召喚契約で神格内にいて貰うか。来い、ぶち!」

 イヴァが懐から取り出して頭の上に乗せていたが、『なー』と鳴きながら光の粒子になって神格に吸い込まれた。喚び出したらSSランク補正で巨大な猫又とかになったりしないよな? 猫バスとかw

「じゃあファーヌス、二人を頼む。アガシャの神器も。解決したら俺の創ったみんなの創造武器を神器に造り直してくれよなー」
「全くお前は姉遣いが荒い弟分だぜ。まあいいさ、ここ最近はお前のニルヴァーナを創っただけだしな。創造武器、概念武装を神器にか……。フッ、中々に面白そうだな。引き受けてやろう。先ずはこの二人をルクスのところに送る。しかしイヴァリースか、お前の神格の呪いを解いたのは俺だ。妙な巡り合わせなもんだな」
「鍛冶のお姉さんはボクを知っているのーなのさー?」
「ああ、あん時のお前はメチャクチャ強かったぜ。だが永きに渡る封印で神衣も記憶も剣技もレベルまで失った様だな。神格は浄化されている様だし力の一端を解放してやるよ。こっちに来な」

 トコトコとファーヌスに近づくイヴァ。その猫耳頭に右手を置き、集中するファーヌス。その手が薄っすらと青く光り始める。

「失いし力の一端よ、今ここヘファイルカヌスの名の下に解放する。メモリー・リリース記憶解放!」
「お、おおお? 痛たたた! 頭が痛いのさー! うきゅうううう!!!」

 エリシオンの自己再生された花畑の上を頭を押さえて転がり回るイヴァ。記憶を抉じ開けたんだ、俺もパズズに無理矢理やられたがハゲそうだったしなあ。あれは相当痛い。

「あ痛たたたた! ふぅ……、漸く治まったのさー。ん? お、おお? でも神衣の纏い方や神格や神気のコントロールに忘れていた聖剣技の記憶も蘇ってきたのさー。鍛冶のお姉さん、ありがとうなのさー! いや、ファーヌス感謝するのさ!」
「ああ、だが全てを解放したわけじゃない。脳や精神に掛かる負荷が半端ねーからな。後は自分で徐々に成長と共に解放していくがいいさ。さて、じゃあルクスの下に送るからな。エリックだったな、お前もこっちに来やがれ」
「あ、ああ、はい。お願いします!」
「ほほう……、なるほど、アイツが神格譲渡までするとは……。潜在能力はかなりのもんだな。おもしれえ、邪神共を蹴散らして来な! ルクスは世界樹の根元の世界、ユグドラシルにいやがる。じゃあ行ってこい! 強制転移!」

 フッ!!!

 二人の気配が消えた。転移が上手くいったのだろう。俺には全くルクスの気配など感じ取れないが、相変わらず神様ってのは規格外だな。

「じゃあ俺達も行こう。アリア、冥界、サーシャの下への転移は任せるからな」
「ええ、準備はいいですかー?」
「ちょっと待て」

 ファーヌスから止められた。

「サーシャの下に直接向かう前に先ずは冥界の管轄者のハーデアイドネウス、ハーデネスに面会しろ。冥界は広い。108の冥星と呼ばれる各所の管轄者もいる。突然向かえば敵扱いをされかねん。一応俺からも念話を送って事情は話しておこう。アリア、お前は初対面になる。失礼のない様にな。冥界が機能しなくなれば生死の輪廻システムが狂うことになる。絶対に阻止しろ、いいな。ハーデネスの元には俺が送ってやる。行け、強制転移!」

 シュンッ!!!




 こうして俺達は冥界に、エリック達はルクスの下に向かうこととなった。



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「さて、カーズの頼みだ。アガシャ、神鉄の装備を出せ。全く……、手入れもせずに神鉄を使わせるとはな、お前はアホかティミス?」
「ああ、いえ、申し訳ありません。人知れず行っていた実験だったので……、お姉様に頼むのも気が引けまして……」
「その時点で既に反逆の意思アリと思われんだろうが。特異点の研究もコソコソやるからこういう目に遭うんだよ。最初から父上に相談しておけば角も立たなかったものを。お前は詰めが甘い上に浅はかな大馬鹿だ」
「返す言葉もありません……」
ルナティック・アルコ狂月弓もメンテしてやるから、そこに置いとけ。フツマ、レピオス、邪魔な邪神が来る可能性もある。警戒は任せるからな」

 花畑に座っていた二人が起き上がり、周囲の警戒を始める。だが周囲に危険な反応はない。レピオスは邪神が現れたら自動で迎撃する魔法を罠の様に仕掛け、フツマは結界を張った。そしてその場で異次元倉庫から巨大な鍛冶道具のセットを取り出して作業を始めるファーヌスを眺めていた。

 カーン! カーン!

 神気を籠めた槌や様々な器具で、荒い作りだったアガシャの装備が美しく整えられていく。スターダストサンドで神々しい金色の輝きに整えられた長剣ルーナ・ジエーナに折り畳み機能が着いた長弓のルーナ・クレシェンテ。稀代の鍛冶職人ファーヌスに鍛えられた神器は神々しい光を放ち始めた。そうして完成した神器は、アガシャの神格に吸い込まれて行った。

「神器は常に振るうものじゃねえ。代わりにアリアが弟子入りしていた時の武器をやる。アストラリアソードとアストラリアボウだ。普段はこれで充分過ぎる程の逸品だ。オリハルコン製だからな。ほら、ティミス。お前の神器もメンテしておいた。普段はアリア製のSランクのソードと弓でも使っとけ、いいな」
「何から何までありがとうございます。お姉様。感謝の言葉もありません」
「気にすんな、神器のメンテは俺の仕事だ。お前は二度と悪巧みをすんじゃねーぞ。次はねえからな。首と胴体が離れる覚悟でやれ。アガシャに対する罪滅ぼしもきっちりやれよ。じゃあな」
「ファーヌス様ありがとうございました!」
「では行って参ります」

 ブゥン!!!

 ティミスの転移で、冥界の管轄者のハーデアイドネウス、ハーデネスに面会するために二人も遅ればせながら冥界へと移動したのだった。









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男前すぎるファーヌス。
実力も凄まじいが第一子だけあって発言力も強い!
でもみんなを気に掛ける男前な姉さんです!
さあ冥界編はどうなるのか!?
続きが気になる方はどうぞ次の物語へ、♥やコメント、お星様を頂けると喜びます。執筆のモチベーションアップにもつながります! 
一話ごとの文字数が多いので、その回一話でがっつり進むように構成しております。
今回のイラストは此方、
https://kakuyomu.jp/users/kazudonafinal10/news/16817330664244743392
 そしてこの世界ニルヴァーナの世界地図は此方、
https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/d5QHGJcz
 これまでの冒険と照らし合わせて見てみて下さい。
そして『アリアの勝手に巻き込みコーナー』は此方です。
https://kakuyomu.jp/works/16817330653661805207
 アリアが勝手に展開するメタネタコーナー。本編を読んで頂いた読者様は
くすっと笑えるかと思います(笑)
 そして設定資料集も作成中です。登場人物や、スキル・魔法・流派の解説、
その他色々とここでしかわからないことも公開しております。
 ネタバレになりますが、ここまでお読みになっていらっしゃる読者様には、
問題なしです!
『OVERKILL(オーバーキル) 
キャラクター・スキル・設定資料集(注:ネタバレ含みます)』
https://kakuyomu.jp/works/16817330663176677046
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皆様今後ともよろしくお願い致します。
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