OVERKILL(オーバーキル) ~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

KAZUDONA

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第六章 魔神討伐・神々の業

101 魔法理論と今後の方針

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「ただいまー」
「お帰りー。結構早かったんだね」

 アヤにそう言われて時間の流れが異なっていたのだと理解した。今日帰ることは前以て伝えていたから、アヤだけが屋敷の外まで迎えに来てくれた。大勢で出迎えられても目立つしね。

 帰還した自宅。下界での時間はまだ半月程度だった。その短期間に大迷宮を全て攻略し、魔神を4体滅却したアリア達みんなは凄いな。PTを分割してもルクスにサーシャ、ティミスもいたんだし戦力的には充分だったという訳だ。
 因みに地上での生活の為、ティミスにもサーシャと同様にロットカラーを名乗って貰っている。今のところは真面目にやってくれているみたいだ。

 ナギストリア一家も平和に暮らしていた様だ。その内何処かに旅立つとは言っていたが、気が済むまで居てくれればいい。アガーシヤとナディアもイヴァやルティ、ぶち達がよく一緒に遊んでくれているらしい。俺達の遠い祖先と言うか自分達自身と言うか、まあ親類の様なものだ。別人なのに不思議な感覚がする。
 この前まで殺し合ってたってのになあ、うん、不思議だとしか言えない。彼らとは多少言葉を交わし、PTのみんなが鍛練している地下室へと向かった。


「で、魔神と殴り合って逃したヴァカがアレか?」
「おう、任せてくれって言うから任せたんだがな。Sランク試験のときから進歩がねえ。さすがになあー、みんなに色々と言われ過ぎて凹んではいるが成長がないのは困る」
「立ち合いしても毎回同じなのよ。妹のチェトレはちゃんと駆け引きができるっていうのにね」

 地下の修練場の寛ぎスポットの一角でボケーっとしているアジーンを見ながらエリユズが教えてくれた。これは相当メンタルにキテるな……。ウチの連中は容赦ないし。そして地下で鍛錬していたディードとチェトレが此方へやって来る。

「二人も久しぶり。元気だったか?」
「ええ、でもカーズ様がいないのは寂しかったですけど……。ここには志を供にする仲間がいます。退屈はしませんし、幾らでも強くなれますから」
「ふふー、カーズにも見せてあげたかったわー。魔神をぶっ飛ばした私の活躍を!」

 二人共いつも通りだな。イヴァもまあ当然活躍したみたいだし、アガシャも同じか。ルティもアヤの召喚ランクが上がっている為、武器としての力も上昇している。武器が成長するってのもいいな。アヤとアガシャ、イヴァにアガーシヤとナディアはキッチンで手伝いをしていた。まだ夕飯には時間があるし、一丁揉んでやるとしますか。神様連中は上のリビングで寛いでいたしな。

「おい、アジーン。俺が相手してやる。こっちに来い」
「あ、兄貴?! は、はいっす!」

 我に返って返事をして一礼をするアジーン。どんだけボーっとしてんだ?

「お前はまるで進歩がないらしいな。今回は体術勝負じゃない。お前は体術だが俺は剣も使う。先を意識して立ち回らなければ超速再生があっても両断される。容赦しねえからな。神器を使ってもいいぞ。俺はその気になったら使う。準備しろ」
「はい。じゃあ遠慮なくいかせて貰います。来い、ゴッド・ハンド!」

 神格から光が溢れ、両手に俺が創造したグローブ型の武器が装着される。これがファーヌスによって神器となった俺の創造武器ね……。出来を見るためにも全員と稽古した方が良さそうだな。

「行きますよ、カーズの兄貴……!」
「遠慮は要らん、来い」

 ドンッ!

 やっぱり馬鹿正直に突っ込んで来たか。その瞬間アジーンの足元の地面が泥濘ぬかるみに変わり、そこから何本も手が伸びて来てアジーンの身体を縛り拘束する。隠蔽して先に発動させておいた魔法だ。

「ぐっ?! これはボトムレス・スワンプ底なし沼?!」
「その上位版、ボトムレス・バインド・スワンプ底なしの拘束沼だ。いつも言ってるだろ? いきなり突っ込むのは自殺志願者だとな」
  
 バキィッ!!! 

「アストラリア流格闘スキル、コメット・フィスト彗星拳
「がはっ!」

 闘気を乗せた左拳を顔面に撃ち込むと同時に、後方に吹っ飛んでいくアジーンの先に転移! 縦回転を加えたかかと落としを喰らわせる。

ユニコーン・ヒール一角獣の踵落とし

 グワシャァ!!! メキメキィ!!!

「うがぁっ!?」

 何とか両手を交差させて防御したが、その骨が砕ける音と感触がした。

 ザヴァァッ!!! ズンッ!!!

双龍そうりゅういちの型」
「ぐはああああ!!!」

 着地と同時に抜刀術で折れた腕を斬り裂き、鞘で胴体をくの字に折れ曲がる程の威力で殴打する。

 ドンッ! ゴロゴロゴロッ!!

 倒れたまま地面を転がるアジーン。距離が取れたと思うだろうが、俺の体内では全属性の魔法が次々に発射される準備ができている。納刀と同時に左手をかざし、その指先からファイア・ボール火球アイス・ヴァレット氷弾ストーン・ヴァレット石弾ウインド・カッター風刃アクア・ヴァレット水弾ライト・ボール光球ダーク・ボール闇球といった初歩の魔法だが、それが延々と雨の様に撃ち出される。

 ドドドドドドドドドゥッ!!!!!

「うぐああああ!!!」

 被弾しながら強引に詰めて来る。弱い魔法なら耐えられると思ったのか? じゃあこいつを受けて貰う!

ホーロドニー・スメルチ氷結竜巻

 ゴオオオオオオオッ!!!

「があああああっ!!!」

 以前ユズリハがやっていた氷嵐融合の魔法だ。体内で既に融合させていたからいつでも撃ち出せる。凍りつく様な竜巻によって架空の空へと吹き飛ばされるアジーン。その更に上に転移して飛ばされて来るアジーンへ向けて、光り輝く十字斬りを連続で放つ!

 ズヴァァ!! ザシュシュシュシュシュッ!!!

後光十字ごこうじゅうじ・八連」
「ぐはあああ!!!」

 ドオオオオオオオオオン!!!

 地面へと叩きつけられるアジーン。だがまだ立って来るか。傷も塞がって来ている。恐るべし超速再生だな。だがこれのせいでこいつの猪突猛進に拍車がかかっている。手荒いが今のままじゃダメだと思い知らせてやるか。俺も地面に降りる。

「くっ、本当に容赦なしですね……、兄貴。じゃあ俺も本気で行きますよ」
「気にするな。いくらでも本気で来い」

 カッ! ドゴオオオオオオ!!!

暴風龍壁ぼうふうりゅうへきか。なるほどね」
  
 てことはあのブレスか。さあどうしてやろうか。

「いくぜ兄貴! ダハーカ・ブレス!!!」

 両の拳を龍の口の様に構え、そこから黒い闘気が放たれて来る!

 ドゴオオオオオオッ!!!

 全身に全属性と闘気を織り交ぜた防護膜を鎧装の上に纏う。ダハーカ・ブレスの威力が俺の身体の上下左右をすり抜けていく。ダメージは0だ。

「なっ?! アレをまともに受けて無傷って……!?」

 ピキィイイイイイン!!!

「創造魔法、プロテス・オブ・オールエレメント・オーラ全属性闘気防護膜。もう何度も見てるんだよ、その奥義は。学習しろ、今度は俺の奥義だな。龍闘衣ドラゴローブを纏って本気で防御しろよ……、粉々になるぞ」 
「くっ、来い! 龍闘衣ドラゴローブ! 燃えろ神格よ!」
「神格・神気解放……。アストラリア流抜刀術・奥義」

 ダンッ! ガカアッ!!!

神龍しんりゅう

 アジーンの前方の空間に斬撃痕を刻み付ける。本当に斬りつけてしまうとこのレベル差だ。マジで粉々になるからな。

 キィーン! ドグゴオオオオオオオ!!!

 振り向き納刀! 斬撃痕から剣圧と神気の奔流が放たれてアジーンを飲み込む。そのまま後方へ吹っ飛ばされてアジーンは意識を失った。
 まあこんなものか。相当手加減したが、今のままじゃあただのまとだとわかっただろう。エリック達がポカーンとしているが、仕方ない。今までとは闘い方がかなり違って見えただろうからな。

ヒーラガHP・体力完全回復! 起きろ、アジーン」
「うっ、……そうか、俺は気を失って……?」
「休憩所に行くぞ」
「は、はいっす!」

 みんなが見ている階段近くの一画へと移動する。こいつらからも色々と言って貰わんとな。

「どうだった、アジーン? 今迄の闘い方で着いて来れると思うか?」
「……いえ、一撃も入れられなかったですし、このままじゃダメだとすげー理解出来ました。これからはもっと闘い方を考えます。でもカーズの兄貴は強過ぎですって。まるで勝ち目が見えなかったですよ!」
「だから工夫するんだよ。常に先を考えて駆け引きしないと当たらない。でも今のお前に当てるのは考えなくてもできる。そうしないとレベル差はひっくり返せないからな」
「なるほど……、兎に角今迄の自分じゃダメだというのはよくわかりました。精進します」

 うむ、反省しているようで何より。これでこの問題は片付いたな。

「て言うか、何なのよあの魔法の撃ち方は? 全く溜めがなかったじゃない! アンタまた変なことを習って来たんでしょー?! 教えなさいよね、カーズ」
「ええ、無詠唱だとしても明らかに速過ぎる。わたくし達が指先で高速発動させても1つの魔法のみが限界です。ユズリハの五指火球ファイブフィンガー・ファイア・ボールにしても、1つの属性だから可能と言えます。それとは明らかに異なるものでした」
「そうだな、俺も漸く多少魔法は使えるようになってきたが、一度に多属性を同時に撃ったり、何の溜めもなく融合した魔法を撃つなんて不可能だ」
「うーん、体内で既に魔法が出来上がっていた。なんかそーいう感じだったよねー、カーズ?」

 ユズリハとディードはエルフだけあって魔法の造詣ぞうけいが深い。気になって当然だ。チェトレも魔法と体術の合わせ技で闘う龍人族だけに鋭いし、エリックもかなり魔法の鍛錬をしているようだな。

「チェトレが正解だ。レピオスから習ったが、体内で魔力を練って魔法を創り上げておく。そうすれば後は練った順に撃ち出せばいいだけなんだよ。魔法融合も体内で行えば、あのバチバチいう反発音でロスする魔力もなくなる。聖魔融合でも魔力の減りは少ないんだ。撃ち出すだけだから詠唱しようが無詠唱で放とうが威力に違いはない。アリア達神々は魔法を撃つのが異常に速いと思ったことがあるだろ? それの答えがこれだ。俺達神格者は肉体も精神も魔力の流れる回路も頑丈だから練習すればすぐできる。だが、普通の人族が体内で極大魔法を構築したら魔力に肉体が耐えられない。だから誰もそんなことはできなかったんだよ。アリア達も自然に、さも当然の様にやっていることだからな、それを教えるという感覚がなかったんだろうな。俺達の課題は先ずこの体内での魔法構築だ。これができるだけで今迄の戦闘の幅がかなり広がる。アジーンが近づけなかった理由がわかっただろ?」
「はい、俺は只の射的の的みたいになってましたね。初級の魔法だったから生きてたけど、あれが中級以上になったら……、死んでたかもしれない程の数でした」
「取り敢えず今迄の闘いを見直す切っ掛けにはなったはずだ。これで同じことを繰り返すなら、必ず死ぬ。それは俺がダカルーのばーちゃんに申し訳が立たん。その前にお前は里に帰って貰う。そこんところは覚悟しとけよ、アジーン」
「はい、肝に銘じます……」
「今迄の俺達全員の闘い方をよく思い出せ。そしてイメージトレーニングしろ。エリックも似た様なもんだったぞ、初対面の時は。でもエリックがお前と違うのは、言われたことや体験したことをちゃんと反復して身に着けて来たってことだ。他者に出来てお前に出来ない道理はない。期待してるからな」
「お前はそれを言うのかよー? ひでーなカーズ」

 エリックからツッコミが来た。

「事実じゃないの」

 まあユズリハがそう言うのは予想してた。

「まあ兄さんがヴァカなのは昔からだしねー。もっと頭を使えってことよ」
「そうだけどなー、お前に言われるとムカつくんだよなー」
「あー、そういうこと言うんだ? 初代様に念話で報告してあげてもいいのよー?」
「あーもう、そういうとこが汚ねー!」
「ずる賢くなれってことでしょ。カーズやみんなが言いたいのは」

 うーん、ちょっと違うなー。ずる賢いと言うのは合ってるけど。

「人間的にそうなるのはどうかと思うが、バトルのときはずる賢くなれ。俺が前世でやってたスポーツにも『ずる賢いプレーをしろマリーシア』っていう様な言葉があるくらいだ。真っ向勝負じゃ勝てない相手にもからめ手を使えば勝率は格段に上がる。今のお前は実戦よりもこれまでの俺達のバトルを反芻はんすうして、脳内でトレーニングをすることだ。座禅でも組んでろ」
「うっす! じゃあそうします!」

 その場で地面に座って座禅を組むアジーン。こいつはこういう時は素直なんだよな。闘い方まで馬鹿正直だと困るってだけだ。その後も体内での魔法構築について色々と習ったことを教えた。アヤやアガシャにはまた伝えたらいいか。



 リアとククリが夕飯の知らせに来たので、俺は久々にみんなとの晩餐を楽しんだ。人数が増えているので賑やかだ。部屋はアリアがまた増築したらしいので数は充分足りているらしい。
 ナギストリア一家もこの半月で馴染んでいるようで良いことだ。このままここに住んでもいいんだが、いつまでも居候は居心地が悪いとナギストリアが言うので、その内何処かに行ってしまうかも知れない。今は剣の鍛錬をしているらしい。冒険者でもやるつもりなのかも知れないが、彼らの漸く掴んだ幸せだ。俺がとやかく言うのも野暮だろう。
 今は戦力アップと未だ見つからないロキ、ローズルキーの捜索が最優先だ。あの魔神は何をするかわかったもんじゃない。どうにかして見つけないといけないが手掛かりがない。ギルドに相談してみるか。明日にでも行ってみよう。


「―――――てことで明日ギルドに行ってみようかと思う。クラーチのオッサンにも一応聞いてみるが、怪しい事件的なものをどう探すかだよな……」
「あの魔神は気配を消すのが、あと変装が得意なんですよね、カーズ?」
「ああ、アリアの星の目スター・アイで見つからないか?」
「この世界にいるという気配は感じるんですけどねー。それ以上は何とも。サーシャ達の目には映りますか?」
「いいえ、アリアのとそう大差ないわ。いるのはわかるけど、それが何処なのかという詳しいことはサッパリね」
「俺も同じ感じだな」
「私もね。多分それが権能とかだったらUSユニークスキルよ。そう簡単に見つからないでしょうね」

 アリアは兎も角、サーシャにルクス、ティミスにも視えないのか……。これは思ったより厄介だな。

「やっぱりギルドの助力は必要だな。アリア、ステファンに制約ギアスをかけてでも協力して貰おう。ぶっちゃけ濁しながら説明とか無理だ」
「仕方ないですねー。この際悠長にしていられませんからー」  
「あなた達結構無茶してるのね……」

 ティミスが軽く引いている。月の独裁者のお前が言うなとは思うが。

「クラーチの王族関係者とかほとんど制約ギアスかかってるけどね。まああそこは親類になるから仕方なかったし」

 淡々とアヤが言ってのけた。ティミスがすげー引いている。

「まあそういうことだな。エリック達も最初は制約ギアスかかってたもんなー」
「そういやそうだったなー。神格者になってから消えたみたいだけどな」
「そうね。私も気にならなくなったけど、そういうことだったのね」

 そうか、エリユズは最初に天界に行く前だったもんな。

「わたくしも似た様なものです。カーズ様の『血の盟約』を受けてから消えたのですね」

 ディードは大魔強襲スタンピード直後だったな。あの時は巻き込んでしまったなあ。まさかここまでずっと一緒に旅をすることになるとは思わなかった。あっという間だったが思い出すと感慨深いもんだ。

「すごいわね、それだけ縛っておきながら誰も制約ギアスに反していないなんて……」
「人間も捨てたもんじゃないだろ? まあもう俺らは人間とは言えないかも知れないけどさ」
「そうね、あなた達には驚かされてばかりよ……」
「アンタも丸くなったみたいだな。前よりはとっつきやすい」
「まあね。色々と考えさせられたわ」

 ティミスの中でも色々と変化があったのだろう。以前の高圧的で不遜な感覚が消えている。まあプラス方向に変わったのならいいことだ。
 そうだ、魔法についてアリアに言いたいことがある。

「おい、アリア。魔法は体内で魔力を練って構築してから撃ち出すんだってな。何で早く教えてくれなかったんだよ。レピオスから聞いて目から鱗だったぞ」
「あ、あー、いやあ当然の様にやってたことだったのでー……」
「ほう、それで?」
「う、うーん、あー、そ、そう、呼吸ですよ、呼吸!」
「何言ってんだ?」
「えーと、当然の様にするから、誰にも学ばないでしょう? 私達神にとってはそれくらい当然だったんです。だから教えるという感覚がなかったんですよー、って言うのはどうですか?」

 どうですか? って何だよ。

「最初に稽古を受けた時点で知れていたらなあ、かなり変わっていたとは思うけど、ユズリハとかは最初は神格者とかじゃなかったから知らなくて良かったのかも知れないもんな。魔力に体内が耐えられなくなる可能性もあったんだし。てことで50点」
「ええー?! 低い、低いです!」
「だって俺には個別で教える時間はあったはずだろ? 最初にスタートしたときから俺には神格があったんだし。因子とか言って濁されてたけどなー」
「あの時は記憶の蓋があったので仕方なかったんですー。まさかそんな直ぐに封印が解除されるとは思わないでしょー?」
「そうだなー、あっさりパズズに負けたもんなー。ポンコツ女神め」
「うむむー。でも結果的には勝てたから良かったじゃないですかー?」
「うわー、結果論じゃん。そういや冥界でもあいつと闘う羽目になったしなー。誰かが以前シャドウ・スタブ陰影の串刺しでサックリやられたお陰で俺は引っ掛からずに済んだけどなー。冷静にいなせば何てことないよなー」
「カーズ、根に持ってますね? 私があの時すぐ退場したこと」
「いやー全然。誰かのせいでアヤが死ぬ目に遭ったし、俺も死にかけてキツかったなあーとか全然思ってないぞー」
「それ根に持ってるって言うんですよー!?」
「まあ、後は肝心な時にスキルがマジ使えねーな、とかも思ってないからな」
「ムキー!!!」

 バタバタするアリア。みんなが笑う。短い間だったけど帰って来たなあと感じる。世界が大変なのは一時的にでも俺達の様な特異点が7つも揃った悪影響なのかも知れない。
 今となっては魔王化が解けたアジーンとチェトレは違うとして、俺とアヤにアガシャ。その他に、元勇者ジャンヌのピュティアはどうなのかよくわからんが、奇蹟的に救われて清魂となったナギストリアにアガーシヤと娘のナディアがいる。また7つになっているということは世界に何かしらの影響があるのかも知れない。まだ且つて天界でナギストリアが言った『混沌の時代』は続いているということになる。

 いつか、『7色』とも闘う日が来るのかも知れない。背後にいる『大いなる意思』とやらも。どうなるかはわからない。この世界ニルヴァーナだけの問題でもない。他の世界にも行く可能性があるだろう。だが、何があっても負けるわけにはいかない。兎に角今は強くなろう。どんな理不尽な暴力も吹き飛ばせるような揺るぎない強さを手にしなければ、いつまで経っても誰かの思惑の中だ。

「強くならないとな……」
「どうしたの急に?」
「いや、この何の変哲もない平凡な日々を護っていかないとなあって」
「そっか、そういうこと考えてたんだ。私も同じだよ。そして私達にはそれができると思うから。カーズ、君がいてくれるからそう思えるんだよ」

 左隣に座っているアヤと手を繋ぐ。

「うん、俺も君が、アヤがいるからこそ、そう思うんだと思う。明日はギルドだ。いい情報があるといいんだけどなー」
「うん、そうだね」

 その日は結局俺の帰宅記念ってことで派手に飲み会になってしまった。まあ何かしら理由をつけてバカ騒ぎしたいだけなんだけどね。メイド組も一緒になって大騒ぎだった。みんな潰れたので片付けはまた明日。



 俺とアヤは久しぶりに一緒のベッドで温もりを感じ合いながら眠りに着いた。ギルドで何かしらいい情報があるといいんだけどな。




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