2 / 66
難しい年頃
02
しおりを挟む
「ただいま……無垢?」
午後八時半を過ぎて帰宅したマンション、リビングの明かりは消えている。しかしメールで伝えてあったからか炊飯器では米が炊き上がって保温モードになっていた。無垢は今日も夜遊びか、一緒に夕飯を食べるつもりで米を炊いてもらっていたのに。何時に帰ってくるのか知らないが、先日決めた午後八時の門限は守ってほしい、彼はまだ十六歳なのだから。
「十六か……」
そう思って自分の十六の頃を思い出せば、可愛げのない子供だったのは間違いない。誰にも心を開かずに、一人部屋にこもっていることが多かった。
そんなある日私に突然弟が出来た、向島の家の遠縁の子供だと言う。思えば父母は血の繋がりのない子供引き取って、自分の子供のように愛する。しつけは厳しかったが、なんと愛情に溢れた人々だったのだろうか。
当時六歳の突然現れた弟は、戸惑いながらも何かと私の後についてくる。ろくに文字も書けずに泣いてばかりいた無垢がかつて育児放棄をされていた子供だったと言うのは、二十歳を過ぎた頃母に聞いた。そのためか今でも無垢は幼い頃の話をすることはなくその辺りの感情は私もわからないことはないが……。
戸惑いながらも私は幼い無垢に文字の読み方から書き方までをその手とり足とり教えたのを覚えている。あの頃の私は子供が苦手で、泣きわめく無垢にどうしたら良いのかと呆然としたのも今では良い思い出だ。
その時玄関の扉が開いた、そこには派手な服装をした無垢が立っている。
「無垢、一体何時だと……」
「……」
無垢は何も言わないまま、自分の部屋に入って行く。
「おい、夕飯は食べないのか?」
「……今夜はもう寝る。めんどい」
「無垢」
何をしているのかは知らないが、懐っこかった無垢はすっかり自分の世界を持ってしまった。いつまでも保護者にべったりでは困るが、これはこれで寂しいものだし道徳に反することをしていたらそれこそ止めなければ。
「おい、無垢」
数度のノックと声をかけた。しかし、扉の向こうからは返事が返ってくることはなく、廊下の端には未だ散らかしたままのダンボールが重なっていた。
午後八時半を過ぎて帰宅したマンション、リビングの明かりは消えている。しかしメールで伝えてあったからか炊飯器では米が炊き上がって保温モードになっていた。無垢は今日も夜遊びか、一緒に夕飯を食べるつもりで米を炊いてもらっていたのに。何時に帰ってくるのか知らないが、先日決めた午後八時の門限は守ってほしい、彼はまだ十六歳なのだから。
「十六か……」
そう思って自分の十六の頃を思い出せば、可愛げのない子供だったのは間違いない。誰にも心を開かずに、一人部屋にこもっていることが多かった。
そんなある日私に突然弟が出来た、向島の家の遠縁の子供だと言う。思えば父母は血の繋がりのない子供引き取って、自分の子供のように愛する。しつけは厳しかったが、なんと愛情に溢れた人々だったのだろうか。
当時六歳の突然現れた弟は、戸惑いながらも何かと私の後についてくる。ろくに文字も書けずに泣いてばかりいた無垢がかつて育児放棄をされていた子供だったと言うのは、二十歳を過ぎた頃母に聞いた。そのためか今でも無垢は幼い頃の話をすることはなくその辺りの感情は私もわからないことはないが……。
戸惑いながらも私は幼い無垢に文字の読み方から書き方までをその手とり足とり教えたのを覚えている。あの頃の私は子供が苦手で、泣きわめく無垢にどうしたら良いのかと呆然としたのも今では良い思い出だ。
その時玄関の扉が開いた、そこには派手な服装をした無垢が立っている。
「無垢、一体何時だと……」
「……」
無垢は何も言わないまま、自分の部屋に入って行く。
「おい、夕飯は食べないのか?」
「……今夜はもう寝る。めんどい」
「無垢」
何をしているのかは知らないが、懐っこかった無垢はすっかり自分の世界を持ってしまった。いつまでも保護者にべったりでは困るが、これはこれで寂しいものだし道徳に反することをしていたらそれこそ止めなければ。
「おい、無垢」
数度のノックと声をかけた。しかし、扉の向こうからは返事が返ってくることはなく、廊下の端には未だ散らかしたままのダンボールが重なっていた。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
「好きって言ったら負け!」完璧すぎる生徒会コンビの恋愛頭脳戦は今日も平行線です~恋は勝ち負けじゃないと知るまでの攻防戦
中岡 始
BL
「好きって言ったら負け」
それが、俺たちの間にある、たったひとつのルールだった。
星遥学園の顔、生徒会長・一ノ瀬結翔と副会長・神城凪。
容姿、成績、カリスマ性――すべてが完璧なふたりは、周囲から「最強ペア」と呼ばれている。
けれどその内側では、日々繰り広げられる仁義なき恋愛頭脳戦があった。
・さりげない言葉の応酬
・SNSでの匂わせ合戦
・触れそうで触れない、静かな視線の駆け引き
恋してるなんて認めたくない。
でも、相手からの“告白”を待ち続けてしまう――
そんなふたりの関係が変わったのは、修学旅行での一夜。
「俺、たぶん君に“負けてもいい”って思いかけてる」
その一言が、沈黙を揺るがし、心の距離を塗り替えていく。
勝ち負けなんかじゃない、想いのかたちにたどり着くまで。
これは、美形ふたりの駆け引きまみれなラブコメ戦線、
ついに“終戦”の火蓋が落ちるまでの物語。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる