純白のレゾン

雨水林檎

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子守唄うたって

07

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 ふわりと掛布団をあげたら無垢が子供のように飛び込んできた。甘えているのか、私の胸元に耳をつけて。

「こらこら、くっつくほど寒くはないだろう?」
「心臓の音が聞こえる……」
「そう? まあ生きているからね」
「俺さ、弱い砂和さん見ると不安になる。もうどこにも行かないで」
「私はそこまで強い人間じゃないよ」
「……知ってる」

 しかし無垢の手がまるで乞うように私の背中に回って抱きついてくる。あの小さな手がもうこんなに大きくなって……。

「大きくなったな、無垢」
「砂和さんが小さくなったんだよ」
「はは、ああ言えばこう言う」
「笑うな! バーカ」

 その言葉とは裏腹に無垢は私に抱きついたまま、涙を拭うように頬ずりをした。寂しい夜はいつもこう、私に寄り添って離れないのだ。けれどこの温もりに一番救われていたのは私の方だったのかもしれない。

 左手首にはやはり消えない傷がある、けれどもうこの傷はすっかり塞がっているから。

「無垢、部屋の音楽消しておいで。もう寝るよ」
「あれは子守唄なんだよ、俺と砂和さんがよく眠れるように」

 ***

 今この家には二人の子供がいる、それぞれに心に傷を抱えて、だからこそせめて今夜は一緒に眠ってしまおうと誓った。寂しい子供、だけど一人が二人になったらもうどこにも怖いものはない。

「おやすみ、無垢」

 抱きついたままの無垢は固く目を閉じて、小さな声で『おやすみ』と返し長いため息をついた。
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