純白のレゾン

雨水林檎

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お別れの日

02

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「お父さん、お母さん、長い間どうもお世話になりました」

 別れ際にそう言って深く頭を下げていた、その時に理解する。ああ、彼はもう向島の家に帰るつもりはないのだろう。かつて結ばれた縁のお礼を言って、もうこれからは自立するのだと。
 だけど、俺は? ねえ、俺を置いていって平気なのかよ。人ひとりいなくなった部屋は半分の家具を失いがらんとしている。何もかも持って行くことないだろう。荷物は置いておいてまた取りに来ればいいじゃんか。

「お兄ちゃんなんか、もういらない! 帰ってくるな、もう会わなくっていい……!」

 幼い俺の口をついて出てしまったその言葉は、きっと彼を傷つけた。

 ***

「へえ、意外と田舎じゃん」

 都会を過ぎたら海が見えた。住宅地もぽつりぽつりと。一時間も電車を乗り継げば、もう故郷の景色と変わらない。むしろもっとのどかに見える街。自宅最寄駅で、『お兄ちゃん』が待っている。
 あれから彼とはまともに口もきかなかった。電話がかかっても無視してたし、両親に言われても一切のコミュニケーションを断絶していた。
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