純白のレゾン

雨水林檎

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お別れの日

03

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 一ヶ月前に向島の両親が事故で亡くなった。訃報を聞いた彼はその日、ろくに荷物も持たずに帰郷して、俺と再会する。相当驚いたのだろう、顔色は悪くスーツも乱れている。

「無垢……大丈夫か?」
「……」
 大丈夫じゃないのはあんたの方だろ。俺だってそれなりにショックは受けてたし、亡くなった両親の顔をろくに見られなかった。結婚記念日に二人っきりで旅行して、そのまま帰ってこなくなった、という話。
 彼は背中を震わせて、しばらくその堪えている息遣いだけが聞こえていた。真夜中の病院は不気味で怖く、俺は泣くどころじゃなったけれど。

 それからの葬儀の云々は全て滞りなく済んで行った。ちらりと見た彼の顔が日々疲弊して行く。でも俺にはよくわからないことばっかりだったし、それはまだ若い彼もだっただろうが、それでも知らない親戚に頭を下げて挨拶して。俺がぼんやりと距離を置いてその様子を眺めていれば、そのまま彼は仕事の関係で帰宅する日になった。

「無垢、こっちに来る日はこのメモの通りの電車に乗りなさい。引越しの宅配便は夜間指定にして、中身は必要なものだけ選んで……あと、ああ」

 もうすぐ電車の時間になってしまう。とにかくわからなかったりしたら電話をするように、そう言って彼は何度も振り返りながら家を出て行った。この家は借家だったから、もう引き払って俺は彼の元で暮らすことになった。転校は嫌だったしそれよりも俺は、まず……。

『……もう、いらない!』

 その言葉は、言うべきじゃなかった。心に残った罪悪感が何よりもあの人のそばに寄れない理由で。
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