【R-18】呪いを解かない神官ちゃん

右折坊太郎

文字の大きさ
12 / 19
呪いの発現編

12、ユーリとローザ

しおりを挟む
「あ、あの……ローザさんっ!」
「ん……? どうしたんだい?」

 話し合いを終え、部屋を出ていったローザを、ミューは廊下で呼び止めた。

 ユーリはというと、酒場の二階にとっている部屋で休息を取るつもりらしく、この場には二人しかいない。

 ミューは、自身の行いを見逃してくれたローザに、深々と頭を下げる。
「あ、――ありがとうございます!!」

 その行動にローザは一瞬、ギョっとしながらも苦笑する。
「気にすることはないさ」

「で、でも――」
「それより、ミュー……腹が空かないかい?」

 突然の問いに、ミューは困惑しながらも、空腹を感じ始めていた。

「えっ? あっ、はい……」
「そんじゃ、甘い物でも食べにいこうか」

 ローザは気持ちの良いニカッとした笑みを浮かべると、ミューの腕を取り、連れ出していく。



 そして、ミューとローザは、スイーツが有名なカフェを訪れていた。

 酒場とは違う、落ち着いた雰囲気の内装。
 丁寧に磨き上げられた室内は光を反射し、輝いている。

 夕方のせいか、客も少ないようで、奥のテーブル席に二人は着いて、スイーツを口に運ぶ。

「――美味しい……っ!!」
「だろう?」

 甘いクリームの乗ったケーキを一口食べ、表情を輝かせるミュー。
 ローザはそれを、母親のような温かな笑みで見守っている。

「それで、ミュー……」
「あっ、は、はいっ!」

「――ユーリのことが、好きかい?」
「……あっ、え、えっとぉ……っ!?」

 ミューは慌て、手に持っていたフォークを落としそうになる。

「答えなくてもいいよ。アンタの反応を見りゃあ、わかる」
「うぅ……。あの、どうして私の嘘を見逃すようなこと……したんですか?」

 身を小さく縮こまらせ、上目遣いでローザの顔色をうかがう。

 彼女は過去を懐かしむような、何処か遠い目をして、ミューにこう言った。
「それはねぇ――アンタの気持ちがわかるからだよ」

「えっ……!?」

「アタシも、好きなのさ……ユーリのことが」
 決して、ミューには真似出来ない、余裕のある笑みだった。

「そ、それは……人として、ですか? それとも――異性として?」
「――両方だよ」

 ローザは一度大きく息を吐き、気持ちを落ち着けると語り出す。

「昔の話さ、アタシがまだ冒険者として駆け出しだった頃、好きだった男がいた。素直で優しくて、困ってる人を放っておけないヤツさ。――死んじまったけどね」
「……っ!?」

「その時さ、アタシが冒険者として一人前になろうって決意したのは。それまでは、好きな男と一緒にいたいが為に冒険者をやるような、そんな甘っちょろい人間だったんだよ。そういう自分の甘さのせいで、取返しのつかないことを招いた。大切な人を戦いで失ったアタシは、同じ思いをする人間をひとりでも減らすよう、がむしゃらに冒険者をやって、気付けばSランクなんて、大層な称号までもらえるようになったのさ」

 ミューは神妙な面持ちで、黙ってローザの話を聞く。

「そんな時、ユーリと出会ったんだよ。アイツが冒険者として駆け出しの頃、アタシが戦っている姿を見て、指導を頼みたいって、頭を下げにきたのさ。やけに真剣な顔で、雰囲気が昔の男そっくりだった。それで、何だか断れなくてね。稽古をつけてやるようになったのが、始まり……」

「そう、だったんですか……」

「元々、腕は悪くなかったから、教えることはそんなになかったよ。だけど、当時、毎日戦うばかりだったアタシの心を、アイツは癒してくれた。それで気付いたのさ、支えてくれる存在が、愛しい人がいることが、どれだけ救いになるのかを。そこからは考えを変えて、酒場を経営し、冒険者をサポートする側に回ることを決めたのさ」

「じゃあ、ローザさんが今の仕事を始めたきっかけって――」

 ミューが問うと、ローザは少し顔を赤くし、頬を掻いた。
「そうだよ、ユーリのおかげさ。これは、秘密にしといておくれよ?」

「……ふふっ、わかりました」

「新しく酒場を開いた時も、ユーリは助けてくれた。アタシが冒険者としての実績はあっても、酒場を切り盛りする情報屋としては、まだまだだったからね。新参者でお抱えの冒険者がいない始めのころ、アイツがウチ専属の冒険者になって、依頼を次々とこなして、アタシの酒場を盛り立てるのに、一役買ってくれたのさ。これで、昔の話は終わり……」

 テーブルの上に置かれた紅茶を、ローザは一口飲んだ。

 その表情から察するに、彼女にとって良い思い出だったのだろう。
 懐かしさの混じった、美しい顔であった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

放課後の保健室

一条凛子
恋愛
はじめまして。 数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。 わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。 ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。 あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...