D×DStrike〜俺と悪魔の反乱物語〜

藤沢 世界

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2章

悪魔的残酷さ

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「ここ……どこ?」

カビ臭く、薄暗い部屋で目を覚ました深雪麻友はそう呟いた。

「くっ……かはぁ。」

どうやら彼女の周りには水の様なモノが張り巡らされているらしい。なんとか脱出しようと麻友は試みたが、

「苦しく……無い!!」

その水の様なモノは麻友の肉体を優しく包み込んでおり、彼女には次第にそれがとても危険そうなモノには思えなくなっていった。

それにはどこか懐かしさの様なモノでさえ、感じられたのだった。

「やあ、目覚めたかい?」

そう言って現れたのは山本晶であった。

「山本……センセイ?」

「どうやら万事上手くいった様だな。」

そう言って山本は麻友の閉じ込められているカプセルに付いているパネルを操作した。

「ぷはぁ。」

麻友は外の空気を味わった。どうやらしばらくの間このカプセルの中にいたらしい、カビ臭いといってもそれは麻友に清々しい空気を送ってくれたらしい。

「良し、じゃあ行こうか……君のお兄ちゃんに会いに。」

そう言って山本はその手を麻友に向かって差し出した。

「うん。」

小さな手が山本の手を握る。

そして二人は消えて行った。

   ***

「眠れない……」

時刻は午前0時、時計は既に天辺を回っていた。
二階堂凛奈は寝付けづにいた。

「?何かしら……アレ。」

そう言って窓の向こうを見やる。外は暗闇に包まれていた。

しかし、一点だけひどく歪な明かりを放つ光があった。

「?!」

___刹那、ソレは凛奈に向かって来た。

窓のガラスの砕け散る音がする。

魔力マナでの攻撃?」

床に散らばった硝子が徐々に集まるのを見て凛奈はそう言った。

「下がれ、凛奈!」

そう言ってロジャーが闇の中から現れる。

___飛んで来る無数の魔力マナの斬撃。

___ロジャーも負けじと魔力マナを展開して対抗する。

「離脱するぞ。」

凛奈は空を駆けていた。正確にはロジャーが凛奈を抱えていたのだが……しかし、決してロジャーの背が高い為抱えられて浮遊感に襲われたのではなく、まさしく空を浮いていたのだ。

「ちょっと何よこれっ!」

「暴れるな、落ちてしまうぞ。」

凛奈は最初の方こそ暴れていたが、

魔力マナを使っているのね。」

その原理を理解したのだろう、次第に落ち着きを取り戻していった。

「ああ、これは空気中の魔力マナを踏む事によって空を飛ぶ様に見せているのだ。」

魔力マナは物質に影響を及ぼさない。しかし、それには例外もあり、一時的に影響を及ぼす事もあるのだ、先程の硝子の様に……春野芽生の様に。

後ろを見やると、どうやら先程凛奈を攻撃して来た輩は空を歩けないらしくもう既に豆の様になっていた。

「だいぶ離したわね。」

そう言った刹那、凛奈の目の前に無数の魔力マナがまたしても展開される。

「何っ……」

どうやら彼女達は待ち伏せをされていたらしく、先程のは陽動しただけのようであった。

「しまった……」

無数の魔力マナの斬撃が迫り、唾を飲み込んだとき___

煌びやかな粒子が宙を舞っていた。

「大丈夫か?」

そこには真紅に燃え上がる剣を握った正義の味方、那須太一の姿があった。

___彼が宙を一閃する。刹那、空気が燃え上がり、圧倒的にな破壊が顕現した。

「一旦ここから離れよう。」

そう言う彼の身体にはドス黒い血が付いており、しかし、その顔は爽やかに笑っていた。

  ***

「誰だ……」

無菌室に続く廊下、そこから響く靴の音がした。

深雪六花の一日はもう終わった筈である、にも関わらず、六花を起こしたのは一体誰であろうか。

「ここから逃げましょう、お客様。」

そこには本来ならば、ここにはいてはいけない、そのような事を言う筈の無い、グレートヒェンの姿があった。

「一体、どうした?」

六花は拘束具を解くグレートヒェンに対してそう尋ねた。彼女に一体なんの変化があったのだろか……彼女の行動は六花の理解の範囲を超えていた。否、この数日の間に彼の理解の範囲を超えなかった‘事こそ少ないが……

「今は説明をしている暇はございません。」

そう言って急く様にグレートヒェンはその手の動きを速める。

「おいおい、何をしているんだ、愛しいグレートヒェンよ……」

「山……本?」

そこには山本の姿があった。

なんとも不思議な感じがした。六花にとっていくらホムンクルスでも、実際にその目の前で死んだ相手に直接対面するという感覚は無いモノであった。

「そんなに驚かなくても良いだろ?なにせお前は黒装束を相手取った事があるし、それに、筈だ。」

「なんでお前がそれを……」

六花はまごつきながらもそう言った。

彼が、山本がその事を知る訳が無いのである。彼女でも、グレートヒェンでさえもその事を知らなかったのに……

「お兄ちゃんっ……」

その愛しい聞き慣れた甘えた様な声によって深雪六花は絶望に叩き落とされた。

「麻友……」

愛しい、六花の天使がそこにいた……
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