D×DStrike〜俺と悪魔の反乱物語〜

2章

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「当たれッ、当たれ当たれ当たれッ。」

何度も利器は空を鋭く裂く。

「だから言ってるだろ？僕には当たらないって。」

嘲笑うかのように宙を舞い、男はそう言う。

「当たらないんだよそんな軟弱な憤怒じゃあね。」

太一の頭の上まで飛躍して男はゆっくりと噛みしめるかのようにそう言った。

刹那、男はその身を翻し、空を蹴るかのようにして彼の元へと一気に近ずいて来る。

「僕が教えてあげるよ……本当の大罪ってヤツをね。」

榮倉はそう言って彼の劔をその口に頬張っていた。

「ほうほう。中々コレは。」

癖になりそうだ、男はムシャムシャと咀嚼していた。

「ふぅ。ご馳走さま。」

お粗末様、とは太一は口にできなかった。ただその代わりにその口から漏れるのはヒュウヒュウと言った空気の掠れる音のみだった。

「うん。それじゃ始めようか。」

男の掌に魔力マナが集中する。雷のように放電を繰り返すソレは男の掌から太一のモノと全く同じ劔を生み出した。

否、太一の劔の方は無残にも食い破られて半分ないのだけれど。

男は飛び上がるかのようにして一度宙を蹴るとそのまま一気に間合いを詰める。

彼も負けじとワンテンポ遅れて迫って行く。

激しい火花が舞った。

しかし、その男の剣術の腕前、既に入達しており、彼の未熟なソレでは敵わない。

次第に彼の方が剣先に斬りつけられて行く。

「お前は私を何者か、とそう問うたな。」

眼光をさらに鋭くし、獲物を狙う猛禽の様にして冥土の土産だ、と言わんばかりの調子で男はそう言った。

「私の正体は……神に塑逆せし者、大悪魔暴食、魔王“ベルゼブブ”が尖兵の一人である。」

男は狂う。狂いたくってその剣をナイフの様に切りつける。

「悪魔……だと？」

太一は小さく、反撃の狼煙を上げた。

   ＊＊＊

「お兄ちゃん……」

少女、深雪麻友はたどたどしくそう呟きながら森を歩き回っていた。

「あなた……大丈夫？」

月光に照らされた彼女の顔はまるで麻友を助けに来たヒーローの様に見えた。

否、彼はここにはいないし、今彼女を助けてくれはしない、例えそう望んだとしても出来ない。

ヒロインが麻友を、一人孤独な少女を暖かく迎えに来たのであった。

「お兄ちゃんが……」

潤んだ瞳に見つめられ、二階堂凛奈は構わず少女を抱きしめる。

震えていた。少女はその小さな体を震わせていた。

彼女の中で彼女の残像が思い起こされる。

かつて救えなっかった彼女‘、手を差し伸べたのにも関わらずその手を振り払った彼女。

しかし、この少女はその手を決して振り払おうとはしない。

むしろかえってその身を凛奈に預けて来る。

「私に話を聞かせてくれる？」

優しく彼女はそう言った。

  ＊＊＊

「まったく……」

彼はひどくご立腹であった。

「困った人だ。」

ロジャーはため息をつきながらそう言って、宙を駆ける。

彼のその虫は何も彼を一人で送りこんだ二階堂凛奈に対するモノだけではなかった。

彼はむしろどちらかと言うと躊躇していたのだ。このままあの胡散臭い男を助けに行く事が。

「なんだ……コレは？」

その足の回転を止める。彼がそう見上げた先には、高笑いするその身に血を浴びた彼の姿があった。

ギロリと彼はロジャーの姿を捕捉する。

「お前も殺してやる。」

男はそう言って彼に襲いかかった。