D×DStrike〜俺と悪魔の反乱物語〜

2章

聞いた

「どうやらお前からは事情をキチンと説明してもらう必要が、やはり、ある様だな。」

那須太一はハッキリと厳しい口調でそう言った。

「ハァ？なんだと？すまんがもう一度言ってくれ。」

聞き間違いか、その絶望的に不利な状況でそう強気で言う彼に対して、男はそう訊いた。

「ああ、何度でも言ってやるさ。お前を僕は支配するッ。」

そう言った後、彼の瞳が輝き出す。

かつて人を導き、操って来た太一の奥の手が発動された合図であった。

「何かしたのか？」

榮倉は悠然としかしそう言い放つのだった。

「どうやら……不発に終わった様だな。」

奥の手が効かない、その絶望的な状況で、彼は笑っていた。

「ははははハハハハハは。」

「何がそんなにおかしい？」

不気味なものを見るかの様に榮倉は彼をまじまじと見つめる。

しかし、太一はなおも笑う事を止めようとはしない。

「何故そんなに笑ってられる。」

その不可解な彼の行動に榮倉はその間合いを一旦広げた。

「俺の技が効かなかった、そうお前は思っているだろう？」

彼は仁王立ちでそう高らかと言い放った。

「何故、今そんなにカッコいいポーズを？」

まさしく主人公、といった彼のその傲慢な態度に戸惑う。

「いやいや。効いたのさ……俺の技はちゃんとな。」

男は不気味に思い斬りかかりに行く。

目の前にいるのは先程まで自分が痛めつけていた未熟な剣士の筈だ。その剣をもってしてその身を絶てばこの不可解な、気持ちの悪い男を黙らせる事が出来るだろう、永遠に。

その剣が彼の目に差し掛かった時、

「お前は既に死んでいる。」

そう不敵に笑う青年の姿が映った。最後に映った。彼の瞳に。

「いいや、始めからそもそも生きていなかったんだな。」

真っ赤な血飛沫が空に広がった。

その飛沫の中から一本の剣が回転して彼の元へと旋回して来る。

「お前も殺してやる。」

その剣を掴み取り、那須太一はそう言ってまるで害虫を殺すかの様にロジャーを睨んだ。

   ＊＊＊

「助けて……」

少女の悲痛な声が二階堂凛奈の胸に響く。

「お兄ちゃんって誰？」

優しく彼女は問いかける。

「みゆき……深雪六花。」

彼女は少女の肩を強く握りしめていた。

「い、痛い。痛いよ……お姉ちゃん。」

「ああ、ごめんなさい。」

漠然と少女の肩から手を離す。

「それで、お兄ちゃんがどうしたの？」

『改造されたの私もお兄ちゃんも。』

＿＿＿少女ハ残酷二ソウ言ッテ笑ウノダッタ。

   ＊＊＊

「だから言ったんだッ。」

彼は走る。さっき彼が来た方向とは正反対の方向へと。

「おいおい逃げるなよ、僕たち仲間だろォ？」

彼から見ても男の全身にベッタリと着いた血は彼等を庇うために男が敵と戦っていたために着いた太一自身の血ではない事はハッキリと解る。

剣先の鋭く尖った利器を男はそう言いつつも振りかざす。

「せっかくコッチがお前を楽に殺してやろうかと親切に思ってやっているのにさぁ。」

「ふざけるなッ。ようやく化けの皮が剥がれたな。」

「何言ってんダヨ。化けの皮って……バケモノはお前達の方だろ？」

ケタケタと笑みを浮かべて男は迫る。

「さあ、そろそろ死ねよ。お前のご主人様とはもう十分に距離を取ったろ？」

「あの人には……指一本触れさせはしない。」

竜攘虎搏、両者相討つ。