12 / 69
初めての冒険編
11.ゴブリン退治2
しおりを挟む
怜央は反射的に目を閉じた。
それが取りうる行動の中で1番の愚策と知りながら。
普通ならこの時点で、怜央の命は尽きてもおかしくはない。
だが幸いなことに、今は仲間が居た。
乾いた破裂音と共に、刃物ではなく肉塊がぶつかってきた怜央。
それはゴブリンの死体。
横にいたテミスがすれ違いざまに頭を撃ち抜いて倒してくれたのだった。
「ほら、ぼさっとしてると死ぬわよ? 囲まれてるんだから」
「まったく、ゴブリンの相手だなんて……。今日は最悪な1日ね」
「怜央、立て! いいか、俺の後ろにいろ! 絶対にお前を守ってやるからな!」
(やだなにこれイケメン! すごい皆がかっこよく見える不思議! 初日のイメージとは大違いだ!)
不意を突かれた急な戦闘だったが、怜央以外は即座に対応した。
テミスはルガーをぶっぱなし、コバートは百発百中の精度で弓を射掛ける。
アリータにいたっては魔法攻撃であろう、レーザー光線をゴブリンに直接あてて倒している。
普通に強いパーティーメンバーに、怜央は戦場においても余裕を保てた。
「はえー……。皆めっちゃ強い。俺マジでこのパーティーに要らん気がする」
眺めることしか出来ない怜央は必死に、今出来ることは何かを考えた。
皆が戦ってる中、直接戦闘できる能力のない怜央。
考えて考えて考えている間にも、わらわらと湧き出てくるゴブリン達は、出てきた側から皆によって倒されていく。
そして途中、ある結論が導き出される。
(――俺……なんもしなくていいな!! いやむしろ邪魔することになるかもしれないし、ここでじっとしていよう。……安全地帯で!)
若干なげやりになったのか、考えることから逃げ出したのかはわからないが、怜央は腕を組み戦況の観察を始めた。
それは怜央を囲む鉄壁の3人で生まれた余裕のお陰でもある。
そんな中ふと、アリータ目掛けて再び剣を投げつけようとするゴブリンが怜央の目に入った。
同じくそれに気づいたアリータは、反射的に剣に光線を当ててはね返そうと試みたが所詮光線。
鉄を焦がせても跳ね除けることはできない。
「しまっ……!」
アリータも選択の失敗に気付き、思わず声が漏れ出た。
このままではアリータが危ない。
そう直感した怜央は剣の軌道を見極めて、素手で抜き身の剣を弾き飛ばした。
捨て身の献身もあって無事、剣は明後日の方向に飛んでアリータに当たることは無かった。
そして間髪入れず、剣を投擲したゴブリンはアリータの光線によって焼き殺された。
アリータはすぐに、自分を庇った怜央の安否を気遣う。
「ちょっとアンタ! 腕は大丈夫!?」
「ああ、この通りなんの問題もない」
そこには直に剣を跳ね除けたとは思えない、まっさらでキレイな手があった。
「!? 素手だったわよね? 私の見間違い……?」
「いや、これは俺の能力だよ。さっき言おうとして邪魔されちゃったけど、守りに関しては自信があるんだ。攻撃はマジでまったくできないけどね」
「それより今は敵さんだ! 出てこなくなったけど全部倒したのか!? 40体のはずだが何体倒した!?」
臨戦態勢の皆に代わり、見える範囲の死体を声に出して数える怜央。
だがそれより早く、テミスが答えた。
「39よ。あと一体どこかにいるわね」
皆はテミスの言葉を受け気を抜くことなく索敵を行う。
すると目の優れたコバートがそれらしき何かを見つけた。
「いた! あっちの方向だ!」
コバートの合図する方向に皆が構えた。
その方向にある薮は、さっきのゴブリン達と異なり揺れる激しさが段違いだった。
それが何やら普通でないと一同は察したが、徐々に見え始めるその巨体で確信へと変わる。
「……!? あれはゴブリンなのか!?」
「ちょっとちょっと……いくら何でも大きすぎじゃない!?」
「……ひどいメタボね。少しダイエットした方がいいわ」
「やっべぇぞ……! ありゃ、ゴブリンはゴブリンでも、突然変異体かもしれん!」
そのゴブリンは体長2m50cm以上もある巨体で、両手にはそれぞれ太い剣が握られている。
それはエグゼキューショナーズソードを後先考えず肉厚にしましたというような、実に凶悪で荒唐無稽な剣。
本来ならば両手で握って持てるかどうかという重さであるにもかかわらず、そのゴブリンはを軽々と携えている。
体型からも予想できるが、相当な筋力の持ち主であることは間違いない。
普通のゴブリンよりも一際醜悪な風体をした変異体ゴブリンは、進路上にある木々を自慢の剣で凪切りながら距離を縮めてくる。
無論、ただ近寄るのを待つわけがなくコバート・テミス・アリータは思い思いに攻撃するのだが、どれも効果がなかった。
コバートの矢やテミスの弾丸、アリータの光線は軽々と振り回す剣に弾かれるか、運良く当たっても大したダメージになってない。
「くそっ! あの剣が邪魔で致命傷を与えられねえ!」
「じゃあ逃げるの?」
「冗談やめてよ! ゴブリン相手に逃げたとなれば一生の恥だわ!」
「じゃあどうすんだよ!? 無暗に立ち向かうのもそれはそれでバカだぜ!」
意見の食い違いで混乱する中でも敵は待ってくれない。
その太い剣を自在に操りメンバーに切りかかってくる。
その一撃の重さは地面から巻上がる砂埃の量から容易に察せられた。
生身で喰らえば一溜りも無い威力だと。
焦りが募るメンバーにあって、唯一攻撃にに参加していなかった怜央は冷静さを保ちながらゴブリンの観察を続けていた。
そのお陰もあってか、不意に勝利への道筋が思い浮かぶ。
「おい、あの剣ならどうにかできるかもしれんぞ!」
「はあ!? 魔力しかいじれないあんたに何が出来るっていうのよ!」
「まあまて、そう言わずに話だけでも聞いてくれって!」
「うっさいわね! あんたがいると足でまといなのよ! さっさと逃げてくれる!?」
プライドが邪魔して逃げたくないアリータは、この中でも1番余裕がなかった。
しかしテミスは違う。
この状況にあって怜央と同じかそれ以上に冷静さを保ち、むしろ楽しんでいる節さえ感じられた。
「なるほど。面白い考えね。やってみたらいいんじゃないかしら?」
テミスは怜央にアイコンタクトして実行を促す。
「えっ、俺まだ何も言ってな――」
「いいからほらっ、さっさとやってきなさい」
テミスは怜央の背中を強引に突き飛ばし、変異体ゴブリンの前まで突っ込ませた。
それを見たコバート、アリータは心底驚いた。
「おまっ、テミス! いい加減にしろよ!」
マジ切れしながら慌てて救出に向かったコバートを、テミスは引き止めた。
「いいから。見てなさいって」
「!?」
怜央は変異体ゴブリンと真っ向から対峙する形となった。
それが取りうる行動の中で1番の愚策と知りながら。
普通ならこの時点で、怜央の命は尽きてもおかしくはない。
だが幸いなことに、今は仲間が居た。
乾いた破裂音と共に、刃物ではなく肉塊がぶつかってきた怜央。
それはゴブリンの死体。
横にいたテミスがすれ違いざまに頭を撃ち抜いて倒してくれたのだった。
「ほら、ぼさっとしてると死ぬわよ? 囲まれてるんだから」
「まったく、ゴブリンの相手だなんて……。今日は最悪な1日ね」
「怜央、立て! いいか、俺の後ろにいろ! 絶対にお前を守ってやるからな!」
(やだなにこれイケメン! すごい皆がかっこよく見える不思議! 初日のイメージとは大違いだ!)
不意を突かれた急な戦闘だったが、怜央以外は即座に対応した。
テミスはルガーをぶっぱなし、コバートは百発百中の精度で弓を射掛ける。
アリータにいたっては魔法攻撃であろう、レーザー光線をゴブリンに直接あてて倒している。
普通に強いパーティーメンバーに、怜央は戦場においても余裕を保てた。
「はえー……。皆めっちゃ強い。俺マジでこのパーティーに要らん気がする」
眺めることしか出来ない怜央は必死に、今出来ることは何かを考えた。
皆が戦ってる中、直接戦闘できる能力のない怜央。
考えて考えて考えている間にも、わらわらと湧き出てくるゴブリン達は、出てきた側から皆によって倒されていく。
そして途中、ある結論が導き出される。
(――俺……なんもしなくていいな!! いやむしろ邪魔することになるかもしれないし、ここでじっとしていよう。……安全地帯で!)
若干なげやりになったのか、考えることから逃げ出したのかはわからないが、怜央は腕を組み戦況の観察を始めた。
それは怜央を囲む鉄壁の3人で生まれた余裕のお陰でもある。
そんな中ふと、アリータ目掛けて再び剣を投げつけようとするゴブリンが怜央の目に入った。
同じくそれに気づいたアリータは、反射的に剣に光線を当ててはね返そうと試みたが所詮光線。
鉄を焦がせても跳ね除けることはできない。
「しまっ……!」
アリータも選択の失敗に気付き、思わず声が漏れ出た。
このままではアリータが危ない。
そう直感した怜央は剣の軌道を見極めて、素手で抜き身の剣を弾き飛ばした。
捨て身の献身もあって無事、剣は明後日の方向に飛んでアリータに当たることは無かった。
そして間髪入れず、剣を投擲したゴブリンはアリータの光線によって焼き殺された。
アリータはすぐに、自分を庇った怜央の安否を気遣う。
「ちょっとアンタ! 腕は大丈夫!?」
「ああ、この通りなんの問題もない」
そこには直に剣を跳ね除けたとは思えない、まっさらでキレイな手があった。
「!? 素手だったわよね? 私の見間違い……?」
「いや、これは俺の能力だよ。さっき言おうとして邪魔されちゃったけど、守りに関しては自信があるんだ。攻撃はマジでまったくできないけどね」
「それより今は敵さんだ! 出てこなくなったけど全部倒したのか!? 40体のはずだが何体倒した!?」
臨戦態勢の皆に代わり、見える範囲の死体を声に出して数える怜央。
だがそれより早く、テミスが答えた。
「39よ。あと一体どこかにいるわね」
皆はテミスの言葉を受け気を抜くことなく索敵を行う。
すると目の優れたコバートがそれらしき何かを見つけた。
「いた! あっちの方向だ!」
コバートの合図する方向に皆が構えた。
その方向にある薮は、さっきのゴブリン達と異なり揺れる激しさが段違いだった。
それが何やら普通でないと一同は察したが、徐々に見え始めるその巨体で確信へと変わる。
「……!? あれはゴブリンなのか!?」
「ちょっとちょっと……いくら何でも大きすぎじゃない!?」
「……ひどいメタボね。少しダイエットした方がいいわ」
「やっべぇぞ……! ありゃ、ゴブリンはゴブリンでも、突然変異体かもしれん!」
そのゴブリンは体長2m50cm以上もある巨体で、両手にはそれぞれ太い剣が握られている。
それはエグゼキューショナーズソードを後先考えず肉厚にしましたというような、実に凶悪で荒唐無稽な剣。
本来ならば両手で握って持てるかどうかという重さであるにもかかわらず、そのゴブリンはを軽々と携えている。
体型からも予想できるが、相当な筋力の持ち主であることは間違いない。
普通のゴブリンよりも一際醜悪な風体をした変異体ゴブリンは、進路上にある木々を自慢の剣で凪切りながら距離を縮めてくる。
無論、ただ近寄るのを待つわけがなくコバート・テミス・アリータは思い思いに攻撃するのだが、どれも効果がなかった。
コバートの矢やテミスの弾丸、アリータの光線は軽々と振り回す剣に弾かれるか、運良く当たっても大したダメージになってない。
「くそっ! あの剣が邪魔で致命傷を与えられねえ!」
「じゃあ逃げるの?」
「冗談やめてよ! ゴブリン相手に逃げたとなれば一生の恥だわ!」
「じゃあどうすんだよ!? 無暗に立ち向かうのもそれはそれでバカだぜ!」
意見の食い違いで混乱する中でも敵は待ってくれない。
その太い剣を自在に操りメンバーに切りかかってくる。
その一撃の重さは地面から巻上がる砂埃の量から容易に察せられた。
生身で喰らえば一溜りも無い威力だと。
焦りが募るメンバーにあって、唯一攻撃にに参加していなかった怜央は冷静さを保ちながらゴブリンの観察を続けていた。
そのお陰もあってか、不意に勝利への道筋が思い浮かぶ。
「おい、あの剣ならどうにかできるかもしれんぞ!」
「はあ!? 魔力しかいじれないあんたに何が出来るっていうのよ!」
「まあまて、そう言わずに話だけでも聞いてくれって!」
「うっさいわね! あんたがいると足でまといなのよ! さっさと逃げてくれる!?」
プライドが邪魔して逃げたくないアリータは、この中でも1番余裕がなかった。
しかしテミスは違う。
この状況にあって怜央と同じかそれ以上に冷静さを保ち、むしろ楽しんでいる節さえ感じられた。
「なるほど。面白い考えね。やってみたらいいんじゃないかしら?」
テミスは怜央にアイコンタクトして実行を促す。
「えっ、俺まだ何も言ってな――」
「いいからほらっ、さっさとやってきなさい」
テミスは怜央の背中を強引に突き飛ばし、変異体ゴブリンの前まで突っ込ませた。
それを見たコバート、アリータは心底驚いた。
「おまっ、テミス! いい加減にしろよ!」
マジ切れしながら慌てて救出に向かったコバートを、テミスは引き止めた。
「いいから。見てなさいって」
「!?」
怜央は変異体ゴブリンと真っ向から対峙する形となった。
0
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる