異世界の地、七光りの冒険

mikasaball

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学園説明会編

15.学園オリエンテーション

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 学園オリエンテーションは学園内部にある多目的ホールに新入生を集めて行われた。
主な内容は3つ。
学科の選択、授業の選択、冒険の推奨を教員が説くというものだ。


◆◇◆


 怜央一行は整然と並べられた簡素な椅子に座り、その時を待っていた。
そしてそれは、壇上に先生が登ることによって始まりを告げる。
水谷、ドロシー、ヨハネス、ピティオンその他職員という豪華な顔ぶれだ。
全職員を代表し、まず最初にピティオンがマイクの前に立った。

「やあ、初めまして。学長代理を努めますピティオン・ラ・クレイユです。ここにいる皆さんは今日を持って正式に、晴れてこの学園の生徒となります。皆様の学園生活が実り多きものとなりますよう心より願っています。さて、堅苦しい挨拶はそこそこにして、今回のオリエンテーションでは各学科の説明をします。我が学園には3つの学部があり、それぞれ『魔法学部』『科学学部』『異能学部』から1つを選んで貰います。これから各学部長が特色を話してくれますから参考にしてくださいね。それではドロシー先生、お願いします」

ピティオンはアイコンタクトを送ると、ドロシーと立ち位置を交換した。

「新入生の諸君、おはよう。私は魔法学部学部長ドロシーだ。我が魔法学部では名前の通り魔法について専門的に学ぶ。もう既に、自分の魔法に自信があるという者も、これから学びたいという者でも、やる気さえあるのなら魔法学部は歓迎する。現時点で魔法学部に在籍する者は180人程。これに幾つ足されるかは知らないが、大切なことなのでもう一度言う。歓迎する。魔法は奥深く、興味本位で関わろうものなら大火傷で済まないこともある。もし本気でないならば、他所よその学部を選ぶことだな。以上――」

ドロシーの声色、表情は淡々としてどこか冷たい。
それに意図があるかは不明だが、新入生の反応もまばらだ。
ザワつく彼らからは、

「おっかない先生だな……魔法学部はやめようかな……」
「私、魔法使えないけど、それでもいいなら入ってみたい!」
「あの先生Sっぽいけど絶対Mだよ」

などと、色々な反応が伺えた。

「なあテミス、その服とドロシー先生の服ってさ、何か似てね?」

怜央は隣のテミスに話しかけた。
するとテミスは足を組み換え一言だけ。

「……そうかしら?」

 テミスの服はドロシーのものと色合い、デザインが似ており、違うとすれば所々が短いくらいだ。
主にスカートやローブなどが若者向けの短さになっている。

 そして次にヨハネスが、気力の薄い声で科学学部の説明に入った。

「あ、あー……。どうも、科学学部学部長のヨハネス・オイゲンです……。うちの学部は科学全般……そういうと難しそうに聞こえるけど大丈夫。誰でも学べるよう配慮がされています……。実際うちの学部は360人と多いし、わからなければ教えてくれる先輩も多いということになる……。どこにしようか迷って決まらないようなら、とりあえず科学学部うちにきて好きなことでも研究するといい……。以上です」

「なんていうか、覇気がないわね。あのオッサン」

 アリータは極自然に毒を吐く。

「そういってやるな。これだけいろんな世界から人が集まってんだ。変わり者なんていっぱいいるだろうに」
「コバートもその1人な」
「冗談言うなよ。俺はこの中でも常識人のつもりだぜ?」
「あらコバート。こんな言葉もあるわ。『常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことを言う』ってね」
「――つまり?」
「つまりもなにもそのままの意味でしょ。やっぱアンタは学校に通った方がいいわね」

 テミスは一人静かに肩をすくめていると、気付かぬ間に壇上の先生は入れ替わっていた。
異能学部の水谷にだ。

「おう、ワシが異能学部学部長水谷星一じゃい。異能は魔法と違い、生まれつき持ってるモンだ。努力したところで習得などできやしない。それでいて、魔法のように体系的になってる訳でもなし、能力も千差万別。――ワシのところでは異能を持つ生徒のみを募集している。そのため60人と非常に少ないが……精鋭揃いだ。もし異能持ちならワシのところに来い。みっちりしごきあげたるわ」

 そういうと勝手に壇上を降り、どこかへと姿を消してしまった。

 先生の中でも異色。
それは誰の目から見ても明らかだった。
ピティオンはその動きを予想してたのか、自然な流れでオリエンテーションを続けた。

「以上で各学部の説明は終わりです。次に授業の説明ですが、『学園のすゝめ』にも書いてあることですから簡単な説明だけにしますね。この学園では単位制を採用していますので、卒業には講義を受けて単位を取得する必要があります。また、そのための講義は皆さん自由に選べますから、好きな時間にある好きな講義を選ぶといいでしょう。中には必修科目もありますので、それだけは取り損ねないよう注意してくださいね」

この頃になるとコバートはうたた寝をしていた。
彼にとっては退屈な話だったようだ。

「続いて冒険についてお話しましょう。新入生の中には既に、何らかの依頼をこなした方も多いのではないでしょうか。我が学園では異世界でも通用する人材の育成を目的としています。そのため依頼を受けて冒険することを、積極的に推奨・支援しています。少し前からは冒険での実績によって単位を認めることにもしています。皆さん、是非とも今のうちから広い世界を勉強してください。色々な世界にいけるなんてここでしか出来ないことです。チャンスは逃すべきではありません。是非とも、我が学園で広い世界を経験していってくださいね。――これで本日のオリエンテーションを終わりにします。お疲れ様でした」

 ピティオンは1歩下がると深いお辞儀をした。
それを皮切りに、会場の空気はガラッと変わり喧騒の場となった。

 怜央はコバートを小突き、起きろと声をかける。
半覚醒のコバートは少し虚ろで気怠けだるそうにしている。

「うぉ……寝てたのか……はぁ。――そんじゃまあ、依頼でも行くかね?」
「また行くのか?  昨日あんな目にあったばかりだってのに、よくやるよ」
「あら、別にいいじゃない。私は賛成よ?  他にすること無くて退屈だもの」
「アリータは俺と一緒だよな? 昨日の今日でまた行くってのは流石に疲れるよな~?」
「別に?」
「別にってそんな……ほらっ、あれだ。授業だってどれ選ぶか考えなきゃ行けないし、学部だって決めなきゃ。遊んでる暇はないんじゃないのか?」
「私はアンタと違ってもう決めてるわよ。――学部も授業もね」
「!?」
「私もよ」
「あ、俺も」
「!!!」

ここに来てまさかの事実、怜央以外は授業も学部も既に決めていたことが発覚した。

「お前らいつの間に……!  一体、どこを選んだんだ?」
「新入生の授業なんてほとんど必修ばかりで被ってるものさ。問題は学部。選んだ学部によって初めて受けれる授業もある。色々考えた結果、俺は魔法学部にしたぜ」
「私も。前の学校も都立魔法学院だったし、やっぱり魔法系しか考えられないわね」
「魔法ねー。使えりゃ楽しいんだろうけど……。テミスは?」
「私? 私は科学にするつもりよ。魔法はもう飽きたわ」
「その格好で!? いかにも魔法学部って雰囲気じゃん!?」
「やっぱりこれからは科学の時代が来ると思うの。見てこの美しさ。魔法にはない造形、機能美――科学は最高ね!」

 テミスは自前の拳銃をこれみよがしに見せつけてうっとりと見惚れていた。

「ふーん……魔法が2に科学が1ね……決まってないのは俺だけか。さーて、俺も早いとこ決めないとな。最初が肝心だもんな。じっくり考えないとな~」
「――おい怜央。お前さっきの話からわざとらしてるだろ。行くぞ?  依頼」

 コバートの指摘は図星らしく、一瞬固まる怜央。

「おま、ははは。やだなそんなことあるわけ――」

 適当にコバートを煙に巻こうとした怜央だったがその直後後ろから、硬い何かが背中に触れる。

「まどろっこしい。ほら、さっさと行くわよ」

 テミスは先程取り出した拳銃で冒険センターの方に行けと指示する。

「うわぁ、暴力反対……」

 怜央の抵抗虚しく、以外にも乗り気な3人相手に敵うことはなかった。
怜央はその後、両手を上げて無理やり連行されるところだったが、不意にチャンスが訪れる。
ピティオンがマイクを片手に生徒の呼び出しをしたのだ。

「あー、失礼。夏目君、夏目怜央君はこの後学長室まで来てください」

 怜央はこの場を逃れる口実ができて渡りに船だった。

「おっと、なんだろう。学園長先生からの呼び出しだ。流石にバックれるのはまずいよな~!」

怜央はゆっくりと、顔だけ振り返り2度もチラ見して、

「残念だけど――な~?」

と、内心の喜びが漏れ出ているような表情で正当性を訴えた。
 それに対しテミスは無言でじっと、上目遣いで睨みつけた。
何をされるかわからない怜央は冷や汗がタラタラと流れるが、テミスはやがて諦めた。

「よろしい。今回だけよ」

 その一言にホッとして人心地着いた怜央だったが、テミスはそれを見逃さない。
敢えて緊張の糸を切らさないよう怜央の首元に手を回し、耳元で囁いたのだ。

「――次は、ないわ……!」

 油断していた怜央は心底肝が冷えた瞬間である。
そして怜央を除く一行は今日の依頼を諦めた。

「ま、しゃーねーわな。1人欠けた状態でいくのもアレだし今日はやめとっか」
「ならせっかくだし、私は街で買い物でもしようかしらね」
「あらいいじゃない。私もご一緒していいかしら?」

 切り替えの早い一行は別のプランを練るのも早い。
怜央に一声かけた後、皆は多目的ホールから出ていった。
1人残された怜央は椅子に深くもたれ掛かかり、一瞬で気合いを入れ直した。

(さて、行きますかね)
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