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テミスと2人、ひょんな依頼編
25.企て
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「夏目様……昨夜は本当にごめんなさい!」
シエロは伏して、怜央に許しを乞う。
怜央は渡された水を仰ぐと、青く具合の悪そうな顔で微笑む。
「大丈夫ですよ。自分がお酒に弱かっただけですから」
「それでも無理やり飲ませたのは私です……! かくなる上は……この命を持って償いとします!」
「いやそれはさすがに……。それより昨晩の事ですが、何故あんな事を? 危うく襲ってしまうところでしたよ。ははは」
シエロは顔を上げて怜央を見るが、恥ずかしかったのか、直視できずにいた。
そして思いのほか生々しい事実を話される。
「実は……それが目的でした……」
「えっ?」
「ですからその……行為に及ぼうと……です。」
兎耳を垂らしてしおらしく落ち込むシエロからは嘘偽りなど感じられない。
実際、シエロの言うことは全て本当のことなのだ。
「ええっ、それはいくらなんでも性急すぎでは!?」
怜央も若干気恥ずかしかったのか、頬を赤くしていた。
「いえ、本来なら拉致してすぐ行うものですから。これでも順序は守った方なのです。――夕食の時お出しした飲み物も、実はお酒ではなく、媚薬のようなものでした。ですがまさか、それに含まれるアルコール分で失敗するとは思いもしませんでした。夏目様にはご迷惑ばかりお掛けして、本当になんとお詫びをしたらよいのやら」
怜央とシエロでは恋愛観や性に関する価値観がずれていた。
それが結果として、お互いの不幸を招いたのだ。
「そう……だったんですね。――でもまあ、幸い体調を崩しただけですし、別に大丈夫ですよ。お詫びだなんてそんな」
「いえ、よくありません! 夏目様はお優しい方ですからそう仰ってくれますが……私の気は晴れないのです! 何卒、私に出来ることがあれば何でもお申し付け下さい!」
平に伏して懇願するシエロに怜央は悩んでいた。
どうすればよいものかと。
頭を上げていいと言っても、許すと告げても無意味。
シエロは頑なに面を上げないのだ。
そんな時、正に天からのお告げよろしく、影から聞き耳を立てていたテミスの通信が入った。
[丁度いいじゃない。腕輪をくれるよう頼めば?]
[んなっ、テミス!? お前盗み聞きしてたのか]
[ちょっとだけよ。昨日はシエロちゃんと乱れていたんですって? ああ厭らしい。変な病気とか移さないでよね?]
[全部聞いてんじゃねぇか! ――まぁ、それならそれで話は早い。どうすりゃいいと思う?]
[……私が思うに、彼女は罰を欲しているのよ。若しくは今までの失敗に釣り合うような、怜央からの頼み事をね]
[だけど罰を与えるなんて、俺の立場からは違うと思うし――あっ]
テミスからの助言を経て、怜央は打開策を閃いた。
それは怜央にとっても助かることだし、シエロのためにもなるかもしれない。
早速、思いついたことを怜央は提案する。
「じゃあシエロさん。1つお願い事があるんだけど……その前に話しておかなければならないこともあるんだ」
怜央のその言葉はシエロが待ち望んでいたもの。
それを受けて初めて面を上げた。
そして怜央はこのタイミングにおいて漸く素性を明かした。
自分が異世界の人間で、そこにある学園の生徒ということを。
尚且つここに来た目的も含め、全てを包み隠さずにだ。
「――そんな……。それでは夏目様はこの腕輪を目的にやってきたのですか……?」
シエロは怜央の目的が自分ではなく、腕輪だったということを知ってショックを隠せずにいた。
それは項垂れる兎耳からも容易に見て取れる。
「ああそのっ……。シエロさんには本当に悪いことをしたと思ってる。誤解を招くようなことをしてしまって……。でもこうしてシエロさんと出逢えたのはある意味で運命だと思うんだ。だから、シエロさんさえ良ければ、俺の作るギルドに入って欲しい! 毎日でなくてもいいんだ、時々手伝ってくれるだけでも! だから、その……どうだろうか」
シエロは俯いた顔を上げると、やや拗ねた様子で怜央に提案した。
「……条件があります」
その言葉に脈ありと感じた怜央は湧き上がる喜びの感情を抑えつつ、シエロに言った。
「俺にできることなら何でも言って」
「……前にも言いましたが私の事はシエロと呼んでください。さん付けは要りません! それから、私もそちらの世界へ連れて行くこと! そうでなければこの話は呑めません!」
シエロはぷいっと顔を背けて交渉の余地など無いように見せかけた。
しかし、シエロの言う連れて行けとはクレイユ王国に怜央たちと一緒に連れて行けということ。
異世界から人を連れてくることは原則禁止であることを知っていた怜央は非常に困った。
例外として、ギルドのメンバーになれば異世界からも人を連れてこれるが、怜央にはまだギルドが無かったからだ。
「あーっと、シエロさ……」
シエロさんと言いかけた怜央に、シエロは敏感に反応して睨みつけた。
怜央は慌てて咳払いをし訂正する。
「シエロ、実はその――関係者以外の異世界人が学園のある世界に滞在するにはギルドに所属する必要があるんだ。だから今すぐってのはちょっと難しいかもしれない」
「……一緒に行けないのは嫌です。それならいっそこの話は無かったことに」
「ん゛んー……」
ご機嫌ななめなシエロに強く出れない怜央。
まるで立場が逆転したようだった。
なんとか平和的にお互いWinーWinの関係になれないか模索していると、突如として隣の襖が勢いよく開いた。
テミスだ。
「何を迷うことがあるの怜央! 密入国すればいいじゃない!」
「なっ、テミスお前!?」
「シエロちゃんは暗殺者なのよ? 身を隠すぐらいお茶の子さいさいよきっと。――ね?」
「え、ええ。まあ……」
「何か策でもあるっていうのか? 学園のテクノロジーは俺らが思ってるより進んでる。ちょっとした浅知恵程度じゃ多分ばれるぞ?」
「まあ、そこはシエロちゃんの力量次第ね。最悪私がなんとかするわ」
「なんとかするったってなあ……。シエロ……も、人だ。他人の目から完璧に消えれるわけでもないしな」
怜央は胡座の状態から後ろに手を置き上を向いた。
(アイテムボックスに入って貰えれば多分ばれることはないだろうけど……。だけど人を入れたことなんてないし、どうなるか怖くてとてもじゃないが試そうとは思えないな……)
怜央がそんなことを考えるとシエロがちょこんと手を挙げた。
「少し見て頂いても宜しいですか?」
「何を?」
シエロの声に反応して頭を戻すと、驚くべきことについさっきまでそこにいたシエロが居なくなってた。
「あれ? シエロ?」
辺りを見回して探していると、不意に怜央は手に温もりを感じた。
目で見る限り何も無いはずなのに、触覚だけはそこに何かがあると伝えていた。
柔らかな体毛の感触は、以前シエロに手を握られた時のものと全く同じだった。
「もしかして、シエロが?」
怜央は自分の手に触れる見えない手を手探りで伝っていった。
その感触からはやはり、指があり手首があり、腕もあって肩もあった。
「その通りです。私は腕輪の能力を使って透明になることができるんです」
シエロはそういうと、怜央の手を自分の頬に触れさせ透明化を解いた。
怜央は呆気に取られていたが、すぐにシエロから手を話すと真剣な眼差しで言った。
「確かにこれなら――出来るかもしれないな。賭けであることには間違いないが……やってみても良いと思う」
それを聞いたシエロは先程までの不機嫌さが嘘のように消え、ぱあっと微笑みの表情えと変わった。
助け舟を出してくれたテミスを一瞥すると、テミスは親指を立てて応えた。
シエロは伏して、怜央に許しを乞う。
怜央は渡された水を仰ぐと、青く具合の悪そうな顔で微笑む。
「大丈夫ですよ。自分がお酒に弱かっただけですから」
「それでも無理やり飲ませたのは私です……! かくなる上は……この命を持って償いとします!」
「いやそれはさすがに……。それより昨晩の事ですが、何故あんな事を? 危うく襲ってしまうところでしたよ。ははは」
シエロは顔を上げて怜央を見るが、恥ずかしかったのか、直視できずにいた。
そして思いのほか生々しい事実を話される。
「実は……それが目的でした……」
「えっ?」
「ですからその……行為に及ぼうと……です。」
兎耳を垂らしてしおらしく落ち込むシエロからは嘘偽りなど感じられない。
実際、シエロの言うことは全て本当のことなのだ。
「ええっ、それはいくらなんでも性急すぎでは!?」
怜央も若干気恥ずかしかったのか、頬を赤くしていた。
「いえ、本来なら拉致してすぐ行うものですから。これでも順序は守った方なのです。――夕食の時お出しした飲み物も、実はお酒ではなく、媚薬のようなものでした。ですがまさか、それに含まれるアルコール分で失敗するとは思いもしませんでした。夏目様にはご迷惑ばかりお掛けして、本当になんとお詫びをしたらよいのやら」
怜央とシエロでは恋愛観や性に関する価値観がずれていた。
それが結果として、お互いの不幸を招いたのだ。
「そう……だったんですね。――でもまあ、幸い体調を崩しただけですし、別に大丈夫ですよ。お詫びだなんてそんな」
「いえ、よくありません! 夏目様はお優しい方ですからそう仰ってくれますが……私の気は晴れないのです! 何卒、私に出来ることがあれば何でもお申し付け下さい!」
平に伏して懇願するシエロに怜央は悩んでいた。
どうすればよいものかと。
頭を上げていいと言っても、許すと告げても無意味。
シエロは頑なに面を上げないのだ。
そんな時、正に天からのお告げよろしく、影から聞き耳を立てていたテミスの通信が入った。
[丁度いいじゃない。腕輪をくれるよう頼めば?]
[んなっ、テミス!? お前盗み聞きしてたのか]
[ちょっとだけよ。昨日はシエロちゃんと乱れていたんですって? ああ厭らしい。変な病気とか移さないでよね?]
[全部聞いてんじゃねぇか! ――まぁ、それならそれで話は早い。どうすりゃいいと思う?]
[……私が思うに、彼女は罰を欲しているのよ。若しくは今までの失敗に釣り合うような、怜央からの頼み事をね]
[だけど罰を与えるなんて、俺の立場からは違うと思うし――あっ]
テミスからの助言を経て、怜央は打開策を閃いた。
それは怜央にとっても助かることだし、シエロのためにもなるかもしれない。
早速、思いついたことを怜央は提案する。
「じゃあシエロさん。1つお願い事があるんだけど……その前に話しておかなければならないこともあるんだ」
怜央のその言葉はシエロが待ち望んでいたもの。
それを受けて初めて面を上げた。
そして怜央はこのタイミングにおいて漸く素性を明かした。
自分が異世界の人間で、そこにある学園の生徒ということを。
尚且つここに来た目的も含め、全てを包み隠さずにだ。
「――そんな……。それでは夏目様はこの腕輪を目的にやってきたのですか……?」
シエロは怜央の目的が自分ではなく、腕輪だったということを知ってショックを隠せずにいた。
それは項垂れる兎耳からも容易に見て取れる。
「ああそのっ……。シエロさんには本当に悪いことをしたと思ってる。誤解を招くようなことをしてしまって……。でもこうしてシエロさんと出逢えたのはある意味で運命だと思うんだ。だから、シエロさんさえ良ければ、俺の作るギルドに入って欲しい! 毎日でなくてもいいんだ、時々手伝ってくれるだけでも! だから、その……どうだろうか」
シエロは俯いた顔を上げると、やや拗ねた様子で怜央に提案した。
「……条件があります」
その言葉に脈ありと感じた怜央は湧き上がる喜びの感情を抑えつつ、シエロに言った。
「俺にできることなら何でも言って」
「……前にも言いましたが私の事はシエロと呼んでください。さん付けは要りません! それから、私もそちらの世界へ連れて行くこと! そうでなければこの話は呑めません!」
シエロはぷいっと顔を背けて交渉の余地など無いように見せかけた。
しかし、シエロの言う連れて行けとはクレイユ王国に怜央たちと一緒に連れて行けということ。
異世界から人を連れてくることは原則禁止であることを知っていた怜央は非常に困った。
例外として、ギルドのメンバーになれば異世界からも人を連れてこれるが、怜央にはまだギルドが無かったからだ。
「あーっと、シエロさ……」
シエロさんと言いかけた怜央に、シエロは敏感に反応して睨みつけた。
怜央は慌てて咳払いをし訂正する。
「シエロ、実はその――関係者以外の異世界人が学園のある世界に滞在するにはギルドに所属する必要があるんだ。だから今すぐってのはちょっと難しいかもしれない」
「……一緒に行けないのは嫌です。それならいっそこの話は無かったことに」
「ん゛んー……」
ご機嫌ななめなシエロに強く出れない怜央。
まるで立場が逆転したようだった。
なんとか平和的にお互いWinーWinの関係になれないか模索していると、突如として隣の襖が勢いよく開いた。
テミスだ。
「何を迷うことがあるの怜央! 密入国すればいいじゃない!」
「なっ、テミスお前!?」
「シエロちゃんは暗殺者なのよ? 身を隠すぐらいお茶の子さいさいよきっと。――ね?」
「え、ええ。まあ……」
「何か策でもあるっていうのか? 学園のテクノロジーは俺らが思ってるより進んでる。ちょっとした浅知恵程度じゃ多分ばれるぞ?」
「まあ、そこはシエロちゃんの力量次第ね。最悪私がなんとかするわ」
「なんとかするったってなあ……。シエロ……も、人だ。他人の目から完璧に消えれるわけでもないしな」
怜央は胡座の状態から後ろに手を置き上を向いた。
(アイテムボックスに入って貰えれば多分ばれることはないだろうけど……。だけど人を入れたことなんてないし、どうなるか怖くてとてもじゃないが試そうとは思えないな……)
怜央がそんなことを考えるとシエロがちょこんと手を挙げた。
「少し見て頂いても宜しいですか?」
「何を?」
シエロの声に反応して頭を戻すと、驚くべきことについさっきまでそこにいたシエロが居なくなってた。
「あれ? シエロ?」
辺りを見回して探していると、不意に怜央は手に温もりを感じた。
目で見る限り何も無いはずなのに、触覚だけはそこに何かがあると伝えていた。
柔らかな体毛の感触は、以前シエロに手を握られた時のものと全く同じだった。
「もしかして、シエロが?」
怜央は自分の手に触れる見えない手を手探りで伝っていった。
その感触からはやはり、指があり手首があり、腕もあって肩もあった。
「その通りです。私は腕輪の能力を使って透明になることができるんです」
シエロはそういうと、怜央の手を自分の頬に触れさせ透明化を解いた。
怜央は呆気に取られていたが、すぐにシエロから手を話すと真剣な眼差しで言った。
「確かにこれなら――出来るかもしれないな。賭けであることには間違いないが……やってみても良いと思う」
それを聞いたシエロは先程までの不機嫌さが嘘のように消え、ぱあっと微笑みの表情えと変わった。
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