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近未来編
44.追撃
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怜央から通信を受けたアリータは博士に相談した。
「ちょっと博士、なんか怜央が壁を壊してもいいかって言ってるわよ!?」
「ああ、構わんさ。この家は既に奴らのせいでボロボロ。今更壁が壊れたくらい何とも思わんよ」
博士は肩をすかして少し投げやりな気分だった。
アリータは博士の言葉をすぐさま怜央に伝えると、ドアとは反対の壁から離れるよう指示を受ける。
「ちょっと皆、そっちの壁から離れろって! なにするか知らないけど!」
そう言ってアリータは寝台のアンドロイドをお姫様抱っこの体で持ち上げた。
それは、吸血鬼特有の並外れた筋力だからこそできる芸当である。
普通なら腕1本ですら腰をやりかねない。
そして皆が壁から距離を取ったと同時に、その壁から装甲車がケツから突っ込んできた。
後ろのハッチが開くと中には怜央とシエロが出迎えた。
「さあ乗れ! 急いで逃げるぞ!」
怜央は目に布を巻いたコバートを引っ張り入れて、博士やアリータが乗り込むとハッチを閉めた。
「いいぞテミス! 出してくれ!」
「いえっさー!」
ノリノリなテミスは初めて運転するであろう車、特に複雑な操作を要求されるはずのマニュアル装甲車をまるで毎日乗っているのではというレベルで使いこなす。
ニュートラルで回転数を上げ1速に入れると、タイヤを空転させながら勢い良く飛び出した。
あまり広くない住宅地を横滑りしながら走り抜ける。
「……っ! もっと優しく運転でき無いのかテミス!?」
「安全運転なんてしてたら追っ手を撒けないわよ?」
「追っ手!?」
怜央は上の小さいハッチから顔を出して後方を除く。
「おいおい、いくら何でも対応早すぎだろ!」
装甲車を追うのは4台の軍用車。
ハマーの様なSUVだ。
それらからは人が箱乗りして、銃弾の雨を打ち込み始めた。
怜央は魔力壁のお陰で怯むことなく冷静な分析ができた。
「あっちの車の方が少し早い! このままじゃ振り切れないぞ!」
「そう。 だったら蹴散らせばいいのよ! こんなこともあるだろうと、ご機嫌なM2機関銃を後付けしといてあげたわ。存分にぶっぱなしなさい!」
「(この世界の車にあるの変だと思ってたがやっぱテミスか……)仕方ない、いっちょやってやりますか!」
怜央は気乗りしなかったが、仕方あるまいと腹を括って銃の取手を握った。
しかし、そんな怜央の服の裾を引っ張る者がいた。
「怜央変わってくれ。俺がやる……!」
「コバート!? おまえ、だって目が見えないんだろ!?」
「大丈夫だ、うっすらなら見える。下手な弓矢でも数打ちゃ当たるっていうしな。それに、この目の借りはキッチリ返させてもらわねぇと気がすまねぇ!」
初めて見るコバートの、割とガチ目な憤りに怜央は気圧された。
「お、おう……気をつけろよ? 車の前部分かタイヤを狙ってくれな? 人は殺すなよ……?」
コバートと交代した怜央は念のためにコバートを魔力壁で覆った。
「テミス嬢! こいつはどう使えばいい!?」
「逆V字型のバタフライトリガーを押せば撃てるわよ!」
何となく把握したコバートは、右に左にと大揺れする中追っ手の車両に狙いを定めた。
「これでもくらえクソ野郎共!」
コバートはトリガーに乗せる指に力を込めて、50口径もある弾丸を発射した。
1発1発が恐ろしく重い、ドッドッドッドッという音を響かせて、容赦無く敵車両に打ち込む。
すると弓をやってる影響もあるのか、コバートの射撃センスは凄まじかった。
正確にタイヤ、エンジンを撃ち抜き、たちまち操作不能になった車両はスリップして後続車両を巻き込んだ。
「Foo!!! やったぜ! ざまあみろ!」
コバートは満を持して中に戻ってきた。
「あれ? コバートお前、目の布付けたまま撃てたのか?」
「っあ、ああ!? これな、ちょっと透けてるんだよ。ははっ、お陰でそのままでも行けたぜ」
戦闘の直後で興奮気味だったのか、少しだけコバートはしどろもどろな受け答えをした。
「ふーん? そうか。 まあ何にせよ敵は振り切ったようだしもう大丈夫だろ――」
怜央が平然とフラグを立てると案の定車の装甲に弾丸のぶち当たる音が響いた。
厚い鉄板に高威力の弾を連射しているような、音だ。
先程敵が打ち込んできた小火器とはまるで違う。
「……新手が来たわね。ベルちゃん、ちょっと迎撃してちょうだい?」
「私? まあ、いいけど……」
アリータがハッチから顔を出すと、そこには戦闘ヘリが居た。
◆◇◆
「おいおい、20mm機関砲で抜けないなんてことあるのかよ。そもそも何であいつらが最新型装甲車を持ってるんだ? 横流しか知らないが、どっちにしろ問題だらけだぜ!」
困惑する戦闘ヘリの射撃手に、操縦手は言った。
「なに、慌てることは無い。先程出ていた捕縛命令は取り消され、殲滅の許可が出た。対戦車ミサイルを使え。それで終わらせたらいつものBARで1杯引っ掛けよう」
「お、いいねぇ! それじゃ最初の1発で決めれたらお前の奢りな!」
「それはお前っ……オートAIMのある戦闘ヘリじゃ賭けにもならんだろ」
「もし2発目があったらなら、次の夜勤代わってやるよ!」
「……3日分な。さっさとやれ」
「へへっ(奢りは確定だ……!)」
射撃手はさっさと終わらせるべく、何も考えることもなく、ミサイルを発射した。
「ちょっと博士、なんか怜央が壁を壊してもいいかって言ってるわよ!?」
「ああ、構わんさ。この家は既に奴らのせいでボロボロ。今更壁が壊れたくらい何とも思わんよ」
博士は肩をすかして少し投げやりな気分だった。
アリータは博士の言葉をすぐさま怜央に伝えると、ドアとは反対の壁から離れるよう指示を受ける。
「ちょっと皆、そっちの壁から離れろって! なにするか知らないけど!」
そう言ってアリータは寝台のアンドロイドをお姫様抱っこの体で持ち上げた。
それは、吸血鬼特有の並外れた筋力だからこそできる芸当である。
普通なら腕1本ですら腰をやりかねない。
そして皆が壁から距離を取ったと同時に、その壁から装甲車がケツから突っ込んできた。
後ろのハッチが開くと中には怜央とシエロが出迎えた。
「さあ乗れ! 急いで逃げるぞ!」
怜央は目に布を巻いたコバートを引っ張り入れて、博士やアリータが乗り込むとハッチを閉めた。
「いいぞテミス! 出してくれ!」
「いえっさー!」
ノリノリなテミスは初めて運転するであろう車、特に複雑な操作を要求されるはずのマニュアル装甲車をまるで毎日乗っているのではというレベルで使いこなす。
ニュートラルで回転数を上げ1速に入れると、タイヤを空転させながら勢い良く飛び出した。
あまり広くない住宅地を横滑りしながら走り抜ける。
「……っ! もっと優しく運転でき無いのかテミス!?」
「安全運転なんてしてたら追っ手を撒けないわよ?」
「追っ手!?」
怜央は上の小さいハッチから顔を出して後方を除く。
「おいおい、いくら何でも対応早すぎだろ!」
装甲車を追うのは4台の軍用車。
ハマーの様なSUVだ。
それらからは人が箱乗りして、銃弾の雨を打ち込み始めた。
怜央は魔力壁のお陰で怯むことなく冷静な分析ができた。
「あっちの車の方が少し早い! このままじゃ振り切れないぞ!」
「そう。 だったら蹴散らせばいいのよ! こんなこともあるだろうと、ご機嫌なM2機関銃を後付けしといてあげたわ。存分にぶっぱなしなさい!」
「(この世界の車にあるの変だと思ってたがやっぱテミスか……)仕方ない、いっちょやってやりますか!」
怜央は気乗りしなかったが、仕方あるまいと腹を括って銃の取手を握った。
しかし、そんな怜央の服の裾を引っ張る者がいた。
「怜央変わってくれ。俺がやる……!」
「コバート!? おまえ、だって目が見えないんだろ!?」
「大丈夫だ、うっすらなら見える。下手な弓矢でも数打ちゃ当たるっていうしな。それに、この目の借りはキッチリ返させてもらわねぇと気がすまねぇ!」
初めて見るコバートの、割とガチ目な憤りに怜央は気圧された。
「お、おう……気をつけろよ? 車の前部分かタイヤを狙ってくれな? 人は殺すなよ……?」
コバートと交代した怜央は念のためにコバートを魔力壁で覆った。
「テミス嬢! こいつはどう使えばいい!?」
「逆V字型のバタフライトリガーを押せば撃てるわよ!」
何となく把握したコバートは、右に左にと大揺れする中追っ手の車両に狙いを定めた。
「これでもくらえクソ野郎共!」
コバートはトリガーに乗せる指に力を込めて、50口径もある弾丸を発射した。
1発1発が恐ろしく重い、ドッドッドッドッという音を響かせて、容赦無く敵車両に打ち込む。
すると弓をやってる影響もあるのか、コバートの射撃センスは凄まじかった。
正確にタイヤ、エンジンを撃ち抜き、たちまち操作不能になった車両はスリップして後続車両を巻き込んだ。
「Foo!!! やったぜ! ざまあみろ!」
コバートは満を持して中に戻ってきた。
「あれ? コバートお前、目の布付けたまま撃てたのか?」
「っあ、ああ!? これな、ちょっと透けてるんだよ。ははっ、お陰でそのままでも行けたぜ」
戦闘の直後で興奮気味だったのか、少しだけコバートはしどろもどろな受け答えをした。
「ふーん? そうか。 まあ何にせよ敵は振り切ったようだしもう大丈夫だろ――」
怜央が平然とフラグを立てると案の定車の装甲に弾丸のぶち当たる音が響いた。
厚い鉄板に高威力の弾を連射しているような、音だ。
先程敵が打ち込んできた小火器とはまるで違う。
「……新手が来たわね。ベルちゃん、ちょっと迎撃してちょうだい?」
「私? まあ、いいけど……」
アリータがハッチから顔を出すと、そこには戦闘ヘリが居た。
◆◇◆
「おいおい、20mm機関砲で抜けないなんてことあるのかよ。そもそも何であいつらが最新型装甲車を持ってるんだ? 横流しか知らないが、どっちにしろ問題だらけだぜ!」
困惑する戦闘ヘリの射撃手に、操縦手は言った。
「なに、慌てることは無い。先程出ていた捕縛命令は取り消され、殲滅の許可が出た。対戦車ミサイルを使え。それで終わらせたらいつものBARで1杯引っ掛けよう」
「お、いいねぇ! それじゃ最初の1発で決めれたらお前の奢りな!」
「それはお前っ……オートAIMのある戦闘ヘリじゃ賭けにもならんだろ」
「もし2発目があったらなら、次の夜勤代わってやるよ!」
「……3日分な。さっさとやれ」
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射撃手はさっさと終わらせるべく、何も考えることもなく、ミサイルを発射した。
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