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ロステマ帝国編
53.ロステマ帝国
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怜央達の課題の地はロステマ帝国。
中世よりも更に文明レベルの低いとされる都市国家ながらも、その異世界では最高水準の技術力を有する国。
石敷きの街道は整備が行き届き、上下水道も張り巡らされている。
他国の者がロステマ帝国に訪れようものならその街並みに感銘を受けることだろう。
現地民達は質素な一枚のチュニックに、長い一枚布を体に巻きつけるというのが男女共通の服装であった。
その服装からは身分を伺うことができ、奴隷や捕虜などの卑しい身分は一枚布をつけておらず、高貴な身分だと染色された一枚布を巻きつけている。
事前に情報を入手していた4人はクレイユ王国でそれに近い服を調達し、着付けた状態でやってきた。
余談ではあるが、テミス・コバート・アリータは普通の白い布を、怜央に関してはどうせならと言って、ふちが紫色の一枚布を巻いてきた。
一行は着いて早々広場にて、コバート主催の作戦会議を行なった。
「課題なんてこの世で最も要らないものの一つだ! ここはひとつ、効率的に終わらせるためにも一旦バラけて、各々が課題のヒントをメモしてくるってことでどうだ?」
「それはいいんだけど具体的に、『異文化を感じる出来事』? だっけ。それってどんなこと書けば良いのよ?」
「自分の住んでたとこと違う風習とかあれば何でもいいんじゃないか? 例えばもうこの服だって前いた世界とは違う訳だし、この服にはこの服なりの、この形になった理由とかもあると思うんだよね。その経緯とか調べればいいんじゃないか?」
「んー……。怜央の言いたいことはわかるけど、服の歴史なんて調べて楽しい?」
アリータはそんなのつまらない、せめて他のことにしましょうよと言わんばかりの表情を浮かべた。
「課題なんだから別に楽しい楽しくないは仕方ないだろ。別に服に限ったものでもないし、これから街を巡って自分の興味のあるものを探せばいいさ」
「なら宝飾品とかいいかもしれないわね。幾らか多めに持ってきたからついでに買って、持って帰るのもありね!」
アリータは懐から金貨の詰まった巾着を取り出して見せた。
今回の異世界ではクレイユ王国との物価差が激しく、ロステマ帝国の品々を安く買える算段だ。
怜央はアリータが持ち込み物に、関税がかかることを忘れているなと察しつつも優しく微笑み、
「程々にな」
と注意するに留まった。
せっかくの旅行気分に水を刺すのも無粋だし、アリータならそれくらい払えるだろうと思ったからだ。
決して、日頃の鬱憤をこの機会に晴らそうとか、困った顔が見てみたいとか、そんな邪な考えで黙っている訳ではない……。
「ねぇ。皆で調べるのはいいけど、誰がまとめるのかしら?」
「ん? 誰ってそりゃ皆で――」
「いえ、この課題レポートはパーティー毎にまとめて出せばいいのよ。つまり、3人は情報収集役、1人が執筆役の方が楽だと思わない?」
テミスの意見に、レポート作成を嫌がってたコバートは乗った。
「おお! いいなそれ! 確かに役割分担は効率的だぁ」
「まあそれはいいとしても、そうなったらそうなったで誰がまとめるんだ?」
「誰がって――」
「そりゃ――」
テミス・コバート・アリータは、事前に示し合わせていたかのように、スッ……と自然に怜央を指差した。
「え゛!? 何で俺!?」
「だってアンタそういうの得意そうだし」
「この中で一番文才ありそうなのって怜央よね」
「やっぱ大役を任せられるのは怜央、お前しかいねぇ!」
「いやいやそれおだててる? だとしてもだよ? 2000文字以上ってそこそこ多いじゃん! それめんどくさいの押し付けようとしてない皆!?」
コバートは首を振りながら怜央の両肩に手を乗せた。
「違うんだ怜央。飽くまで効率状こうなったんであって、けっっっっっっして、お前に面倒毎を押し付ける気なんてない! これっぽっちもよ? その証拠に怜央、俺ら3人がメモ集めに言ってる間自由に遊んでてくれ! それなら公平だろ?」
「そりゃ、公平かもしれないけどさ……」
怜央は疑惑の目を向けて訝しんだ。
コバートの必死さに。
「うっし! これで決まりだな! そうとなれば早速行動に移そうぜ。俺はあっち側いくから2人は別の方頼むわ!」
「あ、私そっちがいいんだけど」
「ばっかツン子、風が俺を呼んでるんだ! ここは俺に任せとけ! そいじゃな!」
コバートは怒涛の勢いで1人さっさと行ってしまった。
取り残された3人はコバートを目で追いかけた。
「彼、どうしても執筆役になりたくないようね」
「そうっぽいな。そこまでして嫌なのか……」
「教養が無いからそうなるのよ。文を書くだけの方が絶対楽なのにね」
「……じゃあ代わる?」
「う……教養があるからって文才もあるとは限らないのよ」
そう言い残してアリータもそそくさと行ってしまった。
「別に文才あるわけじゃないんだけどな……」
怜央は呟いて、残ったテミスを見遣った。
テミスは視線が合うなり回れ右をして、
「いざ参らん、未踏の地へ……」
などとほざきながら足早に立ち去った。
1人残された怜央は思う。
(やっぱこれ、面倒な役押し付けられただけだな……)
してやられた怜央は少し凹んだ。
中世よりも更に文明レベルの低いとされる都市国家ながらも、その異世界では最高水準の技術力を有する国。
石敷きの街道は整備が行き届き、上下水道も張り巡らされている。
他国の者がロステマ帝国に訪れようものならその街並みに感銘を受けることだろう。
現地民達は質素な一枚のチュニックに、長い一枚布を体に巻きつけるというのが男女共通の服装であった。
その服装からは身分を伺うことができ、奴隷や捕虜などの卑しい身分は一枚布をつけておらず、高貴な身分だと染色された一枚布を巻きつけている。
事前に情報を入手していた4人はクレイユ王国でそれに近い服を調達し、着付けた状態でやってきた。
余談ではあるが、テミス・コバート・アリータは普通の白い布を、怜央に関してはどうせならと言って、ふちが紫色の一枚布を巻いてきた。
一行は着いて早々広場にて、コバート主催の作戦会議を行なった。
「課題なんてこの世で最も要らないものの一つだ! ここはひとつ、効率的に終わらせるためにも一旦バラけて、各々が課題のヒントをメモしてくるってことでどうだ?」
「それはいいんだけど具体的に、『異文化を感じる出来事』? だっけ。それってどんなこと書けば良いのよ?」
「自分の住んでたとこと違う風習とかあれば何でもいいんじゃないか? 例えばもうこの服だって前いた世界とは違う訳だし、この服にはこの服なりの、この形になった理由とかもあると思うんだよね。その経緯とか調べればいいんじゃないか?」
「んー……。怜央の言いたいことはわかるけど、服の歴史なんて調べて楽しい?」
アリータはそんなのつまらない、せめて他のことにしましょうよと言わんばかりの表情を浮かべた。
「課題なんだから別に楽しい楽しくないは仕方ないだろ。別に服に限ったものでもないし、これから街を巡って自分の興味のあるものを探せばいいさ」
「なら宝飾品とかいいかもしれないわね。幾らか多めに持ってきたからついでに買って、持って帰るのもありね!」
アリータは懐から金貨の詰まった巾着を取り出して見せた。
今回の異世界ではクレイユ王国との物価差が激しく、ロステマ帝国の品々を安く買える算段だ。
怜央はアリータが持ち込み物に、関税がかかることを忘れているなと察しつつも優しく微笑み、
「程々にな」
と注意するに留まった。
せっかくの旅行気分に水を刺すのも無粋だし、アリータならそれくらい払えるだろうと思ったからだ。
決して、日頃の鬱憤をこの機会に晴らそうとか、困った顔が見てみたいとか、そんな邪な考えで黙っている訳ではない……。
「ねぇ。皆で調べるのはいいけど、誰がまとめるのかしら?」
「ん? 誰ってそりゃ皆で――」
「いえ、この課題レポートはパーティー毎にまとめて出せばいいのよ。つまり、3人は情報収集役、1人が執筆役の方が楽だと思わない?」
テミスの意見に、レポート作成を嫌がってたコバートは乗った。
「おお! いいなそれ! 確かに役割分担は効率的だぁ」
「まあそれはいいとしても、そうなったらそうなったで誰がまとめるんだ?」
「誰がって――」
「そりゃ――」
テミス・コバート・アリータは、事前に示し合わせていたかのように、スッ……と自然に怜央を指差した。
「え゛!? 何で俺!?」
「だってアンタそういうの得意そうだし」
「この中で一番文才ありそうなのって怜央よね」
「やっぱ大役を任せられるのは怜央、お前しかいねぇ!」
「いやいやそれおだててる? だとしてもだよ? 2000文字以上ってそこそこ多いじゃん! それめんどくさいの押し付けようとしてない皆!?」
コバートは首を振りながら怜央の両肩に手を乗せた。
「違うんだ怜央。飽くまで効率状こうなったんであって、けっっっっっっして、お前に面倒毎を押し付ける気なんてない! これっぽっちもよ? その証拠に怜央、俺ら3人がメモ集めに言ってる間自由に遊んでてくれ! それなら公平だろ?」
「そりゃ、公平かもしれないけどさ……」
怜央は疑惑の目を向けて訝しんだ。
コバートの必死さに。
「うっし! これで決まりだな! そうとなれば早速行動に移そうぜ。俺はあっち側いくから2人は別の方頼むわ!」
「あ、私そっちがいいんだけど」
「ばっかツン子、風が俺を呼んでるんだ! ここは俺に任せとけ! そいじゃな!」
コバートは怒涛の勢いで1人さっさと行ってしまった。
取り残された3人はコバートを目で追いかけた。
「彼、どうしても執筆役になりたくないようね」
「そうっぽいな。そこまでして嫌なのか……」
「教養が無いからそうなるのよ。文を書くだけの方が絶対楽なのにね」
「……じゃあ代わる?」
「う……教養があるからって文才もあるとは限らないのよ」
そう言い残してアリータもそそくさと行ってしまった。
「別に文才あるわけじゃないんだけどな……」
怜央は呟いて、残ったテミスを見遣った。
テミスは視線が合うなり回れ右をして、
「いざ参らん、未踏の地へ……」
などとほざきながら足早に立ち去った。
1人残された怜央は思う。
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