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梅の花の妖精
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今は、中一の春休み中。もう四月からは二年生。凪斗は二年生になって、好きな時間を取られる前に一年生を満喫しようと、只今絶賛好きなことし放題中なのだ。今日は今までためてたテレビの録画を見ちゃう計画。今日もこれで三本目だ。
そんな俺に呆れた母は、凪斗に
「ちょっと、いつまでテレビ見てんの。宿題とかないの?」
台所で夕飯の準備をしながらこちらを向かずに話す。
「春休みなんだ。あるわけないだろ。」
母がこっちを見ずに話したことに少しムカつき、自分も母の方を見ずに言った。
だが、母もその態度にムカついたようだ。
俺に鋭い目をする。
自分だってこっち見なかったくせにな。
「じゃあ、外で運動でもしてきなさい。」
母が俺から目線を外して言う。
うわっ。運動とか。
「やだよ。運動とかやりたくないよ。」
母に抗議する。最近母ちゃんの言うことを聞きたくないんだ。無性に…。
だが、母ちゃんはそれは気に入らないみたいだ。
「春なんだから、外は暖かいの。そこら辺走ってきなさい。」
外が暖かくても寒くても運動は嫌いなんだよ。
そう、思ったことを口にしようとしたら、姉ちゃんが割り込んできた。
「子供は外で遊んできなよ。ずっとテレビとかだらしない。」
ソファに転がってスマホを見ながら姉ちゃんは言う。
姉ちゃんとは四つ差の姉弟である。
姉ちゃんは高校生になって、スマホを持たせてもらってから、家でもスマホばかり見てる。
更には、帰りも遅いのだ。学校は最低でも六時、七時には家に帰れるはずなのに、姉が帰ってくるのは九時、十時。
母ちゃんに姉ちゃんを怒らないのかと聞くと、高校生はもう大人なの。と言うのだ。
何が大人だ。春休み、昨日は夜中の二時に帰ってきて、今日は昼まで寝ていた。起きたと思えば今度はスマホ。
でも、母ちゃんは姉ちゃんを怒ってくれない。
なんだよ…。俺ばっかり怒鳴りやがって。
俺は今までの理不尽さを思い出して、怒りが込み上げてきた。
「なんだよ。そういう姉ちゃんはどうなんだよ。」
あえて挑発するような口調で話す。姉ちゃんはすかさず俺を睨む。
「は?どうって?」
すごい形相だ。弟に挑発されたことが余程腹ただしいのだろう。
凪斗は謝りそうになるが、ぐっと堪える。
「俺に運動しろやらなんやら命令するけどさ。姉ちゃんは運動してるんですか?いっつも夜遅くに帰ってきて、だらしないのは姉ちゃんだろ。」
姉ちゃんの声色が低くなる。
「は?姉に向かってその口のきき方なんだよ。」
「四つしか違わないだろ!」
「四つも違うんだ。お前は弟!」
「姉だからって偉そうにすんじゃねぇ!」
バチンッ!![#「!!」は縦中横]
凪斗は姉にぶたれた。
驚愕で凪斗はドサッと尻もちをつく。
「えっ…。」
ぶたれた…?左頬を触る。ヒリヒリする。
そう認識すると、怒りが込み上げてきて、立ち上がって、姉の胸ぐらを掴もうとした。
「いい加減にしなさいっ!![#「!!」は縦中横]」
突然の怒鳴り声に凪斗の体は立ち上がったところで止まる。
怒鳴り声の発声源は母だった。
「凪斗っ!![#「!!」は縦中横]お姉ちゃんに対してその態度は何?![#「?!」は縦中横]目上の人にそんな態度とってはいけないと教えたでしょう?![#「?!」は縦中横]」
怒鳴られたのは俺だけ?手をあげたのは、姉ちゃんだぞ。俺は左頬をぶたれたんだぞ?なのに、なんで。目上の人って…。
じゃあ俺は一生姉ちゃんに反論出来ねぇのかよ。反論すれば、必ず俺が怒られるのか?なんなんだよ…。
「なんなんだよ…。俺ばっかり…。」
心の声が漏れた。
もういい…。
「そうかい…。お前らは俺の事が嫌いなんだな?だから、俺ばっかり理不尽なこと…。」
二人は俺の事追い出したいのか?
そう考えて溢れそうになった涙を堪えて、できる限りの低くて恐い声を出して、二人を睨みながら言った。
「もういい。お前らなんか、家族じゃねぇ!![#「!!」は縦中横]二人の望み通り、こんな家、出てってやる!」
凪斗は靴を履いて玄関を飛び出した。ーー。
凪斗は街を歩いた。今は何時だろうか。コンビニにある時計を見ると七時半だった。家を飛び出したのは、五時ぐらいだったはずだから、二時間半、とぼとぼ街を歩いていたらしい。
「腹減ったなぁ。」
財布も持たず家を出ていった二時間前の自分を怒鳴ってやりたい。
「今更、帰れねぇし。」
凪斗はそのまま適当に歩いた。なにも考えず。ただただ足が向く方向へ。ーー。
バサバサッ!
「うわぁっ!![#「!!」は縦中横]」
ドサッ!本日二度目の尻もち。どうやら鳥が羽ばたく音だったらしい。尻が土で汚れてしまった。
「うわ。最悪…。」
ん?土?
周りを見渡す。
「も、森の中?」
いつの間にか、森の中に入ってしまったらしい。
今は何時だ?もうだいぶ暗い。
夜の森はなんだか不気味だ。
元来た道を戻ろう。
振り返ると、道と思わしきものが二箇所あった。どちらも薄暗く、奥が見えない。
「どっちだ…?」
分からない。どっちから来たのか覚えてない。
凪斗はその場にうずくまった。
どうしよう。帰れない。家に、帰れない。…いや、そもそも帰るところなどないんだ。自分で出て行ったんだから…。
そう思うと家出した事を後悔する。今まで我慢してきた涙が溢れて止まらなくなる。
ポツリ。
うずくまった凪斗の首筋に雨が落ちる。それはだんだん強くなってくる。でも、凪斗はそんなこと今は考えられない。
いったいどのくらいこうしてうずくまっていただろうか。
凪斗はずぶ濡れ。髪の毛も雨が滴っている。
ふと、匂いがした。落ち着く香り。雨が降っているのに、匂いがするのだ。
凪斗は泣き腫れた顔をあげて、匂いのする方向へとぼとぼ歩いた。
獣道と言うか、その道は道と思えなかったが、凪斗は無心に進んだ。
しばらく歩いていると、視界が開けた。ちょっとした広場みたいだ。その広場は円形で、真ん中に他の木より少し大きい木があった。なんの種類かは分からなかった。
「雨も酷いし、少しあそこで雨宿りするか。」
真ん中にある木の根っこに座った。
謝れば、良かった…。
本当は知っていた。姉の帰りがなぜ遅いのか。
バイトしているのだ。学校が終わると、すぐにカラオケ店に行って、バイトをしていたのだ。夜まで。春休みは働き詰めだった。だから、真夜中に帰ってきて来るのだ。
うちは母子家庭で、母も働いている。でも、欠かさず夕飯は手作りしてくれていた。夜に帰ってくる姉に夜食を作ってた。
父が三年前に交通事故で他界した。俺は悲しくて、寂しくて、でも、姉ちゃんは俺の前では絶対泣かなかった。姉ちゃんも俺と同じ気持ちだったろうに。悲しかっただろうに。
母も、仕事を掛け持ちしてる。朝四時から夕方五時までコンビニで働いて、家に帰って夕飯と夜食を作る。その後、家でできる仕事を、睡眠を削ってするんだ。母が寝ているところを俺はほとんど見たことがないかもしれない。
姉がなぜスマホを見ているのかというと、求人サイトを見ているんだ。もっといい給料のバイトはないかと。あと、姉の夢である、歌手のレッスンのサイト。姉は歌手になるために、レッスンに行きたいと思っているようだった。でも、うちにはそんな金なんてない。夢を削って家計を支えているのだ。
それに対して俺はどうだ?姉が本当は何をしているのか、母はなぜ姉を叱らないのか、全部知っていた。分かっていたのに、なにも出来ない、役に立てない、子供な自分が悔しくて、悲しくて、自分を正当化したいと、犠牲者ぶった。
俺は、最低だな。
枯れたと思っていた涙がまた溢れてきた。
「謝りたい…。」
ひどい事言ってごめんって、家族じゃないなんて思ってない。ただ、何も出来ない自分が悔しくて、八つ当たりしただけなんだ。
『その心があれば、大丈夫よ。』
凪斗は驚いた。誰もいなかったはずの場所に声が聞こえて、心霊現象かと頭は考えるが、不思議と怖くはなかった。
顔を上げると、女の子がいた。
白い靴。白いワンピース。ほのかに毛先がピンクがかった白くて長い髪の毛。瞳は紅い。肌はとても白くて腕も足も細かった。そして、梅の花の髪飾りをしていた。
とても美しくて、幻想的で、その姿はまるで妖精だった。
言葉が出ず、固まっていると、話しかけてきた。
『まだ、大丈夫。』
何もかも分かっているのだろうか。凪斗は、何故か、名前も知らぬ女の子に言っていた。
「大丈夫なんかじゃない。家族に、酷いことを言ってしまった。家族じゃないなんて…。本当はそんなこと…思ってないのに…。」
女の子は言った。
『謝りたいんでしょう?』
凪斗は零れてくる涙を拭いながら、震える声で言った。
「謝りたいっ…!」
女の子は優しく微笑んだ。
『その心があれば、大丈夫よ。』
『だって、家族でしょう。』
「うんっ…!」
女の子はニコッと微笑んだ。その顔があまりに可愛くて、顔が赤くなったのが自分でも分かった。
女の子は手をパンパンと叩いて言った。
『じゃあ、家族の元へ行きましょう!』
二人の顔が思い浮かぶ。
「でも、帰り道が分からない…。」
また涙が出てきそうになる。帰ろうにも帰れないんだ。
『大丈夫!私に任せて!』
女の子が凪斗の手を握って言う。
いきなり手を握られたもんだから、また顔が赤くなる。
「でも、どうやって…。」
女の子は微笑んでこたえる。
『こうやってっ!』
女の子がふわっと5センチぐらい浮く。
「えっ!![#「!!」は縦中横]浮いて…!」
すると女の子が光った。正確には女の子が身につけている梅の花の髪飾りが。
「うっ、眩し…。」
凪斗は眩しさに耐えられず、目を瞑った。
凪斗はそっと目を開けた。
そして、目を見開いた。
「うわぁ、ここは…。」
そこは、あの小さな広場ではなかった、永遠に続く、花畑だった。
「花がたくさん…。」
いつの間にか雨は降っていなくて、青空が広がっていた。
凪斗の服も髪も乾いていた。
花はそれぞれ自分の色を主張し、咲狂っていた。
それはそれは、美しい光景だった。
『どう?綺麗でしょ?』
「あぁ。綺麗だ。」
ここは不思議だ。永遠に花畑が続いている。見渡す限り、花畑。荒れた心を潤してくれるような、優しい場所。
「あ、あれは…。」
梅の木だ。梅の花が咲いてる。ここに広がる花達も綺麗だけど、この梅の木が、この花畑の中で、一番綺麗だと思った。
「綺麗…。」
梅の木に見入っていた。
『き、綺麗?』
後ろから女の子が、顔を赤くしながら聞いてきた。
何故顔を赤くしてるのか分からなかったけど、俺はこたえた。
「あぁ。一番綺麗だよ。」
女の子は、顔を赤くして、嬉しそうな、照れてるような笑顔を見せた。その笑顔に俺はドキッとした。
『さっ!時間だよ!』
あ、もう時間か。
もっとここにいたいなぁ。でも、俺は帰って謝らなければならない。俺の家族に。
『…お別れだね。』
寂しそうに女の子は言う。
俺も寂しくなってきた。
「また…、会える?」
女の子は優しく微笑んで言う。
『あなたがまた、必要とすれば。でも、その時は来ない方がいいかもね。』
訳が分からず、女の子に問うてみた。
「それは、どういう…。」
女の子はニコッと笑い、俺の後ろを指さした。
振り向くと、いつの間にか、道があった。森へ続く道だ。
でも、そこは明るく照らされている。
『あそこを通っていけば、あなたの町へ着く。』
「ありがとう。君のことは忘れない。えっと、最後に君の名前を教えてくれないか?」
女の子は少し目を見開き、微笑んで言った。
『私に名前はないわ。私はただの梅の木の妖精だもの。』
不思議と驚きはしなかった。まぁ、女の子の容姿を見れば、当然とも言える。
「じゃあ、俺が名前、付けてもいい?」
女の子は驚いた表情をして、それから嬉しそうに笑った。
『うふふっ!お願いするわ!』
とても嬉しそうに笑うので、どんな名前がいいか、悩んでしまう。
「梅…梅…花…梅の香り。
ウメカ。」
「梅に香るって書いて、
ウメカ!」
風が吹いた。女の子、梅香のほのかに毛先がピンクがかった白い髪が、顔を隠す。
梅香は顔を上げる。紅い瞳は、涙で濡れていた。
「えっ、あっ、ごめん!梅香って名前、やだったかな?![#「?!」は縦中横]ごめん!![#「!!」は縦中横]」
必死に謝った。女子を泣かせるなんて生まれて初めてだったから、どうすればいいのか分からなかった。
梅香は顔を左右に振った。
『嬉しいの。名前なんてなかったから。あなたに名前を呼んでもらえるのが、たまらなく嬉しいの。素敵な名前、大事にする。ありがとう。』
嬉しがってもらえて、俺も嬉しくなった。
そして、涙を目に溜めながら、嬉しそうに微笑む梅香が、綺麗だった。
『あなたの名前も、教えてくれる?』
「凪斗。俺の名は凪斗。」
『凪斗…。ふふっ。凪斗!』
また、嬉しそうに笑う。
俺も笑った。
『またね。』
梅香が微笑みながら言う。
「また、会おう。」
梅香は嬉しそうに笑った。
俺は道を進んで森に入った。
後ろを振り返ると、木が伸びて入口を塞いでしまった。
森の道を抜けたら、コンビニの裏に出た。俺は走った。普段運動なんかしてないからすぐ息が切れる。脇腹が痛い。足も疲れて動かなくなってくる。途中で上り坂があった。そこも全力疾走。
もう、夜は明けていて、朝日が昇る頃だった。
ガチャ。
玄関を開ける。靴を脱ぐのももどかしかった。足がパンパンだ。でも、それもそうだろう。普段運動して無いし、二時間かけて進んだ道を休みもせず走って戻ってきたのだから。
疲労のせいで足が上手く動かせず、すてんっと転んでしまった。
「ゼェハァ、ぐっ…」
息ぎれが激しい。喉がカラカラだ。足に力が入らない。床にうつ伏せに寝転がったまま荒い息を繰り返す。
「…凪斗っ…!」
今にも泣きだしそうな声が聞こえた。
姉ちゃんだ。
「ねぇ…ちゃん…。」
涙が溢れ出る。頬を伝って床に滴る。
姉ちゃんの目の下にはクマがあって、泣き腫らした顔をしてた。
「凪斗!」
母ちゃん…。
母ちゃんの目も、姉ちゃんと同じようになってた。
母ちゃんが水を持ってきてくれた。水を飲んで、喉を潤した。
「母ちゃん、姉ちゃん…。酷いこと言ってごめん。ほんとは、家族じゃないなんて、思ってない。ごめん。ごめん。」
母ちゃんと姉ちゃんは目に涙を溜めながら首を振った。
姉ちゃんが、俺の左頬を撫でて謝った。
「ぶってごめんね。痛かったでしょう。ごめんね。」
姉ちゃんの涙が流れる。
姉ちゃんの涙を見るのは、いつぶりだろうか。
母ちゃんが俺の事を抱きしめながら言う。
「ごめんね。いつも怒鳴ってばっかりで。」
「悔しかったんだ。本当は、姉ちゃんがバイトしてるの知ってた。だから母ちゃんが、姉ちゃんの事怒らないって事も知ってた。だから、金を稼げない子供な俺が、役に立てない俺がカッコ悪くて、悔しくて…。ごめん。八つ当たりだったんだ。」
母ちゃんの事を抱き締め返しながら言う。
「それは、違うわよ。」
「え?」
姉ちゃんが涙を拭いながら話す。
「あんた、学校終わったらすぐうちに帰って、洗濯とか、掃除とか家事やってくれてるじゃない。」
驚いた。俺は、金が稼げない自分が憎らしかった。家事をやった所で、お金が稼げなきゃ意味が無いと思っていたから。
「家事やってくれてて、助かってたの。なのに、私ったらそれが当たり前みたいになってしまって…。ごめんね。」
母が涙を流しながら言う。
俺は、皆の役に立ってたのか?
涙が留めなく溢れてきて、
「ごめん。ごめん。
ごめん。ありがとう。」
三人で抱き合いながらその言葉を言い合った。
四月。凪斗は二年生になった。毎日、出来る時間があったら団地の周りを走り込むようにした。勉強もした。そんな簡単に体力はつかないし、成績も上がらないけど、確実に身になってると思う。
姉は、高校三年生。時給のいいバイトを見つけられたから、歌手になるためのレッスンに行けるようになった。レッスンとバイトと学校の両立は難しそうだけど、前より生き生きとしてる気がする。
母は、「ありがとう。」をよく言うようになった。俺はそう言われる度に自信が付く。
皆、前より楽しそうだ。
六月。クラス替えをして、新しい友達とも打ち解けてきた頃。梅香のところに行きたくなった。今の家族の様子を伝えたいと思ったからだ。
あのコンビニの裏に行ってみた。でも、そこには道がなかった。
「もう、会えないのか…?」
ボソッと呟くと、
『会えるよ。』
あの香りと梅香の声が風に乗って流れてきた。
俺はニッと笑って、
「いつか、また!」
そんな俺に呆れた母は、凪斗に
「ちょっと、いつまでテレビ見てんの。宿題とかないの?」
台所で夕飯の準備をしながらこちらを向かずに話す。
「春休みなんだ。あるわけないだろ。」
母がこっちを見ずに話したことに少しムカつき、自分も母の方を見ずに言った。
だが、母もその態度にムカついたようだ。
俺に鋭い目をする。
自分だってこっち見なかったくせにな。
「じゃあ、外で運動でもしてきなさい。」
母が俺から目線を外して言う。
うわっ。運動とか。
「やだよ。運動とかやりたくないよ。」
母に抗議する。最近母ちゃんの言うことを聞きたくないんだ。無性に…。
だが、母ちゃんはそれは気に入らないみたいだ。
「春なんだから、外は暖かいの。そこら辺走ってきなさい。」
外が暖かくても寒くても運動は嫌いなんだよ。
そう、思ったことを口にしようとしたら、姉ちゃんが割り込んできた。
「子供は外で遊んできなよ。ずっとテレビとかだらしない。」
ソファに転がってスマホを見ながら姉ちゃんは言う。
姉ちゃんとは四つ差の姉弟である。
姉ちゃんは高校生になって、スマホを持たせてもらってから、家でもスマホばかり見てる。
更には、帰りも遅いのだ。学校は最低でも六時、七時には家に帰れるはずなのに、姉が帰ってくるのは九時、十時。
母ちゃんに姉ちゃんを怒らないのかと聞くと、高校生はもう大人なの。と言うのだ。
何が大人だ。春休み、昨日は夜中の二時に帰ってきて、今日は昼まで寝ていた。起きたと思えば今度はスマホ。
でも、母ちゃんは姉ちゃんを怒ってくれない。
なんだよ…。俺ばっかり怒鳴りやがって。
俺は今までの理不尽さを思い出して、怒りが込み上げてきた。
「なんだよ。そういう姉ちゃんはどうなんだよ。」
あえて挑発するような口調で話す。姉ちゃんはすかさず俺を睨む。
「は?どうって?」
すごい形相だ。弟に挑発されたことが余程腹ただしいのだろう。
凪斗は謝りそうになるが、ぐっと堪える。
「俺に運動しろやらなんやら命令するけどさ。姉ちゃんは運動してるんですか?いっつも夜遅くに帰ってきて、だらしないのは姉ちゃんだろ。」
姉ちゃんの声色が低くなる。
「は?姉に向かってその口のきき方なんだよ。」
「四つしか違わないだろ!」
「四つも違うんだ。お前は弟!」
「姉だからって偉そうにすんじゃねぇ!」
バチンッ!![#「!!」は縦中横]
凪斗は姉にぶたれた。
驚愕で凪斗はドサッと尻もちをつく。
「えっ…。」
ぶたれた…?左頬を触る。ヒリヒリする。
そう認識すると、怒りが込み上げてきて、立ち上がって、姉の胸ぐらを掴もうとした。
「いい加減にしなさいっ!![#「!!」は縦中横]」
突然の怒鳴り声に凪斗の体は立ち上がったところで止まる。
怒鳴り声の発声源は母だった。
「凪斗っ!![#「!!」は縦中横]お姉ちゃんに対してその態度は何?![#「?!」は縦中横]目上の人にそんな態度とってはいけないと教えたでしょう?![#「?!」は縦中横]」
怒鳴られたのは俺だけ?手をあげたのは、姉ちゃんだぞ。俺は左頬をぶたれたんだぞ?なのに、なんで。目上の人って…。
じゃあ俺は一生姉ちゃんに反論出来ねぇのかよ。反論すれば、必ず俺が怒られるのか?なんなんだよ…。
「なんなんだよ…。俺ばっかり…。」
心の声が漏れた。
もういい…。
「そうかい…。お前らは俺の事が嫌いなんだな?だから、俺ばっかり理不尽なこと…。」
二人は俺の事追い出したいのか?
そう考えて溢れそうになった涙を堪えて、できる限りの低くて恐い声を出して、二人を睨みながら言った。
「もういい。お前らなんか、家族じゃねぇ!![#「!!」は縦中横]二人の望み通り、こんな家、出てってやる!」
凪斗は靴を履いて玄関を飛び出した。ーー。
凪斗は街を歩いた。今は何時だろうか。コンビニにある時計を見ると七時半だった。家を飛び出したのは、五時ぐらいだったはずだから、二時間半、とぼとぼ街を歩いていたらしい。
「腹減ったなぁ。」
財布も持たず家を出ていった二時間前の自分を怒鳴ってやりたい。
「今更、帰れねぇし。」
凪斗はそのまま適当に歩いた。なにも考えず。ただただ足が向く方向へ。ーー。
バサバサッ!
「うわぁっ!![#「!!」は縦中横]」
ドサッ!本日二度目の尻もち。どうやら鳥が羽ばたく音だったらしい。尻が土で汚れてしまった。
「うわ。最悪…。」
ん?土?
周りを見渡す。
「も、森の中?」
いつの間にか、森の中に入ってしまったらしい。
今は何時だ?もうだいぶ暗い。
夜の森はなんだか不気味だ。
元来た道を戻ろう。
振り返ると、道と思わしきものが二箇所あった。どちらも薄暗く、奥が見えない。
「どっちだ…?」
分からない。どっちから来たのか覚えてない。
凪斗はその場にうずくまった。
どうしよう。帰れない。家に、帰れない。…いや、そもそも帰るところなどないんだ。自分で出て行ったんだから…。
そう思うと家出した事を後悔する。今まで我慢してきた涙が溢れて止まらなくなる。
ポツリ。
うずくまった凪斗の首筋に雨が落ちる。それはだんだん強くなってくる。でも、凪斗はそんなこと今は考えられない。
いったいどのくらいこうしてうずくまっていただろうか。
凪斗はずぶ濡れ。髪の毛も雨が滴っている。
ふと、匂いがした。落ち着く香り。雨が降っているのに、匂いがするのだ。
凪斗は泣き腫れた顔をあげて、匂いのする方向へとぼとぼ歩いた。
獣道と言うか、その道は道と思えなかったが、凪斗は無心に進んだ。
しばらく歩いていると、視界が開けた。ちょっとした広場みたいだ。その広場は円形で、真ん中に他の木より少し大きい木があった。なんの種類かは分からなかった。
「雨も酷いし、少しあそこで雨宿りするか。」
真ん中にある木の根っこに座った。
謝れば、良かった…。
本当は知っていた。姉の帰りがなぜ遅いのか。
バイトしているのだ。学校が終わると、すぐにカラオケ店に行って、バイトをしていたのだ。夜まで。春休みは働き詰めだった。だから、真夜中に帰ってきて来るのだ。
うちは母子家庭で、母も働いている。でも、欠かさず夕飯は手作りしてくれていた。夜に帰ってくる姉に夜食を作ってた。
父が三年前に交通事故で他界した。俺は悲しくて、寂しくて、でも、姉ちゃんは俺の前では絶対泣かなかった。姉ちゃんも俺と同じ気持ちだったろうに。悲しかっただろうに。
母も、仕事を掛け持ちしてる。朝四時から夕方五時までコンビニで働いて、家に帰って夕飯と夜食を作る。その後、家でできる仕事を、睡眠を削ってするんだ。母が寝ているところを俺はほとんど見たことがないかもしれない。
姉がなぜスマホを見ているのかというと、求人サイトを見ているんだ。もっといい給料のバイトはないかと。あと、姉の夢である、歌手のレッスンのサイト。姉は歌手になるために、レッスンに行きたいと思っているようだった。でも、うちにはそんな金なんてない。夢を削って家計を支えているのだ。
それに対して俺はどうだ?姉が本当は何をしているのか、母はなぜ姉を叱らないのか、全部知っていた。分かっていたのに、なにも出来ない、役に立てない、子供な自分が悔しくて、悲しくて、自分を正当化したいと、犠牲者ぶった。
俺は、最低だな。
枯れたと思っていた涙がまた溢れてきた。
「謝りたい…。」
ひどい事言ってごめんって、家族じゃないなんて思ってない。ただ、何も出来ない自分が悔しくて、八つ当たりしただけなんだ。
『その心があれば、大丈夫よ。』
凪斗は驚いた。誰もいなかったはずの場所に声が聞こえて、心霊現象かと頭は考えるが、不思議と怖くはなかった。
顔を上げると、女の子がいた。
白い靴。白いワンピース。ほのかに毛先がピンクがかった白くて長い髪の毛。瞳は紅い。肌はとても白くて腕も足も細かった。そして、梅の花の髪飾りをしていた。
とても美しくて、幻想的で、その姿はまるで妖精だった。
言葉が出ず、固まっていると、話しかけてきた。
『まだ、大丈夫。』
何もかも分かっているのだろうか。凪斗は、何故か、名前も知らぬ女の子に言っていた。
「大丈夫なんかじゃない。家族に、酷いことを言ってしまった。家族じゃないなんて…。本当はそんなこと…思ってないのに…。」
女の子は言った。
『謝りたいんでしょう?』
凪斗は零れてくる涙を拭いながら、震える声で言った。
「謝りたいっ…!」
女の子は優しく微笑んだ。
『その心があれば、大丈夫よ。』
『だって、家族でしょう。』
「うんっ…!」
女の子はニコッと微笑んだ。その顔があまりに可愛くて、顔が赤くなったのが自分でも分かった。
女の子は手をパンパンと叩いて言った。
『じゃあ、家族の元へ行きましょう!』
二人の顔が思い浮かぶ。
「でも、帰り道が分からない…。」
また涙が出てきそうになる。帰ろうにも帰れないんだ。
『大丈夫!私に任せて!』
女の子が凪斗の手を握って言う。
いきなり手を握られたもんだから、また顔が赤くなる。
「でも、どうやって…。」
女の子は微笑んでこたえる。
『こうやってっ!』
女の子がふわっと5センチぐらい浮く。
「えっ!![#「!!」は縦中横]浮いて…!」
すると女の子が光った。正確には女の子が身につけている梅の花の髪飾りが。
「うっ、眩し…。」
凪斗は眩しさに耐えられず、目を瞑った。
凪斗はそっと目を開けた。
そして、目を見開いた。
「うわぁ、ここは…。」
そこは、あの小さな広場ではなかった、永遠に続く、花畑だった。
「花がたくさん…。」
いつの間にか雨は降っていなくて、青空が広がっていた。
凪斗の服も髪も乾いていた。
花はそれぞれ自分の色を主張し、咲狂っていた。
それはそれは、美しい光景だった。
『どう?綺麗でしょ?』
「あぁ。綺麗だ。」
ここは不思議だ。永遠に花畑が続いている。見渡す限り、花畑。荒れた心を潤してくれるような、優しい場所。
「あ、あれは…。」
梅の木だ。梅の花が咲いてる。ここに広がる花達も綺麗だけど、この梅の木が、この花畑の中で、一番綺麗だと思った。
「綺麗…。」
梅の木に見入っていた。
『き、綺麗?』
後ろから女の子が、顔を赤くしながら聞いてきた。
何故顔を赤くしてるのか分からなかったけど、俺はこたえた。
「あぁ。一番綺麗だよ。」
女の子は、顔を赤くして、嬉しそうな、照れてるような笑顔を見せた。その笑顔に俺はドキッとした。
『さっ!時間だよ!』
あ、もう時間か。
もっとここにいたいなぁ。でも、俺は帰って謝らなければならない。俺の家族に。
『…お別れだね。』
寂しそうに女の子は言う。
俺も寂しくなってきた。
「また…、会える?」
女の子は優しく微笑んで言う。
『あなたがまた、必要とすれば。でも、その時は来ない方がいいかもね。』
訳が分からず、女の子に問うてみた。
「それは、どういう…。」
女の子はニコッと笑い、俺の後ろを指さした。
振り向くと、いつの間にか、道があった。森へ続く道だ。
でも、そこは明るく照らされている。
『あそこを通っていけば、あなたの町へ着く。』
「ありがとう。君のことは忘れない。えっと、最後に君の名前を教えてくれないか?」
女の子は少し目を見開き、微笑んで言った。
『私に名前はないわ。私はただの梅の木の妖精だもの。』
不思議と驚きはしなかった。まぁ、女の子の容姿を見れば、当然とも言える。
「じゃあ、俺が名前、付けてもいい?」
女の子は驚いた表情をして、それから嬉しそうに笑った。
『うふふっ!お願いするわ!』
とても嬉しそうに笑うので、どんな名前がいいか、悩んでしまう。
「梅…梅…花…梅の香り。
ウメカ。」
「梅に香るって書いて、
ウメカ!」
風が吹いた。女の子、梅香のほのかに毛先がピンクがかった白い髪が、顔を隠す。
梅香は顔を上げる。紅い瞳は、涙で濡れていた。
「えっ、あっ、ごめん!梅香って名前、やだったかな?![#「?!」は縦中横]ごめん!![#「!!」は縦中横]」
必死に謝った。女子を泣かせるなんて生まれて初めてだったから、どうすればいいのか分からなかった。
梅香は顔を左右に振った。
『嬉しいの。名前なんてなかったから。あなたに名前を呼んでもらえるのが、たまらなく嬉しいの。素敵な名前、大事にする。ありがとう。』
嬉しがってもらえて、俺も嬉しくなった。
そして、涙を目に溜めながら、嬉しそうに微笑む梅香が、綺麗だった。
『あなたの名前も、教えてくれる?』
「凪斗。俺の名は凪斗。」
『凪斗…。ふふっ。凪斗!』
また、嬉しそうに笑う。
俺も笑った。
『またね。』
梅香が微笑みながら言う。
「また、会おう。」
梅香は嬉しそうに笑った。
俺は道を進んで森に入った。
後ろを振り返ると、木が伸びて入口を塞いでしまった。
森の道を抜けたら、コンビニの裏に出た。俺は走った。普段運動なんかしてないからすぐ息が切れる。脇腹が痛い。足も疲れて動かなくなってくる。途中で上り坂があった。そこも全力疾走。
もう、夜は明けていて、朝日が昇る頃だった。
ガチャ。
玄関を開ける。靴を脱ぐのももどかしかった。足がパンパンだ。でも、それもそうだろう。普段運動して無いし、二時間かけて進んだ道を休みもせず走って戻ってきたのだから。
疲労のせいで足が上手く動かせず、すてんっと転んでしまった。
「ゼェハァ、ぐっ…」
息ぎれが激しい。喉がカラカラだ。足に力が入らない。床にうつ伏せに寝転がったまま荒い息を繰り返す。
「…凪斗っ…!」
今にも泣きだしそうな声が聞こえた。
姉ちゃんだ。
「ねぇ…ちゃん…。」
涙が溢れ出る。頬を伝って床に滴る。
姉ちゃんの目の下にはクマがあって、泣き腫らした顔をしてた。
「凪斗!」
母ちゃん…。
母ちゃんの目も、姉ちゃんと同じようになってた。
母ちゃんが水を持ってきてくれた。水を飲んで、喉を潤した。
「母ちゃん、姉ちゃん…。酷いこと言ってごめん。ほんとは、家族じゃないなんて、思ってない。ごめん。ごめん。」
母ちゃんと姉ちゃんは目に涙を溜めながら首を振った。
姉ちゃんが、俺の左頬を撫でて謝った。
「ぶってごめんね。痛かったでしょう。ごめんね。」
姉ちゃんの涙が流れる。
姉ちゃんの涙を見るのは、いつぶりだろうか。
母ちゃんが俺の事を抱きしめながら言う。
「ごめんね。いつも怒鳴ってばっかりで。」
「悔しかったんだ。本当は、姉ちゃんがバイトしてるの知ってた。だから母ちゃんが、姉ちゃんの事怒らないって事も知ってた。だから、金を稼げない子供な俺が、役に立てない俺がカッコ悪くて、悔しくて…。ごめん。八つ当たりだったんだ。」
母ちゃんの事を抱き締め返しながら言う。
「それは、違うわよ。」
「え?」
姉ちゃんが涙を拭いながら話す。
「あんた、学校終わったらすぐうちに帰って、洗濯とか、掃除とか家事やってくれてるじゃない。」
驚いた。俺は、金が稼げない自分が憎らしかった。家事をやった所で、お金が稼げなきゃ意味が無いと思っていたから。
「家事やってくれてて、助かってたの。なのに、私ったらそれが当たり前みたいになってしまって…。ごめんね。」
母が涙を流しながら言う。
俺は、皆の役に立ってたのか?
涙が留めなく溢れてきて、
「ごめん。ごめん。
ごめん。ありがとう。」
三人で抱き合いながらその言葉を言い合った。
四月。凪斗は二年生になった。毎日、出来る時間があったら団地の周りを走り込むようにした。勉強もした。そんな簡単に体力はつかないし、成績も上がらないけど、確実に身になってると思う。
姉は、高校三年生。時給のいいバイトを見つけられたから、歌手になるためのレッスンに行けるようになった。レッスンとバイトと学校の両立は難しそうだけど、前より生き生きとしてる気がする。
母は、「ありがとう。」をよく言うようになった。俺はそう言われる度に自信が付く。
皆、前より楽しそうだ。
六月。クラス替えをして、新しい友達とも打ち解けてきた頃。梅香のところに行きたくなった。今の家族の様子を伝えたいと思ったからだ。
あのコンビニの裏に行ってみた。でも、そこには道がなかった。
「もう、会えないのか…?」
ボソッと呟くと、
『会えるよ。』
あの香りと梅香の声が風に乗って流れてきた。
俺はニッと笑って、
「いつか、また!」
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