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第2章 俺は天才?
発表会(2)
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その日、明莉は学校から帰ってきた時から様子がおかしかった。
「ただいま、オト。」
リビングに入って静かに俺に声をかけると、自分の部屋に籠ってしまった。
「明莉、宿題は?」
いつまでも自分の部屋から出てこない明莉を心配して、妻が階段下から声をかけた。
「今日は、二階でする。」
部屋から顔も出さずに、明莉がこたえた。
いつもはリビングかダイニングにランドセルを置いて、ダイニングテーブルで宿題をしている明莉。
俺が子猫として帰ってきてから、これまで宿題を二階ですると聞いたことはなかった。
おかしい・・・。
俺は廊下に出て妻の隣に行き、閉じられたままの明莉の部屋のドアを見上げた。
妻にとっても、これまであまり前例がないことだったのか、戸惑っている様子だった。
俺は仕方なく妻と一緒にリビングに戻り、妻の様子を見ていたのだが、妻は何か言いかけてドアに向かうが、何も言わずにキッチンに戻るという行動を繰り返していた。
そして落ち着こうと思ったのか、カフェオレを入れてダイニングチェアーに座った。
「学校で何かあったのかしらね。」
カフェオレを一口飲んだ妻が、カップを置いて呟く。
「オトも今日は寂しいね。」
いきなり話しかけられて驚いたが、困惑と悲しみが混ざった表情の妻に見つめられ、
「ミャウ―」
と、俺も元気のない鳴き声でこたえた。
「オトが二階に上がれたら、明莉の部屋に行って様子を見てきてもらうんだけど、まだ危ないわね。」
諦めたような口調で放たれた妻の一言に固まる。
俺が様子を見てくる・・・様子を見に行っても、妻に報告はできないのだが・・・。
そうか、様子を見てくるというより、明莉を慰めることを期待されているのか。
すぐにでも二階の明莉の部屋へとんでいきたいのだが、俺はまだ階段を上ったことがない。
もしかしたら、そろそろ上れるかもしれないが、危ないからという理由でほとんどリビングから出してもらったことがない。
たまに俺がふらっとリビングから出ると、すぐに連れ戻されてしまう。
「ミャウ―(役に立てなくて、すまない。)」
俺は、もう一度元気なく鳴いた。
「あら、今日はオトも元気がないのね。よし!そういう時は、私が頑張らないとね。頑張れ、私!」
そう言うと、妻はカフェオレを一気に飲み干し、キッチンへと向かった。
俺にできることは、何だろう?
肩に力が入っている妻の後ろ姿をぼんやりと見つめて考える。
明莉の癒しになる。
明莉の愚痴を聞く。
そのためには、一人で明莉の部屋に行けるようにならないと・・・。
俺は段差を上る練習ができるところを見つけるため、ゆっくりと部屋を見回した。
最初に目についたのは、ソファーだった。
しかし、ちょっと高さが高いのと、爪をたててしまったら生地が傷んでしまうのが気になる。
ソファーよりも高さがあるけど、傷がつかないのでローテーブルの方がいいかな。
できれば、その半分くらいの高さから練習したいけど・・・。
なかなかいい物が見つからない。
仕方なく猫用ベッドにとびのったり、おりたりして練習する。
「オト、何やってんの?」
そんな俺の様子を妻が呆れたような顔で見ていた。
これは、その・・・あの・・・。
「ただいま、オト。」
リビングに入って静かに俺に声をかけると、自分の部屋に籠ってしまった。
「明莉、宿題は?」
いつまでも自分の部屋から出てこない明莉を心配して、妻が階段下から声をかけた。
「今日は、二階でする。」
部屋から顔も出さずに、明莉がこたえた。
いつもはリビングかダイニングにランドセルを置いて、ダイニングテーブルで宿題をしている明莉。
俺が子猫として帰ってきてから、これまで宿題を二階ですると聞いたことはなかった。
おかしい・・・。
俺は廊下に出て妻の隣に行き、閉じられたままの明莉の部屋のドアを見上げた。
妻にとっても、これまであまり前例がないことだったのか、戸惑っている様子だった。
俺は仕方なく妻と一緒にリビングに戻り、妻の様子を見ていたのだが、妻は何か言いかけてドアに向かうが、何も言わずにキッチンに戻るという行動を繰り返していた。
そして落ち着こうと思ったのか、カフェオレを入れてダイニングチェアーに座った。
「学校で何かあったのかしらね。」
カフェオレを一口飲んだ妻が、カップを置いて呟く。
「オトも今日は寂しいね。」
いきなり話しかけられて驚いたが、困惑と悲しみが混ざった表情の妻に見つめられ、
「ミャウ―」
と、俺も元気のない鳴き声でこたえた。
「オトが二階に上がれたら、明莉の部屋に行って様子を見てきてもらうんだけど、まだ危ないわね。」
諦めたような口調で放たれた妻の一言に固まる。
俺が様子を見てくる・・・様子を見に行っても、妻に報告はできないのだが・・・。
そうか、様子を見てくるというより、明莉を慰めることを期待されているのか。
すぐにでも二階の明莉の部屋へとんでいきたいのだが、俺はまだ階段を上ったことがない。
もしかしたら、そろそろ上れるかもしれないが、危ないからという理由でほとんどリビングから出してもらったことがない。
たまに俺がふらっとリビングから出ると、すぐに連れ戻されてしまう。
「ミャウ―(役に立てなくて、すまない。)」
俺は、もう一度元気なく鳴いた。
「あら、今日はオトも元気がないのね。よし!そういう時は、私が頑張らないとね。頑張れ、私!」
そう言うと、妻はカフェオレを一気に飲み干し、キッチンへと向かった。
俺にできることは、何だろう?
肩に力が入っている妻の後ろ姿をぼんやりと見つめて考える。
明莉の癒しになる。
明莉の愚痴を聞く。
そのためには、一人で明莉の部屋に行けるようにならないと・・・。
俺は段差を上る練習ができるところを見つけるため、ゆっくりと部屋を見回した。
最初に目についたのは、ソファーだった。
しかし、ちょっと高さが高いのと、爪をたててしまったら生地が傷んでしまうのが気になる。
ソファーよりも高さがあるけど、傷がつかないのでローテーブルの方がいいかな。
できれば、その半分くらいの高さから練習したいけど・・・。
なかなかいい物が見つからない。
仕方なく猫用ベッドにとびのったり、おりたりして練習する。
「オト、何やってんの?」
そんな俺の様子を妻が呆れたような顔で見ていた。
これは、その・・・あの・・・。
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