俺は猫であり父である

佐倉さつき

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第3章 娘は難しいお年頃?

二分の一成人式(3)

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「ちょっと早いけど、おやつにしましょう。」
俺と明莉がリビングに入ると、ダイニングテーブルにドーナツがのったお皿を運びながら妻が言った。
「うん。」
明莉はダイニングチェアーに座り、俺はソファーにとびのった。



「パパの部屋で、何を探していたの?」
カフェオレを飲みながら、妻が明莉に訊ねた。
「私が赤ちゃんだった時の写真を探してたの。」
「赤ちゃんの時の写真?」
「うん。三学期に学校で二分の一成人式があるんだけど、その時に使うんだって。あと、総合の時間にも生まれた時からのことを調べてまとめないといけないらしくて、写真がいるの。」
「それで、赤ちゃんの時の写真は見つかった?」
「うん。だけど、まだ最初のページしか見てないから、後でまた見に行ってもいい?」
「いいわよ。」
妻は、にっこり微笑んで言った。
それからカフェオレを一口飲み、少し考えてから、また口を開いた。
「ねえ、私も一緒に見てもいいかしら?」
「えっ⁉だって、ママ、パパの・・・」
と言いかけて、明莉が黙る。
「私も、久しぶりに写真を見たくなっちゃった。」
妻が笑顔で言うと、
「うん。いいよ」
と、明莉も笑顔でこたえた。



おやつの後、妻と明莉と俺は、俺の書斎だった部屋に行き、黄色いアルバムを開いた。
「この時、明莉ったらね・・・」
「この時、パパがね・・・」
写真を見ながら、妻が楽しそうに当時の話を明莉に話している。
「えー、そんなことがあったの⁉それで、どうなったの?」
明莉も楽しそうに聞いている。

「えー、パパったら、そんなことしたの?」
「そうなのよ。その後、大変だったのよ・・・」
むむ・・・妻もいろいろとやらかしていたはずなのに、俺の失敗談ばかりなのが気になるけど・・・



年が明けて三学期がスタートし、参観日の時に、二分の一成人式が行われた。
「ねえ、明莉が二分の一成人式の時にくれた花束と感謝状をパパのところにお供えしてもいい?」
参観日から帰ってきた妻が明莉に訊ねた。
「いいよ。」
そして、二人で仏壇の前に座り、手を合わせた。
「パパ、今日は明莉の二分の一成人式がありました。明莉が花束と感謝状を渡してくれたのよ。」
「パパ、いつも見守っていてくれて、ありがとう。」
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