俺は猫であり父である

佐倉さつき

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第5章 旅立ち

気になる影

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「今日も、帰りが遅い・・・」
四月末に、明莉の大学の新入生歓迎キャンプは無事に終わった。
明莉の帰りが遅いのは、新入生歓迎キャンプまでと思って我慢していた。
しかし、五月のゴールデンウイークも過ぎたというのに、今日も帰りが遅い。

「一体、何をしているんだ?」
現在、午後九時。
今春からは午後七時半までに誰も帰ってこないと、明莉は外で食べて帰るのかなと思うようになった。
暗くなった部屋で一人静かに待っていると、今日は妻が午後八時前に帰宅し、俺に夕食を出してくれた。
その後、妻は冷凍ご飯を温めたものと味噌汁、漬物などで簡単に夕食をすませた。
会社にいる間に明莉と連絡をとっているのだろう。
明莉が外で食べて帰る日には、妻は遅くまで仕事をして帰ることが多くなった。
そして、一人の夕食を簡単にすませて、家事や仕事などをして明莉の帰りを待つ。

やっぱり今日も明莉は外食だな。
一体、誰と食べているのだろう。
本人は友だちと食べてきたというが、本当に友だちか?
まさか男友だちということは・・・
待っている時間が長ければ長いほど、余計なことを考えてしまう。



午後十時。
まだ帰ってこない。
「ニャー。(明莉は大丈夫なのか?)」
妻のところに行き、呼びかける。
「あら、オト。明莉のことが心配なの?」
「ニャー。(うん。)」
「明莉は今日はね、キャンプの打ち上げで遅くなるんだって。まだ未成年なのに、打ち上げだなんてねえ。」
「ニャー。(そうだ、まだ早い。)」

俺の学生時代も似たようなものだったが、愛しい娘のこととなると話は別だ。
未成年の女の子を遅くまで連れまわすなと怒りがわいてくる。



その時、妻のスマホがメッセージを受信した。
「『遅くなってごめん。もうちょっとしたら帰るね。帰りは先輩に車で送ってもらうから、心配しないでね。』だって。」
「ニャッ、ニャッ。(なんだって⁉)」
「その人は、もちろん飲んでないのよね。」
妻が呟きながら、メッセージを返信している。
「『もちろん』だって。オト、明莉は車で送ってもらうから大丈夫だって。どんな人が送ってくださるのかしらね。」
妻は、なんだか楽しそうだ。
しかも「大丈夫」って・・・、送ってくるのが男だったらどうするんだ⁉
こんな時間まで男と二人きりってことは・・・

「シャー!(許せない!)」
「あらオト、どうしたの?」
毛を逆立てて怒る俺に、妻が不思議そうに声をかけるが、俺には取り繕う余裕などなかった。
結局、明莉が帰ってくるまで落ち着きなく部屋の中を歩き回ったり、爪を研いだりしたのだった。
もし男ならこの爪で・・・
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