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第5章 旅立ち
初めてのアルバイト
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「私、バイトしようと思うんだけど。」
夕食を食べながら、明莉が妻に言った。
「どこで働くの?」
お茶を飲みながら、妻が訊ねた。
「駅前のカフェ。先輩が働いている店を紹介してもらったの。就職活動で辞めるから、かわりに働いてほしいんだって。」
「ふーん、忙しくなりそうだけど、大学の勉強の方は大丈夫なの?」
「うん。週三か週四で入ってほしいんだって。だから授業が早く終わる日と土日に働こうと思ってる。」
「バイトも社会勉強になると思うから、できそうならやってみたら。」
「うん。ありがとう。」
夕食後、明莉はダイニングテーブルで市販の履歴書に付属の見本を見ながら、履歴書を作成している。
今までバイト経験はなく、履歴書を作成するのも初めてなので不安なのだろう、時々妻に訊いて確認しながら作成していた。
「面接って、どんなこと訊かれるのかな。」
履歴書を書き終わった明莉は、今度は妻に面接の相談をしている。
「うーん、どこでも訊かれるのは、どうして働きたいと思ったか、かな。後は、カフェだからコーヒーをよく飲むか、とか、カフェにはよく行くか、とかも訊かれるかもね。一度、そのお店にお客さんとして行ってみとくのもいいかもね。」
妻は、昔のことを思いだしながらアドバイスしている。
妻や俺の学生時代というと、もう四半世紀も前のことになるのか・・・
時の流れの早さに、あらためて驚く。
「大事なのは、明るい笑顔と、はきはきとした挨拶と返事。明莉の第一印象が悪かったら、紹介してくださった先輩にも申し訳ないからね、これだけは気をつけなさい。」
「はーい。」
「返事はのばさない。お腹に力をいれて、はきはきと。」
「はい。」
なんだか妻も楽しそうだ。
同じことを俺も新人研修の時に言われた気がするな。
「はー、疲れたー。」
アルバイト初日、明莉はクタクタになって帰ってきた。
荷物を置いて、そのままソファーに倒れ込む。
「どうだった?続けられそう?」
妻が夕食の準備をしながら訊ねる。
「うん、頑張るよ。だけど、覚えることがいっぱいあって大変。」
「わからないことは、先輩たちに訊くのよ。曖昧なまま、自己判断で行動するのが一番危険だからね。」
「はい。あっ、そうだ。メモの整理しとかなきゃ。」
そう言うと、明莉は起き上がり、バックの中から小さなメモ帳を取り出す。
「メモの整理?」
「うん。教えてもらったことは、メモ帳に書いて、何回も訊かなくてもいいようにしないといけないんだけど、書くことがいっぱいありすぎて間に合わないんだよね。」
「メモは、自分がわかればいいのよ。誰かに見せるものじゃないでしょう。さっと簡単に大切な単語だけ書いて、今、明莉がしているみたいに後で整理すればいいのよ。そしたら、仕事内容の復習にもなるし、頭の中も整理されるでしょう。」
「そうだね。でも、大切なことを簡単にというのが難しいんだよね。何を書いたらいいか、わからない。」
「フフフ、それは慣れるしかないわね。後から整理していると、ああ、これを書いとかないといけなかったって気づくことがあるの。今度は、そのことに注意して聞いて、メモすればいいのよ。その繰り返しで、書かないといけないことがわかってくるわ。」
「ふーん、さすが人生の先輩。」
「フフフ、何年も社会人として働いているからね。」
「何十年の間違いじゃなくて。」
「こら、明莉。余計なこと、言わないの。お店でも余計なこと言ってないか、お母さん、心配だわ。今度、様子を見にいかなきゃ。」
「ごめんなさい。来なくていいから。というか、恥ずかしいから来ないで。お店では大丈夫だから。ごめんなさい、もう言いません。」
明莉が慌てて謝る。
その後、夕食ができるまで、明莉は今日のお店でのメモを別のメモ帳に整理し直していた。
俺も、やたら手帳に書き込んでいたな。
どういう手帳が使いやすいかとか、手帳術の本も読んだ覚えがあるな。
俺は社会人だった頃のことを懐かしく思い出しながら明莉の様子を見ていた。
そして、後日、妻は明莉に「なんでお店にくるの⁉」と怒られていた。
俺も行きたかったな・・・妻が羨ましい。
夕食を食べながら、明莉が妻に言った。
「どこで働くの?」
お茶を飲みながら、妻が訊ねた。
「駅前のカフェ。先輩が働いている店を紹介してもらったの。就職活動で辞めるから、かわりに働いてほしいんだって。」
「ふーん、忙しくなりそうだけど、大学の勉強の方は大丈夫なの?」
「うん。週三か週四で入ってほしいんだって。だから授業が早く終わる日と土日に働こうと思ってる。」
「バイトも社会勉強になると思うから、できそうならやってみたら。」
「うん。ありがとう。」
夕食後、明莉はダイニングテーブルで市販の履歴書に付属の見本を見ながら、履歴書を作成している。
今までバイト経験はなく、履歴書を作成するのも初めてなので不安なのだろう、時々妻に訊いて確認しながら作成していた。
「面接って、どんなこと訊かれるのかな。」
履歴書を書き終わった明莉は、今度は妻に面接の相談をしている。
「うーん、どこでも訊かれるのは、どうして働きたいと思ったか、かな。後は、カフェだからコーヒーをよく飲むか、とか、カフェにはよく行くか、とかも訊かれるかもね。一度、そのお店にお客さんとして行ってみとくのもいいかもね。」
妻は、昔のことを思いだしながらアドバイスしている。
妻や俺の学生時代というと、もう四半世紀も前のことになるのか・・・
時の流れの早さに、あらためて驚く。
「大事なのは、明るい笑顔と、はきはきとした挨拶と返事。明莉の第一印象が悪かったら、紹介してくださった先輩にも申し訳ないからね、これだけは気をつけなさい。」
「はーい。」
「返事はのばさない。お腹に力をいれて、はきはきと。」
「はい。」
なんだか妻も楽しそうだ。
同じことを俺も新人研修の時に言われた気がするな。
「はー、疲れたー。」
アルバイト初日、明莉はクタクタになって帰ってきた。
荷物を置いて、そのままソファーに倒れ込む。
「どうだった?続けられそう?」
妻が夕食の準備をしながら訊ねる。
「うん、頑張るよ。だけど、覚えることがいっぱいあって大変。」
「わからないことは、先輩たちに訊くのよ。曖昧なまま、自己判断で行動するのが一番危険だからね。」
「はい。あっ、そうだ。メモの整理しとかなきゃ。」
そう言うと、明莉は起き上がり、バックの中から小さなメモ帳を取り出す。
「メモの整理?」
「うん。教えてもらったことは、メモ帳に書いて、何回も訊かなくてもいいようにしないといけないんだけど、書くことがいっぱいありすぎて間に合わないんだよね。」
「メモは、自分がわかればいいのよ。誰かに見せるものじゃないでしょう。さっと簡単に大切な単語だけ書いて、今、明莉がしているみたいに後で整理すればいいのよ。そしたら、仕事内容の復習にもなるし、頭の中も整理されるでしょう。」
「そうだね。でも、大切なことを簡単にというのが難しいんだよね。何を書いたらいいか、わからない。」
「フフフ、それは慣れるしかないわね。後から整理していると、ああ、これを書いとかないといけなかったって気づくことがあるの。今度は、そのことに注意して聞いて、メモすればいいのよ。その繰り返しで、書かないといけないことがわかってくるわ。」
「ふーん、さすが人生の先輩。」
「フフフ、何年も社会人として働いているからね。」
「何十年の間違いじゃなくて。」
「こら、明莉。余計なこと、言わないの。お店でも余計なこと言ってないか、お母さん、心配だわ。今度、様子を見にいかなきゃ。」
「ごめんなさい。来なくていいから。というか、恥ずかしいから来ないで。お店では大丈夫だから。ごめんなさい、もう言いません。」
明莉が慌てて謝る。
その後、夕食ができるまで、明莉は今日のお店でのメモを別のメモ帳に整理し直していた。
俺も、やたら手帳に書き込んでいたな。
どういう手帳が使いやすいかとか、手帳術の本も読んだ覚えがあるな。
俺は社会人だった頃のことを懐かしく思い出しながら明莉の様子を見ていた。
そして、後日、妻は明莉に「なんでお店にくるの⁉」と怒られていた。
俺も行きたかったな・・・妻が羨ましい。
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