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だから俺は、あんたに勝つよ
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陸を這い、時には空を駆け、ぶつかり合う両者の剣。サンは、戦いの中、一度フォンから大きく距離を取り、刀に炎を纏わせる。
イエナと1度目のフォンの戦いで、彼には悔いが残る点が一つだけあった。それは自らが、発する炎をほとんど使いこなせていないということだ。
だからこそ、彼は、探した。自分の体の中に残る、微かな記憶の残滓を。すると、かつて見ていた母の姿を思い出す。自分と同じように、武器に炎を纏わせて戦う母の姿を。
「陽天流五照型、飛炎・白夜!!」
虚ろな空間へ、型を繰り出すサン。勢いを増して、振りかぶる刀から、炎の斬撃が、スアロへと直進する。
そう、おそらくこの炎はこうして飛ばすこともできる。確か母は、そのように敵と戦っていた。
しかし、それら全てを剣で防ぎきり、こちらへと一気に距離を詰めるフォン。彼は、サに向かって大きく剣を振りかぶる。
――ガンッ。
サンはそれを平然とした表情のまま左腕で受ける。深々と刃が突き刺さる腕。サンは、そんな痛みなどまるで感じていないかのように、残る右手で、フォンの腹へと刀を振るう。
「――ぐっううっっ」
鋭い一撃がヒットしたフォン。彼は一度退き、サンに対して言葉をぶつける。
「本当に懐かしいぜ。その自分の身を省みない戦い方。アサヒそっくりだ」
「そりゃどうも」
痛々しく血を流す、サンの左腕。しかし、しばらくすると、斬られた部分が取り炎に包まれ、ゆっくりと彼の切断部分を再生していった。
――本当に全部治るんだな。
サンは、呆然と自分の左腕を眺める。
幻獣図鑑17ページ。フェニックス。余命が近づくと自ら炎に飛び込み、その灰の中から再生する空想上の生物。それが獣人になると、このような再生方法になるらしい。細胞が損傷した部分が炎に包まれ、新たなる細胞に生まれ変わる。この分なら、例え切断されても新しい腕が生えてきそうだ。
正直夢で何度母の姿を見ていても、サンは、自分がフェニックスの獣人であるとは予想だにしていなかった。翼を見る限り、なんらかの鳥なんだろうなと考えていたが、まさか幻獣だとは。
しかし、それでもサンは、この新たなる自分の力に感謝していた。何故ならこの体ならどれほど傷がついても構わないからだ。自分の命が尽きるまで、誰かのために武器を取れる。
「おおらぁぁぁぁ!!」
フォンは、一歩踏み出し、自らの大剣を横に大きく薙ぎ払う。サンは、その技にある型を合わせるため、引くのではなく、あえて一歩踏み出す。
フォンの剣先が、サンの腹を割く。彼の赤い血が、フォンの剣の軌跡に合わせて、大きな弧を描く。サンは、自分の体から血が流れ出ていく様子を感じ取りながら、痛みに堪えてて型を放つ。
「陽天流三照型、日輪!!」
大きく旋回するサン。炎の翼が、その勢いを加速させる。そして彼の刀は、大剣を振り、終えたフォンの肩に直撃する。
「ぐっっっ」
サンの剣が直撃する前に、横に飛び、剣の威力を減退させるフォン。彼は、再び大剣を取り、すっかり腹の傷が治ろうとしているサンに向かって言葉を放つ。
「なるほどな、もう傷なんて怖くないわけだ。全くそんな戦い方してたら、親が泣くぞ」
「確かにな。でもあいにく俺は、親がいない身なんだよ」
「はっ、そうだったな。いずれにしても面白くなってきたじゃねえか。俺が倒れるのが先か、お前の再生が追いつかなくなるのが勝負と行こうぜ、サン!」
「ああ、いくぞ。フォン!」
再び激しくぶつかり合うサンとフォン。フォンは、圧倒的なパワーで、サンは、スピードと再生力で、両者全く退かずに戦いを進める。
――ガキィィィィン。
武器武器が激しくぶつけあいながらも、両者、剣越しに睨み合うサンとフォン。そんな中、サンはフォンに対し、ふと、言葉をこぼす。
「やっぱり優しいんだな、フォンは」
「は?」
何を言っているんだ? そう戸惑い、慌てて退がるフォン。
「どれだけのお人よしなんだ? お前? 俺は今からお前を売ろうとしてるんだぞ!」
語気を荒げてサンに言葉をぶつけるフォン。そんな彼に、サンは、どこか憂いを覚えたような表情を浮かべる。
「フォンはさ、俺に、つまらない私情で剣を振るなって言ったよな? でも、今、私情にとらわれてるのはあんたの方じゃないか」
「なんだよ! 訳のわからないこと言うんじゃねえよ!」
そして、サンに斬りかかるフォン。激しい斬り合いの中で、サンはフォンに言葉を伝える。
「フォンは強いよ。きっと本当は、俺なんかが全力を出してもあんたには敵わないんだ。でも今、あんたは、俺を倒すことができない」
「だからなんだ? 馬鹿にしてるのか!?」
「ほんとはさ、フォンは、こんな狩りなんてしたくないんだろ? 優しいあんたはきっと罪悪感なしに剣を振り切ることができないんだろ?」
フォンは押し黙る。そして、サンへの攻撃をより激化させる。しかし、それでもサンを捕らえることはできなかった。
「だからさ、フォン。だから俺は、あんたに勝つよ」
サンは、大きく剣をふり、フォンの猛攻を弾き飛ばす。大きく後退させられるフォン。
そして、サンは、フォンが、体勢を立て直す隙に、自らの剣を上段に構える。
――あ、いつものサンだ。
そう心の中で呟いたのはクラウだ。何度、彼が、そのポーズを取るのを見たことだろう。あれは、サンがよく夜中に行う素振りの構え。彼はきっと、今まで、何千、何万回も振ってきた剣への熱量をこの一撃に込める気だ。
「陽天流、六照型」
静かにそう呟くサンの刀を膨大な量の炎が包み込む。これは、決して特別な技ではない。ただ力強く振り下ろすだけの剣。1パーセントのきっかけを得て炎の力を持ったサンが、99パーセントの努力を紡いで作り上げた凡人の剣。
空に浮かぶ太陽が、この世の闇全てを打ち払うように、この一撃で全てを打ち倒すという彼の覚悟の型。
「太陽照破斬(たいようしょうはざん)!!!」
真っ直ぐに凄まじい速度で振り下ろされた刀。振り終える最中、真っ赤にうねりを上げる炎の波が、フォンへ一直線に進んでいく。
――それはさながら炎でできた竜の様で。
「うおぉぉぉぉぉ!」
フォンは、大剣を横にしサンの炎を受け切ろうとする。
――ズガダダダダアアァァァァァン。
しかし、それは叶わず、その剣ごとサンの炎は、フォンの体を包み込んだ。そして、彼のことをそのまま大きく後方へ飛ばす。気をいくつもへし折りながら、吹き飛ばされるフォン。炎が去ると、彼は、仰向けに伸びて倒れていた。
「――勝った」
サンは小さくそう呟いた。全身の力が抜けたのか、膝から崩れ落ちるサン。疲労で顔が挙げられない、しかし、サンは地面を見つめながらも、刀を握りしめた拳を天高く掲げた。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」
そして彼は歓声と雄叫び、どっちともつかぬ、叫び声を上げた。そして、その声は、この一連の騒動がサンの勝利で終えたことをはっきりと表明するのだった。
イエナと1度目のフォンの戦いで、彼には悔いが残る点が一つだけあった。それは自らが、発する炎をほとんど使いこなせていないということだ。
だからこそ、彼は、探した。自分の体の中に残る、微かな記憶の残滓を。すると、かつて見ていた母の姿を思い出す。自分と同じように、武器に炎を纏わせて戦う母の姿を。
「陽天流五照型、飛炎・白夜!!」
虚ろな空間へ、型を繰り出すサン。勢いを増して、振りかぶる刀から、炎の斬撃が、スアロへと直進する。
そう、おそらくこの炎はこうして飛ばすこともできる。確か母は、そのように敵と戦っていた。
しかし、それら全てを剣で防ぎきり、こちらへと一気に距離を詰めるフォン。彼は、サに向かって大きく剣を振りかぶる。
――ガンッ。
サンはそれを平然とした表情のまま左腕で受ける。深々と刃が突き刺さる腕。サンは、そんな痛みなどまるで感じていないかのように、残る右手で、フォンの腹へと刀を振るう。
「――ぐっううっっ」
鋭い一撃がヒットしたフォン。彼は一度退き、サンに対して言葉をぶつける。
「本当に懐かしいぜ。その自分の身を省みない戦い方。アサヒそっくりだ」
「そりゃどうも」
痛々しく血を流す、サンの左腕。しかし、しばらくすると、斬られた部分が取り炎に包まれ、ゆっくりと彼の切断部分を再生していった。
――本当に全部治るんだな。
サンは、呆然と自分の左腕を眺める。
幻獣図鑑17ページ。フェニックス。余命が近づくと自ら炎に飛び込み、その灰の中から再生する空想上の生物。それが獣人になると、このような再生方法になるらしい。細胞が損傷した部分が炎に包まれ、新たなる細胞に生まれ変わる。この分なら、例え切断されても新しい腕が生えてきそうだ。
正直夢で何度母の姿を見ていても、サンは、自分がフェニックスの獣人であるとは予想だにしていなかった。翼を見る限り、なんらかの鳥なんだろうなと考えていたが、まさか幻獣だとは。
しかし、それでもサンは、この新たなる自分の力に感謝していた。何故ならこの体ならどれほど傷がついても構わないからだ。自分の命が尽きるまで、誰かのために武器を取れる。
「おおらぁぁぁぁ!!」
フォンは、一歩踏み出し、自らの大剣を横に大きく薙ぎ払う。サンは、その技にある型を合わせるため、引くのではなく、あえて一歩踏み出す。
フォンの剣先が、サンの腹を割く。彼の赤い血が、フォンの剣の軌跡に合わせて、大きな弧を描く。サンは、自分の体から血が流れ出ていく様子を感じ取りながら、痛みに堪えてて型を放つ。
「陽天流三照型、日輪!!」
大きく旋回するサン。炎の翼が、その勢いを加速させる。そして彼の刀は、大剣を振り、終えたフォンの肩に直撃する。
「ぐっっっ」
サンの剣が直撃する前に、横に飛び、剣の威力を減退させるフォン。彼は、再び大剣を取り、すっかり腹の傷が治ろうとしているサンに向かって言葉を放つ。
「なるほどな、もう傷なんて怖くないわけだ。全くそんな戦い方してたら、親が泣くぞ」
「確かにな。でもあいにく俺は、親がいない身なんだよ」
「はっ、そうだったな。いずれにしても面白くなってきたじゃねえか。俺が倒れるのが先か、お前の再生が追いつかなくなるのが勝負と行こうぜ、サン!」
「ああ、いくぞ。フォン!」
再び激しくぶつかり合うサンとフォン。フォンは、圧倒的なパワーで、サンは、スピードと再生力で、両者全く退かずに戦いを進める。
――ガキィィィィン。
武器武器が激しくぶつけあいながらも、両者、剣越しに睨み合うサンとフォン。そんな中、サンはフォンに対し、ふと、言葉をこぼす。
「やっぱり優しいんだな、フォンは」
「は?」
何を言っているんだ? そう戸惑い、慌てて退がるフォン。
「どれだけのお人よしなんだ? お前? 俺は今からお前を売ろうとしてるんだぞ!」
語気を荒げてサンに言葉をぶつけるフォン。そんな彼に、サンは、どこか憂いを覚えたような表情を浮かべる。
「フォンはさ、俺に、つまらない私情で剣を振るなって言ったよな? でも、今、私情にとらわれてるのはあんたの方じゃないか」
「なんだよ! 訳のわからないこと言うんじゃねえよ!」
そして、サンに斬りかかるフォン。激しい斬り合いの中で、サンはフォンに言葉を伝える。
「フォンは強いよ。きっと本当は、俺なんかが全力を出してもあんたには敵わないんだ。でも今、あんたは、俺を倒すことができない」
「だからなんだ? 馬鹿にしてるのか!?」
「ほんとはさ、フォンは、こんな狩りなんてしたくないんだろ? 優しいあんたはきっと罪悪感なしに剣を振り切ることができないんだろ?」
フォンは押し黙る。そして、サンへの攻撃をより激化させる。しかし、それでもサンを捕らえることはできなかった。
「だからさ、フォン。だから俺は、あんたに勝つよ」
サンは、大きく剣をふり、フォンの猛攻を弾き飛ばす。大きく後退させられるフォン。
そして、サンは、フォンが、体勢を立て直す隙に、自らの剣を上段に構える。
――あ、いつものサンだ。
そう心の中で呟いたのはクラウだ。何度、彼が、そのポーズを取るのを見たことだろう。あれは、サンがよく夜中に行う素振りの構え。彼はきっと、今まで、何千、何万回も振ってきた剣への熱量をこの一撃に込める気だ。
「陽天流、六照型」
静かにそう呟くサンの刀を膨大な量の炎が包み込む。これは、決して特別な技ではない。ただ力強く振り下ろすだけの剣。1パーセントのきっかけを得て炎の力を持ったサンが、99パーセントの努力を紡いで作り上げた凡人の剣。
空に浮かぶ太陽が、この世の闇全てを打ち払うように、この一撃で全てを打ち倒すという彼の覚悟の型。
「太陽照破斬(たいようしょうはざん)!!!」
真っ直ぐに凄まじい速度で振り下ろされた刀。振り終える最中、真っ赤にうねりを上げる炎の波が、フォンへ一直線に進んでいく。
――それはさながら炎でできた竜の様で。
「うおぉぉぉぉぉ!」
フォンは、大剣を横にしサンの炎を受け切ろうとする。
――ズガダダダダアアァァァァァン。
しかし、それは叶わず、その剣ごとサンの炎は、フォンの体を包み込んだ。そして、彼のことをそのまま大きく後方へ飛ばす。気をいくつもへし折りながら、吹き飛ばされるフォン。炎が去ると、彼は、仰向けに伸びて倒れていた。
「――勝った」
サンは小さくそう呟いた。全身の力が抜けたのか、膝から崩れ落ちるサン。疲労で顔が挙げられない、しかし、サンは地面を見つめながらも、刀を握りしめた拳を天高く掲げた。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」
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