プロミネンス【旅立ちの章】

笹原うずら

文字の大きさ
17 / 102

目に映るこの世の全てを、照らしたいんだ

しおりを挟む
――過去――

 少年は、唖然としていた。目の前の現実を彼はどう受け入れればいいのか、彼にはわからなかった。

 今から数年前、親を失った彼は、ある組織にさらわれた。それは、獣のパーツを分解し、高値で売り払う大きな組織。少年は、ただ死ぬことが嫌で、必死で組織に命乞いをした。その結果、獣の恩恵から、他の獣より遥かに力がある彼は、それで役に立つことを示し、そのパーツ売買組織で腕を振るうことになった。

 そして少年は、それから数年経ち、この100人規模の大規模な組織でも十分な成果を上げられるほどに成長した。しかし――。

 その組織は今たった6人に今、滅ぼされていた。

 自分とそれほど変わらぬ、歳の獣人たちもいる一味だった。ライオン、ペガサス、妖精族、オオカミ、ハヤブサ、そしてフェニックス。自分たち組織の悪行に憤った彼らは、たった6人でこの組織を壊滅状態まで追いやっていた。

「おい、まだあそこに一人残ってるぞ」

とオオカミ。

「どけよ、俺がやる。こいつらボコボコにしてやらないと気が済まない」

とライオン。

「まあ、落ち着けよ。よく見たら俺と同じくらいみたいだぞ」

 とハヤブサ。

「わかった! みんな退がってて私がやる!」

とフェニックス。この6人のリーダーと思われる彼女は、刀を構える。

 来る、少年は警戒し、自らも自分の武器である大剣を構える。

「ねえ、あなたはなんでこんなところで戦ってるの?」 

 ふと、彼女は自分に対してそう尋ねた。少年は正直に答える。

「生きるためだよ。死なないためにこうするしかなかった」
「他に方法はなかったの?」
「ねえよ、他に方法なんて誰にも教えてもらえなかった。俺は、あんたたちみたいに才能に恵まれたわけじゃないんでね!」

少年はフェニックスに大きく斬りかかる。彼女はそれを平然と受け止める。少年は、武器を通して、彼女に言葉をぶつける。

「文句があるなら俺のことを殺せばいい! 今まで沢山のものを奪ってきたんだ。強いやつに奪われるなら本望だよ!」
「私はあなたを殺さないよ」
「は?」

 彼女の発言に戸惑い咄嗟に距離を取る少年。そんな彼に、彼女は続ける。

「だって君優しそうだもん。きっと、これしか生きる方法を知らなかったんでしょ。なら、やり直せるよ」
「は、お前に何がわかる!? 無理なんだよ! 俺にはもうこの生き方しか見つけられねえんだ!」
「大丈夫! 今から変わるんだよ! だってさ、もし君に家族ができた時に、大切な人に誇れない生き方なんてしたくないだろ?」

 少年は、そんな彼女の言葉を鼻で笑い飛ばす。

「はっ。馬鹿言うなよ。そんな言葉一つで俺の生き方を変えられると思ってんのかよ? いいか、馬鹿女! よく聞け! お前みたいなやつが、誰かを、何かを、変えられるわけねえんだ! うぬぼれんじゃねえよ!!」

 すると、彼女の刀に僅かな緩みが感じ取れた。すると彼女は、一度大きく退き、彼に対して、言葉をこぼす。

「そうかもしれないね。私じゃ何も変えられないのかもしれない」
「そうだろ! お前なんてな! たかが、こんな組織一つ潰すのが限界なんだよ!」

 好奇とばかりに足を踏み出し、再び彼女に斬りかかる少年。しかし、彼女は再び力強く彼の剣を受け止め、彼に少しの笑みを浮かべる。

「でも私は、決めたんだ。道の真ん中を歩くときは奴らとすれ違うことを恐れ、光の下では彼らに見つから事を恐れ、常に日陰にこもって暮らしている。私たち獣人は何一つ悪いことなんてしてないのに。私は.そんな世界を変えたいんだよ。ねえ、君、私はね。私は本気で、目に映るこの世の全てを、照らしたいんだ」

 死の淵には、生きてきた全ての記憶が、走馬灯のように駆け巡ると言う。しかし、彼は、今この一瞬脳裏に浮かんだこの記憶を、心の中で強く憎んだ。

 ――今思い出すことが、どうしてこれなんだよ。

 彼の体は燃え上がり、幾多もの火傷の跡が残っている。そして、長い距離を飛ばされたために、体の中外問わず、ボロボロだ。

 しかし、そんな中でも、彼は、ピクリと、己の指を動かすのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...