20 / 102
死に場所を探してたんだ
しおりを挟む
長い1日が終わり、サン、スアロ、ファル、クラウは道中に遭遇したピグル、アラシを連れて、フォレスに戻った。フォレスで捕らえられていたイエナは、フォンの死を聞いてもそれほど動揺していなかった。ただ彼は、短く『そうか』とだけ呟いた。もしかしたら彼はこうなることをどこかで予測していたのだろうか。
ともかくアラシ、ピグル、イエナの3人は、サンたちともにフォレスに預けられることになった。ファルは、彼らの恩人の仇であることは間違いなかったが、彼ら3人は、フォレスでの生活を受け入れた。おそらく、フォンの遺言をしっかりと聞いていたからだろう。
そして、その日から何週間か経った頃、アラシが、フォンを正式に弔ってあげたいと言い出した。葬式ではないにしろ。しっかり彼の遺体を埋めた場所に墓を作り、死後の彼が幸せでいられるようにしたいとのことだった。
もちろんフォンのしたことは決して許されることではない。沢山の獣人を傷つけた彼が死後は幸せに過ごそうなど虫の良すぎる話だ。
しかし、ファルはそれ許可した。フォンのためではなく。残された3人のために、それは必要な儀式だと判断したのだろう。
決して立派な者ではないが、簡単な墓標をもうけ、3人とサンは、フォンをしっかり弔った。彼が死んだのは数週間前にも関わらず、目の前で死なれたかのように、自然と涙が出て出てくるのが不思議だった。
そして、葬儀が終わって、太陽がもうすぐ沈もうとする時――。
「おい、サン。お前に用がある。後で、河原に来い」
サンはイエナに呼び出された。
彼が自分を呼び出した理由についてサンはまったく分からなかった。まさか、今頃仇を討ちたいというわけでもないだろう。
夕日が赤く照らす近くの河原。サンとイエナは、そこに二人腰掛けて話をする。
「なんだよイエナ。用ってさ。あまり帰りが遅くなるとケイおばさんとか、心配するぞ」
「まあ、そうだな。心配かけるのも悪いし、早めに済ませるよ。今日はお前に、言わなきゃならないことがあったんだ」
しかし、相変わらずイエナは丸くなったものだ。新しくフォレスに入った3名はケイの指導の下すっかり言葉遣いも態度も強制され始めていた。
そんなイエナと出会った頃のイエナにギャップを覚えながらも、サンは彼に話の続きを促す。
「言わなきゃならないことってなんだよ」
「ああ、実はな、ボスは、フォンはさ……。ずっとあの人は、死に場所を探してたんだ」
何かを振り切るように正面を見据え、そうこぼすイエナ。サンは、彼の言ってる意味が分からず、思わず聞き返す。
「なんだよ? それ? どういうことだ。フォンは、お前たち3人と暮らしたかったんじゃないのか」
「そうだな。じゃあまず昔話から始めるよ。お前に聞いてほしいんだ。あの人がどんな日々を送っていたのか」
イエナは、地面に手をつき、空を向いた。まるでそこにフォンがいるかのように儚げな眼差しを向けて。そして、彼はサンに対して静かに語り出した。
ともかくアラシ、ピグル、イエナの3人は、サンたちともにフォレスに預けられることになった。ファルは、彼らの恩人の仇であることは間違いなかったが、彼ら3人は、フォレスでの生活を受け入れた。おそらく、フォンの遺言をしっかりと聞いていたからだろう。
そして、その日から何週間か経った頃、アラシが、フォンを正式に弔ってあげたいと言い出した。葬式ではないにしろ。しっかり彼の遺体を埋めた場所に墓を作り、死後の彼が幸せでいられるようにしたいとのことだった。
もちろんフォンのしたことは決して許されることではない。沢山の獣人を傷つけた彼が死後は幸せに過ごそうなど虫の良すぎる話だ。
しかし、ファルはそれ許可した。フォンのためではなく。残された3人のために、それは必要な儀式だと判断したのだろう。
決して立派な者ではないが、簡単な墓標をもうけ、3人とサンは、フォンをしっかり弔った。彼が死んだのは数週間前にも関わらず、目の前で死なれたかのように、自然と涙が出て出てくるのが不思議だった。
そして、葬儀が終わって、太陽がもうすぐ沈もうとする時――。
「おい、サン。お前に用がある。後で、河原に来い」
サンはイエナに呼び出された。
彼が自分を呼び出した理由についてサンはまったく分からなかった。まさか、今頃仇を討ちたいというわけでもないだろう。
夕日が赤く照らす近くの河原。サンとイエナは、そこに二人腰掛けて話をする。
「なんだよイエナ。用ってさ。あまり帰りが遅くなるとケイおばさんとか、心配するぞ」
「まあ、そうだな。心配かけるのも悪いし、早めに済ませるよ。今日はお前に、言わなきゃならないことがあったんだ」
しかし、相変わらずイエナは丸くなったものだ。新しくフォレスに入った3名はケイの指導の下すっかり言葉遣いも態度も強制され始めていた。
そんなイエナと出会った頃のイエナにギャップを覚えながらも、サンは彼に話の続きを促す。
「言わなきゃならないことってなんだよ」
「ああ、実はな、ボスは、フォンはさ……。ずっとあの人は、死に場所を探してたんだ」
何かを振り切るように正面を見据え、そうこぼすイエナ。サンは、彼の言ってる意味が分からず、思わず聞き返す。
「なんだよ? それ? どういうことだ。フォンは、お前たち3人と暮らしたかったんじゃないのか」
「そうだな。じゃあまず昔話から始めるよ。お前に聞いてほしいんだ。あの人がどんな日々を送っていたのか」
イエナは、地面に手をつき、空を向いた。まるでそこにフォンがいるかのように儚げな眼差しを向けて。そして、彼はサンに対して静かに語り出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる