プロミネンス【旅立ちの章】

笹原うずら

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死に場所を探してたんだ

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 長い1日が終わり、サン、スアロ、ファル、クラウは道中に遭遇したピグル、アラシを連れて、フォレスに戻った。フォレスで捕らえられていたイエナは、フォンの死を聞いてもそれほど動揺していなかった。ただ彼は、短く『そうか』とだけ呟いた。もしかしたら彼はこうなることをどこかで予測していたのだろうか。

 ともかくアラシ、ピグル、イエナの3人は、サンたちともにフォレスに預けられることになった。ファルは、彼らの恩人の仇であることは間違いなかったが、彼ら3人は、フォレスでの生活を受け入れた。おそらく、フォンの遺言をしっかりと聞いていたからだろう。

 そして、その日から何週間か経った頃、アラシが、フォンを正式に弔ってあげたいと言い出した。葬式ではないにしろ。しっかり彼の遺体を埋めた場所に墓を作り、死後の彼が幸せでいられるようにしたいとのことだった。

 もちろんフォンのしたことは決して許されることではない。沢山の獣人を傷つけた彼が死後は幸せに過ごそうなど虫の良すぎる話だ。

 しかし、ファルはそれ許可した。フォンのためではなく。残された3人のために、それは必要な儀式だと判断したのだろう。

 決して立派な者ではないが、簡単な墓標をもうけ、3人とサンは、フォンをしっかり弔った。彼が死んだのは数週間前にも関わらず、目の前で死なれたかのように、自然と涙が出て出てくるのが不思議だった。
 そして、葬儀が終わって、太陽がもうすぐ沈もうとする時――。

「おい、サン。お前に用がある。後で、河原に来い」

サンはイエナに呼び出された。

 彼が自分を呼び出した理由についてサンはまったく分からなかった。まさか、今頃仇を討ちたいというわけでもないだろう。

 夕日が赤く照らす近くの河原。サンとイエナは、そこに二人腰掛けて話をする。

「なんだよイエナ。用ってさ。あまり帰りが遅くなるとケイおばさんとか、心配するぞ」
「まあ、そうだな。心配かけるのも悪いし、早めに済ませるよ。今日はお前に、言わなきゃならないことがあったんだ」

 しかし、相変わらずイエナは丸くなったものだ。新しくフォレスに入った3名はケイの指導の下すっかり言葉遣いも態度も強制され始めていた。

 そんなイエナと出会った頃のイエナにギャップを覚えながらも、サンは彼に話の続きを促す。

「言わなきゃならないことってなんだよ」
「ああ、実はな、ボスは、フォンはさ……。ずっとあの人は、死に場所を探してたんだ」

 何かを振り切るように正面を見据え、そうこぼすイエナ。サンは、彼の言ってる意味が分からず、思わず聞き返す。

「なんだよ? それ? どういうことだ。フォンは、お前たち3人と暮らしたかったんじゃないのか」
「そうだな。じゃあまず昔話から始めるよ。お前に聞いてほしいんだ。あの人がどんな日々を送っていたのか」

 イエナは、地面に手をつき、空を向いた。まるでそこにフォンがいるかのように儚げな眼差しを向けて。そして、彼はサンに対して静かに語り出した。
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