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なかなかアツいやつですよ
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するとその時、また、木陰から声が聞こえてきた。
「うおい! どこだ! ウガイ!! 逃げるなんてアツくないぞ!? どこだ! おい! あ、いた! ってあれ!? 倒れてる!?」
また何やらうるさいのがきたな。そう思い、サンが声のした方向をぼーっと眺めていると、ジャックが、衝撃の一言を口走る。
「あ! 父さんの声だ?」
「え? 父さん?」
思わず素っ頓狂な声をあげるサン。やたらと騒がしい声を出す男は、サンたちに気づくと、満面の笑みを浮かべて、こちらに走ってくる。
「おおおおー! ジャックじゃないか! こんなところであうとはな! もしかして、このウガイはお前がやったのか?」
「そんなわけないじゃん。父さん。この人がやってくれたんだ。紹介するよ! 最近旅を始めたサン! すっごく強いんだよ」
「あ、えっと、その、こんにちは」
薄々気づいている人も多いと思うが、サンは、太陽を目指していても、俗な言い方をすれば性格は決して陽のキャラではない。そのため、サンは熱血感満載で登場してきたジャックの父親に対し、恐る恐ると言った感じで挨拶をする。
「そうか、あんたがやってくれたのか! 強いんだな! 俺はジャカル! カニバル国シェド隊の切り裂きジャカルだ! よろしくな!」
「あ、はい、よろしく」
シェド隊の切り裂きジャカルと言われても、この辺の獣人じゃないからピンとこないのだが。サンはそんな気持ちを覚えながらも、ジャカルに対して挨拶する。そんなサンの挨拶を見届けた後、ジャックが父に言葉をかける。
「そうか、この辺りまでもう、戦いは広がってるんだね。あれ? でも、父さんがいるってことは、シェドさんたちもいるの?」
「ああ、いるぞ! でもちょっと先行き過ぎちゃったみたいだな! 俺はアツい男だから」
そんな彼の言葉が終わる頃に、また声が聞こえてくる。
「あーやっと見つけた。ったく、生き急ぎすぎなんだよジャカルは」
「……うん、もう少し、ゆっくりでもいい」
ジャカルの後に続いてきたのは、紫色の鱗に身を包んだ、柔らかなシルエットが特徴的な、女性で蛇の獣人と、黒い立髪が特徴的な獅子の獣人だった。
「うわ、シェドさんとネクさんだ! カッコいい!!」
「どんどん出てくるな。ジャック。あの人たちは誰?」
「そっか、サンは知らないんだね。カニバル国で大人気の2人を。ネクさんはね。女性で爬虫類にも関わらず、ここカニバル国のために多くの諜報活動をしてきた凄腕スパイ。そして、シェドさんは、ここカニバル国最強の獣人なんだよ。かっこいいよね。そして、そこに僕の父さんを加えた、カニバル国最強の少人数部隊がシェド隊なんだ!」
早口で捲し立てるように説明するジャック。そんな説明にしっかりサンは耳を傾ける。なるほど、ようは、ここの国民からとても頼りにされてる軍人たちってことか。たしかに言われてみれば、誰も彼もさっきのカエル程度は上回るほどのオーラを放っている。サンは彼らの強さを肌で感じる。
そんな彼らを尻目に、シェドと呼ばれる黒い立髪の男が喋り出す。よくよく見ると彼の頬には、大きな一つの切り傷がついていた。なんなのだろう、フォンといい見た目がライオンの獣人は顔に傷を入れるのがトレンドなのだろうか。
「おお、ちゃんと仕留めたじゃねえか。アマガエル兄弟の兄とウガイか。大したもんだなジャカル。ちゃんとこいつらを捕虜にして持ち替えれば、またうちの隊の評判も上がるだろう」
彼の言葉を聞いて、アマガエルの獣人が1人足りないことにサンは気づく。どうやら、ジャカルが来た時の混乱に乗じて逃げ出したようだ。
「いえいえ! 違いますよ! 俺は何もしてないんです! どうやら息子の話では、ここにいるサンってやつが倒してくれたらしいんです! すごいですよね! 隊長格と副隊長格をまとめてなんて。なかなかアツいやつですよ!!」
「なるほど、お前がやってくれたのか。大した腕を持ってるんだな。……ん?」
するとその瞬間、サンの体に激しく寒気が走った。訳のわからぬ感覚にサンも驚く。理由はサンにはわからない。ただサンのことを見た瞬間、このシェドという男から、はっきりとした殺気が感じ取れた。
シェドは、しばらくサンを見つめた後彼から目を逸らした。そして彼は、ネクとジャカルに言う。
「おい、ネク、ジャカル。2人は、このカエルどもを捕縛して、先に軍に戻っておいてくれるか? 俺は隊長として、少しこいつに礼を言ってから行くよ。あ、あとジャカル。お前の息子も連れて行っとけ。ここはまだ敵の残党がいるかもしれないしな」
「分かりました! 隊長。自分の分まで、アツいお礼よろしくお願いします!」
するとジャカルとネクはあっという間にカエルたちを縛り上げ、ジャカルはウガイを、ネクはアマガエルを背負い上げた。
そして、退散しようと言うときに、ふと、ネクが静かにシェドに向かって言葉を放つ。
「…-シェド。大丈夫? 変なことはしないようにね」
「ああ、大丈夫だよ。心配するな」
そしてジャックもサンに向かって笑顔で手を振った。
「じゃあね! サンにいちゃん! また会おう!」
「ああ、またな」
そして、3人の獣人が静かに去っていった。
シェドが静かにサンに向かって声をかける。
「さて、じゃあ改めて……礼を言わせてもらおうか!」
その瞬間、シェドが振り向き様に、爪を立て、サンのことを切り裂こうとする。するとサンは咄嗟に、刀を胸の前に構え、シェドの攻撃を防ぐのだった。
「うおい! どこだ! ウガイ!! 逃げるなんてアツくないぞ!? どこだ! おい! あ、いた! ってあれ!? 倒れてる!?」
また何やらうるさいのがきたな。そう思い、サンが声のした方向をぼーっと眺めていると、ジャックが、衝撃の一言を口走る。
「あ! 父さんの声だ?」
「え? 父さん?」
思わず素っ頓狂な声をあげるサン。やたらと騒がしい声を出す男は、サンたちに気づくと、満面の笑みを浮かべて、こちらに走ってくる。
「おおおおー! ジャックじゃないか! こんなところであうとはな! もしかして、このウガイはお前がやったのか?」
「そんなわけないじゃん。父さん。この人がやってくれたんだ。紹介するよ! 最近旅を始めたサン! すっごく強いんだよ」
「あ、えっと、その、こんにちは」
薄々気づいている人も多いと思うが、サンは、太陽を目指していても、俗な言い方をすれば性格は決して陽のキャラではない。そのため、サンは熱血感満載で登場してきたジャックの父親に対し、恐る恐ると言った感じで挨拶をする。
「そうか、あんたがやってくれたのか! 強いんだな! 俺はジャカル! カニバル国シェド隊の切り裂きジャカルだ! よろしくな!」
「あ、はい、よろしく」
シェド隊の切り裂きジャカルと言われても、この辺の獣人じゃないからピンとこないのだが。サンはそんな気持ちを覚えながらも、ジャカルに対して挨拶する。そんなサンの挨拶を見届けた後、ジャックが父に言葉をかける。
「そうか、この辺りまでもう、戦いは広がってるんだね。あれ? でも、父さんがいるってことは、シェドさんたちもいるの?」
「ああ、いるぞ! でもちょっと先行き過ぎちゃったみたいだな! 俺はアツい男だから」
そんな彼の言葉が終わる頃に、また声が聞こえてくる。
「あーやっと見つけた。ったく、生き急ぎすぎなんだよジャカルは」
「……うん、もう少し、ゆっくりでもいい」
ジャカルの後に続いてきたのは、紫色の鱗に身を包んだ、柔らかなシルエットが特徴的な、女性で蛇の獣人と、黒い立髪が特徴的な獅子の獣人だった。
「うわ、シェドさんとネクさんだ! カッコいい!!」
「どんどん出てくるな。ジャック。あの人たちは誰?」
「そっか、サンは知らないんだね。カニバル国で大人気の2人を。ネクさんはね。女性で爬虫類にも関わらず、ここカニバル国のために多くの諜報活動をしてきた凄腕スパイ。そして、シェドさんは、ここカニバル国最強の獣人なんだよ。かっこいいよね。そして、そこに僕の父さんを加えた、カニバル国最強の少人数部隊がシェド隊なんだ!」
早口で捲し立てるように説明するジャック。そんな説明にしっかりサンは耳を傾ける。なるほど、ようは、ここの国民からとても頼りにされてる軍人たちってことか。たしかに言われてみれば、誰も彼もさっきのカエル程度は上回るほどのオーラを放っている。サンは彼らの強さを肌で感じる。
そんな彼らを尻目に、シェドと呼ばれる黒い立髪の男が喋り出す。よくよく見ると彼の頬には、大きな一つの切り傷がついていた。なんなのだろう、フォンといい見た目がライオンの獣人は顔に傷を入れるのがトレンドなのだろうか。
「おお、ちゃんと仕留めたじゃねえか。アマガエル兄弟の兄とウガイか。大したもんだなジャカル。ちゃんとこいつらを捕虜にして持ち替えれば、またうちの隊の評判も上がるだろう」
彼の言葉を聞いて、アマガエルの獣人が1人足りないことにサンは気づく。どうやら、ジャカルが来た時の混乱に乗じて逃げ出したようだ。
「いえいえ! 違いますよ! 俺は何もしてないんです! どうやら息子の話では、ここにいるサンってやつが倒してくれたらしいんです! すごいですよね! 隊長格と副隊長格をまとめてなんて。なかなかアツいやつですよ!!」
「なるほど、お前がやってくれたのか。大した腕を持ってるんだな。……ん?」
するとその瞬間、サンの体に激しく寒気が走った。訳のわからぬ感覚にサンも驚く。理由はサンにはわからない。ただサンのことを見た瞬間、このシェドという男から、はっきりとした殺気が感じ取れた。
シェドは、しばらくサンを見つめた後彼から目を逸らした。そして彼は、ネクとジャカルに言う。
「おい、ネク、ジャカル。2人は、このカエルどもを捕縛して、先に軍に戻っておいてくれるか? 俺は隊長として、少しこいつに礼を言ってから行くよ。あ、あとジャカル。お前の息子も連れて行っとけ。ここはまだ敵の残党がいるかもしれないしな」
「分かりました! 隊長。自分の分まで、アツいお礼よろしくお願いします!」
するとジャカルとネクはあっという間にカエルたちを縛り上げ、ジャカルはウガイを、ネクはアマガエルを背負い上げた。
そして、退散しようと言うときに、ふと、ネクが静かにシェドに向かって言葉を放つ。
「…-シェド。大丈夫? 変なことはしないようにね」
「ああ、大丈夫だよ。心配するな」
そしてジャックもサンに向かって笑顔で手を振った。
「じゃあね! サンにいちゃん! また会おう!」
「ああ、またな」
そして、3人の獣人が静かに去っていった。
シェドが静かにサンに向かって声をかける。
「さて、じゃあ改めて……礼を言わせてもらおうか!」
その瞬間、シェドが振り向き様に、爪を立て、サンのことを切り裂こうとする。するとサンは咄嗟に、刀を胸の前に構え、シェドの攻撃を防ぐのだった。
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