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毒を食らった俺の方がまだ強い
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「シェド! サン! 危ない!」
ネクはふと、自分たちの右側を見て、そう声を発する。何が危ないのかわからなかったがシェドとサンは、咄嗟にその場から離れた。
――ビュンッッッ。
二本の矢が音を上げて、サンとシェドの腕を掠める。ポタポタと流れる血。危なかった。あのままあの位置にいたら、直撃だった。
「なるほど、やはり蛇の目を持つあなたには気付かれてしまいましたか」
すると、何もないところからヌッと、幾多もの獣人が現れた。ぎょろぎょろとした目をこちらに向け、彼らはニヤニヤと笑っている。緑色の鱗。グルグルの尻尾。シェドが彼らを見て、絞るような声で呟く。
「お前は、カメレオン部隊隊長。カレオン」
「いかにも、私はレプタリア諜報部カメレオン隊隊長、インビジブルキラーカレオンです。いやぁ、あのカニバル軍最強と言われるシェドさんに覚えてもらえるなんで、私は幸せ者ですよ」
恭しく頭を下げるカレオンという男。なるほど、先ほどまで見えなかったのはカメレオンの変色能力を使ったからか。サンは頭を巡らせる。きっとサンたちがここに来ることを見越してすでに山に潜んでいたんだ。ネクだけ視認することができたのは、ヘビの目は他の動物とは違い、温度で周りのものを認識するような作りになっているからだろう。
シェドはカメレオン部隊を見て、サンたちに対し指示を下す。
「全員一旦引くぞ。ベアリオに作戦が失敗したことを伝えなきゃならない。それに、敵本陣に近いこの場で相手と戦うのは分がわるい!」
「分かった!」
「……うん、分かった」
「分かりました!」
みんなそれぞれシェドの指示に返事をし、山を駆け降りようとする4人。しかし、サンの体にかすかな、痺れのようなものが走る。
「ぐっあぁぁっ」
唐突に足に力が入らず、勢いよく転げるサン。シェドは唐突にぴたりと足を止める。そして、カレオンの方を向いて、静かに聞く。
「おい、お前。あの矢に何が塗ってあった?」
カレオンはニヤリと笑って答える。
「流石、何年間もこのレプタリアと戦っているだけある。そうです。先程打ち出した矢に、我が猛毒部隊コブラ隊から抽出した神経毒を塗らせてもらいました。まあ掠った程度でしたので、日頃から毒が効かないようにしているあなたには効果がなかったようですが、そちらの彼は耐性がなかったようですね」
「なるほどな。おい、ネク! ジャカル! お前らは先に戻っていろ。あいにく俺も多少痺れがあるから速くは走れない。だから俺はこいつらを片付けてから行く」
「でも隊長、大丈夫ですか? 相手は10人ほどいるし、毒も喰らっている。流石の隊長もきついのでは?」
「ちげぇよジャカル。今ここで想定しうる最悪の状況は、カニバル軍が、この作戦の成否が分からないまま、戦争を続けて敗北することだ。俺たちはそれだけは防がなければならない。だから早く行け!」
「でも!」
振り向き走り出さないジャカルに対し、ネクが彼の腕を掴む。
「行こう、ジャカル。シェドなら大丈夫。私たちは私たちができることをしよう。シェド、念のためあれポーチごと置いておくから」
「・・・・・・ああ、わかった」
そして、そのまま走り出すジャカルとネク。カレオンはそんな彼らを追いかけることなく見送っていた。シェドは、そんな彼に言葉を発する。
「なんだよ、追わなくていいのか?」
「まあいいでしょう。あの二人の首を持っていくより、あなたの一人の首の方が遥かに価値がある。にしても随分間抜けですね。毒の回ったあなた一人で、このカメレオン部隊全員を裁き切ることができると、本当に思っているんですか?」
そんなカレオンに、シェドは冷静に言葉を返す。
「当たり前だろ? 貴様たちでくの棒が10人力を合わせるより、毒を喰らった俺の方がまだ強い。疑うなら試してみるか? お前にそんな度胸があるならな」
「なめられたものですね。お前ら、そこの毒に倒れている男は後回しです。複数で確実にこいつを殺して差し上げましょう」
ネクはふと、自分たちの右側を見て、そう声を発する。何が危ないのかわからなかったがシェドとサンは、咄嗟にその場から離れた。
――ビュンッッッ。
二本の矢が音を上げて、サンとシェドの腕を掠める。ポタポタと流れる血。危なかった。あのままあの位置にいたら、直撃だった。
「なるほど、やはり蛇の目を持つあなたには気付かれてしまいましたか」
すると、何もないところからヌッと、幾多もの獣人が現れた。ぎょろぎょろとした目をこちらに向け、彼らはニヤニヤと笑っている。緑色の鱗。グルグルの尻尾。シェドが彼らを見て、絞るような声で呟く。
「お前は、カメレオン部隊隊長。カレオン」
「いかにも、私はレプタリア諜報部カメレオン隊隊長、インビジブルキラーカレオンです。いやぁ、あのカニバル軍最強と言われるシェドさんに覚えてもらえるなんで、私は幸せ者ですよ」
恭しく頭を下げるカレオンという男。なるほど、先ほどまで見えなかったのはカメレオンの変色能力を使ったからか。サンは頭を巡らせる。きっとサンたちがここに来ることを見越してすでに山に潜んでいたんだ。ネクだけ視認することができたのは、ヘビの目は他の動物とは違い、温度で周りのものを認識するような作りになっているからだろう。
シェドはカメレオン部隊を見て、サンたちに対し指示を下す。
「全員一旦引くぞ。ベアリオに作戦が失敗したことを伝えなきゃならない。それに、敵本陣に近いこの場で相手と戦うのは分がわるい!」
「分かった!」
「……うん、分かった」
「分かりました!」
みんなそれぞれシェドの指示に返事をし、山を駆け降りようとする4人。しかし、サンの体にかすかな、痺れのようなものが走る。
「ぐっあぁぁっ」
唐突に足に力が入らず、勢いよく転げるサン。シェドは唐突にぴたりと足を止める。そして、カレオンの方を向いて、静かに聞く。
「おい、お前。あの矢に何が塗ってあった?」
カレオンはニヤリと笑って答える。
「流石、何年間もこのレプタリアと戦っているだけある。そうです。先程打ち出した矢に、我が猛毒部隊コブラ隊から抽出した神経毒を塗らせてもらいました。まあ掠った程度でしたので、日頃から毒が効かないようにしているあなたには効果がなかったようですが、そちらの彼は耐性がなかったようですね」
「なるほどな。おい、ネク! ジャカル! お前らは先に戻っていろ。あいにく俺も多少痺れがあるから速くは走れない。だから俺はこいつらを片付けてから行く」
「でも隊長、大丈夫ですか? 相手は10人ほどいるし、毒も喰らっている。流石の隊長もきついのでは?」
「ちげぇよジャカル。今ここで想定しうる最悪の状況は、カニバル軍が、この作戦の成否が分からないまま、戦争を続けて敗北することだ。俺たちはそれだけは防がなければならない。だから早く行け!」
「でも!」
振り向き走り出さないジャカルに対し、ネクが彼の腕を掴む。
「行こう、ジャカル。シェドなら大丈夫。私たちは私たちができることをしよう。シェド、念のためあれポーチごと置いておくから」
「・・・・・・ああ、わかった」
そして、そのまま走り出すジャカルとネク。カレオンはそんな彼らを追いかけることなく見送っていた。シェドは、そんな彼に言葉を発する。
「なんだよ、追わなくていいのか?」
「まあいいでしょう。あの二人の首を持っていくより、あなたの一人の首の方が遥かに価値がある。にしても随分間抜けですね。毒の回ったあなた一人で、このカメレオン部隊全員を裁き切ることができると、本当に思っているんですか?」
そんなカレオンに、シェドは冷静に言葉を返す。
「当たり前だろ? 貴様たちでくの棒が10人力を合わせるより、毒を喰らった俺の方がまだ強い。疑うなら試してみるか? お前にそんな度胸があるならな」
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