49 / 102
奇襲への奇襲
しおりを挟む
木々をかき分け、草をかき分け、道なき山道を進んでいくシェド、ネク、ジャカル、サンの4名。慣れない山道に苦戦しながらも、サンは今の状況をシェドに確認する。
「それでシェド隊長。もう何十分もこの山道を歩いているけど、あとどのくらいで敵陣に着くんだ?」
「だから前にも言ったろ。サン。俺たちの目的は敵本陣への奇襲だが、直接今からそこに出向くわけじゃない。だからな。あーもう、説明が煩わしいなぁ。ネク、代わりに頼む」
「……うん、わかった。サン。私たちの目的は、味方の軍とレプタリアの軍が戦っている間に敵の中枢を担っているゲッコウとその護衛であるヤモリ部隊に接触し、撃退すること。ゲッコウとその部隊は、南の峠にてレプタリア軍の指揮をとっている。そんな彼らを倒すことができれば、この戦争は勝ったも同然」
静かに淡々と状況を語るネクの説明をジャカルが引き継ぐ。
「そうそう。だけどどんなにアツい俺たちでも、急に本陣に突っ込むわけにはいかない。敵に囲まれてしまうからね。だから今は、とりあえず、敵の本陣に近くかつ標高の高いところに陣取り、ヤモリ軍の位置を確認して、敵に隙ができるのを待つ。すでに本陣の場所はネクのアツい調査でわかっているからね。だから今向かっているのは、本陣じゃなくあくまで本陣の様子を見渡せる場所ってわけだ」
「そっか、そうだったな。ありがと、2人とも」
そして、作戦内容を確認しながらも少しずつ目的地へと足を進めていく4人。そして出兵から、40分ぐらい山道を進んだあと、シェドが声を上げる。
「よし、大体この辺でいいだろう。俺たちシェド隊はここに陣取る。ここなら敵の本陣の様子が見えるはずだ。おい、ネク。望遠鏡待ってるか?」
「うん、待ってきてる」
「よし、じゃあそれで本陣の様子を教えてくれ」
そしてネクは、ポーチから望遠鏡を取り出す。そして、じっと本陣の方をしばらく眺めていると、ネクが小さな声で呟いた。
「…-おかしい」
「何がだ?」
シェドがネクに対して低く響く声でそう尋ねる。
「……どこを見ても、ヤモリ隊とゲッコウが見当たらない。なんで? ここで彼らはレプタリアの指揮をとっているはず」
「なんだと? どれ、見せてみろ」
そして次はシェドがその望遠鏡のレンズを覗き込む。しかし、やはり期待していたものを見つけたような反応はそこにはない。
「確かに。なんでだ? 今までネクの調査に不備があったことはなかったが」
「どれ、俺にも見せてくれよ」
そう言ってサンはシェドから望遠鏡を受け取る。一応自分だってフェニックスであり、鳥類の端くれ。みんなには見ることができないものを見られるかもしれない。もっとも、未だサンの目に、鳥類の視力など備わったことはなかったが。
右へ左へと敵の本陣を見渡すサン。しかし、カエルやカメなど部隊らしきものはあれど、ヤモリらしき獣人は見当たらない。
「ん? あれは?」
そんな時彼の視界に、見知った顔が飛び込んでくる。
「なんだよサン? 何かアツい発見があったなら教えてくれよ?」
「いや、でも別に大したことじゃないんだけど」
「なんだ? サン。些細なことでもいい。言ってみろ」
シェドがじっとこちらを見て、サンに対してそう告げる。本当にこんな情報いるのだろうか。サンは首を傾げながらも、彼らに自身の発見を伝える。
「いや、カエル部隊の中にさ。グレイトレイクで戦ったアマガエルがいたんだ。それだけだよ」
シェドは眉をピクリと顰める。
「どういうことだ? お前が戦ったのは、アマガとウガイの2人だけだろう? 他に誰かいたのか」
「ああ、本当はもう一人アマガエルの獣人とも戦ったんだ。最も、そいつはジャカルが来た時の混乱に乗じて多分湖を泳いで逃げたと思うんだけど」
「え、それって………」
ネクが体を震わせる。最悪の想像が彼女の頭をよぎる。その瞬間、シェドが声を上げる。
「なんでそんな大事なことを今日まで黙ってた。一旦本陣に戻るぞ。こっちの作戦がバレている可能性がある」
「悪い。そんな重大なことだとは思ってなかった。でもなんでその可能性があるんだ?」
「アマゲは結構謎に包まれている兵士なんだが切れ物でなく。ジャックがお前に対して行っていた俺たちの説明を、水中で聞いていた可能性がある。そしたら、ネクがレプタリアで得ていた情報は全て使えないし、こちらがどういう情報を得ようとしていたかで、こっちの大まかな作戦がわかるはずだ。だから――」
「シェド! サン! 危ない!」
ネクはふと、自分たちの右側を見て、そう声を発する。何が危ないのかわからなかったがシェドとサンは、咄嗟にその場から離れた。
「それでシェド隊長。もう何十分もこの山道を歩いているけど、あとどのくらいで敵陣に着くんだ?」
「だから前にも言ったろ。サン。俺たちの目的は敵本陣への奇襲だが、直接今からそこに出向くわけじゃない。だからな。あーもう、説明が煩わしいなぁ。ネク、代わりに頼む」
「……うん、わかった。サン。私たちの目的は、味方の軍とレプタリアの軍が戦っている間に敵の中枢を担っているゲッコウとその護衛であるヤモリ部隊に接触し、撃退すること。ゲッコウとその部隊は、南の峠にてレプタリア軍の指揮をとっている。そんな彼らを倒すことができれば、この戦争は勝ったも同然」
静かに淡々と状況を語るネクの説明をジャカルが引き継ぐ。
「そうそう。だけどどんなにアツい俺たちでも、急に本陣に突っ込むわけにはいかない。敵に囲まれてしまうからね。だから今は、とりあえず、敵の本陣に近くかつ標高の高いところに陣取り、ヤモリ軍の位置を確認して、敵に隙ができるのを待つ。すでに本陣の場所はネクのアツい調査でわかっているからね。だから今向かっているのは、本陣じゃなくあくまで本陣の様子を見渡せる場所ってわけだ」
「そっか、そうだったな。ありがと、2人とも」
そして、作戦内容を確認しながらも少しずつ目的地へと足を進めていく4人。そして出兵から、40分ぐらい山道を進んだあと、シェドが声を上げる。
「よし、大体この辺でいいだろう。俺たちシェド隊はここに陣取る。ここなら敵の本陣の様子が見えるはずだ。おい、ネク。望遠鏡待ってるか?」
「うん、待ってきてる」
「よし、じゃあそれで本陣の様子を教えてくれ」
そしてネクは、ポーチから望遠鏡を取り出す。そして、じっと本陣の方をしばらく眺めていると、ネクが小さな声で呟いた。
「…-おかしい」
「何がだ?」
シェドがネクに対して低く響く声でそう尋ねる。
「……どこを見ても、ヤモリ隊とゲッコウが見当たらない。なんで? ここで彼らはレプタリアの指揮をとっているはず」
「なんだと? どれ、見せてみろ」
そして次はシェドがその望遠鏡のレンズを覗き込む。しかし、やはり期待していたものを見つけたような反応はそこにはない。
「確かに。なんでだ? 今までネクの調査に不備があったことはなかったが」
「どれ、俺にも見せてくれよ」
そう言ってサンはシェドから望遠鏡を受け取る。一応自分だってフェニックスであり、鳥類の端くれ。みんなには見ることができないものを見られるかもしれない。もっとも、未だサンの目に、鳥類の視力など備わったことはなかったが。
右へ左へと敵の本陣を見渡すサン。しかし、カエルやカメなど部隊らしきものはあれど、ヤモリらしき獣人は見当たらない。
「ん? あれは?」
そんな時彼の視界に、見知った顔が飛び込んでくる。
「なんだよサン? 何かアツい発見があったなら教えてくれよ?」
「いや、でも別に大したことじゃないんだけど」
「なんだ? サン。些細なことでもいい。言ってみろ」
シェドがじっとこちらを見て、サンに対してそう告げる。本当にこんな情報いるのだろうか。サンは首を傾げながらも、彼らに自身の発見を伝える。
「いや、カエル部隊の中にさ。グレイトレイクで戦ったアマガエルがいたんだ。それだけだよ」
シェドは眉をピクリと顰める。
「どういうことだ? お前が戦ったのは、アマガとウガイの2人だけだろう? 他に誰かいたのか」
「ああ、本当はもう一人アマガエルの獣人とも戦ったんだ。最も、そいつはジャカルが来た時の混乱に乗じて多分湖を泳いで逃げたと思うんだけど」
「え、それって………」
ネクが体を震わせる。最悪の想像が彼女の頭をよぎる。その瞬間、シェドが声を上げる。
「なんでそんな大事なことを今日まで黙ってた。一旦本陣に戻るぞ。こっちの作戦がバレている可能性がある」
「悪い。そんな重大なことだとは思ってなかった。でもなんでその可能性があるんだ?」
「アマゲは結構謎に包まれている兵士なんだが切れ物でなく。ジャックがお前に対して行っていた俺たちの説明を、水中で聞いていた可能性がある。そしたら、ネクがレプタリアで得ていた情報は全て使えないし、こちらがどういう情報を得ようとしていたかで、こっちの大まかな作戦がわかるはずだ。だから――」
「シェド! サン! 危ない!」
ネクはふと、自分たちの右側を見て、そう声を発する。何が危ないのかわからなかったがシェドとサンは、咄嗟にその場から離れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる