プロミネンス【旅立ちの章】

笹原うずら

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このカニバル軍全員の命を捧げようじゃないか

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 ずらりと並ぶカニバル軍の兵士たち。今日勝利を収められるかどうかで、レプタリアとの戦争の結末が大きく変わる。皆それをわかっているからこそ、全ての兵士が精悍な顔立ちで、正面を見つめていた。

 今日は、出兵初日の決起集会。大勢の兵が見つめる壇上には、すでにベアリオ国王が立っている。周りと比較して、少しだけ背の低いサンは、目一杯顔を上げながら、ベアリオの言葉を待っていた。

「みんな、今日まで血の滲むような訓練どうもありがとう。君たちの努力や情熱は、いつもこのカニバルのどこにいても感じているよ」

 優しげな表情でまず兵士を労うベアリオ。ほんの少しだけ、兵士の空気が和やかなものに変わる。きっと、彼のそういう優しいところが、兵にも受け入れられているのだろう。サンは、ここにきて数日ながらにそんなことを考える。

「さて、ここカニバルとレプタリアとの戦争ももうすぐ3年になる。懐かしいね。まだかつてこの玉座に父が座っていたころ、南の峠で、事件は起こった」

 その時、カニバル兵の目に、メラメラと闘志が灯る雰囲気をサンは感じる。そして隣で立つジャカルもまた、きつく自らの拳を握りしめた。

「あれは、凄惨な事件だったね。彼らは、何人もの我々の仲間を傷つけた。最初は彼らに殺す気はなかったみたいだが、その暴動で、無慈悲にも家族を失った者は多いだろう。そして、このカニバルとレプタリアの戦火は切って落とされた。そして幾度の戦いの中で、このカニバル軍の勇敢な兵たちもまた何人も命を落とすことになった。私の父もその一人だ」

 ベアリオの語気がどんどん増していく。この場所の温度が、熱量が、戦いへと向かって一度ずつ上昇していく。

 そして彼は続ける。

「そんな我々カニバル軍は今、ついに今日南の峠に向かう。この戦争の始まりの地。そして、我々の沢山の想いが取り残された因縁の地。そんな南の峠を我々は今日取り返す! みんな! この国のために死んでくれなどとは言わない! 私のために死んでくれなどとは決して言わない! ただ、レプタリアで今まで失われていった彼らのために! そして、君たち一人一人が無事で帰ることを祈ってくれている家族のために! 私を含めた、このカニバル軍全員の命を捧げようじゃないか!」
「オォォォォォォォォ!!」

 兵のみんなが、腰に携えた武器を掲げ、高々と国王に向かって雄叫びを上げる。

「さあ、いくぞ! カニバル軍よ! 今日彼の地で我々は、あのレプタリアのもの共に、引導を渡してやるのだ!」
「オォォォォォォォォ!」

 そして、今、カニバル軍は、南の峠へと向け進行を開始するのだった。
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