プロミネンス【旅立ちの章】

笹原うずら

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これで俺は、アツくなれる

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――やはりか。

 想定はしていた。彼が本陣にいない時点で。しっかりと彼と戦う覚悟を固めてはいたのだ。しかし、わかっていても、目の前の男の放つオーラは、やはり今まで戦ってきた敵と比べ物にならない。そんなことを考えながら、ネクとジャカルは馬に乗って現れた眼前の男を見つめる。その男は、馬を降りながらネクとジャカルを見つめて言葉をこぼす。

「ふむ、ジャカルとアマゲが言っていたヘビのスパイか。この分だとシェドはしっかり足止めできているようだな。やるじゃねぇか、カレオンたち。よお、お前ら、俺様がレプタリア軍最強の兵士、ゲッコウだ」

彼は持ち前の身長ほどもある槍を取り出し、彼らを見据える。圧倒的な強者のオーラ。いつも彼が戦場に出た時はシェドが相手をしていた。だから、こうしてゲッコウと戦うこと自体、彼らには初めての事だった。ゲッコウのオーラに当てられて彼らの足が、震える。

「どうした? 震えているぞ? まああまり弱いものいじめは好きじゃないが、お前らシェド隊は散々うちの兵を蹴散らしてくれたからな。あいにくだが、お前らにはここで死んでもらう。そうだなぁ。最初はヘビ。お前から行こう」
「待てよ」

 ジャカルは心臓が激しく鼓動する体内からなんとかその3文字を捻り出す。ゲッコウはジャカルの方を向き、静かに彼に問う。

「何だ? 何か不満か?」

ジャカルは、なんとか言葉を絞り出しながら、ゲッコウを見据える。

「ゲッコウ。君は数年前の南の峠襲撃の主犯のうちの1人だったよな。じゃあ、その時に南の峠にいた、ピュマって獣人を覚えているか?」
「ピュマ、知らないな。だが、甘えたことを言われたら困る。お前も今までお前が倒したレプタリアの兵士全てを覚えてはいないだろう。自らが手を下した獣人全てを記憶するなんて不可能だろ? だから俺はそんな奴の名前覚えていないが、プマとやらがどうしたんだ?」

 ジャカルは腰の二つのナイフに手を当てる。

「ああ、わかっているよ。戦争はそういうものだっていうのはな、痛いほどわかってるんだ。けれど、それでも君の答えが聞きたかったんだ。よかったよ、思っていた通りの言葉が聞けて。これで俺は戦える。これで俺は、アツくなれる」

 脳裏にかつて生きていたころの妻の笑顔がよぎる。そして次に母を失い悲しみに暮れるジャックの姿も浮かぶ。ふつふつと込み上げる怒りが、彼に2本のナイフを構えさせる。

「いくぞ、ゲッコウ。シェド隊隊員切り裂きジャカル。推してまいる!!」
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