プロミネンス【旅立ちの章】

笹原うずら

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飛炎・木洩れ日

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――なん、で?

 サンは、信じられない、信じたくもない光景を木々の隙間から目の当たりにし、ただただ立ち尽くす。目の前には、体に穴の空いたジャカルと、血まみれの槍を握りしめて、ネクの方を見据えるゲッコウの姿があった。

 この場所で何があったのか、瞬時に理解するサン。彼は、体中の怒りを爆発させ、木々の間から飛び出し、叫ぶ。

「おォォまァァえェェェェ!!」

 ゲッコウに向かって、ペンダントを握りしめ、『サン、ライズ!!』と声を張り上げる。そして、刀を彼へと向かって大きく振り上げる。

 ――ガガァァァァン。

 それに反応し、咄嗟にサンの攻撃を受け止めるゲッコウ。サンは互いの武器越しに喉が焼けるほどの声を発する。

「お前! よくも、ジャカルを! よくもォォォ!!!」

「お前、アマゲが言っていたやつか。ウガイを倒したんだってな。でも、それにしては刀に力が入ってないぜ!!」

槍を大きく振り、サンの刀を払う。その瞬間、サンの神経に激痛が走る。まだ彼の体は、神経の痛みまで完治できているわけではない。反射的に、次の攻撃が遅れるサン。そんな隙をゲッコウが見逃すわけもなく、彼は再び持ち手でサンのことを弾き飛ばす。

「いっつ!! がァァ!!」

 地面に衝突し、サンの神経が再び痛みの信号を脳へ送る。本来ならば通常の痛みではサンは止まらない。しかし、神経回路に直接響くような痛みに、彼はしばらく立ち上がることができなかった。

「なんだ。手負いかよ。心配しなくても、もう俺はこれ以上お前らを殺しはしない。俺は再生能力を使って誰かに勝った時はすぐに退くと決めてるんだ。本来なら俺は負けてるんだからな」

 そうサンに語り、待たせていた馬に飛び乗るゲッコウ。逃がすわけにはいかない。サンは、咄嗟に横にいるネクに声をかける。

「ネク! 逃げるぞ! あいつが」

しかし、ネクは涙を浮かべサンの方を見る。

「……だめ、だめなの。サン。……足が動かない。足が……動かないよ」
「クソッ!!」

 地面を叩き、なんとか立ち上がるサン。しかし、もうゲッコウの馬は走り出している。サンは、自らの刀に炎を流し込み、気迫を込めて、叫ぶ。

「陽天流一照型、飛炎・木洩れ日!!」

 そして虚空へ向けてサンは一照系を放つ。いつも放つ円弧型の斬撃とは違う、弓の形をした高密度の斬撃。それは真っ直ぐにゲッコウへと向かい飛んでいく。

 ――グザァァァン!

 そして、その斬撃はゲッコウの右側に命中しその腕を吹き飛ばす。

 しかし、信じられないことが起きる。確かに大きく損傷した右腕。それが瞬く間にうねうねと再生していくのだ。そして、すぐに元通りになった右腕を高らかに上げ、ゲッコウは、こちらに手を振り去っていく。

「あァァァァァァァァ!!!」

 サンは、何度も地面を叩いた。脳に働きかける激痛を感じながらも、それでも何度も何度も気が済むまで、彼は地面に拳を叩きつけた。
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