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かませ犬が立ち上がる理由としては十分でしょ
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「えーっとここが最上階だよな」
2階3階4階へと登り詰め、次々と現れる敵を薙ぎ倒しながら、少しずつアリゲイトに迫るサン。
最上階の廊下を走り回りながら、彼は、アリゲイトがいる部屋を探していた。最上階ともなると、やはり今までの階よりも護衛の数が増えていく。しかし、決意を固めたサンは、彼らに傷一つつけられることなく、進み続けるのだった。
――随分走り回ったな。そろそろ着いてもおかしくないと思うけど。
そんなことを考えながらサンが曲がり角を曲がった時、彼の目の前に巨大な扉が現れた。今までの扉とは、全く違った装飾にどこか漂う人を惹きつけるようなオーラ。恐らくこの中に、彼がいるのだろう。
ただしかし、その扉には簡単に入れるわけではないようだ。なぜならばその扉の前には、1人の男が座ってサンのことをにらみつけていたからである。しかもその男はサンと面識のある者であった。
サンは彼に話しかける。
「よぉ、グレイトレイクぶりだよな」
1人の男、アマガエルの獣人アマゲは、サンに向かって言葉を返す。
「そうですね。すいません本当に。こんな胸熱な展開だっていうのに最後の敵が僕で」
アマゲは、のんびりと立ち上がり武器を取り出した。見覚えのある槍。そう、それはゲッコウの槍だった。
「なんだよ展開って。それにしても護衛兵だったんだな。ウガイの隊で副隊長やってたはずだろ?」
「まあそれもそうなんですけどねぇ。本当はこっちが本職なんですよ。でも経験が浅かったんで前線に行って戦闘経験を積ませられてたんです。昔世話になったウガイさんと兄貴がいる隊で。一応僕も護衛兵四天王の1人なんですよ。でももうみんな倒しちゃいました?」
「ああ、来るに途中3人ぐらい倒したよ。あんたは何番目に強いんだ?」
「まあここにいるってことはそうですよね。僕は、一番ここに配属されるの遅かったんで、階級的には一番下ですよ。四天王の中で最弱ってやつです
」
――まあ嘘だろうな。
サンは心の中でそう呟く。きっと本当に階級は下なんだろうが、最弱というわけではないはずだ。そうでない限り、ここの最後の護衛を任されるはずがない。けれど、そうだとしても、おそらく彼には、自分はとめられない。
「いいのか」
「何がですか?」
「だってわかってるはずだろ? 多分、あんたじゃ俺には敵わないよ。それでも俺の前に立ち塞がるのか」
するとアマゲは、ため息を吐き、どこか笑みを浮かべて、言葉を発する。それはどうしようもなく愛情を捨てられないようなものを眺めるような、そんな笑み。
「まあそうでしょうね。でもね。お兄さん。僕もハクダ出身なんですよ。それでウガイさんと兄貴とつるんで、昔は悪さしてたんです。でも、ある日ゲッコウさんたちにボコられて。それからあの人たちと関わるようになった。そしたら、ゲッコウさん、僕に闘いの才能があるって言い出して、僕のこと鍛え出したんですよ。全く頼んでもないのに迷惑な話ですよね。ほんとに」
サンは刀を向けながら、静かにアマゲの話を聞いていた。アマゲはなお一層、笑みを深めて続ける。
「まあでも感謝してるんです。チンピラだった頃とは違って確かな強さを教えてくれたあの人に。そして、だからこそ僕にとってあの人との思い出が詰まっているレプタリアは大切な場所なんです。すいません。まどろっこしい言い方して。まあでも端的に言えば、僕はゲッコウさんが大好きなんです。だから俺は、あの人が大好きなレプタリアもアリゲイトさんも守りたい。そしてきっとそれは、かませ犬が立ち上がる理由としては十分でしょ」
「……そっか。そうだよな。きっとあんたみたいな人を、ゲッコウは戦士って言うんだろうな」
サンは、刀に炎を灯す。そして目の前の1人の戦士にサンは問う。
「俺の名前はサンだ。あんたの名前聞いてもいいか?」
「そういえば言ってなかったですね。レプタリア護衛四天王アマゲです。よろしくお願いします」
「そっか。アマゲか。いい名前だな。じゃあ最後の壁越えさせてもらうよ」
「まあ、そう簡単に越えられるとは思わないでくださいね」
そして両者は、互いの正義に相対する目の前の敵に向かって、勢いよく地面を蹴るのだった。
2階3階4階へと登り詰め、次々と現れる敵を薙ぎ倒しながら、少しずつアリゲイトに迫るサン。
最上階の廊下を走り回りながら、彼は、アリゲイトがいる部屋を探していた。最上階ともなると、やはり今までの階よりも護衛の数が増えていく。しかし、決意を固めたサンは、彼らに傷一つつけられることなく、進み続けるのだった。
――随分走り回ったな。そろそろ着いてもおかしくないと思うけど。
そんなことを考えながらサンが曲がり角を曲がった時、彼の目の前に巨大な扉が現れた。今までの扉とは、全く違った装飾にどこか漂う人を惹きつけるようなオーラ。恐らくこの中に、彼がいるのだろう。
ただしかし、その扉には簡単に入れるわけではないようだ。なぜならばその扉の前には、1人の男が座ってサンのことをにらみつけていたからである。しかもその男はサンと面識のある者であった。
サンは彼に話しかける。
「よぉ、グレイトレイクぶりだよな」
1人の男、アマガエルの獣人アマゲは、サンに向かって言葉を返す。
「そうですね。すいません本当に。こんな胸熱な展開だっていうのに最後の敵が僕で」
アマゲは、のんびりと立ち上がり武器を取り出した。見覚えのある槍。そう、それはゲッコウの槍だった。
「なんだよ展開って。それにしても護衛兵だったんだな。ウガイの隊で副隊長やってたはずだろ?」
「まあそれもそうなんですけどねぇ。本当はこっちが本職なんですよ。でも経験が浅かったんで前線に行って戦闘経験を積ませられてたんです。昔世話になったウガイさんと兄貴がいる隊で。一応僕も護衛兵四天王の1人なんですよ。でももうみんな倒しちゃいました?」
「ああ、来るに途中3人ぐらい倒したよ。あんたは何番目に強いんだ?」
「まあここにいるってことはそうですよね。僕は、一番ここに配属されるの遅かったんで、階級的には一番下ですよ。四天王の中で最弱ってやつです
」
――まあ嘘だろうな。
サンは心の中でそう呟く。きっと本当に階級は下なんだろうが、最弱というわけではないはずだ。そうでない限り、ここの最後の護衛を任されるはずがない。けれど、そうだとしても、おそらく彼には、自分はとめられない。
「いいのか」
「何がですか?」
「だってわかってるはずだろ? 多分、あんたじゃ俺には敵わないよ。それでも俺の前に立ち塞がるのか」
するとアマゲは、ため息を吐き、どこか笑みを浮かべて、言葉を発する。それはどうしようもなく愛情を捨てられないようなものを眺めるような、そんな笑み。
「まあそうでしょうね。でもね。お兄さん。僕もハクダ出身なんですよ。それでウガイさんと兄貴とつるんで、昔は悪さしてたんです。でも、ある日ゲッコウさんたちにボコられて。それからあの人たちと関わるようになった。そしたら、ゲッコウさん、僕に闘いの才能があるって言い出して、僕のこと鍛え出したんですよ。全く頼んでもないのに迷惑な話ですよね。ほんとに」
サンは刀を向けながら、静かにアマゲの話を聞いていた。アマゲはなお一層、笑みを深めて続ける。
「まあでも感謝してるんです。チンピラだった頃とは違って確かな強さを教えてくれたあの人に。そして、だからこそ僕にとってあの人との思い出が詰まっているレプタリアは大切な場所なんです。すいません。まどろっこしい言い方して。まあでも端的に言えば、僕はゲッコウさんが大好きなんです。だから俺は、あの人が大好きなレプタリアもアリゲイトさんも守りたい。そしてきっとそれは、かませ犬が立ち上がる理由としては十分でしょ」
「……そっか。そうだよな。きっとあんたみたいな人を、ゲッコウは戦士って言うんだろうな」
サンは、刀に炎を灯す。そして目の前の1人の戦士にサンは問う。
「俺の名前はサンだ。あんたの名前聞いてもいいか?」
「そういえば言ってなかったですね。レプタリア護衛四天王アマゲです。よろしくお願いします」
「そっか。アマゲか。いい名前だな。じゃあ最後の壁越えさせてもらうよ」
「まあ、そう簡単に越えられるとは思わないでくださいね」
そして両者は、互いの正義に相対する目の前の敵に向かって、勢いよく地面を蹴るのだった。
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