プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~

笹原うずら

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研がれし剣は継がれゆく

こんな俺の、どこが太陽なんだよ

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「……うん、シェド。全部聞いたよ」

 一方、ヤドから全てを聞いたサンは、シェドに対して静かに告げた。おそらく彼は気づいているのだろう。その事実が、自分によって意図的に伏せられたものだということも、シェドは、今までカニバルの軍人時代に似たようなことを何度もやってきた。しかしそれにも関わらず、彼は目の前の男への罪悪感で何も言葉を滑らかに紡ぐことが出来ず、ただ一言、返す。

「…………そうか、きいたか」
「うん」

 2人の間に流れる、ぎこちのない静寂。サンはきっと自分を責めているわけではない。カニバルと同様にして、何か理由があったからそうしたのだと思っている。そう、サンがそう思っていることが伝わっているからこそ、シェドは、今彼に対して、何も言葉にできないでいた。

 シェドからの言葉を待っていたサン。しかし、どれほど時間が経っても彼は何も言ってくれないので、サンは、翼を大きく広げた。

「じゃあ、シェドはユニたちと作戦を立ててから来て。俺、先に行ってくるよ」
「まて」

 その時、やっとシェドは、言葉をサンに届けることができた。飛びあがろうとするのをやめ、シェドの方に向き直るサン。シェドは、そんな彼に冷静に続ける。

「0号は、強いぞ。対策なしに勝てる相手だと、俺は思えない」
「うん」

「それに俺たちには、ラキュラとの戦いが控えている。万全の0号を相手にして消耗すれば、スカイルの人たちの救助は、もっと遅くなるかもしれない」
「うん」

「まだ理由はある。シーラはずっと俺たちがくる前からラキュラたちに虐げられてきた。その怒りは相当なものだ。だからこそ俺は、あいつらが気持ちをぶつける場が必要だと思うし、下手に余力を残したまま0号がいなくなってしまえば、彼らがラキュラの城にまで攻め入ることも考えられる。だから助けに入るタイミングは考えるべきだと思った」
「うん」

「――でも、サン。お前は、迷わずいくんだな」

「うん」

 そこに一切の躊躇いもなく、美しく澄んだ瞳。シェドはもう、彼を止めようとは思わなかった。ただ彼は、サンに対し、真っ直ぐに問いかける。

「なあ、サン。一つ、聞きたいことがあるんだ」
「なに? シェド」
「俺はさ、何かを守ろうとする時どうしても考えちまう。自分の行動が引き起こすマイナスを。本当に自分のやろうとしてるのは正しいのか、自分がやったことは正しかったのか、いつも頭はそればかりだ、でも、お前は迷わない。それは、なんでだ?」

 するとサンは一度広げた翼を戻した。もちろん彼の中に早く0号の元へ向かわなければという想いはある。けれども、今はとにかく、彼の質問に答えを返してあげたいと思った。なぜなら、いつもどこか心を閉じていたシェドが、初めてその殻の中を見せてくれた気がしたから。

「……シェドはさ。カニバルでカナハさんの遺体を見た時、どう思った?」

 唐突に、サンは空を見上げ、過去の情景を思い浮かべながらそんな言葉をシェドに投げる。シェドは、少し考えてから、サンに返した。

「……色々な思いがあったな。一言じゃ、言い表せない」
「きっとシェドはそうだよね。……俺はさ、もうこんな思いはしたくないって思ったんだ。もう誰にも死んでほしくないし、誰にも傷ついて欲しくないし、誰にも、悲しんでほしくなんてなかった。ただただ強く、そう思った」

 そしてサンは、視線を戻し、真っ直ぐにシェドの瞳を見据えた。

「シェド。理屈じゃないんだよ。俺はさ、ただ、本当に、目に映るものを、手が届くはずだったものを、守れないのが嫌なんだ」

 サンは、濁りのない澄んだ言葉でシェドへ心をぶつけた。思えばいつも彼の心は変わらなかった。シェドは思う。サンという男は、今までの戦闘でどれほど人の醜い部分に触れようとも、決して折れずに、守りきろうとする。目に映るもの全てを。

「……そうか。そうだよな。悪かった、サン。また騙すような真似をして」

 シェドはなぜだか、どこか寂しそうな笑みをサンに浮かべた。サンは、翼を広げながら、そんな彼へ言葉を返す。

「大丈夫だよ。シェド。シェドが俺たちのためにやったっていうのはよく分かってる。むしろごめん。シェドの思う通りに動けなくて」
「謝るなよ。それがお前の生き方なんだろ。……俺はユニとネクを呼び戻してから橋に向かう。サンは先に行け。いいか? 後で俺たちがくるんだからな? 絶対に無茶はするなよ」
「うん、わかった! ありがとう、シェド! 行ってくる!」

 ――バサァ。

 するとサンは、翼をはためかせ、大空へと羽ば飛び上がった。そして彼は、脇目も振らず真っ直ぐに0号とナマズラたちがいる橋へと飛行した。

「やれやれ、本当にわかってるとは思えないがな、あいつ」

 すると、シェドは、曇り空にも関わらずどこか眩しそうに、大空に飛び上がるサンを見つめた。そして、彼は、ふとあの日、母に言われた言葉を思い返す。

『シェドは、きっと全てを照らす太陽になれるから』

 そしてシェドは、サンを眺めながら、苦しそうに笑みを浮かべる。

「――ははは、なあ、母さん。こんな俺の、どこが太陽なんだよ」
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