infinity Genesis-インフィニティ・ジェネシス

白水泉

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ヘイ、s〇ri。

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「って、何でですかぁッ!?」
キーン、と耳を貫くような声に、ミツキとルナは耳をふさいだ。
それも、物知り顔で語っていたミツキが手の平を返して、自分にも分からないなどと言ったからである。
当のミツキは、まだ余韻の残るエナの声に顔をしかめていた。
「うるっせぇなぁ。お前のせいで今後この世界の住民は、いちいち騒がしい、って偏見な目で見られるようになるぞ?」
「嫌ですねぇ。一人のために、彼らはどれだけ肩身の狭い生活を送るようになるのでしょうか?人としてどうなのですかねぇ?」
続いて、いつの間にか透明な羽を動かして宙に浮いているルナも、嫌味をエナにぶつける。
「なんでわたしは責められているんです!? それに、なぜあなたも混ざっているんですか!?」
急にミツキ側についたルナへ、エナは怒りをあらわにしながら問いかけた。するとルナは、嫌悪感をむき出しに返す。
「そりゃ、握りつぶされそうになった仕返しですよ?  ルナを手の平に乗せているなら、ちゃんと責任を持ってくれないと困りますよね!」
「そ、それはごめんなさい......」
先ほどエナが叫んだ際、思わず力が入ってしまい、ルナのことを忘れてこぶしを握ってしまったのだ。そのとき、間一髪でルナは飛んで逃げたのだが、不快感はぬぐえていないようで、エナに恨みをこめた視線を送っている。
その言葉に反論を返せず、エナはしおしおと勢いをそがれていく。
これ以上ルナと目を合わすことが出来ず、少しの間話からそれていたミツキのほうへと、諦めたように視線をやった。
「結局、あなた方はなんなんですか……。」
だらっと腕を垂らせた状態で、けれどどうしでも気になって仕方なかったのか、エナはそうやって尋ねた。
「んー、異世界人?」
そうすると、さも、当たり前のように返すから、
「さっぱり、分かんないですけど……」
エナはくっと脱力して、疑問符を浮かべることしか出来なかった
「マスター、つまりこれ、どういうことなのです?」
胡坐をかくミツキのしょうめんで、ふよふよと浮いていルナは首をかしげる。
「転生したってことじゃねぇのか?」
それに答えるミツキも、首を傾げ気味だった。
ミツキとルナは、エナと少し距離をとり、向き合って話をしていた。内容はもちろん、ミツキが一度適当に結論付けた、現状についてである。
「転生……。響きはすばらしいし、実際にすばらしいことなのですが、しかし、なぜおきたのでしょうか?」
「というか、お前、この世界の住人的なのじゃないんだな」
「そりゃぁ、ルナはもともとAIですよ?」
「最近のAIはすげぇなぁ」
 ルナが言ったとおり、ゲーム時、彼女は人工知能_AIであった。それは、ゲームを始める際に選ばれる『加護精霊』全てに通じるものであり、その知能によって、プレイヤーをサポートしていた。
ただ、さすがにここまで出来上がったAIだということはミツキを思っておらず、感嘆の声を漏らすばかりだった。
「と言ってもたぶん、現在のルナはAIではございませんよ?」
「ん?どういうことだ?」
「ルナは、人としての魂を与えられたものだと思います。まさに、転生ですね」
「ふむ、わからんな。どういうことだ?」
「一応、AIのときの知識などはあるのですが、思考回路がこれまで以上に複雑化が出来るようになったと言うことで」
「……記憶はAIで、思考が人間になったということか?」
「そういうことですね。それに、本物の肉体も手に入れたことですし」
自由に動く体がそれほどうれしかったことなのか、くるり、と一回転をしてみせる。
だが、すぐにその表情も少し影を落として、ルナは「う~ん」と考え込むようなしぐさを見せて、重たそうに口を開いた。
「そういえば、この状況になる前、何か起きてませんでしたか?ルナは寝ていたので、よく分からないのですが、何か聞こえたような気が……」
「俺も、意識が飛ぶ前に何か聞こえたな。そもそも、その前にも異常は起きてたんだが」
「ほうほう?」
ミツキが新しい情報を提示したことに、ルナは相槌を打って続きを催促させる。それを受けたミツキは、いぶかしげに自分の記憶を探って、語り出した。
「普通に『インジェネ』をやってたらな、急に画面が0に埋め尽くされてよ。そっからわけが分からないうちに数字が増えて、それでログインするためのウィンドウが出てきた。よく分からなかったけど取りあえずログインして、すると、そっから意識が飛んで、この世界にいたってわけだ」
長々と語ったミツキの言葉に、あごに手を当てながら耳を傾けていたルナは、さらに情報を求めて尋ねる。
「前触れ的なものは無かったのですか?」
「ああ、Lvが4280になった」
「なるほど……。何か関係ありそうですね」
珍しくまじめに話す二人。そんな彼らを遠目で見ていたエナは、蚊帳の外に追いやられていることに不満を感じながら、一人体育座りで、二人がこちらに戻ってくるのを待っていた。
そもそもなぜミツキの言うことを先ほどまで恐喝されていた彼女は素直に聞くのだろうか。やはり、そういったことまで頭が回らないのだろうか。馬鹿なのだろうか。
もちろん、そんなことをまったくかんがえていないエナは、じっと二人の会話の様子を眺めていた。
けれど、なかなか話を終えないので、次第に自分のことを忘れているのではないか、とおもいはじめるようになって、
「わたしもまぜてくださいぃっ!」
寂しくなって、叫んだ。

確実的に、彼女は馬鹿であった。
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2016.07.09 ユーザー名の登録がありません

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