infinity Genesis-インフィニティ・ジェネシス

白水泉

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マスター! 真打(ルナたん)登場です!(by ルナ)

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「さっき、あなた『すいません』って謝ったんですよね!? けれど、今やってることはまるで変わってないんですよ!?」
ミツキの理不尽な要求に、エナは理解が出来ないと言う風に、叫び続ける。
それを受けるミツキは、努めて笑顔に、けれど変わらず、金を巻き上げようとする。
「いやいや、最初は金目のものを全部よこせって言ったけど、今度は金だぜ? だいぶちげーよ。場合によっちゃ、もらえる額はがくんっと減るぜ?」
「変わりませんよ!?そんな風に語られても、納得するわけないじゃないですか!?」
「納得しろよー。頷けよー。金渡せよー」
「駄々こねないでください!」
なかなか金を渡してくれないエナに、面倒くさそうに体を揺らしながら要求する。
そんな彼を見てエナは、深くため息をついて、「そもそも」と語りだす。
「あなた、たくさんお金持っているでしょう?その装備はなんなんですか?」
びっ、と指を向けられ、「ん?」とミツキは背筋を伸ばした。
指摘された装備、それはおそらくこの世界でも群を抜いた強さを持つもので、そんな装備を持っているなら金も持っていることだろう、と言うのがエナの見解だった。
しかし、ミツキのほうは、「やれやれ」と言いながら、言い返す。
「確かに、俺は抱えきれないほどの金を持っていた。それに、この姿で転生したと言うことは、持ち物も《ミツキ》の物は持っているだろうよ。けどな、なんも重くない!ってことは、金とか消費アイテムとか、収納されている系アイテムは何一つないのだ!」
ばんっという効果音でもつきそうなほど勢いよく、両腕を広げて自分の体が何も持ってないことを見せ付ける。
ぶわっと広がった外套の下。腰あたりのベルトには、ポーチらしきものはないし、体のどこを見ても、何かを収納できるようなものは存在しなかった。
「ふっどうだ……」と自信満々にミツキは言って、エナのほうを見るが、しかしその表情は、きょとんとしていた。
「なに、言ってるんですか……?」
わけが分からず、どこか引き気味のエナ。その姿を見て、ミツキは「なるほど」と呟く。
『インジェネ』に転生して初めて出会った、この世界に住む住人。ならば、あちらにゲームの概念は存在せず、ミツキの言っていることが分からないのも道理が通る。
というか何気に、こいつって一番最初に会った異世界人という、もっとも重要キャラじゃね?
ようやくそのことに気づいたミツキだが、そんなことは気にせず、エナはぐいっと顔を近づけてくる。
「ちゃんと、確認してください!ここにポケットがありますよね!?少しはお金が入ってるでしょう!?」
「ちょ、なにすんだっ!」
有無を言わさず外套のポケットに手を突っ込んだ。そのとき、「ぎゅむっ」と変な音が聞こえた気がするが、それに気づかず、エナは何かをつかみ、顔を得意げにした。
「あるじゃないですか!?ほら!」
「あぁ?」
見せ付けてくる手の平にいぶかしげにミツキは視線をやると、
「んん~?」
小さな少女が、眠たげに瞼をこすっていた。


ニナの手の平の上にあった─いたのは、一〇センチほどしかない小さな少女だった。
緑色の髪は腰まで届き、その髪の中からのぞく耳は尖ったように伸びている。
更には、背中に透明な羽のようなものが生えていて。
「妖、精……?」
ミツキはその姿に思い当たるものがあり、首をかしげた。
けれどまだ何かが引っかかって、それを探るため記憶を絞ろうとしていると、手の平の上の少女がばっと起き上がった。
「はっ、寝すぎてしまいました!?あ!マスター、これは失礼!って、ゲームだから分からないか!と言うわけで、もう一眠り~」
と思ったら、また眠りにつこうとする。そんな少女をずっと眺めていたミツキは「あ」と急に思い出す。
「ルナか!?」
「へい、そうです。……ってえぇぇえええ!?反応した!?」
納得するように「ほ~」と言いながらそれを眺めていると、ルナと呼ばれた少女は、「うえっうえっ」と意味の分からない声を漏らしながら目をむいている。
「はっ!なんだか世界が違います!?グラフィックが良くなって、ってこれ、リアルじゃないですか!?マスターがルナを認識しているようですし!?マジですか!?この世界本物になっちゃったんですか!?」
ばっばっと止まることなく頭を振って、周囲を確認するルナ。そんな彼女を手のひらに乗せているニナは、何もわからず肩を跳ねさせる。
「えっ?いきなりなんです?この子いったいなんなんですか?」
先ほどまでの怒りをすっかり忘れたニナは、説明を求めてミツキへと向く。
すると、その視線に気づいたミツキは、得意げにルナを指差す。
「こいつは、俺の加護精霊のルナだ」
「いえぇっす!ルナですっ!」
ミツキの紹介に元気よく返事をする少女。しかし、それを聞いてたニナは首を横に振る。
「いやいや、意味分かりません」
「はい、ルナも分かりません」
「ちなみに俺も、よく分かりません」
続けて、残りの二人も(一人は半ばノリで)同調するように、首を横に降ったのだった。
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