5 / 7
「ウガッ」って言ってる奴があので一番強い。「ガウッ」はオカマ。
しおりを挟む
「あ、あれ、わたしは一体……」
なぜだか空白のある記憶に首をかしげる。すぐにそれを取り戻そうと、周囲の状況を確認しようときた少女だったが、しかしそれは、正面の黒い物体によって止められた。
「よし起きたな。じゃあ早速、金目のもの全部出せ」
目を覚ました少女の額には、金属の冷たい感触が伝わっていた。その温度が全身にわたったように体中に寒気が走り、引きつり気味の笑みで、声の主のほうへと目を向ける。
するとそこには、邪悪な笑みを向けてるミツキの顔があり、しっかりその腕は長銃を抱えている。
「な、ななななんですか!?何で、こんな目に会わないといけないんですか!?」
「ムカついたのと、ちょうどいいから」
「最低です!この人、人間じゃありませんよ!?」
わーわーとわめく少女に、ミツキのほうは額に青筋を立てながらも、決して銃は離さず、更に笑みに嫌みを増して言う。
「と言うわけで、これから始まる俺の物語の精となれ?」
「ひっ!?」
こんなの、絶対主人公じゃないですよ!?
少女は、涙目ながらに心の中でそう叫んだが、もちろん、ミツキのほうにそれは届くわけは無い。
「ほら、出せ」
「あ、ありませんよぉおお~」
「ああん?ないだと?嘘つくんじゃねぇよ」
どう見ても、主人公ではなかった。
完全に、カツアゲの図である。
先程まで、少しでもミツキに彼女を助けようという気持ちがあったことさえ、嘘のように思えてくる。
「だ、誰か助けてくださいぃぃいいッ!」
変わらず脅迫を続ける青年に、少女が絶叫した、そのときだった。
その叫びに応じたように、何かが二人の頭上を飛び越える。
それはまるで、救世主のようで。
少女は助けを求めて、その影にすがるような視線をやった。
*
急に現れた影に、ミツキはすぐさま反応してそれに相対するようにする。
彼の正面に現れたのは─
「ウガッ」「ガガッ」「ガウッ」
─三体のゴブリン、だった。
中央に立つ、他よりも少し恰幅のいいコブリンが、手に持つ蛇を、すっとミツキのほうへと向け、口を開く。
「ガガウッガウッガウッ(そいつは俺の獲物だ。返してもらおうか)」
「ゴブリンさんっ!」
ちぐはぐ感は半端なかったが、しかし少女は馬鹿なのか、そんなコブリンが今は、救世主のように見えて、涙を流している。
三体のゴブリンは、それぞれに無骨な蛇を構えると、ミツキへと向かって─
「「「ガウガ─「戦いを始め─」」」」
「きもっ!」
ドンッ。
「ゴブリンさぁぁああああんッ!?」
一発の銃声。一瞬のうちに彼方へと吹き飛ばされるゴブリンズ。
その、あまりの世の中の理不尽さに少女は泣き崩れてしまう。
対してミツキは、こが飛んでいった方向を眺めて、感嘆交じりに呟く。
「いやー、リアルゴブリンきめ!」
「悪魔ですよこの方、鬼畜ですよこの方。何で、こんな方にわたしは助けを求めてしまったのでしょうか……。過去の自分に教えてやりたい……」
「はっはっは、鬼畜とか『インジェネ』でよく言われたなー。懐かしいー」
「なぜか心のアルバムをめくったようです!?」
少女のツッコミをスルーして、ミツキはぼーっと、これからどうしようかと考える。
正直言って先ほど少女に脅迫したのは、ただ悪ノリしただけなので、今現在そんか気分ではない。
まあでも、出来るだけ搾り取ってはおくか。
そう結論付け、まだ涙を流している少女に向き直る。
「おいお前、名前は?」
「は、はいっ?え、エナ、ですよ……?」
「まあ、さっきはちょっお悪ノリしてな。すまなかったな」
「えっ? い、いきなり反省して、なんですか? た、態度なんか変えて、なにをする気ですか……?」
「じゃ、改めてエナ」
今度はさわやかな笑顔を見せたミツキは、金髪の少女─エナに手を差し出す。
「取りあえず金よこせ、な?」
「反省してないですよねぇえッ!?」
変わらないミツキに、エナは絶叫するしかなかった。
なぜだか空白のある記憶に首をかしげる。すぐにそれを取り戻そうと、周囲の状況を確認しようときた少女だったが、しかしそれは、正面の黒い物体によって止められた。
「よし起きたな。じゃあ早速、金目のもの全部出せ」
目を覚ました少女の額には、金属の冷たい感触が伝わっていた。その温度が全身にわたったように体中に寒気が走り、引きつり気味の笑みで、声の主のほうへと目を向ける。
するとそこには、邪悪な笑みを向けてるミツキの顔があり、しっかりその腕は長銃を抱えている。
「な、ななななんですか!?何で、こんな目に会わないといけないんですか!?」
「ムカついたのと、ちょうどいいから」
「最低です!この人、人間じゃありませんよ!?」
わーわーとわめく少女に、ミツキのほうは額に青筋を立てながらも、決して銃は離さず、更に笑みに嫌みを増して言う。
「と言うわけで、これから始まる俺の物語の精となれ?」
「ひっ!?」
こんなの、絶対主人公じゃないですよ!?
少女は、涙目ながらに心の中でそう叫んだが、もちろん、ミツキのほうにそれは届くわけは無い。
「ほら、出せ」
「あ、ありませんよぉおお~」
「ああん?ないだと?嘘つくんじゃねぇよ」
どう見ても、主人公ではなかった。
完全に、カツアゲの図である。
先程まで、少しでもミツキに彼女を助けようという気持ちがあったことさえ、嘘のように思えてくる。
「だ、誰か助けてくださいぃぃいいッ!」
変わらず脅迫を続ける青年に、少女が絶叫した、そのときだった。
その叫びに応じたように、何かが二人の頭上を飛び越える。
それはまるで、救世主のようで。
少女は助けを求めて、その影にすがるような視線をやった。
*
急に現れた影に、ミツキはすぐさま反応してそれに相対するようにする。
彼の正面に現れたのは─
「ウガッ」「ガガッ」「ガウッ」
─三体のゴブリン、だった。
中央に立つ、他よりも少し恰幅のいいコブリンが、手に持つ蛇を、すっとミツキのほうへと向け、口を開く。
「ガガウッガウッガウッ(そいつは俺の獲物だ。返してもらおうか)」
「ゴブリンさんっ!」
ちぐはぐ感は半端なかったが、しかし少女は馬鹿なのか、そんなコブリンが今は、救世主のように見えて、涙を流している。
三体のゴブリンは、それぞれに無骨な蛇を構えると、ミツキへと向かって─
「「「ガウガ─「戦いを始め─」」」」
「きもっ!」
ドンッ。
「ゴブリンさぁぁああああんッ!?」
一発の銃声。一瞬のうちに彼方へと吹き飛ばされるゴブリンズ。
その、あまりの世の中の理不尽さに少女は泣き崩れてしまう。
対してミツキは、こが飛んでいった方向を眺めて、感嘆交じりに呟く。
「いやー、リアルゴブリンきめ!」
「悪魔ですよこの方、鬼畜ですよこの方。何で、こんな方にわたしは助けを求めてしまったのでしょうか……。過去の自分に教えてやりたい……」
「はっはっは、鬼畜とか『インジェネ』でよく言われたなー。懐かしいー」
「なぜか心のアルバムをめくったようです!?」
少女のツッコミをスルーして、ミツキはぼーっと、これからどうしようかと考える。
正直言って先ほど少女に脅迫したのは、ただ悪ノリしただけなので、今現在そんか気分ではない。
まあでも、出来るだけ搾り取ってはおくか。
そう結論付け、まだ涙を流している少女に向き直る。
「おいお前、名前は?」
「は、はいっ?え、エナ、ですよ……?」
「まあ、さっきはちょっお悪ノリしてな。すまなかったな」
「えっ? い、いきなり反省して、なんですか? た、態度なんか変えて、なにをする気ですか……?」
「じゃ、改めてエナ」
今度はさわやかな笑顔を見せたミツキは、金髪の少女─エナに手を差し出す。
「取りあえず金よこせ、な?」
「反省してないですよねぇえッ!?」
変わらないミツキに、エナは絶叫するしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる