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体が大きくなればその分
しおりを挟む巨大なズムプフロッグが解体されたことを確認したおじさんが拘束するために作り出していた土の枷をもとに戻していく。
[本当に何だったんだ?]
[あのサイズをワンパンできるって事実に俺は驚愕している]
[と言っても、勇者が固定しないと近づけなかったっぽいからな]
[あれはどうしようもないだろ]
[あのサイズが暴れててすっと近づくのはバカしかいないだろ]
[デカい=攻撃範囲がデカいだからな]
[むしろ勇者があのジャンプ攻撃あっさり防いだのに驚いたわ]
大きいって言うのはそれだけで脅威なんだよね。遠目で見たら愚鈍な動きに見えても、実際に近くで体感すると無茶苦茶早いってことはよくあること。
「本当に大きかったですね」
これだけ大きなモンスターだから落ちている素材の大きさも多さも通常のズムプフロッグに比べて段違いだ。
肉は山のようにあるし皮のサイズも数倍という言葉では足りないくらいだろう。そして、魔石のサイズもとんでもなく違った。
「大きい」
思わずそう言葉が漏れてしまうくらいに大きな魔石が大量の素材の中に鎮座していた。
[お、おっきぃです///]
[大きい、音声いただきましたぁ( ^)o(^ )ニチャア]
[見たことないサイズだ]
[人間の頭部くらい大きくね?]
[普通のズムプフロッグの魔石サイズでも十分に人の頭位大きかったのにそれをあっさり上回るサイズ]
[ビーチボールサイズだな]
大きすぎて片手では持てないサイズの魔石を持ち上げる。
パっと見た感じ直径は40センチくらいかな。もともと体格の割に魔石の大きいズムプフロッグだけど、巨大個体となってもそれは変わらず順当な感じで魔石も大きくなっているんだね。
「このサイズですと深層の30以降の大型モンスター並みでしょうか。本当に大きいですね」
いろんな方向から魔石を観察している間、叔父さんがせっせと周囲に転がっていた素材を集めてきてくれていた。
「その魔石はどうするんだ?」
「そうだねぇ」
[確かに。魔力電池の素材になるのかな]
[むしろ素材としても相当な量になるはずだよな]
[何本分になるのか]
[100個以上は確実だろうな]
「多分ギルド行きかな。見た目ズムプフロッグとはいえ、未発見だったモンスターだから、調査研究用としてギルドが買い取ると思う」
「ああ、そうなるのが普通か」
今までも新しく発見されたモンスターの素材はギルドが率先して購入、というか調査協力という形で渡して欲しいって言われることがあったからね。樹海ダンジョンで解体した未発見モンスターもそうだったし。
[ギルドは強欲である]
[初出のモンスを調査しないといけないのはまあわかるな]
[ちゃんと金払うなら問題ないと思うぞ?]
[こういう場合ギルドは色付けて買い取ってくれるから]
[ちゃんと調査研究に役立つならいいよね]
「しかし、本当にデカい魔石だな」
「うん」
おじさんが私が手に持っていた魔石をまじまじと見つめてそう言った。
本当に大きいんだよね。もっと下の階層にはこれよりも大きい魔石を持っているモンスターも存在するし、見たこともあるけど深層の20ってことを考慮すると段違いに大きいことは間違いない。
私はその魔石を鞄の中にしまい、他のズムプフロッグの素材と混ざらないように今までズムプフロッグの素材を入れていた物とは別の鞄に、おじさんが集めてきてくれた素材を入れていく。
「この後はどうする」
巨大ズムプフロッグの素材をすべて拾い終えたところでおじさんがそう聞いてきた。
魔石の採取をどうするか、というよりもこのまま配信を続けるのか、のどうするだと思うんだけど、なんかボスっぽい個体も出てきたし切りが良いから配信はこれで終わりにしていいかな。
「ボスっぽいのも倒しましたし、配信はここまでにしましょうか」
[魔石足りて無くね?]
[配信終わらせたら何か起こるあれですね?]
[おつかれー?]
[切り上げるには確かにちょうどいいかもな]
[無双ものが見れると思ったら作業配信だった件]
[テレジア採取前はちゃんと無双してたから]
まだ何かが起こるかもと期待しているようなコメントもあるけど、今回みたいなことはそうそう起きないものだからね。期待されても困る。
「このまま採取作業を続けてもダレるだけでしょうし、予定していた量の7割以上はすでに採取しましたので、後は少し休憩してから上へ戻る途中で採取することにします」
テレジア鉱石を採取した深層の18とこの階層の間にある深層の19は配信時間の関係で完全にスルーしたし、足りていない分の魔石を集めるには十分な数のモンスターが残っているはず。
[えー]
[疲れてはなさそうだけど、あれだけずっとやってたんだからちゃんと休憩は必要よね]
[肉体と精神の疲労はべつものだから、気を付けるんだぞ]
[そういや6時間以上もぶっ続けで戦ってたんだよな]
[休憩は確かに必要だ]
ちょっとまだ見ていたそうなコメントがあるけど、なんだかんだ気を使ってくれていたり、心配してくれるコメントもあるのはうれしいね。
「それじゃあ、配信はこれで終わります。ここまで長時間私の配信を見てくださりありがとうございます。次回の配信も見てくれると嬉しいです。それでは、次の配信でお待ちしてますね」
[おつおつー]
[ばいー]
[近づいてキタ―――――]
[え、朱鳥ちゃんドアップ///]
そう言ってカメラに手を振り、カメラに近づきながら手元のスマホを操作して配信を終わらせた。
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